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「あきづき」カレー〜護衛艦「あきづき」体験航海

2017-02-24 | 自衛隊

体験航海、わたしたちが艦内探索をしている間にも
「あきづき」は佐世保から一路南に向かって進んでいきます。

艦橋付近にあった「走錨検知法」なるもの。

「走錨」ってなんですか、って話ですが、我々にはわかるようでわからないこの現象、

嵐や潮流などで船舶が受ける外力が錨と錨鎖の抵抗力やプロペラの推進力を上回ると
錨が錨鎖と共に引きずられる。
この時、錨が傾いたり反転現象によって把駐力が小さくなり錨が移動し続ける事を
「走錨」と言う。

とwikiにはあります。

一度、走錨状態になると錨の姿勢が正常に戻らなくなるので、
船舶を止めることは難しくなります。
嵐などの荒天時では、引きずっている錨と鎖揚錨機では引き上げられなくなり、
操船が出来ずに海難事故に至る危険性が非常に高くなるというわけです。

大変船にとって怖いことなので、体感的にそれを察知できるよう、
このように指導しているというわけ。

壁に靴跡はつけないようにしましょう。
って書いておかないと壁を蹴る人がいるんだな。 

朝乗艦したら最初に格納庫に案内されました。
観艦式の時のように乗客が使うために毛布が出してあります。

救難機材の入ったロッカーの前には防火用のスーツが出してありますが、
航海中、乗客に向けて防火作業の展示も行われていました。
(他のところをうろうろしていてたどり着けず見そこないました)

格納庫の中ではやっぱりこういうものに目がいってしまうものです。
「あきづき」就役時には最新型だった(今も?)ベアトラップ。

ASIST Mk.6という型番の着艦拘束装置です。

これもなかなかすごくって、この写真でいうと右側に当たる
「コ」の字の内側にはクロウ(爪)があって、
機体側のプローブをセンサーで感知するとクロウが飛び出して
プローブを摑まえるという頭のいい仕掛けになっています。

着艦するのはSH-60で、理論上は最大2機搭載することができます。

士官室で流れていた「あきづき」というDVD(あだちビデオ制作?)
では、このベアトラップがごおおおお!と動いているのが見られました。
実際に動かしているところを一度見て見たいものです。 

格納庫内部から見た飛行甲板。
飛騨側に見えているのは格納庫のシャッターを二枚に分ける柱。
この柱は跳ね上げて収納してしまうことができます。

こうしてみるとベアトラップの軌条が2条伸びているのがわかりますが、
「あきづき」型が最初に取り入れた方式なんだそうです。

ただし、こちら(右舷側)のベアトラップは開店休業状態?
噂では「ベアトラップは左舷側のみしか動かさない」ということです。

ということは、ヘリも2機は実際には載せないってことになりますね。 
どうりで写真でも見たことがないと思った。 

写真で気がついたのですが、二階部分に幕が張ってあるのは風除け?
それとも目隠し?

観艦式の時もそうですが、航行中一般人はオランダ坂には立ち入り禁止。
ここを坂にするのは、甲板を高くしつつ、入港作業を容易にするための工夫です。

転落防止柵に見える黄色いのは「フックアップ灯」。
他にも緑や赤のライト、甲板を照射する照明もあり、
これらは発着艦するヘリからの目印となります。 

「あきづき」型は格納庫が後部構造物と一体化しているのが特徴です。

右側にはLSO(発着艦指揮所)といって、ここから
ヘリの管制を行うブースがあります。
ベアトラップの操作もLSOシャック内部で行うとか。 

甲板の下には「オランダ坂」の下部分となりますが、ここにも
ハッチが設置してあって甲板下への乗降口となっています。

クローズドフェアリーダー上に掲揚された自衛艦旗が
穏やかな海を渡る風に吹かれてなびいています。
雲ひとつない空に翻る自衛艦旗はまことに美しいものです。
ちなみに自衛艦旗を降ろした後、旗竿は折りたたんで甲板に固定するのだとか。

この写真には三本のホイップアンテナが確認されますが、これは
ヘリの発着艦時には邪魔にならないように倒すことができます。 

左上に見えている島は大立島か小立島か・・・。 

さて、一通り外を見ているうちに昼食の時間となりましたので、
士官室に戻ることにしました。
壁にかかっていたこれはダメコン時に使う木材ですよね?

