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そうりゅう型潜水艦潜入〜呉地方総監部見学記

2016-12-17 | 自衛隊

前回自衛隊記念日の式典に参加したとき、少し時間があったので
この潜水艦桟橋にやってきて外から潜水艦群を眺めました。

そのとき車両がくると、経営の隊員がどこからともなく現れて門を開け、
通過後はすぐさま鍵を閉め、さすがに秘密のかたまり潜水艦基地だと思ったものですが、

今日はそこにノーチェックで車に乗ったまま入っていくわけです。

通過しながら写真を!と一瞬思ったのですが、当日は雨が強かったのと、
やはり潜水艦基地の出入りなので自粛しました。

反対側の桟橋では「しお」型潜水艦が充電中。
写真で見るよりも実際に上がる煙(水煙?)は派手です。

「どれくらいの時間やっているんですか」

と聞くと、長いときで20時間くらいという返事でした。
それってほぼ一日中やってるってことだよね?
 

さて、本日見学する潜水艦が繋留してあるSバースに向かう車窓からは
折しも激しくなった雨にもかかわらず、潜水艦の前に立って
わたしたちをお迎えしてくれている数人の姿が見えてきました。

当潜水艦艦長、そして本日ご案内くださる隊員の方々です。

挨拶もそこそこに、まず艦長の写真を撮らせてもらうわたし(笑)
濡れながらバースに立っている人たちを見たときには、内心

「こんな日に雨が降ったのもぜんぶわたしのせいですすみません」

と恐縮していたのですが、ファインダー越しにこの自衛官ポーズをとる
艦長の姿を見た瞬間、「雨でよかった」(その心はレインコート萌え)
と心から思ったことをここに白状致します。

 

基本勤務中の自衛官はマスクなしで上げている当ブログですが、
本件に関しては潜水艦艦長といういかにもスパイに狙われそうな
職種の方ゆえ、あえて顔を消しました。

この艦長が繁華街で因縁つけられたり、街を歩いていたらものすごい美女が
道端でうずくまっていて、

「どうしました」

「はい、持病の癪で差し込みを起こしまして」

「それはいけない。 肩をお貸ししましょう」

以下略という展開になっては大変ですからね。


自衛隊では一般に潜水艦艦長は二佐が務めることが決まっていますが、
後で伺ったところ、当艦艦長は「日本一若い潜水艦艦長」なんだそうです。

自衛隊の階級と年齢の関係についてわたしはあまり知らないのですが、
40くらいで三佐というのが普通かなと思っていたので、この艦長が 
30代後半で二佐と聞いてさすがに驚きました。 

「撮っていい」といわれたので、バースから甲板に渡るためのラッタルから一枚。
艦首にツノのような突起物がありますが、これが逆探ソナー(魚雷警報装置)で、
艦首アレイ、側面アレイ、曳航アレイとともにソナーシステムを構成します。

そういえば内部の機関部は皆見せてもらったのですが、
ソナー室はカーテンで覆われ、厳重に秘匿されておりました。

海面近くの艦体を見ていただくと、苔がついているのがわかりますね。
今回初めて現役の潜水艦の艦体を間近で見て知ったことは、
昔の潜水艦のように「甲板」がない分、艦上は人が立っても滑り落ちないような
硬化ゴムのような素材になっていることです。

人が歩く部分とその他では、この写真を見ただけでも素材が別のようです。
特に上部には滑り止め加工がしてあるのだろうと思うのですが、
そうではない部分も金属ほどつるつるしていないので苔や藻が付きやすいのでしょう。

そして付いてしまった藻は掃除しにくそうです。

この部分を「フィン・スタビライザー」だとこの日まで思っていましたが、
現行の潜水艦に「フィン・スタビライザー」なるものは存在しないそうです。

「スタビライジング」する仕組みは外付けのものではなくなってきたってことですね。
これは単に「潜舵」だそうです。 

観艦式のとき、ここに三人が立ってラッパを吹いていたのを見ましたっけ。

潜水艦勤務は身体条件が厳しいとよく言われますが、中で聞いたところ、
なりにくさと言う点では航空の次くらい、だそうです。
耳抜きが出来ない人は鼓膜が破れてしまうのでもちろんダメです。 

意外だったのは、潜水艦乗りは船酔いに弱い人が案外いるということ。
なぜなら潜水艦は一旦沈んでしまったらたとえ海面が大嵐でも
航行にはまったく影響がなく、動揺もほぼゼロというのが普通なので、
いつまでたっても海面の動揺には慣れないのだそうです。

