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ロイヤルネイビーの「グロッギー」騒動始末〜強襲揚陸艦「アルビオン」

2018-08-14 | 軍艦

強襲揚陸艦「アルビオン」見学、テントを一度抜けて、後甲板から
右舷舷側に出て来ますと・・・・、

びっちりと並ぶ2両連結の「ヴァイキング」。
見学者はその横をほとんど監視なしで通り抜けていきます。

その気になれば、車両を素手で触り放題。
もちろんお行儀の良い日本人は誰一人そんな暴挙に及んだりしません。

地面に鎖で車体を固定する装備が甲板に設置されているので、
そこに停めていくというわけです。

ちなみにその気になればですが、車両の間をすり抜けて向こうに出られます。
もちろんお行儀の良い日本人は誰一人として以下略。

車両の固定の仕方をよく観察してみましょう。

固着装置は甲板側に装備されており、そこから伸張された鎖を、
車体の前部にあるフック掛けにバッテン状に引っ掛けて固定します。

一つの固定場所からは二本鎖が出ていて、別々の車を固定します。

このキッチリ感がたまらないですね(個人的に)

「ヴァイキング」は水陸両用車ですが、基本ウィンド部分までは沈まないので、
運転席とその横の席の窓は普通にガラスです。(強化ガラスだと思いますが)
ただし、車体の割にとんでもなく窓が小さくて外が見にくそう。

窓に車両情報が内側から貼ってありました。
いや・・・ただのサンシェードがわりかな?

車体は、特に喫水線にあたる部分は傷だらけです。
もっとも傷がついても修理するという考えは一切なさそう。

ところでこのシェイプ、窓ガラスから前部にノーズが伸びていますが、
これ、運転者の「脚を収納する部分」であることがわかりました。

中を覗き込んだ連れが、

「信じられないくらい中狭いですよ!」

というのでわかりにくいのは承知で写真を撮ってみました。
確かに・・・・狭い。

「しかし、イギリス人って、体のでかい人が多いのに、ミニクーパーといい、
ヴァイキングといい、どうしてこう運転席の小さな車を作りますかね」

「狭いところが落ち着くというタイプが多いんじゃないでしょうか」

偽装網が掛けてありますが、適当なので、通路に偽装網が落ちて、
歩く人がそれを避けて通るということになっていました。

もちろん自衛隊ではこんな不精な展示の仕方はしませんが、
これもまたお国柄の違い、ということで皆楽しんでいます。

一周してもう一度テントに戻って来ました。
スコープなどを中心に装備を展示しています。

向こうにあるのはもちろんスコープ付きの銃。
これを構えてスコープを覗かせてもらえるのです。

手前にあったのはナイトビジョン付きのヘルメット。

ODカラーのユニオンジャックの真ん中に剣があしらわれていますが、
これが王立海兵隊「アルビオン」乗組部隊のトレードマークだと思われます。

ヘルメットにナイトビジョンを付け、それで視界を確保しながら
闇の中を移動したりするというわけです。

なぜここにあるのかわかりませんが、マシンガン銃撃の基本を記した
マニュアルのような小冊子がありました。
もし突っ込んで質問すれば、これをもとに説明してくれそうな勢いです。

わたしと連れがナイトビジョンスコープを見ながら話し合っていると、
向こうにいた若い海兵隊員が

「こうやって使うんだよー」

と被って見せてくれました。
そして、この後、わたしにほいっと渡し、

「被ってみて(Try it.)」

日頃こういうのには参加しない主義ですが、直接言われれば仕方ない。
受け取って被ってみましたが、重いのにびっくり。

「ちょっと・・・これ重いんですけど」

「重いすか」

「こんなんで匍匐前進とかしたら絶対脊椎損傷すると思う」

「そんな大げさな・・・」

これもロイヤルマリーンの説明によると、暗視装置。
わたしも覗かせてもらいました。

自衛隊も暗視装置くらいなら手にとって覗くことはできますよね?

さっきこの甲板に到着した時に前列で武器を持たせてもらっていた人が、
一周回って帰って来たこの時にも最前列にいることに気がついてしまいました。

気持ちはわからないでもありませんが。

ジャベリンと呼ばれる無反動砲も担ぎ放題。
軽々と持っているように見えるんですが、案外見た目より軽いのかな。

それを知ることができるだけで、貴重な機会であることは間違いありません。

ところで、女王陛下の艦では天蓋に紅白のストライプを使っているので、
この写真などまるで旭日旗があしらわれているように見えます。

さて、後甲板の見学をこれで一通り終わったわたしたちは、右舷沿いに
艦首までを歩いて舷側を見学していくことにしました。

時鐘は風で揺れて強打されないように二箇所で固定してあります。

エア・インテークですから、空気を吸い込む場所なのですが、
前方から歩いて来た人が手をかざしているのにはわけがあります。

右舷の艦首寄りに、同じような装置があり、こちらは排気、
つまりここからは冷たい風が吹き出していたのです。

この部分を冷房しているわけではなく、全艦内の冷房された空気が
排気管を通ってここから出て来ただけなのだと思いますが、この猛暑の中、
ひとときの涼を求めて、前にしばらく張り付いている人もいました。

