駆逐艦「ジョセフ・P・ケネディ」見学、続きです。
19世紀後半自走魚雷が発明された途端、それを搭載するための
小型艇を当時の世界の海軍が作り出しました。
小型ならではの高速性で戦艦や巡洋艦を沈めることも可能、
という新兵器だったのですが、それに対するカウンターの兵器として、
魚雷艇よりは大きく、しかし高速性はそのままに、魚雷だけでなく
重武装した戦闘艦が生まれます。
それが駆逐艦=デストロイヤーで、第一次世界大戦において
この名称はすでに定着していました。
第二次世界大戦では、駆逐艦は空、陸、海上からの攻撃に
太刀打ちできる「万能艦」としてその役割を担うようになります。
艦隊においては砲撃の支援をするだけでなく物資や人員を運搬し、
海面から撃墜された飛行機のパイロットを救出し、そして
早期警戒、哨戒を行うといったように。
戦艦や空母には圧倒的な存在感とその戦闘力がありますが、
その実どちらも特に敵の潜水艦に対しては全く無力です。
かつて駆逐艦の護衛無くして敵の海域に飛行機や戦艦が進入したことはありません。
進水してからのジョーイPの三年間を簡単にご紹介しておきましょう。
1945年7月、マサチューセッツ州クィンシーで進水
この時シャンペンの瓶を割ったのは、ジョセフ・ケネディの妹
(8番目の娘)ジーン・ケネディ。
彼女はのちに駐アイルランド大使として名誉国民にまでなりました。
1946年2月 捕鯨ボートと接触?乗員が海に投げ出され行方不明
4月 ロバート・ケネディが任務で乗り込む
1947年2月 地中海に航海、帰国後第8艦隊の旗艦になる
さて、前回の内部に続き、
甲板階で見られるものをご紹介していきましょう。
主砲を見ながらその横に回ってみると、後ろはこんな風になっていました。
Interior of MT51 on USS Joseph P. Kennedy Jr DD850
外からガラス越しに見えているのは、このyoutubeによると
MT51なんだそうですが、これで調べてもほぼ何も出てきません。
おそらく5インチ38といわれた砲のことで間違いないと思います。
上のyoutubeでは、同じギアリング型駆逐艦の「マッキーン」 USS784
に乗っていたベテランがかつてのようにローディングをやって見せています。
youtubeではこの反対側にローディングするスライドがあって、
そこに弾薬を投げ入れておりますね。
昔のようにスライドが動かないので、じいちゃんちょっと焦ってて可愛い(笑)
スライドという弾薬をロードするところがわかりやすいです。
さて再び室内展示です。
大きな赤十字は医務室の印・・・・と思ったら違った。
DISBURSING OFFICE
つまり「出納事務所」です。
もしかしたらいざという時にはバトルドレッシングになるのかもしれません。
みなさんここにきて毎月2回のペイデイにはお給料をもらったんですね。
タイプライター、印刷機、キャビネットの上には穴あけ機。
こちらは「サプライ・デパートメント」、つまり補給部事務所。
ウェブスターの特大辞書(もちろん英英辞典)もあります。
実際にここでずっと使われてきたのでしょう。
こちらもオフィス。
それにしてもスチールのロッカーとか、全く固定してませんが、
時化の時に倒れたりしなかったのか心配です。
出納事務所と隣り合ったこの部屋は、補給部の事務所。
アメリカ海軍「サプライ・コーア」所属の士官が詰める事務所です。
サプライコーアは、日本海軍の主計と同義で、
供給管理、遠征物流、在庫管理、支出、財務管理、
契約、情報システム、業務分析、材料と運用、
物流、燃料管理、フードサービス、物流
などを所掌する部隊です。
先ほどの出納事務所もここの管轄です。
その隣は火災の時に必要な装備装具だけを集めた倉庫。
食堂の脇にはここにも居住区につながるラッタルが。
階段の下には行けませんが、兵員のバンクが見えました。
ブルーの作業着が見えるように広げて置いてあります。
奥はシャワーブースがあるようです。
この階にあるということは士官用だと思うのですが、なんだかなあ・・・。
CPOとはチーフ・ペティ・オフィサーのこと。
士官、准士官、そして下士官兵という米海軍の階級で、
下士官の上等兵曹以上には CPOが付きます。
上からマスターチーフオブザネイビー(海軍最先任)、マスターチーフ(最先任)
シニアチーフ(上級上等)そしてチーフ・ペティオフィサーの上等海曹。
わたしは未だに下士官のこの階級についてよく理解していないのですが、
この部屋は「チーフ」のつくペティオフィサーの部屋ってことでよろしいでしょうか。
つまりマスターとかシニアとかチーフが全部とりあえずここにいるってことでおK?
