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「もふもふ」とエクストラクションロープ離脱〜平成28年陸自降下訓練始め

2016-01-21 | 自衛隊

垂直降下にはラペリングファストロープという2種類の方法があるということ。
ラペリング(自衛隊ではリペリング) を行うのはレンジャー資格者だけ。
 
降下訓練始め3回目にして初めて知ったわけですが、これに限らず、
さすがに3回目ともなると今まで見えていなかった細部に気づくことも多々あります。 
つまり、何事においても繰り返しと経験はそれなりの意味をもたらすわけで、
だからこそ、いつも同じようなことをやっていると思われる行事でも 
毎年参加する価値もある・・・・・ということを確認した今回の降下始め。

ラペリング以降は攻撃のクライマックスに向けて見せ場の連続です。



偽装網の下には、数人の小隊がいて、攻撃の指令を待っています。
ところでこの偽装網、カモフラージュネットという商品名で買えます(笑)

小売でこのくらいの大きさだと16,800円くらい、もっと小さいので
ネットだけだと千円台で手に入ります。
偽装網を何のために買うのか?というと「インテリア」だそうです。

このサイトでは偽装網に限らず、グレネードベストやガスマスク、薬莢など、
何に使うのか何のために買うのかわからないものがてんこ盛りです。

どうもアメリカ軍の兵士が要らなくなったグッズをこっそり売っている模様。
自衛隊員がこんなことしたら大変だ。



フィールドのあちこちでは盛り盛りに偽装を施した高機動車から
砲を下ろしたり、地面に銃を設置したりが始まっております。



ちなみにどこに人がいるのか赤丸で印をつけてみました。
拡大しないとまずわかりません。



車からトランクのようなツールボックスのようなものを外の人に渡しています。



3台の車が縦一列で移動。
この角度だとわかりにくいですが、迫撃砲を各々1挺ずつ引っ張っています。



敵陣に向けて車を駐め、迫撃砲の用意。



真ん中の隊員が抱えているのが偽装網。
迫撃砲の設置は4名で行うことが決まっている模様。



空中では、アパッチがここぞと暴れております。
地上で陣地構築や武器の設置を行っている間は、このようにして
敵からの攻撃を牽制しているという設定だろうと思われます。



これはわたしがカメラを傾けたわけではなく、本当にこういう角度で飛んでいたのです。
操縦者は後席に座っているそうですが、前席の射手は体が前にのめっていますね。

なんでもアパッチの操縦はヘリの中でも難しいらしく、普通ヘリの操縦ができても
さらに1年は訓練をしないとまともに操縦することができないのだとか。
さらに実戦配備にはたっぷり3年はかかるということなので、それこそ
パイロット養成には時間とお金が莫大にかかるというものなのだそうです。

お金がかかるのは養成費だけではなく、その特性に応じた特殊なヘルメットは
パイロット一人一人のために特別誂え。
このヘルメットのゴーグルの右目には計機の数字が映し出されており、
左目で外部を見ながら両手両足全く別の動きで操縦、という、
音楽でいうとまるでドラムのような作業が必要になるのです。
ドラムは下手でも失敗しても死にませんが(ミュージシャンとしては死ぬけど)
ヘリは失敗したら落ちますので、たいへんなんですよこれが。

実はヘリの操縦で一番酷使するのが視神経かもしれない。
右目と左目でいつも違ったものを見て、どちらも認識しないといけないのです。

私事ですが、わたくし今年になって急に(急に出るものらしいですが)飛蚊症になり、
それが「蚊」というレベルのものではなく、先生が「どっかで頭打ちました?」
と聞くくらいの、いわば”飛蝉症”サイズの視覚障害が右目にできております。

たった今も、意識すれば右目で蝉が飛んでいるので、鬱陶しいことこのうえなく、
普通は「治すより慣れろ」と言われるこの症状に対し、手術を勧められています。

片方の目に違うものが見えているだけでこんなにストレスなのに、右目に出てくる数字を
ずっと読みながら、さらに反対側の目で見えていることもちゃんと確認しないといけなくなったら、
とりあえずまず、慣れるより先に、頭痛とか視力低下が起こってくると思われます。

それをしながら自分と射手の命を乗せて飛ぶんだから、こりゃ大変だ。

この話はアメリカのアパッチロングボウのパイロットの話のようですが、
きっと自衛隊のパイロットも同じ事情だと思うんです。

それを考えると、この日見せたアパッチの暴れぶりにも感慨がひとしおではありませんか。



さて、一方その頃地上に降り立ったチヌークさん。



カエルの口から車が出てきました。

「実際見たら思ったより小さい」

というご報告もコメント欄でありましたが、こうしてみても
車が幅も高さもギリギリですよね。



こちらの車には偽装なし。
おそらく盛り盛りにしたらチヌークの中が草だらけになって
掃除が大変だからに違いありません。
降りるときに全部引っかかって落ちてしまいそうだし。



とおもったら、その横を、盛りすぎの車が!



