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ランドリー〜空母「ミッドウェイ」博物館

2018-04-22 | 軍艦

 

 

 

 

空母「ミッドウェイ」の乗組員、そして士官の「食」の場を中心にお話ししてきました。
今日は軍艦の「衣」についてです。

ワードルームを過ぎ、通路に沿って歩いて行くと、階段を降りるように指示がありました。

オーディオツァーの人のためにあちらこちらにある黄色い道案内には

「階下にランドリーの展示があります」

と記されています。

軍艦見学の時に階段があったら必ず写真を撮ることにしています。
あとで見た時にどこを見たかわからなくなるのを避けるための工夫です。

空母のランドリーはざっくり言って4,500人の洗濯をするところです。

いきなり洗い終わった後の洗濯物をかけている部屋に出てきました。

赤のV型赤ライン3本で鷲のマークが付いているのは

一等海曹
ペティオフィサー・ファーストクラス
Petty Officer First Class  (PO1)

翼のついているのは航空徽章のようなものだと思われますが、
ラインが緑というのは初めて見た気がします。

おまけに白い夏服も(なぜ一緒にあるのか謎ですが)緑の線ですね。

袖についていて所属階級がわかるものを「レイティング・バッジ」と言いますが、
その部分をアップしてみます。

 

左から2番目のようにマークに翼が生えているものはだいたい航空関係ですが、
写真の「錨に翼」はそのものズバリ、

 AN Airman

航空兵のマークとなります。

一番右から、電子マークに翼は、

AT Aviation Electronics Technician

航空機の電気技師ですね。
その左、プロペラに本をあしらったのは

AZ   Aviation Maintenance Administration man

航空機メンテナンスの管理を行う部門です。
その左は本と羽ペンのマークですが、

PS   Personnel Specialist

パーソナルのスペシャリスト、つまり人事記録の管理、報告書の作成、
会計処理の実施に関わる事務および行政業務を行なったり、
レイティングの決定、訓練、昇進、賞、教育機会、および軍人の福利厚生や

人事管理に関する名簿などの刊行物の管理を行う全般的な仕事です。

その横、鍵のようなものがクロスしているのに羽がついているのは

AM Aviation Structural Mechanic

AME - Equipment

航空機の機体を専門とするメカニックがAM、
航空機の装置を専門とするのがAMEというレイティングです。


一番左は、航空マークの下にアスクレピオスの杖があるのでそれだけであれば

HM Hospital Corpsman

なのですが、それに『D』が被せてあるので・・・・ドクター?
でもドクターが水兵の服を着るというのもなんだか変だし。

と思ったら、頭文字Dはデンタル、歯科のDでした。

棚に収納されているのはランドリーバッグ。
クリーニングする衣類はこのようなバッグにまとめられて運ばれてきます。

毎週、1,075以上のランドリーバッグが艦内のあちこちから運び込まれてきます。

 

ベケットという乗組員は1990年ごろここで働いていました。
食住全てに階級差があるのが軍隊ですが、どうも洗濯も士官のものは
特別に行われ、扱われていたようです。

「士官は大抵いいものを着ていたからね。
僕たちの仕事は出来上がった服を仕分けし、パッケージして、
彼らの寝台や居室まで運ぶまでだったよ」

サックス5thアベニューで特別に仕立てた軍服ですねわかります。

水洗いできない制服などは、船の中にも関わらずドライクリーニングができたようです。
ただし毎日ではなく、

士官は 火・木・土、CPOは月・水・金

と決まっていました。

「ブラックバッグ」は多分中身が見えないようなバッグのことだと思うので、
下着などだと思いますが、これは毎日出すことができました。
ブラッグバッグの場合は

受け取り時間 0730−0930

兵による受け取り 0830−0930

航行中 1500−1800

寄港中 1300−1600

兵による受け取りは、持って来なくとも集配してくれるサービスでしょう。
航行中と港に停泊している時で時間が違うのがなぜかはわかりません。

アメリカでコインランドリーの洗濯をしたことがある方は、この形の
小型の洗濯機を使った事があるかと思います。

大抵、上にコインを入れるスロットや引き出し式のコイン投入口があって、
(溝に指定の数のクォーターを並べ、引き出しをがちゃんと押し込むと投入される)
しかるのち、モードを「ホワイト」「カラー」「デリケート」などから選択するのです。