士官室に帰ってきました。

「すずつき」のデザインがいいですね。
わたしは「ふゆづき」の就役記念(進水記念と同じデザイン)を持っていますが、
こうしてみると他の三姉妹に比べて手を抜いた感は避けられません。

ちなみに「あきづき」「てるづき」「すずつき」は三菱造船。
「ふゆづき」だけが三井造船・・・・・あっ。 

メンタルケアは特に艦船勤務のような閉塞された職場では
一体になって取り組むべき問題です。

米海軍の施設にもいたるところにこのような相談員の顔写真が
掲示されていましたが、身近な上官なら相談しやすいということで、
ボランティアのような相談員制度を設けているのです。

ちなみにセクハラ専門の相談窓口も専門に設けてありました。

ここにもさりげなくあきづきにゃんこが海賊コスで登場。

「守秘義務守ります!もちろん批判もしません!」

お、おう・・・。

ハードデスクかなんか?
それより赤紙の「 想定搬出済み」の意味が色々とわかりません。

少し早めですが、すでにテーブルには食事の用意がしてあります。
実は鉄火お嬢さんにお話をいただいた時から、本日艦内でいただける昼食は
カレーであることを聞いており、それは楽しみにしていのですが、

あれ・・・?カレーじゃない・・・?

しかしこのお皿の手前の空間を見ているうちに意図がわかってきました。
エビフライとゆで卵はおかずなのだと。
今やカレーにはつきものの牛乳のパックも添えられています。

というわけで今回はカレーじゃねえええ!と絶叫せずに済んだ模様。

席に着くとカレーを自分で取りに行くように勧められました。
というわけでこちら、本日のメニュー、牛スジカレーでございます。

自衛隊の中でも海上自衛隊が特に食事が美味しいのは有名です。
確かに海自主催の艦上レセプションや基地での祝賀会など、
凝った料理が出され、しかも給養員が祝賀会席上で紹介されるなど、
三自衛隊の中でも海の食へのこだわりには並々ならぬものを感じます。

さらに海自は海軍時代からの伝統「金曜カレー」を踏襲、
さらにその食文化を進化させてきた結果、いつのまにか

「海上自衛隊=カレー」「金曜日はカレー曜日」

というイメージが広く人口に膾炙するに至りました。

体験航海に来た一般人の昼食に、金曜日でもないのに敢えて
カレーが選ばれたのは、ひとえに「あきづき」の心遣いでしょう。
そんな気持ちを踏まえ、心してこれをいただいてみました。

うーん・・・。

牛スジのカレーというのは初めていただきましたが、
長時間煮込まれているせいか、 こっくりとルーと馴染んでまろやか。
適度な中辛で、添えられた牛乳パックが強力な効果を発揮します。
ご飯は少し固めですが、このまろやかカレーには合っていると言えましょう。

「おかず」のエビフライはカレーの上に乗っけてエビフライカレーにするもよし、
そのままサクサクの衣を楽しんでもよし。

ゆで卵は、写真をご覧になればお分かりかと思いますが、
彩りの効果を与え、さらに食欲をそそります。

そして全てを食べ終わると、ちゃんとワッチしていた給養員が
デザートと食後のコーヒーを運んできてくれるという至れり尽くせり。

長テーブルの一番端は艦長の指定席です。

卓上には鉄火お嬢さんが調達したわたしたち連名でのお礼として
一日違いのバレンタインデーチョコレートを置いておきました。

「これを皆さんで」

とお渡しすると、艦長はご自分が取らずに皆に渡してしまうであろう、
という予想に基づいて、鉄火お嬢さんはそれとは別に

「熱き者」 

という刀をあしらった「つわもの向けバレンタインチョコ」も用意してくれたのです。

てっきり皆さんが揃ってから艦長が「いただきまーす」と
声をかけて食事をいただくのかと思っていたら、地本の方などが
先に食べ始めたので、わたしたちも食べ始め、それがほぼ食べ終わる頃、
艦長が着替えを済ませて入室してこられました。