構造物の様子も、自衛隊とも米軍とも違う佇まい。
ここは・・・「ボトルストア?」

上半分が紙で隠れているので暫く悩みましたが、
「ヘリウム」らしいことが判明しました。

ヘリウムガスを大量に必要とする軍艦の設備となると、
やっぱり偵察気球に詰めるか、非破壊検査用か、潜水のボンベ用か・・・。

少なくともドナルドダック効果で遊ぶ為ではないと思います。

こちらはクレンジングステーションだそうですが、何を洗うんでしょうか。

Ras Winchというのは、

Replenishment-at-sea systems (RAS)

つまり洋上補給の時に使用されるシステムを動かす
ウィンチのことで、給油装置はFuellingのFをとって
「FAS」と呼称することになっています。

画面左にある赤いのが RASのウィンチ関係だと思うのですが、
とにかく、訓練を受けて資格を取った者しかこれを扱わないこと、
とわざわざここに書いてあるのです。

エア・エスケープはわかるとして、DIESO filling tankって何かしら。

DAISOなら最近アメリカにも進出してあちらこちらで見ますけど、
こちらは検索しても何もひっかかってきませんでした。

熟練していなくても最悪の事態にはならないように壁に操作法が書いてあるのは
一見親切ですが、基本人間の能力を信用していないことから来るのかもしれません。

赤い字は、弾薬などの運搬を行うためのホイストの使用法で、
EDUCTORは「浚渫する」という意味らしいです。

海に落ちると自動的にサバイバルキットが積まれたボートが展開し、
遭難時の乗組員をインディアナポリス状態から救うラフト。

何かの弾みで落ちないようにロープでつないでありますが、
もちろん非常時には切り離されるんだと思います。

この時で時計は12時13分、公開が始まってから2時間経っていますが、
乗艦を待つ列は全くと言っていいほど解消しておりません。

何重にも折りたたまれた列が焼け付くような正午の太陽の下、
辛抱強く乗艦を待つ人たちの姿。

「アルビオン」の乗員のみなさんも、ここまでして我が女王陛下の船を
一目観ようと詰めかける日本人たちの熱心さに感動してくれたのではないかしら。

というわけで艦首にたどり着きました。
ウィンドラス(揚錨機)は危険なのでここから先は立ち入り禁止。
艦首でタイタニックごっことかやられても困りますし・・・

だって、艦首旗竿の真下には巨大な穴が空いているんですもの。
乗員にとっても危険なので赤でマーキングしてありますね。

時にみなさん、今回の来日で、「アルビオン級強襲揚陸艦」のページに
こんな輝かしい?記事が付け加えられてしまったことをご存知でしょうか。

佐世保に寄港中の5月には乗組員の男が酒に酔い、雑居ビルのガラスドアを
蹴破った他、男性の手を傘で刺したとして逮捕・送検されたが、
長崎地検佐世保支部は不起訴処分として乗組員の男は釈放された。

あーらら・・・。

ちなみに、案の定佐世保地元の西日本新聞ではこのことを

英艦アルビオンが長崎県の佐世保港に入港した11~24日には、
佐世保市内の繁華街で酒に酔った英国海軍の軍人が騒ぎを起こす様子が目立った。
常駐して「綱紀粛正」を打ち出している米軍とは異なり、
英国などの国連軍が一時的に佐世保を訪れる際、トラブルを起こすケースが多いという。

英語のネオンサインが並ぶ外国人バー街。
米兵が酒を飲むのは日常的な光景だが英艦の入港期間は様子が違った。

外国人バーの店員(20)はその振る舞いについて

「店のライトと窓を殴って割られた。
トイレットペーパーをトイレの中に詰め込む人もいて、むちゃくちゃだった」。

明け方、店の周辺にはビール瓶などが散乱していたという。

別のバーの店主(36)は

「アメリカ兵は門限もあり、ルールを守って飲んでくれる。
初めて訪れる他国の兵士が暴れることが多い」

と打ち明ける。今回、けがを負った男性(43)は

「外国人によって佐世保に根付いた文化もあり、外国人が来ることに反対はしない。
ただ今後もこのような騒ぎが続くと怖い」

と話した。

在日米軍の動向を監視する市民団体「リムピース」の篠崎正人編集委員は

「軍隊が絡むと窃盗や傷害、器物損壊などの事件の起訴率がほぼゼロになる」

と指摘。

「示談で手打ちではいけない。
犯罪をちゃんと処罰しないと犯罪抑止につながらない。
日本の検察は明らかに外国の軍隊の犯罪に及び腰だ」

と訴えた。

 

