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パシフィックコースト航空博物館~スカイホークとハリアーの「難度」

2014-12-01 | 航空機

サンフランシスコの北に面するソノマ地方にある、
パシフィックコースト航空博物館。
残りの航空展示を一気にご紹介して行きます。



A−4E SKYHAWK   McDonnel Douglas

マクドネル・ダグラス社のこのA−4Eタイプの機体が見られるのは
どうやらここだけのようで、wikiのページにはこの写真が載っています。

それはいいのですが、写真につけられた説明が
「太平洋岸航空博物館」て・・・・。
確かに直訳すればこうなるんですが、そもそもなんで訳すのか。



大きな特性として、「アビオニクスパック」を胴体上部に備えたことがあります。
それまでのスカイホークにはなかった仕様です。
このスカイホークは海兵隊所有のものだったのですが、
アビオニクスパックの部分には

「ダイヤモンドバックス」

とわざわざ大書してありますね。

Diamondbackというのは背中にダイヤ模様のある蛇とか、
あるいはダイヤ柄の甲羅を持つ亀のことなのですが、
航空機に搭載する電子機器、つまりアビオニクスを亀の甲羅のように
背中に背負ったことから名乗った飛行隊のニックネームなのだと思われます。


なお、2001年宇宙の旅の原作者であるSF作家、アーサー・C・クラーク
このアビオニクスパックのことを、まるで男性の股間だと言ったとか言わないとか、
怪しげな情報もありますが、調べても分かりませんでした。(調べるなw)



またこのスカイホークE型は、ハードポイントを5カ所に増やしました。
(それまでいくつだったのかはわかりません。いずれにしても
スカイホーク自体は最初から完成度の高い機体だったといわれます)

ハードポイントは読んで字の通り重量強化点ですが、同時に

「機外兵装ステーション」

のことでもあります。
その一つがこれ。
wikiには搭載できるとは書いていなかったのですが、
これはAH−1コブラが積んでいるハイドラ70ロケット弾ですよね?



緑色のは汎用爆弾Mk82ではないかと思われますが、

黒いのはちょっとよくわかりません。
Mk81の方かな。



機体の影にあったなにやら面白そうな記号解説。

ホイスティング・ポイントとか、給油口とか、
酸素取り込み口とか?そういったあたりです。

機体性能が安定していて使い易いのでこの機体は
「ブルーエンジェルス」 の使用機種となっていますし、トップガン
(戦闘機兵器学校)ではアグレッサー(他国の航空戦術を模倣する教官)

によって仮想的役を務めることもありました。

スカイホークは映画の「トップガン」にも教官機として出演し、
映画「ライト・スタッフ」では、



スコット・グレン扮する海軍のテストパイロット、アラン・シェパードが、
空母に着陸するシーンにこのスカイホークが使われていました。

 
「ホセ・ヒメネス」は シェパードお気に入りの「ネタ」です(笑)



AV-8B( Harrier )


フロリダはペンサコーラにある海軍航空博物館から貸与された機体です。
アリゾナ州のツーソンで現役を引退しました。

ハリアーという名前はトヨタの車にも使われていますが、
オスプレイと同じくこれもタカ科の猛禽類です。(チュウヒ) 
ネーミングとしては航空機の方が合っていますね。

なぜなら、鳥のオスプレイとハリアーには 、

「向かい風でホバリングすることが出来る」

というイメージだけではない「名前を採用された理由」があるからで、
空中でホバリングできるVTOL機にはこれ以上ないネーミングといえます。
 

1962年頃からNATOは垂直離発着戦闘機の研究を始めましたが、
実際にはその2年後にイギリスのホーカー・シドレー社が、
実験機である「ケストレル」を製造しました。

この「ケストレル」というのもハヤブサ科の『チョウゲンボウ』
の英名で、この鳥もホバリングすることが出来ます。


このケストレルの実用型は英空軍に「ハリアー」の名で配備されました。 
アメリカでは海兵隊がAV-8A」の名前
で採用したためか、
この博物館の表示には「ハリアー」という文字は見えません。

米軍も「ハリアー」と呼んでいたと思うのですが。


ついでに、スペイン空軍ではこれを
「マタドール」(闘牛士)という名称で配備していました。
なんで闘牛士なのか。




1982年に起こったフォークランド戦争に、AV-8Aは英空軍機として
出撃し、自己無損失に対しアルゼンチン空軍の戦闘機を20機撃墜し、
その優秀さを世界に知らしめることになりました。 

現在は後継機のハリアーIIに移行され、殆どが姿を消しましたが、
「マタドール」だったスペインのハリアーはタイ空軍に譲渡され、
またインド海軍でも練習機としての使用が行われているのだそうです。 



エアインテークのカバーには・・・・・

ロールスロイス?!