これはまた思いっきりデコってますなー。
なんでもこの映像はその日のうちに世界中に配信されたとか。



このYouTubeの「もふもふ」は去年の映像だそうです。
観客が爆笑している音声が入っています。
確かに今年他はちょっと草の盛り方が違いますね。
原型は車なのでスピードは速いんですが、問題は前が見えているかってことなんだな。



この車は73式小型トラック。
多分この人が運転手に指示を与えているのだと思います。

運転操作はその指示だけを頼りにやってるってことですよね。
阿吽の呼吸というか行間を読む文化の日本ならではで、海外では案の定

「さすがニンジャの国」とか言われていたそうです。

この「もふもふ」、YouTubeでは「かえって目立つだろ」と言われていますが、
もちろん動かなければ、草むらにしか見えません。



この偽装、ある程度盛ってから運転手が乗り込み、あとは皆で
寄ってたかって彼の周りに積み上げたのだと思う。
んでもって、結構みんな楽しんだんじゃないかな。

見張り「あああー、それ以上盛ると前が見えませーん!」

「隙間から見えるだろ?まだ大丈夫だってw」

「走ったら少し取れるから、多めにつけとかないとなー」

「そうだ。毎年わが隊の偽装車はいまや世界中に有名になっている。

多少見えないくらいは根性でなんとかせい!」




フィールドの一番向こうにはFH70榴弾砲がセットされています。
迫撃砲と間違えてしまったけど、確かにこれはヘリでは運べそうにない(; ̄ー ̄A 



お次にやってきたのはまたしてもヒューイ、UH-1。

機体横に何かつけておりますが、これは、87式地雷散布装置。
日本は地雷を使えない国際法を批准したんじゃなかったか、と思われた方、ご安心ください。
法律にはちゃんと抜け穴があって、日本が批准した条約は「対人地雷を使用しない」
というものであり、戦車や車が対象であれば普通に地雷を撒いても普通にオーケーなのです。

もちろん戦車には人が乗っているわけで、戦車が踏めば人も多分死ぬわけですが、
それはかまわないって、相変わらず国際条約もなんだかなーって気がしますけど。



後ろから見ると、地雷散布装置がどう装着されているかよくわかりますね。
地雷散布装置を装着できるのはUH-1Hの特色。
今から敵陣地の手前に地雷原を構成しようというつもりです。



そして地雷が撒かれ・・・・・ん?



なんか形が不揃いな金属が・・。



廃棄処分にするパソコンの部品とかチューブとか、つまりゴミ?

本来ならば一つのケースの中に対戦車地雷18個が収められているそうです。
地雷の筒状のケースに入れられており、ケース横から入れて、下から落とします。



というわけで、この度は地雷でなく盛大にゴミを撒き散らかして行ってしまいました。
あとでちゃんと片付けておいてねー。



この赤い煙は、「ここに地雷撒いた」という印だと思われ。



このあたりの兵力はずっと膠着状態で前線は動きません。



そこにチヌークが狙撃兵をまとめてけん引してきました。
これが本日タイトルの「エクストラクションロープでの離脱」です。

ヘリから吊り下げるロープのことをエクストラクションロープといい、
つまり一般名称ではあるのですが、自衛隊においてはこのように
兵員を吊って運用するときに限りこの名称を使用するようです。



実際に見ていたら3人かと思いましたが、写真で確認すると4人でした。
数が多いほどお互いの体が重みになって態勢が安定するんですね。
これが一人や二人だったら、ロープがねじれてしまって狙撃どころではないでしょう。
それに、4人だととりあえず全方向に見張りが行き届きます。

ただし、これで敵陣上空付近を移動するのは相当怖いと思われます。



それに、チヌークの動きによってはかなり振り回されるのは必至。
いずれにしてもこれはあくまでも「兵員移動」であって、攻撃ではありません。

たとえばラペリングやファストロープなどでフィールドに降下した隊員が
爆破などのミッションを行った後、緊急にその場を離脱するときくらいしか
需要があるとは思えませんが、なにしろこれをすると会場が湧くので、
降下始めなど陸自の訓練展示では必ず行われます。
 