と報じています。

最後の市民活動家、どさくさに紛れて余計なこと言ってね?
だからアメリカ軍はお行儀がいいってみんな言ってるだろうが!(怒)


ところで、今回「アルビオン」のおかげで知ったのですが、日本語の
「グロッキー」は、
大航海時代、酒の持ち込みに寛容だったイギリス海軍で
飲まれていた
"Grog"と呼ばれるラムの飲み物を飲みすぎて酩酊状態に陥った者、
という意味の「グロッギー(groggy)」が転化したものなのだそうです。

(今、疲れていることをグロッキーという人は滅多にいない気がしますが)

戦後アメリカ海軍は不祥事を恐れて艦にお酒を搭載しないことにしてしまい、
それに追随した海上自衛隊に向かって、当のアメリカ軍人が

「君ら、実につまらんことを真似したもんだなあ」

と言い放ったという話は有名ですが、船乗りとお酒、この組み合わせは
軍隊という組織にとって全くの鬼門であることが、また証明されてしまいました。

王立海軍でも艦内の飲酒は禁止されているはず、と言いたいところですが、
さっき見たメニューには赤白ポートと各種ワインもしっかり載っていたしなあ・・。

今回、「グロッギーな」水兵のご乱行を不起訴にするために、艦長と駐日英大使が
日本政府と掛け合って奔走したに違いないことは想像に難くありません。
そして、おそらく東京でのさらなる不祥事を防ぐため、王立海軍としては
厳しく乗員の綱紀粛正をはかり満を持して晴海に入港したはず・・・

だといいですね。

それにしても、ロイヤルネイビー、お酒が入るとみなさん結構お行儀悪いんだ。
女王陛下の名前を冠した海軍軍人たるもの、他国ではもう少し
身を慎もうとかいう自覚を持つべきだと思いますが、羽目を外しすぎたかな。

 

続く。

 



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3 Comments

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Dieso (Unknown)
2018-08-14 06:55:23
Diesel Oilの略だと思います。

ヘリウムは消火用だと思います。

Cleansing stationはCBR戦時の除染場(シャワー室)だと思います。

行儀悪いのは海兵隊員じゃないかと思います。どこでもそうです(笑)
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膨張式救命いかだ (お節介船屋)
2018-08-14 10:42:34
筏の前に立っている転落止め枠を手動ハンドルを引く事により落下させるか、筏投下が間に合わない場合は固縛索を水深10mで自動離脱器が作動し、開放します。
甲板のアイに丸い器具が見えますがこれが自動離脱器です。
容器から出ている索が架台横のアイに取り付けてありますがこれは筏を膨張させる高圧炭酸ガスボンベの作動索であり落下もしくは浮き上がる事により筏をガスで膨張させます。
あともう一本索がありますがこれは筏が膨張後、流されていかないよう控え索となっています。これは本艦が沈没した場合一緒に引きずり込まれないように自動離脱器が作動する時は一緒に外れます。
第2次大戦から戦後長く使用されていたコルクやバルサの固形救命浮器より形状が小さく軽く、装備位置も任意であり人間の保護や生存率高さもあり、船の救命装備として欠かせない物です。
艦艇用として機銃で撃たれたリ、破片で直ぐに沈没しないように浮体を分割した筏が装備された時期がありましたが、寿命があり一定時期がくれば交換する必要から現在は民需と同一であり、艦艇名が民間船と同様に記載されています。
定期期間で陸揚げ、ボンベの圧力、搭載物の食料、水の有効期限での交換や、本体のゴムの劣化などを検査します。

ただナイロンなどの布地にゴム引きした本体は火災等に弱いため、タンカー等には全閉式救命ボートが装備されます。
参照海人社岡田幸和著「艦艇工学入門」

Grog
帆船の海洋小説ではよく出てくる酒で飲料水代わりに配給で飲用していたとあります。イギリスでは長い航海での必需品であり、軍艦では頻繁に配給していたようです。
現在でも英連邦の海軍艦艇は禁酒ではないのでは?
返信する
酒は飲んでも呑まれるな(標語) (鉄火お嬢)
2018-08-14 12:27:42
>不精
なにしろ日本は『五省』が海軍教育の基本で毎日目にするわ「不精に亘るなかりしか」とか暗誦させられるわ、細かい国民性も相まって、どっかだらしなく外れてるなんてあり得ない。
>船乗り+酒=鬼門
いやまあ、英海軍なんせ海賊の末裔でもありますから、ふつうに行儀悪いでしょう。海外の寄港地で「ネイビーが来た、娘を隠せ」ところが海上自衛隊の艦が入ると「日本のネイビーだ、娘を連れて遊びに行こう!」となるのだそうです。勘定踏み倒し、喧嘩、器物損壊が当たり前の他国にひきかえ、ジェントルマンで汚さずおとなしく飲み「ありがとう」とスッキリ払いさっと帰る、まさに模範とか。
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