どうやらロゴは本物のロールスロイス社のものらしい・・。
当機はなんとエンジンはロールスロイス社製
ペガサス Mk.103 推力偏向ターボファン・エンジンを搭載しています。





ハリアーは機体側面に合計4つのエンジンノズルを装備しています。

これがそうなのですが、ノズルの周囲には、「0」「10」「55」
等と書かれたメモリがつけられていますね。

この目盛りはエンジンノズルの角度を測定するためのもので、
角度を変えることによって、VTOLを可能とします。

角度は0度(普通の推進)から98,5度までの可動域があり、
(写真の目盛りも90度の次は98度となっている)
98,5度のときにはノズルは真下よりも若干前を向くため、
わずかながらバックすることも出来る仕組みとなっています。 


ハリアーはVTOL機のため、固定翼機とは操縦の方法が全く異なり、
修練者は、必ず回転翼機の操縦を並行して学ぶことを義務づけられています。

操作はしかも大変複雑なもので、垂直離着陸のためにボタンを30個、
常に操作していなければならないのだそうです。

この煩雑さが仇となって、何と45人もが操縦ミスで死亡しています。

もしかしたら、「オスプレイは危険だ!」と騒いでいる連中は、
実はたいしたことがないオスプレイの事故比率ではなく、
こちらの事故をオスプレイだと思って騒いでいるのではないかと思うくらいです。

あるいは「同じ垂直離着陸機なのでオスプレイも危険なんだろう!」
と決めつけているような気がしますね。

じゃオスプレイの操縦は簡単なのか?といいますと・・・

難しいんです(きっぱり)

どれくらい難しいかというと、人間には操縦不可能なくらいです。
しかし、だからソフトウェアで飛ばすんですね。ええ。
フライバイワイヤといいまして、飛行制御コンピュータが計算して
複雑な操作を皆やってくれるんです。

だから30個のボタンをいつも脂汗垂らして操作しなくてもいいのです。

この方式が採用されるようになってから、飛行性能が良くても、
操作性や安定性が悪くて乗れなかった航空機が、簡単に乗れるようになりました。

勿論、停電の危険や、操作に対する応力(手応え?)がないため、

戦闘機などではとくに限界Gを越してしまう、などの欠点はありますが、
いずれにしても反対派が騒ぐほど「難しい航空機」ではないのです。

元海幕長の赤☆氏もおっしゃってました。


「オスプレイは絶対に安全です」 



バックギャモンを思い出す尾翼の模様。




ハリアーの機体に駐機中の「ハニービー」。

武器は尾翼に搭載されていますが、一度だけしか使用できません。
しかし垂直離着陸、ホバリングが可能で、事故知らずの制御装置付きです。



続く。







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3 Comments

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ロケット弾ポッド (雷蔵)
2014-12-01 17:00:51
に入るのは、ハイドラ70ですね。日本はオスロ条約(クラスター弾禁止条約)に署名したので、2016年までに全弾を廃棄することになり、ポッドはありますが、弾はなくなりつつあります。

A-4にぶら下がっている爆弾はMk-82(500ポンド爆弾)のようです。形状はMk-81(250ポンド爆弾)とそっくりですが、爆弾がぶら下がっているラック(Triple Ejector Rack)と比べるとMk-81だとラックより小さいのですが、Mk-82だとラックより大きいので、この写真はMk-82のようです。

Triple Ejector Rackは通常、白い塗装(空自でもそう)なので、ここでは何故黒に塗られているのかちょっと不思議です。

HarrierはAV-8Aのようです。オリジナルの英国製で、外観上の差異は、AV-8Aは主翼下のハードポイントが二ヶ所ですが、AV-8Bは主翼を大きくしたので、三ヶ所になっています。写真は二ヶ所なので、AV-8Aではないかと思います。

