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テロ容疑船制圧訓練〜海上保安制度創設70周年記念観閲式

2018-06-17 | お出かけ

海上保安庁の観閲式に続く訓練展示、まず「人命救助」から始まりました。
海保の任務は「海の安全を守ること」ですが、同時に警察組織でもあるので、
次なる展示は「取り締まり」のための訓練です。

この写真もやはりKさんから頂いたものですが、使用許可をいいことに
ちゃっかり冒頭に持ってくるのだった。

しかしすごいなあ、「だいせん」からはこんな角度で見えたのか・・・。

その前に、先ほど海面から救出されたケミカルタンカーからの転落者を
ヘリコプターが洋上で巡視船に収容するため着艦を行います。

甲板に立ち着艦の指示を行う職員。
(つい隊員、と書いてしまいがちですが、よく考えたら彼らの所属は隊じゃない)
足を前後に開く立ち方一つとっても自衛隊とは違います。
こちらはダウンウォッシュで後ろによろめくことを警戒している感じ。

旗を持たず、(屮゜Д゜)屮カモーンという感じで誘導を行なっています。

着艦を行うのは「はまちどり」。
先ほど二人目の転落者を救助したヘリコプターです。

誘導員が⊂(^ω^)⊃ になっているので、これがおそらく最終着陸態勢。

海保の航空機には名前がついていますが、同じ「はまちどり」でも
1号と2号があったりしてオンリーワンの名称ではありません。
ちなみにこのヘリは「はまちどり2号」の方です。

着艦と同時に甲板でしゃがんで待機していた4名が、
救助者をヘリから降ろすために走って駆け寄っていきました。

4名で一人を手早く引き摺り下ろし、甲板で担架に乗せて運びます。
船橋の上階では放水ノズルのところに一人が配置しています。

全ては航行しながら行われ、搬送を終わったヘリはすぐに離船しました。

「とさ」とヘリコプターに我々が目を奪われている間に、船列に対して垂直に、
巡視船とゴムボートがすごい速さで近づいてきました。

なんだなんだ、悪いボートに巡視船が追われているのか?

追われているのはCL「はまかぜ」
船底が完璧に見えているこの写真からもそのスピードがお分かりでしょう。

海賊のボートに追われる一般漁船という設定かな?

・・・と思ったら、左舷に海賊マークが。
なんと追われている方、「はまかぜ」が悪役だったのです。

このストーリーはですね。

まず今上空に見えている巡視ヘリが、「容疑船」を発見しました。
何をやらかしたか知りませんが、海賊マークをつけているくらいだから
麻薬や武器の密輸とか、密漁とかを常習的にやっている船なんでしょう。

そこで、連絡を受け、現場に急行してきた複合艇2隻が
容疑船の「周回規制」を行なおうとしている←イマココ、という状態です。

複合艇のうち一隻は赤の「とまれ  STOP」という旗を揚げています。
ここで大人しくそれを見て止まってくれる船は滅多にいないと思いますが。

で、この複合艇がすごいんだよ。

硬化ゴムボートなので波をボンボン跳ねながら急ハンドル切ったりするんだけど、
よくまあ乗ってる人がこぼれ落ちたりひっくり返ったりしないなと思うくらい。

何が凄いといって、この人たち訓練だけでなくて、時々
こういう捕り物を実際にやってるってことなんですよね。

例えば去年(平成29年度)海上保安庁が送致した海上犯罪は
船舶の無検査航行や定員超過などの法令違反こそ全体の44%ですが、
34%は密漁などで占められています。

国際犯罪組織が関与する密輸、密航を水際で阻止するため、
厳格な監視・取り締まりを実地している、その最前線に立つのが
この複合艇の乗員です。

このテロ対策訓練で複合艇に乗り込んでいるのは特別警備隊、
通称「トッケイ」。

訓練そのものを「高速機動連携訓練」と位置付けています。

逃走する容疑船の周りを、2隻の複合艇は円を描きながら追い詰め、
警告しながら(というか威嚇かな)足止めを試みます。

どうですかこの機動。
首都高をかっ飛ばして日頃お巡りさんに迷惑をかけているルーレット族の皆さん、
(最近は若者の車離れで希少種だそうですが)今からでも遅くない。
心を入れ替えて一から出直し海保に入り、厳しい訓練に耐え特警になれば、
思いっきり注目を浴びながら合法的に暴走ができるぞ!

おまけに国民からは感謝され、女性からはモテモテだ。
嘘だと思ったら、ちょっと検索してごらん?

「どうやったら海保の人と付き合えますか」

「どこで海保の人と知り合えますか」

こんな切実な女性の質問が山ほど見つかるから。
まあ、この傾向は本当のところ「海猿」の影響なんですが、
どちらにしてもかっこいいんだから細けえことは言いっこなしだ。

複合艇が不審船の周りをぐるぐる回っているうちに、
監視艇と警備艇が駆けつけてきましたよ。

いやーこれ、いくらなんでも追われてる方はかなり怖いよね。

この交差の瞬間を見よ。

そして向こうからは、「みやかぜ」「あおみ」「みらい」が接近中。
なんと横浜税関の「みらい」まで捕り物に加わるのか。

ところがですね。
こんな追い詰め方をしていながら、次の瞬間、

「容疑船、規制の間隙を突いて逃走」

んなアホな。
こんな周りをぐるぐるやられてて、どこから逃走するというの?