 続く。 

 



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10 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
売り払い (雷蔵)
2016-01-21 05:20:41
自衛隊を含む、すべての政府機関では、不要になった国有財産を払い下げる「売り払い」という手続きがあります。

政府機関の調達や売り払いはすべてインターネット上で公示されます。↓は関東甲信越を所管する陸上自衛隊東部方面会計隊の入札公告です。

http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/kaikei/eafin/nyusatsu_area.html

一番下から4つ目に「鉄屑など」という項目がありますが、これは「売り払い」です。添付ファイルをご覧になれば、モフモフ(73式トラック1両)とあります。マニアの方はトライしてみてはいかがでしょうか。本物の自衛隊車両(中古)が買えます。

不要になった物品なので、程度は「推して知るべし」ですので、ご注意下さい。

地雷散布装置を搭載しているのは、UH-1Jです。機首上にUH-1Nとの識別点のワイヤーカッターが付いています。
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飛蚊症 (お節介船屋)
2016-01-21 09:19:13
>”飛蝉症”サイズの視覚障害が右目にできております。
>普通は「治すより慣れろ」と言われるこの症状に対し、手術を勧められています。
エリス中尉
慣れろは酷ではありませんか?
十分留意され完治される事を祈ってます。

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笑い死んだ(笑) (鉄火お嬢)
2016-01-21 09:58:05
あ~、去年この走るモフモフは世界に自衛隊の名声?を広めたんでしたね、私も見て痙攣起こしました(笑)陸上自衛隊の擬装のテクニックは、米軍が逆に教えを乞うレベルと聞きました。
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スポンサード? (筆無精三等兵)
2016-01-21 14:26:24
その昔、ヘリ版トップガンのような「アパッチ」という映画がありまして、主人公が件の特殊なサイトになかなか馴染めず、見かねた教官がおもちゃの潜望鏡を左目に取り付け、女性のパンティ(バラクラバ帽の片目を縫いつけてしまえば良いのに、あえてパンティを選択するいかにもなアメリカン・マチズム)を被せた状態で車を運転させ、感覚を養うというシーンがありましたね。ストーリーは王道中の王道で、トップガンの二番煎じという感は否めませんでしたが、撃墜されたアパッチの兵装であるスティンガーを取り外してハインドを撃墜するなど、アパッチのスペック紹介みたいな演出もたくさんあり、マニアにはなかなか楽しめる内容だったと記憶しています。

話はそれますが、アメリカの映画やドラマには露骨なCM演出があったりしますよね。会話の中でのってる車のイチオシ機能を滔々と語ったり、その動作を見せたりとか。
それとは別に、最近見た映画でカリフォルニア・ダウンという地震をあつかったディザスター物があるのですが、「携帯よりも固定電話の方が繋がる可能性が高い」とか「日頃から災害時の集合場所を決めておく」とか「海辺で地震に遭遇したら高台に逃げろ」とかの地震時の対処がそこかしこに織り込んであって、単なる娯楽映画でなく啓蒙的な側面もあり、映画の面白い使い方だなと思いました。
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後れ馳せながら (筆無精三等兵)
2016-01-21 20:42:37
かなり重度の飛蚊症とのこと、日常生活の上でのストレスが心配です。最悪、網膜剥離の前兆とも言われていますので、主治医の先生の仰るように早めに最善の処置をとられますよう、上申いたします。
また、近頃は旅客バスの事故が相次ぎ、原因としてドライバーの慣熟不足や過労が取り沙汰されております。賢明な中尉におかれましては、このような心配は無用かと存じますが、原因は違えど、直接的な危険性も勿論ですが、疲労による運転への影響も大きいと考えられますので、片方の視界にかなりの死角が発生する状態での車の運転はお控えいただき、御自愛なさいますよう。
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『もふもふ』 (昭南島太郎)
2016-01-21 21:34:34
『もふもふ』、のそのそ動くのかと思ったら、さすが戦場を想定してるだけあって結構なスピードで移動するのですね。
私が『ネイ恋』と出会った陸軍潜水艦丸ゆのエピソード、潜水艦が草木でカモフラージュを思わず思い出してしまいました(笑)。

ちなみに。。。高校生時代から進んだ近視ですが、38歳で老眼、40歳過ぎで飛蚊症(蝉まではいきませんが。。。)ですが、私の場合は慣れました。。。(汗)