軍艦ではおそらくこの段階で仕分けしてはいないような気がします。
(してたらごめんなさい)

洗濯物の入ったバッグは40パウンド(約18キロ)。
艦内のあらゆるところ、人間が生活し、服の洗濯を必要とする全ての場所から
集まってくる汚れた衣服の集積場であるここは、とにかく暑くて
汗まみれで仕事をしていた、と彼、ラックナーくんは述懐しております。

特にバッグを抱えて階段を上り降りするのは「リアル・ベア」
我慢できないくらい酷い仕事だったよ、ということです。
艦内のあらゆるところからこのバッグを集めてくるわけですから・・。

ドライヤー、乾燥機の中ではずっと白いシャツがぐるぐる回転していました。
一応確認のために触ってみたのですが、熱はありませんでした(笑)


ちなみに、アメリカの乾燥機は家庭用であっても基本巨大なので、洗濯物が
シワなく仕上がりますが、自宅に帰って乾燥機を使うと、
小さいせいでイマイチアメリカの時のようなパリッとした仕上がりになりません。
優秀な日本の白物家電ですが、乾燥機だけはこの点かなり不満を持っています。

この乾燥機はアメリカのコインランドリーにあるものの二倍くらい大きいです。

”毎日毎日山のような洗濯物にアイロンをかけていたよ。
一日に 4,750パウンド(2.3トン)の洗濯物がドライされてくるんだからね”

 

海軍では洗濯物を一つづつプレスするということになっていました。
しかし、2トン3千キロの洗濯物を全部手でやっているわけにはいきません。

そこで活躍したのが、このプレスマシーンです。
もっとも多いシャツは、ここにセットしてプシュー!とやれば
少なくとも細部以外はプレスすることができます。

ズボンもセットするだけでOK。

まあ、これを使うことそのものが結構重労働に見えますが。

今はシャツのプレス機は立体成型なので、この頃よりは楽になっているはずです。
それにしてもこんな大きなプレス機、事故はなかったのでしょうか。

先日プロ用のへアアイロンを使っていて、ちょっと先っちょを当ててしまい、
おでこを火傷してしまったわたしにすれば、なんだか嫌な予感のする作りです。

いやー、ヘアアイロンってね、ちょっと触っただけで火傷になるんですよ。
「ペチコート作戦」で艦長が上に座っただけでお尻に火傷してましたけど、
あれは絶対にあるあるだな、と今回実感しました。

これは「ランドリー・マングル」という機械です。

マングルなどという単語を初めて知ったわけですが、つまり洗濯ローラーのことです。
「三丁目の夕日」で洗濯機が初めてやってきたとき、横にローラーがあって
これで水を絞っていましたが、あれを英語で「マングル」というんですって。

その「マングル」使用中の写真。

基本大きなシーツやテーブルクロスを乾かすために使われました。
乾燥機よりも手早く水気を取ることができたのだそうです。

熟練のオペレーターならこれでシャツやパンツもプレスしてしまえたとか。

彼はプレス機の係だったデイビス君です。

”一度に三つのプレスを大急ぎでしなければならなかった。
おまけにとんでもなく暑いプロペラのところにそれを持っていかなきゃならない。
プロペラの振動が脚に伝わってきたよ”

かなりのつらい仕事であったようですが、ロバーツ君は

「何人かはここにずっとアサインされていたよ」

と言っています。
ずっとですか・・・それはひどいな。
彼は自分の元の配置に戻ることができるまでの90日間、
残りの日数を毎日毎日「カウントダウン」していたということです。

はあ・・・よっぽど辛かったんですね。

ここは袖章を付けたり外したりつけたり外したり(以下略)する部署です。

ここはランドリーよりちょっとは楽かもしれません。(ちょっとだけな)

艦内のミシン仕事というのは1日にかなりの数あるとは思いますが。

一日中レイティングバッジをつけたり外したり(略)というのも、
単純労働的な意味でかなり辛い仕事なんじゃないでしょうか。

マークをつけるのを待っているシャツなどがいくつも置いてありますが、
毎日やっていたらかなりうんざりしそう。

ニューズウィークの「AT WAR」はもちろん湾岸戦争のことでしょう。

こちら、洋服の手入れ全般をする専用の台がある部屋です。

”船の上で縫い物がどれだけ必要とされているかを知ったら皆驚くと思います。
ユニフォームが破れたに始まって、新しいレイティングバッジをつけたり、
ミッドウェイの旗の修繕なんていうのもありました”