ところで自衛艦の先任海曹室も、何やら特別な看板によって
その存在を目立たせているものが多いような気がしますが、
この傾向は案外アメリカ海軍発祥なのかもしれません。
扉には他の部屋にはない意匠を凝らした絵が書かれています。
ちなみに、先ほど下の階のベッドに置いてあった制服はブルーでしたが、
CPOの制服はカーキ色だったため、彼らのことを
「カーキス」(KHAKIS)
と呼んでいました。
2009年に軍服が改正になって、ブルーの海上迷彩が制定されてからは
徐々に置き換えられているものの、下士官と CPOは
未だにカーキのものを着用する傾向があります。
しかし、新しくなった一等兵曹以下( E-6以下)のサービスユニフォームに
カーキシャツと黒のズボンというものがあり、このことがどうやら
CPOなど E-7以上の下士官の不満となっているという話です。
なまじかつて「カーキス」と呼ばれていたため、その色が
下の者に使われるのが感情的に面白くないって話でしょうか。
ちなみに沿岸警備隊ではコミッションド・オフィサー(士官)から
ペティ・オフィサー(三等兵曹)まで同じ制服を着ています。
階級による差異化が誇りだけでなく特権意識を伴った場合、
えてしてその変化においてこのような不満が起こってくるものですが、
米海軍もややこしいことをせず全員青迷彩に決めてしまえばよかったのに・・。
ドアに書かれた「ORDNANCE SHOP」の文字。
いよいよ武器庫か?と色めき立ったのですが、実はここが武器庫でした(爆)
かつてはこのスペースに小銃などの武器が収納されていたのだけれど、
展示艦になると同時に取り払われて、今は単なる空室状態です。
ただ、下に続く階段があって、機関室に行けることがわかりました。
実はなんだかんだ言って駆逐艦の機関室を見るのは初めてです。
それでは張り切っていくぜ!
続く。
口径を表す数字が十の位になり、一の位は艦首側から1、左右にある場合には右側が1となります。
ギアリング級は、40ミリ機銃は連装が2基、4連装が2基ありますが、右舷に2基、左舷に2基あるので、艦首右舷のものが41番(MT41)艦首左舷が42番(MT42)・・・と続きます。
CPO(Chief Petty Officer)は米軍の制度で、自衛隊もこれを踏襲しています。一曹(Petty Officer 1st Class)と曹長(Chief Petty Officer)が該当し、それ以外の下士官兵とは別室になり、士官室同様、給仕してくれる従兵が付きます。ベッド数の関係から一曹全員が入れない場合は、先任順(昇任順)であぶれる人も出ます。
艦内は職域毎に分隊(Department)に分かれています。武器を扱う砲雷科(1分隊)運航や作戦、通信を扱う船務科・航海科(2分隊)主機を扱う機関科(3分隊)と経理補給、衛生を扱う補給科・衛生科(4分隊)等々。
この分隊の先任海曹がSenior Chief(分隊先任)で、船全部で一番先任になるのがMaster Chief(先任伍長)となります。階級は皆、曹長(Chief Petty Officer)です。
CPOは下士官兵の生活面を仕切り、当直割や休暇割はCPOが取りまとめて副長に上申します。映画「亡国のイージス」で上陸中に街でケンカをした若い隊員を先任伍長が引き取りに行く場面がありますが、反省の態度が見えないと上陸止め(外出禁止)等の処置をくらうので、みんなしおらしくします。
若手幹部はCPOにかわいがってもらえないといい艦内生活を送れません(海曹士が付いて来ない)階級を笠に着たような接し方はダメで、誠意を持って接していると、CPOに入るくらいの海曹は優秀なので、曹士の前では若手幹部をきちんと立ててくれます。階級社会といえども、持ちつ持たれつです(笑)
救急嚢と呼ばれる袋(一般では救急箱)を格納してある箱です。
艦内外の壁に相当数設置してあります。
➡それにしてもスチールのロッカーとか、全く固定してませんが、
底の部分で甲板とボルトで固定してあります。
普通は取付台がありますが、急造のためか甲板に直付のようですね。
重たいものは壁にも固定し、酷い荒天の時はバンドで2重に固定します。
壁付書棚はこのままだと本が飛び出しますので、手前にバーを取り付けられるようになっていると思います。
机の上の機器類も荒天準備でロッカーの中に格納するか、バンドで壁等に固定となります。机等に固定出来るようになっている機器もあります。
前に記述した事がありますが、椅子も甲板とチェーン等で固定します。
それでも荒天で結構散乱します。
船屋でも想像できないような荒天があります。船乗りさんコメントをどうぞ!