大きなグラスに入れられたミルクは、艦長のご所望でしょうか。

その後お話を伺いながらテーブルを囲んだのですが、

「とにかくここは食事が美味しい。何を食べても美味しい。
しかも、今まで全く同じメニューが出てきたことがない」

つまり、金曜の恒例カレーも毎回違うということですか。
「ぶんご」を見学した時も、当時の副長が

「食事が美味しいので今とても雰囲気がいい」

とおっしゃっていましたが、やはりこれは士気も上がりますね。
「そうりゅう」型潜水艦でも

「うちの食事はとても美味しい」

と胸を張っていましたし・・・。
検索したら「美味しくないフネもあるにはある」ということですが、
今まで見て来た限りでは、圧倒的に美味しいフネが多数派です。
 

この日は体験航海ということで、11時くらいには乗組員の皆さんは
科員食堂前に並んでいたのですが、横を通りすぎながら、
鉄火お嬢さんが彼らに

「どんなメニューが好きですか」

とインタビューしたところ、(こう臆せず声をかけられる人が羨ましい)

「カレーです」「カレーです」「カレーです」

皆さんやっぱりカレーがお好きなのね。
「そうりゅう型」潜水艦の皆さんもカレーの日は朝から楽しみだと言ってましたっけ。

「カレー以外では?」

「たくさんメニューがあって毎日違うのでどれとは言えませんが、皆美味しいです」


上から下までこれほど熱い支持を集める「あきづき」給養員長ってどんな人?
と思っていたら、なんとこの後、長崎に到着して下艦したとき、
三菱造船所の門まで
案内してくれたのが噂の給養員長でした。

手が空いている時には配置に限らずいろんなお仕事をするんですね。

詳細は忘れましたが、この給養員長がいた前のフネは
佐世保のカレーグランプリで優勝したとかいうレジェンドなんだそうです。


さて、我々は食事をしながら艦長の前歴などについてもお聞きし、
(こちらについては鉄火お嬢さんのブログに詳しいのでそちらをどぞ)
和気藹々のうちにランチタイム終了。

それにしても前の「ぶんご」の群司令とのお食事の時にも思いましたが、
自衛隊の人ってとにかく食べるのが早い。

向かいの地本の方はさっさと二皿目のお代わりを済ましていましたし、
艦長もずっとわたしたちと会話を続けながら、あっという間に食べ終わり、

「それでは現場に戻ります。
お二人とも、後で艦長室をご案内しますのでいらしてください」

とにこやかにいいつつも颯爽と去って行かれました。 

さて、それではわたしたちも行動開始だ!

 

続く。 

 



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1 Comments

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走錨 (Unknown)
2017-02-25 06:31:10
船の錨はクルマで言うパーキングブレーキです。船は岸壁にもやうか海上で錨を入れる以外に止めることは出来ません。

走錨とは、荒天時に錨を入れているにも関わらず船が流される状態で、エンジンは切っていて、パーキングブレーキを入れているにも関わらず、クルマが止まらないに等しい状態で、極めて危険です。放っておけば座礁する可能性があります。

台風避泊の際に台風の直撃を食らうとこのような目に遭うことがありますが、上甲板は常時波が洗う状況なので、まともに甲板作業は出来ません。気を抜けば舷外転落の危険性大です。

走錨を検知したら、まずは主機械(エンジン)を起動して、打ち上げられないように艦位(位置)を保持しますが、それでも流される場合は、錨鎖を切って錨を捨てて緊急出港(捨錨)します。

錨は高いし、簡単に作れるものではないので、荒天の錨泊時にはあらかじめ捨錨が出来るように錨鎖にブイを括り付けておきます。捨錨した後、穏やかになれば、そのブイを目指して錨を回収します。

実際にここまでの状況になることは滅多にないので、手順を忘れないように時々、訓練しますが、括り付けたはずのブイが実際にはちゃんと付いていないまま、捨錨してしまったことがあります。

錨鎖が海に消えてしまったにも関わらず、涼しげな顔でブイが上甲板に残っているのを見た時、前甲板と艦橋にいる総員が残念な気持ちになったのは言うまでもありません。甲板作業員のうち、素潜りが出来るものは直ちにウェットスーツ着用となりました(涙)
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