1967年頃勤務していたホッジさんの回想です。

海軍をやめたら洋服屋さんに就職できたかもしれません。

こちら裁縫師。

”艦上の裁縫師というのは、ミッドウェイの中でも歩合で仕事をする
数少ない一人でもあるんだ。
ただしもらったお金は、水兵仲間の福利厚生基金に行くわけだけど”

なぜか自分では使わなかったんですね。
技術職なのに・・・。

”洗濯物は部隊に返されるとき、大きなバッグごと部屋に置かれているんだ。
で、その仕分けは自分たちでやるわけだが、
よくステンシルの名前が
消えて読めなかったりするんだこれが(怒)”

二人とも、すげー嫌そうな顔して洗濯物を仕分けてます(笑)

実際の量は決してこんなものではなかったでしょうが、一応どんな感じか理解するために、
バッグが「山のように」(小山?)積んで置いてあります。

 「階下にランドリーバッグを投げ落とさないこと」

「バッグを担いで階段を上り下りするのが一番辛かった」

という先ほどの水兵さんの話を思い出すと、この注意書きに笑ってしまいますね。
逆に何故ダメなのか、とも思いますが、もしかしたら下を歩いていた人に当たって
不幸にも負傷したとかいう事故があったのかもしれません。

 


続く。

 

 





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9 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
役員 (Unknown)
2018-04-22 17:53:20
自衛隊では、空母のランドリー係のように、自分の職務以外の仕事を割り当てられる人を役員と言っています。ちょうど町内会やPTAの役員みたいな感じです。

役員は自分のワッチ以外の時間にこなすので、やると余分に休みをもらえます。

遠洋航海のような長期行動の時に限っては洗濯係が出ますが、基本は自助努力です。
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アイロン、ザ・面倒くさい! (鉄火お嬢)
2018-04-23 08:18:28
ご自宅の乾燥機も横ドラム?シャツがパリッとしないのは、たぶん(シャツが重なったりせず十分広がる)空間の問題なので、シャツや薄物だけ少量で回すとか、まあ多分試されたとは思うんですが…近場の新しいコインランドリーには、自宅で洗った後大型乾燥機を使うために、外車から大きなランドリーバッグを下ろす奥さまがよくいます。
しかし、もし海上自衛隊が空母を保有しても、相変わらず艦長以下みんな自分で洗濯機を回してアイロンしこしこ掛けていそうですね。()確信
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アングルドデッキ部分 (お節介船屋)
2018-04-23 09:49:04
飛行甲板下がギャラリーデッキで居住区、食堂、CIC等がある部分ですがその下の階に降りた区画との説明ですがギャラリーデッキ下は1層の格納庫となっています。
写真でFR番号がFR220から227へと増加しており、舷側部分が極端に斜めとなっているので左舷で船底ではないので左舷側に張り出したアングルドデッキの下部分と推定しました。
それにしても外舷側に防熱材が張り付けてないので環境は良くないと思います。
冷暖房があるのか良く分かりませんが吸排気だけでは乾燥状況は良くないので冷房や湿気取りはあるのかな?
乾燥機やプレス機からは直接排気管が繋がっていますが。
ミッドウェー級は飛行甲板に装甲したの重量増と復元性能上水面からの飛行甲板高さがエセックス級の17mに比べ低く15mでありアングルドデッキ下は結構海水が洗うので防熱材を張り付けて熱の遮断を実施する必要があると思います。
ミッドウェー・ミュージアムの紹介は雑誌等もあるのですがここまで詳しく取材された事はありません。楽しく拝見させて頂いております。
参照海人社「世界の艦船」No776
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アイロン (Unknown)
2018-04-23 12:57:34
鉄火お嬢さんがおっしゃる通り、自衛隊の幹部、特に某大を出ている人はかなり長い間、自分でアイロンを掛ける習慣があるので、自分流が染み付いてしまい、偉くなっても他人には任せない人が多いと思います。

