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菅野直伝説その4~隣の客

2010-08-07 | 海軍人物伝




あるホテルのカフェにて。
隅にいるエリス中尉が目に入らなかったのか、白いスーツに白い靴の老人(というにはいささかギラギラしてましたが)が、大声で会話。大声で携帯電話。ウェイトレスをおねえちゃん呼ばわり。
もう、自宅の居間状態でおくつろぎでした。

「政界の誰それはわしのなんとか」
「誰それは全く言語道断(おっちゃん、『げんごどうだん』とちゃうで)」などなど。

最後には携帯で「マグロ漁船に乗りたいという男がいるのでよろしく」と何回も繰り返していました。
ふーむ、マグロ漁船とな。
家に帰ってTOに「マグロ漁船って、それ以外の○○い意味ある?」
「ある」

もしかしたら((((;゜Д゜)))だったのかなあ。



さて、この聴くともなく聴いてしまう隣席の会話。

上の話のほかにも、大阪日航ホテルのセリーナで、隣の席の女性がいきなり
「ウチの主人浮気してるの。相手は新地のバーのピアニストよ」
といい出し、向かいに座っていた若い女性と、当時彼女くらいだった若きエリス中尉は同時に
「はっ」と固まってしまった、なんてのもあります。
全く聴く気はなかったんですが、あそこ、テーブル同士のの距離30センチくらいだったからねえ。当時。
同席しているのと一緒ですよ。
しかし何というか、そういうことをそういうシチュエーションで言ってしまうその人の性格に、
その原因はないのかと・・・。

そこで、やっと今日の話題に入るわけですが。

このシリーズを描いていて「二コマ目がコピーで使える」ということにある感慨を覚えるエリス中尉です。
この「隣の客の会話が丸聞こえ」という当時のレスの作りは、かなり問題だったのではないでしょうか。
お互い姿は見えないわけなのですが、襖で仕切られた空間なんて実は同じ部屋にいるようなもの。
そこで大きな声でまずいことをしゃべると、当然隣にいる客によっては大変なトラブル勃発です。


ある日、菅野大尉と鴛渕大尉は賀屋の町はずれのレスで飲んでいました。
隣の部屋は七五二空の士官の宴たけなわ。若いパイロット士官が大声で特攻隊を賛美しています。
ところが
「体当たりをやるようになっちゃあこの戦いは負けよ。
どうせ負けるとなれば、特攻なんて犬死にじゃなか!」
と一人がいい、座は白けました。

そのとき、「特攻を犬死にと言ったのは誰か!」と仕切りの襖をあける男が。
そう、ご存知菅野直大尉です。

前回ずらりと並んだ佐官を見て一瞬うろたえた菅野大尉、今日の相手はプレーン(背広)です。
今回は心おきなく、突進します。

(ちなみに、前回とか今回とか自分がマンガにした順でモノを言うな、と突っ込まれた方、あなたは正しい。
どっちが先に起こった事件かは裏取ってません。ごめんね)

さて、背の低い菅野大尉、大柄な相手の脚を取りに入ります。

両脚を取られて食膳に倒れる相手。
近くにいた芸者は着物に醤油やフライの切れはしが飛んでくるので、立って逃げながら金切り声をあげ、
座敷は阿鼻叫喚。
菅野大尉、相手に馬乗りになってビール瓶まで持ちだして殴り出しました。

一緒にいた鴛渕大尉のおろおろする様子が眼に浮かぶようです。
しかし、兵学校の上級生なので、菅野大尉には「上官」ですが、止めなかったんですかね。
内心「もっとやれ」と思っていたとか?

いや、それはないかな。彼に限って。

この場は、床柱を背負っていたのが顔見知りの中佐だったので、そのとりなしで収まりましたが、
おさまらないのは殴られた軍医長。
階級は中佐ですから上官暴行で完全な軍法会議ものです。

しかし、たんこぶをタオルで冷やしながら息巻く軍医長に、菅野大尉、
「軍法会議結構。処罰が終わったらもっと殴ってやりますから」
とうそぶきます。

その何ヶ月か後。
九州南方の空戦で太股に一三ミリを被弾した菅野大尉、
(右脚だったそうですが、マンガでは左で描いてしまいました)
「隊長、大丈夫ですか!」
「心配するな、わしは敵の弾丸では死にはせん」
これは菅野大尉の口癖だったそうです。
「明日も出撃する」と頑張る菅野大尉を、志賀飛行長は病室に運ばせます。

「おう、来たか」

そこには他でもない、あの日ビール瓶で殴りまくった軍医中佐が!

危うし菅野大尉!