さて、写真を何枚か撮ってから中に潜入(文字通り)することになりました。

 

当然ですが、内部は撮影禁止のため、カメラを入る前に預けます。
携帯も隠し撮りの可能性があるので入り口で回収。

カメラを預けた隊員さんは、雨が降っているので濡れてはいけないから、
と制服のお腹の部分にそれを隠して持っていってくれました。 

一瞬、信長の草履を温めた秀吉の話を思い出してしまいました(笑)



カメラは、ハッチの横にたっている警衛小屋の中で預かってもらったのですが、

どうもその隊員さんが、取り出す時に動画モードにしたらしく、
小屋の内部の様子が一瞬ですが動画に撮られていました(写真)

さて、ここからはひたすら記憶を頼りに書いていきます。

 

この夏もアメリカで幾つかの展示艦となった潜水艦を見ましたが、
その全てが展示用に階段が取り付けられていました。
それらは全て展示用に改装されたものであり、本来潜水艦に乗るとは
こういうことだったのか、とすぐに思い知りました。

潜水艦のハッチを降りていくのは結構大変です。

まず、入ってすぐ二重構造になっていて、ラッタルがまっすぐ続いておらず、
足をかけるところが
足探り?しないとわかりません。

「先におりますから上で見ていてください」

ここには足を乗せても構いませんからゆっくりと、などという説明を
頷きながら神妙に聞き、その後、

「いきまーす!」

と宣言して降りていきます。
いやーこれ、簡単じゃないよ?
構造上のことは詳しくは言えないけど、ただのラッタルじゃないし。
潜水艦の人って毎日これを登ったり降りたりして、それだけでも大変そう・・。

下からは先に降りた隊員さんの声が聞こえてきます。

「何かあっても下で支えますから!」

って、落ちたら下で抱きとめてくれるんかしら。
それとも身を呈して下敷きになってくれるとか。

いずれにしても現場の方にこんな言われると妙に安心してしまうものです。

一仕事終えたような達成感とともにラッタルを降り切ると、
降りたところには応接室(本当は士官食堂)の大きなテーブルがあって、
そこにパンフレットとコーヒーが、すでに二人分用意されていました。

気がつけば艦内のあちこちには、一般公開用の説明のボードなどが
設置されていて、もうお迎えの体勢万全な感じ。
コーヒーも淹れたてで熱々です。

白い龍が潜水艦を両側から守っているデザインををあしらった
かっこよさ満点のマーク(りゅう型って、それだけでかっこいいよね)
が描かれた
パンフレットには、当潜水艦の諸元経歴とともに命名の由来が

「白龍は古来から四龍の一つであり、方角を司る霊獣である
白虎に対応し、西方の守護神とされてます (下線ママ)

とあります。
いかにも(比較的)西方の守りである呉地方隊の潜水艦に相応しい名前ではないですか。

しかし僭越ながら下線部の四龍は間違いで、正しくは四神・四獣(ししん・しじゅう)
のことであろうと思われます。
四獣とは中国の神話で天の四方を守る「神獣」のことで、

 東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武 

を指します。

・・・で今気づいたのですが、この情報微妙に間違ってません?
西方は白い「虎」で、それに対し東のは「青龍」。
 

????

このいただいたパンフによると、わたしたちが進入してきたのは
士官室の上、セイルの後ろからということになります。 
テーブルに着くと、真横のモニターに説明用の画像が現れました。

海上自衛隊の組織図が最初に出てきましたがそこはあっさりと通過し(笑)

「潜水艦がどうやって沈むかご存知ですか」

まず仕組みからレクチャーが始まります。
この絵だとまるでマホービンみたいな仕組みに見えますが、
メインバラストタンクは前後にあるのが普通です。

ここに海水を取り込んで沈む、排出して浮かぶ。
昔からこの仕組みは変わっていません。

潜水艦映画でおなじみ、「ベント開け!」

ベント開く→海水が入る→潜水

ということで、必ず敵機が空中から襲ってきた時の台詞ですね。 
ついでに、映画でこれもおなじみ(かっこいいんだよね)、

「急速潜行!」

というのは、今の潜水艦ではなくなってしまった指令だそうです。
なぜかというと・・・ずっと浮いている必要がないからじゃないかな(適当)

ところで、今回探していて、大変わかりやすく潜水艦の仕組みが
動画で見ることのできる川崎重工の神ホームページを見つけました。

潜水艦の原理

潜水艦も妙にかわいいですが、動画にモブ出演している魚がちょっと萌えます。

 