うちも家人がへたくそ(すぐに二重線になる)なので、自分のもお子達の制服も時間があって出来る時には私がやっていました。ズボンやワイシャツの袖がピシッとプレスされた時の快感はたまりません。
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Unknown (ケンケン)
2018-04-23 13:44:12
海自の場合母港に停泊中は時々(記憶違いで無ければ2~3日に一回程度)クリーニング業者(そこそこ美人)が来て制服やシーツを洗ってアイロンがけ(半ば専門らしく制服の折り目のルールに沿ってアイロン掛けしてくれるのでありがたい存在でした)してましたね
航海中は基本的には作業服だけだから制服は名前が分からないのですが制服を入れたりするケース(〇オヤマやハルヤ〇で背広を買うと入れてくるあれ)に入れてロッカーに入れてそのまま入港するまで半ば放置状態でした
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みなさま (エリス中尉)
2018-04-23 17:32:56
unknownさん
専属の係を置かず「役員」という形を取るのは、やっぱりミッドウェイの
カウントダウンしていた兵隊さんじゃありませんが、とてもではないけど
専門でそれだけやるにはキツすぎるからという理由からなのかもしれませんね。

>洗濯は自助努力
えっ、洗濯も自分でするんですか(ショック)
そういえば、アメリカの施設って、掃除を自分たちでしません。
学校ですら、生徒が掃除をすることは決してなく、専門の掃除夫を雇っています。
日本人のわたしは子供に掃除をさせないなんて、といつも憤懣やるかたないのですが。

で、軍艦であっても、自衛隊は自分たちの手でピカピカにするけど、アメリカ海軍は
専門の掃除夫(マネキンを見る限り皆東洋系)に専門に任せていたようなのです。
掃除=精神教育と考えるのはどうやら日本人だけなんじゃないでしょうか。

鉄火お嬢さん
アメリカ軍の士官はアイロンがけなんて絶対しませんよね。
「ワードルームメス」のシルバー付きお食事の様子などを知るにつけ、
自衛隊がいかに身分差のない軍隊かということがわかる気がします。

乾燥機問題ですが、いきなり乾燥せずに一度外にピンチで干して
生乾きになってから少量ずつ乾かしたりしていますね。めんどくさいですが。

まあそういうものだと諦めればなにも感じることはないのでしょうが、
アメリカで洗濯するにつけ、あまりにもパリンパリンに全てが一気に乾かせて、
しかも全くシワがないのを見ると、比較せずにはいられないんですよ・・・。

unknownさん
防大出海自出身の旦那さんを持つ知人は、完全に戦闘放棄してましたね。
「上手いし、わたしがいくら頑張っても勝てないので最初からお任せしている」
だそうです。

ケンケンさん
出入りのクリーニング業者に任せるという選択もあるんですね。それは良かった(笑)

制服を入れるあれ、娑婆ではガーメントケースと呼んでいます。
ところで練習航海ですが、季節がまたがるので、参加者は
夏冬それぞれのセットを一通り持っていかなければなりません。
ガーメントケースも一つどころではなく、彼らのロッカーはさぞぱんぱんでしょう。
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プレス (ハーロック三世)
2018-04-27 00:43:00
制服のプレスは私も自分でやります。
独身時代から自分でかけていたので、妻に任せるとプレスラインが「線路」になったりするのが許せません。

靴磨きも徹底的に光らせないと気が済まずやはり妻には任せません。
そんな私はよく考えると防大生のようです。

先日も江田島へ向かう息子と靴の磨きっこをしました。

私が自動車用ケミカルという裏技を駆使してエナメルのオペラパンプスのように光らせて見せたら、息子が感動して残らず持って行ってしまいました。
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磨きっこ(笑) (エリス中尉)
2018-04-29 23:28:27
自動車用ケミカルってなんなんだろう、と思って検索してみたのですが、
ボディ磨きのペースとかなんかのことですかね。
防大では金属磨きのことを「ピカール」と商品名で呼ぶそうですが、
もしかしたら息子さんの輸入した新兵器は、防大生にあっという間に広まって
そのうち「ケミカル」といえばこれ、みたいになっているかもしれません。
もしそうなればハーロック三世さんは教祖を名乗ってもいいと思われます。
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ケミカル (ハーロック三世)
2018-05-01 10:31:05
>ボディ磨きのペースト

通常通りブラッシングの後クリーニング剤で汚れを落とし、靴のつま先やかかとなどの硬い部分についた微細な擦り傷は、ピカールよりも粒子の細かいヘッドライト研磨剤で磨きます。
その後、養生クリーム、靴墨を塗って磨き、最後に「ポリメイト 」を使ってピカピカにします。
そうするとつるんつるんピカピカになります。
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