ちなみに。。。(またか)、ソ連崩壊から数年たった英国にいましたが、私がいた田舎ワイト島にまで旧ソ連軍ミリタリーグッズは当時氾濫してました。でも、実家には未だに高校生時代買ったM16ライフルと38口径マグナム?の弾丸が転がってますから、払い下げ品にはお世話になっていたのかも、です(笑)。
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皆様 (エリス中尉)
2016-01-21 22:53:22
雷蔵さん
実際に消防署で使用されていた消防車も購入できるそうですね。
よほどのマニアでかつ資金と置く場所がある人でないと手に入れられませんが。

そういえば「払い下げ品」と称してアメリカ軍のユーズドを売っている店が
横須賀にはいっぱいあるなあ。
こっそりやっているんじゃなくて正規だったのね。

お節介船屋さん
ご心配ありがとうございます。
人間の脳というのはたいしたもので、軽度の飛蚊症くらいなら脳が視力を調整して
気にならないレベルになることが多いので、「慣れろ」と言われるわけですが、
わたしの場合は何しろ「セミ」なので、硝子体専門の先生に見せたところ
とりあえず初診から3週間様子を見て、このままであれば手術で取り除きます。
手術は20分で済むそうですが、入院は3日。
お産以外で長期入院したことがないのでちょっと楽しみにしている自分がいます。
(↑ネタ体質)

鉄火お嬢さん
ほお、アメリカ軍が教えを請うれべると・・・
やっぱり世界的に見てもこれは「変態」レベルなんでしょうねえ。
やるとなると、とことん突き詰めて凝るという日本人の傾向がここにも(笑)

筆不精三等兵さん
「アパッチ」なんて映画あったんですか。
調べてみたらニコラスケイジ、ショーンヤング、トミーリージョンズ出演で、
「戦闘ヘリ版トップガン」だって・・・
こ、これは観るしかないか・・・?
と思って調べたら、「西部劇じゃない方のアパッチ」で観られそうです(笑)
観てやるー^^

スポンサードが堂々とされていてそれが話題になる映画もありますよね。
そう、007。
クレイグのボンドがオメガをはめ、アストンマーチンに乗っているのは「宣伝」です。
今回、サムスンがボンドに自社製の携帯を使わせようとしたら
『ボンドは一流のものしか使わない』と言われて断られたという話がありました。
サムスンはせいぜいロンドンオリンピック開会式のときのMr.ビーンが限界かと。

飛蚊症、まだ車の運転に差し障りのあるレベルではありませんが、
ご忠告をありがたく受け止めて留意したいと思います。
いまのところ一番困るのが左目のアイメイクをする時ですかね。
左目をつぶると、ちょうどメイクをするところに黒い影が(泣)

昭南島太郎さん
あー、草や木で偽装するのって陸軍の「本能」なんですねきっと。
海軍の人たちが「なんで海上を航行するのにわざわざ葉っぱで偽装を・・」
と心から不思議がっていたのも、本能が理解できなかったからに違いありません。

近視の方は眼圧が高いので早くに飛蚊症になる人が多いそうですね。
わたしの義理の妹など、20代でなったそうです。
わたしのこれは、もしかしたら去年息子が床に放ったらかしていたカバンに
つまずいて転んだ時に手をかばって顎を売った時のかもしれません。

ソ連軍の払い下げ品が・・・イギリス(しかも離島?)に?
ミリタリーグッズの流通は世にミリオタがいる限り絶えることはないのかも。
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払い下げ品 (ハーロック三世)
2016-01-23 10:25:06
米軍の払い下げ品はミリヲタの世界では入門編として手をつけるところのようです。

かく言う私も、雨天の犬の散歩用に米軍の迷彩ポンチョを購入しました。
広げてロープを通すと簡易テントにもなるというもの。

使い勝手はというと‥‥

防水性、耐久性は抜群。

しかし、重い!

ということで膨大で購入した例のポンチョばかり使っています。

横須賀や沖縄にはこうした物品を扱う店が多いですが、息子が仕入れた情報によると、米軍も締め付けが厳しくなり、米兵の横流しを禁止したため供給が減っているそうです。
返信する
Unknown (i)
2017-09-17 23:38:47
リペリング降下はレンジャーだけじゃないっすよ、現に空中機動旅団では転入者やら新隊員にリペなどの空路潜入を訓練させます
返信する
unknown(i)さん (エリス中尉)
2017-09-20 22:28:02
お、もしかして中の方でしょうか。
「リペ」「空路潜入」という言い方がそれっぽい!

教えていただきありがとうございます。
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