というわけで続く。 

 

 



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7 Comments

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皆様 (エリス中尉)
2016-12-20 11:02:16
お節介船屋さん
なるほど、よくわかりました。
最悪港に入ってから浮上でもいいので、海面の航行は全く考慮しなくていいんですね。
どうりで船酔いする乗員がいるわけだ(笑)

coralさん
1佐以上は(といってもその上はもう海将補ですが)自衛隊でもごく一握りの
エリート、と昔このコメント欄でも話題になったことがありましたっけ。

このとき見学したそうりゅう型潜水艦の前艦長は、
この12月に1佐昇進となり幕僚入り?したと広報に載っていました。
こういうのが上位10%の自衛官の典型的なコースなのかもしれませんね。
もしかしたら、この日お会いした潜水艦艦長も超特急コース候補かも?

ここだけの話ですが、前述の3佐は
「出世を諦めた3佐をなめるなよ?」
(その心は失うものがないので何も怖くない)といっていたそうです。
こういう人・・・・・好きだなあ。
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Unknown (Coral)
2016-12-18 21:35:28
エリス中尉
>この昇進は防大卒業者のものですね?
先に記したように、一般幹部候補生、防大卒は1尉まで横並びで、以後も同様です
(区別はありません)。部内は別だと思います。
ところで以前、40代半ばくらいの防大卒のある1佐の方の講演を聴く機会がありましたが、初めにご自身の経歴を年代を追って詳しく紹介されました。近くにいたOBの方が言うには、「彼の経歴は上位10%のもの、みんながあのような経歴をたどるわけではない」ということでした。要するにみんなが1佐になれるわけでもないし、なれてもあの年齢でなれるものでもない、ということだったと思います。
よく1佐以上になるには、指揮幕僚課程(陸CGS、海空CS)に進まなくてはという言い方をされます。指揮幕僚課程に受かり卒業したら特急列車並に昇進、その上成績が上位で卒業できたら超特急並(パンフレットに記載された年数はここに該当すると思います、よく言う一選抜)。
指揮幕僚課程の一次試験に合格し、二次試験で落ちても急行列車並み位の昇進をしていくということらしいです。
なお曹士の場合は、2士(6か月)、1士(1年)、士長~曹長(夫々2年)が昇進までの在職期間です。
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減揺装置 (お節介船屋)
2016-12-18 17:50:45
水上航行する船はピッチング(縦揺れ)とローリング(横揺れ)に如何に対応するかが性能として問われます。
前のコメントで書きましたが、ローリングはビルジキールで減少させることが一般的です。

フィン・スタビライザーを付けるのは客船、フェリー等人に不愉快を与えないように、荷崩れを起こし難くする等である程度船価が高くなっても良い船種です。

ちなみに軍艦、自衛艦でもヘリコプターを運用する駆逐艦、護衛艦等船体の大きさがあまり大きくない艦種です。
海自もヘリ護衛艦から採用されていますが、低速力ではあまり効果がないので、ビルジキールとフィン・スタビライザーを併用しています。
空母等は大きく、安定しているし、フィンの効果力からビルジキールのみと思います。

潜水艦「ライオンフィッシュ」の記事を楽しみにしておりますが、過去の潜水艦は(戦前、戦中、戦後しばらくの間)水上航行を多用しておりました。
「てつのくじら館」のミンゴ(くろしお)の模型を見ても米潜水艦は制空権があり、シュノーケルを装備していません。
(日本海軍の潜水艦は戦争終盤全てシュノーケルを装備して、電波反射を軽減するような塗装、逆探装備等しても戦没が多かった。位置情報の電波を米海軍に解析されていたのが原因ですが)
日本海軍潜水艦はビルジキールを装備してました。
昔は電池性能も余り良くなくて頻繁に充電が必要であり、水上航行、シュノーケル使用時は波浪の影響を受けますので減揺装置が必要であったのでしょう。

「あきしお」にはビルジキールもありません。
現在の潜水艦は水上航行が港の出入港時のみであり、スタビライザーは必要ないものと思います。
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皆様 (エリス中尉)
2016-12-18 16:54:52
お節介船屋さん
もう少しあとに潜水艦「ライオンフィッシュ」について書いたのですが、
その中でこの技術が戦前の日本人技師によアイディアによるものであり、
戦後逆輸入されたことを話題にしました(笑)
潜水艦に減揺装置がないのはもぐりっぱなしだから・・・なのですが、
昔の潜水艦にはそれらしいものが外付けされていたんですよ。
海上を航行することも多い(その心は長く潜っていられないから)からですね。

coralさん
こういうの、知りたかったです。この昇進は防大卒業者のものですね?