(たぶん続く)


参考:春の嵐<菅野直の生涯> 豊田穣著 光人社NF文庫





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5 Comments

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3時間も (NC)
2011-11-07 12:22:22
はじめまして。
昨日「敷島隊の5人」を読了し・・・この重たい感動を誰とも分かち合えない36歳の主婦です。
変な自己紹介で申し訳ありません(汗

エリス中尉のブログの前に朝から3時間も座っています。

久しぶりに声を出して笑ってしまいました
あは。


大空のサムライは著者が坂井さんご本人ではないと知り 購入を迷っていましたが
ブログを読み無性に読みたくなりました
購入します!!

菅野大尉は関大尉の流れで何となく調べていたら「男前♥」
・・・・それでここにたどり着いた次第であります。


まだまだ初心者ですが
史実のみを追求し
色んな資料に触れコツコツ勉強して行きたいと思っています。 


こんな訳ワカメなコメントですみません・・・・


これからもブログ楽しみにしています!!






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Unknown (エリス中尉)
2011-11-07 16:18:21
こんにちは。
一日分がやたら長文なので、三時間は直ぐ経ってしまったのではないでしょうか。
もっと文章を短くまとめるべき、とは思うのですが、どうも書きたいことがいくらでも出てきて、どれも割愛できず・・・。
「菅野大尉シリーズ」のころはまだ短めだったのですが、最近また一段と長くなってきた気が。

「大空のサムライ」ですが、名作戦記小説としてぜひ一度は読まれるといいかと思います。
「本人の書いたものではない」
ということは、この本の価値にとって何のマイナスでもないと考えるからです。
本人の体験を名ライターが聞き書きした本は世の中にたくさんあります。
それだから価値が無いなどと言う考えはナンセンスではありませんか。
このような青春もあったのかもしれない、と当時のパイロットたちに思いを馳せるのに、これ以上の小説はないからこそ、いまだに世界中でこの本は読まれているのではないでしょうか。

ただし、歴史的資料としての価値を求めるべきではないと思いますが。

ikowakoさんが、このブログを読んで「大空」を読んでみたくなったというのは、いろんな映画や本を紹介して少しでも興味を持ってくれる方ができれば、という願いを持つブログ主にとって、大変嬉しいことです。

他のページで紹介している本なども、よろしかったらまた読んでみてください。

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購入しました! (NC)
2011-11-07 18:05:34
「大空のサムライ」(上下)購入しました!
嬉しい!!
よくよく考えると本当にナンセンスですね・・・
本人の書いたものではない=ちょっと脚色あり?みたいな方程式がなりたっていたのかもしれません。
アドバイス、ありがとうございます。

当初、関大尉に興味を持ち「敷島隊の5人」と間違えて「敷島隊の5日間」(小説)を借りてしまいその内容にガックリとしたことがありました。

だけど
どんな本を読み、資料を観たとしても心の中の「その人像」はそれぞれですよね
ご本人が居ない限りもうそこは想像を膨らませ想いを馳せるしかない。

「大空」と同時に菅野大尉の本も購入しました。おにぎりをほうばる姿の写真がどうしても見たくて・・・・

とにかく知りたいことが多すぎて
頭がとっ散らかってる状態です。

エリス中尉のブログはとても参考になります!

これからが楽しみになってきました^^
感謝感謝




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大空のサムライ (エリス中尉)
2011-11-07 20:03:14
お名前を間違えていたのでコメントを打ち直している間にNCさんのコメントが・・・
すみません<(_ _)>
打ち直したコメントを入れると順序が逆になってしまうので、あえて古いほうのコメントを載せました。

脚色は・・・・・。
あるかもしれません。
あると思います
あるんじゃないかな。
ま、少しは覚悟をしておけ。
・・・・です。

わたしの場合、他の戦記を色々読んでいるうちに、大空の創作性に気が付き、一回りして帰ってきてもう一度読んだら、別の価値が見えてきた、みたいな感じでしょうか。

「大空のサムライ」や「永遠の0」は、入門書としてまず読むのに最適ですが、
そこで終っちゃ駄目だぜ!
世の中にはそれはそれはたくさんの本があるんだぜ!

というのが、僭越ながら、これから色々なことを知って行かれるであろうNCさんに贈る言葉です。



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NCさんへ (エリス中尉)
2011-11-19 22:42:16
NCさん、事務連絡です。
先日頂いたメールに、goo mailを使ってお返事を差し上げましたが、届きましたか?
ときどき「届いていない」ということが起こるので、というか、メールを読むアカウントがどうなっているのかによっては返事を出しても気づかないということがあるのかなと思い「メールが届いたら返事ください」と末尾に書いておきました。
お返事が無いので、届いていないのかと思いますが、いかがでしょうか?
お手数ですが、コメント欄で結構ですから一言頂ければ幸いです。
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