ロールスロイスは世界三大ジェットエンジンメーカー(Pratt & Whitney、General Electric、Rolls Royce)の一つです。自衛隊にもいる機体で言うと、P-3C、C-130、E-2CとUS-1/2はロールスロイスのエンジンです。

オスプレーが安全かというと、まだ微妙なんじゃないかと思います。おっしゃる通り、オスプレーはハリヤーだと人が操作するところをソフトウェアがやる訳ですが、まだ初期不良のバグ出し段階で、完成の域ではないのではないかと思います。

機体が不安定になるのは、離陸(垂直上昇)から水平飛行に移る時とその逆(水平飛行から垂直下降)に移る時で、墜落事故はほとんどこの遷移モード時に起こっているようです。この間の姿勢制御の完成度を高めないと、安全とは言い切れないと思います。

ただ、沖縄・普天間基地で言うと、オスプレーの前に配備されていたCH-46は自衛隊では2008年に全機退役したV-107なので、老朽化を考えると、オスプレーの方が安全だと思います。

1995年に沖縄で墜落事故を起こしたMH-53も相当に古い機体で、自衛隊ではヨーロッパ製のMCH-101に代替が進んでいますが、やはり古いだけあってMH-53の稼働率はあまり高くなく、維持に苦労しているようです。

米軍ではMH-53の代替機はなく、どうするんだろうと思っています。オスプレーで代替するのかもしれませんが、サイズが全然違います。(MH-53が全然大きい)

そういう意味では、オスプレーになって新型に更新されるので、普天間基地は安全になると思います。
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あ、そうか (エリス中尉)
2014-12-01 22:40:34
雷蔵さんはそういうのはお詳しいんだった(笑)
うーん、ということはコブラに搭載しているハイドラ70はそのうち何か別のものに置き換えられる、
ということなんでしょうか。

それから、わたしが疑問に思った黒い塗装のものは爆弾(Mk82)を牽引しているラックなんですねえ。
ラックにはとても見えないんですけど。

まあ、オスプレイが事故を起こしている(反対派がいうほど事故率は高くないということを
以前数字で表したことがありますが)のは
事実ですが、フライバイワイヤがそれでは100パーセント信頼に足るものか?
というとやはりまだそうではない、ってことなんですね。
ハリアーよりは自動の部分が増えたというだけで。

こういうのは日進月歩の分野ですから、後発になればなるほど安全性も増すわけで、
その辺の実証が出来てくればかなり安全性のアピールもできるんでしょうけど、
そもそも「反対派の反対」は「反対のための反対」だからなあ・・。
返信する
連投済みません (雷蔵)
2014-12-02 05:48:43
自動化。ソフトにすべてを任せるのは微妙ですよね。

日々、我々が経験する「ソフトに任せる」ことの弊害は「漢字を読めても書けない」ことだと思います。今はパソコンやスマホで、その単語を知ってさえいれば、字が書けなくても「打つ」ことが出来ます。飛行機の操縦の自動化も同じ弊害があるのではないかと思います。

ハリヤーだと汗水垂らして人が動かしていたところを新しい飛行機では機械がやる。人は楽になると、昔のことを忘れてしまいます。

ハリヤーがフォークランド紛争でアルゼンチン軍機に対して圧倒的な勝利を納めた大きな原因は、垂直離着陸を実現した可変ノズルの変則的な使い方にあると聞きます。普通の飛行機は舵で方向変換を行いますが、ハリヤーは方向変換の際に可変ノズルの方向まで合わせて変えれば、普通の飛行機よりずっと小回り出来ます。

アルゼンチン軍の主力戦闘機は当時、当たり前だった超音速ですが、ハリヤーは亜音速。普通に考えるとすぐに後ろを取られますが、そこで可変ノズルを活用した小回りを掛けると、普通に大回りしか出来ない超音速機はつんのめって、ハリヤーの前に飛び出してしまい、そこをハチの一刺し!

ソフトはあらかじめ組んだプログラム通りにしか動かないので、こういった人間ならではの思いつきを実現することは難しいし、自動化に慣れて、楽をしてしまうと思いつくことすら忘れてしまいそうです。
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