これによると、30代後半の2佐は決して遅くない・・・・。
実は最近会った方の旦那様が41歳で3佐だったものですから、30代後半2佐、早っ!と思ったのですが、やはり
どういう入隊をしているかで全く違ってきそうですね。
ちなみにその方は一般大卒陸上勤務だそうです。

隊員さんがおっしゃっていたのは「若い2佐」ではなく、「若い艦長」だったみたいです。
本文を訂正しておきました。

ところで海自には艦艇以外では潜水艦艦長とP3C操縦出身の海将が多いような気がします。

ハーロック三世さん
昔なら削らなければいけないような不具合があった時点ではねられそうですが、
今はそういう技術があるから我慢さえすればなれるってことですね。

鼻中湾曲症ですが、今調べてみたら「成人の9割」であるという説もありました。
ほとんどの人がそうだってことじゃないですかこれ・・・。
手術したのに予後が良くなくて悩んでいる人の話もたくさん出てきました。
さらに写真でぐぐったら、その手術で取った軟骨をアップしている人もいました。
「まっすぐでない」というのは正面から見てだけでなく、いわゆる鷲鼻の人も
これに含まれるみたいですね。
日本人で9割なんだったらアラブの人なんてほとんどが湾曲しているってことになります。
(すっかり楽しんでしまいました)
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潜水艦適性 (ハーロック三世)
2016-12-18 00:09:09
>耳抜きができないと潜水艦乗りになれない

航空も同じですね。
採用前の身体検査の中に鼻中隔検査というものがあります。

成人の80%ほどに鼻中隔湾曲症があり、湾曲が大きいと耳が抜けにくい為、採用前に軟骨を削る手術をさせられます。

同期で手術を受けさせられたものが言っておりましたが、ゴリゴリと頭蓋骨をヤスリで削られて実に痛いそうです。

私は後で言われたのですが、かろうじてOKだったそうです。


鼻の中の
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階級と年齢 (Coral)
2016-12-17 21:59:04
エリス中尉

自衛官の階級と年齢の関係など一般人には何かに役立つということもないと思いますが、中尉なら無駄な知識として知っていても良いかもしれません(笑)。
以前見た自衛隊の募集パンフレットから階級と年齢の関係を整理すると下記のように
なります。カッコ内は最短の期間です。
パンフレットに書いてあったわけではありませんが、一般幹部候補生、防大卒は1尉まで横並び、以後は実力と運(笑)によるようです。
22歳 幹部候補生(1年) 
23歳 3尉(2年) → 25歳 2尉(3年) → 28歳 1尉(5年)
33歳 3佐(3年) → 36歳 2佐(4年) → 40歳 1佐(6年)
46歳 将補(3年) → 49歳 将
返信する
スタビライジング (お節介船屋)
2016-12-17 21:10:30
安定させるとの意味だと思いますが、船では「減揺装置」と解釈します。

フィン・スタビライザーは水中に翼を出し、波によるローリング(横揺れ)を海水の流れを利用に反発させ、減少させる装置です。
即ちある程度の速力以上でないと良く効きません。
1920年代三菱造船の元良博士により発明されました。
この時代の日本の技術では波の動きに対応する管制装置が不十分でイギリスに渡り、完成され日本に逆輸入の技術です。

船の一般的な減揺装置はビルジキールです。
水中部に船首尾方向に長くある程度の板、又は構造物を取り付けて、ローリングを海水の抵抗で減らす船体構造物です。
低速力、停止の状態でも作用し、安価な装置です。

減揺タンク 船体の上部両舷に各々タンクを取り付け、下部は水路で連結、上部は空気管で連結し、空気を制御で、水の流れ、量でローリングを減少させる装置です。
流動音がしますし、波の周期によっては効かない事もありますが、船底部に突起があっては不都合な砕氷船等には向いています。

その他、空母「鳳翔」に取り付けられたことがある、巨大な駒を回して動揺させないジャイロ・スタビライザーもありました。

以上のように外付の装置の方が多いです。
潜水艦はほぼ潜りぱなしですのでスタビライザーは不必要です。音の発生元にもなりますので、無いほうが良いです。

なお潜舵はお分かりと思いますが、飛行機の昇降舵と同様、深度の変換に使用される舵です。
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