という気もしますが、とにかくそういうシナリオです。

ここまでがテロ容疑船捕捉・制圧訓練の第1段階です。
ここで複合艇は停船命令を下す役割を船艇に交代。

正面からやってくるのが警視庁の警備艇「あおみ」

右側が「みやかぜ」、その向こうのグレーが
千葉県警本部の警備艇「暴走」じゃなくって「ぼうそう」です。

「ひりゆう」の姿が見えますが、ただ目立っているだけで
本訓練に参加しているわけではありませんので念のため。

 

この写真、アップにしてみると、右の複合艇の全員笑ってたりします。

「頑張ったけど間隙を突いて逃げられちゃったってよ〜」

とか?

「今日の走りもキレッキレだったっすね艇長!」

とか?

んなわけあるかーい!

逃げられたことになっているとはいえ、まだまだしつこく
周りをぐるぐるしている複合艇。

複合艇の上の様子がよくわかる写真。
操縦しているのは後ろで立っている人だと思いますが、
立ってる人はもちろん、全員シートベルトしてないように見えます。

こちらKさん写真。
もしかしたら複合艇、2隻固まってますか?

 
 
逃走を続ける容疑船に対し、まず「みやかぜ」が警告を行います。
船体の警告は日本語で「停船せよ」になっていますが、相手は一向に止まりません。
 
もしかしたらこの容疑船、日本語が通じないんじゃないの?
簡体字かハングルで表示してあげたほうがいいと思う。
 

それでは警告レベルをあげるしかあるまい。

というわけで、おおきく振りかぶって・・・・・・

えいやっ。

警告弾を投擲しました。

うーん、この飛距離では警告になるかどうか。
本当はもっと接近して投げるんだよね?

手投げでの警告弾にも応じないので、今度はヘリから同じものを投下。
空中の投擲された警告弾が見えますか?

 警告弾が容疑船の遥か頭上で炸裂!
うーん、これでは容疑船は警告されていることに気がつかない可能性も・・・。

本番ではもっと強力なのをどかーんってやるんですよね?

度重なる停船警告と監視網をかいくぐった、凄腕船長が操る容疑船。
見るからに怪しい男が銃を持って出てきました!

すげー。(棒)

一発で「みやかぜ」の船橋前に銃弾を命中させ、それが炸裂。
しかし、彼は日本国の警備組織がこの攻撃をもって

「専守防衛遵守済み」

となし、ここから先は

「やられたらやり返す」

つまりこれが正当防衛射撃開始の合図になることを、
知る由もなかったのである。(たぶんね)

ほーら言わんこっちゃない。
ここぞとばかりに巡視船から正当防衛射撃という名のフルボッコが始まりました。

同じ瞬間を後方から。

「みやかぜ」からは容赦無く正当防衛射撃が浴びせられます。
「停船せよ」という命令に従うまでそれは止まることはありません。

もし停船しなかったら、ついついオーバーキルで沈めてしまわないかって?

そんときゃそんときよ!

流石の海賊船も、オーバーキルだけはご勘弁。
というわけで、迫り来る全船艇の前に代表者が出てきて降参ポーズ。

「みやかぜ」船上には、保安官が三人、
武装して今にも強行接舷し乗り移る構えです。

ところで警視庁の船は、こういう時には制圧には参加しないんでしょうか。

あれ?

一瞬目を離した隙に、いつの間にか容疑船に保安官が移乗して
すでに容疑者を制圧してしまっている・・・・。

この時、アナウンスでは

「特警ではこのような場合に備え、厳しい移乗、制圧訓練を行なっています」

というような説明がされましたが、目を皿にして見ていても、
また写真をくまなく探しても、強行接舷はしていなかったと思います。


もしかしたら、この制圧している職員、容疑船の中から出てきてたりする?

まあ、観閲が行われ、船艇の列が巻き起こす波が高い中での接舷、
移乗には、とても限られた観閲時間内では収まらないくらい

時間もかかるし、また危険も多いということで省略されたのでしょう。

たとえていえば、テレビの料理番組で、

「そしてこれを煮込みます。1時間煮込んだものがこれです」

って出来上がった段階のものを出してくるようなものですね。

ちなみにこれがKさんの「だいせん」から見たお縄の瞬間。
すごいシャッターチャンス!

それに、この日はどうやら本当に移乗しての制圧をやっているっぽい。
前日と違って警備艇が強行接舷している様子です。
やっぱり日曜日は安倍総理が観覧していたからですかね。

そして海賊船は「はまかぜ」ではなく「きりかぜ」だったことがわかります。

というわけで、監視艇として参加した横浜税関の「みらい」。
訓練を終えて向きを変えました。

制圧された「はまかぜ」を先頭に、全参加船艇、これをもちまして退場です。

お疲れ様でした〜!パチパチ(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ


続く。

 

 



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2 Comments

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正当防衛 (Unknown)
2018-06-17 05:04:15
特別警備隊はさすがに練度が高いと思いました。被疑者を確保するお写真では、一人の被疑者に対して三人で、被疑者のリーチに入らない距離を取った上、互いに直角となる方向から銃を構えています。

もし、一つの方向からだけ構えていると、被疑者がよく訓練されていれば、その方向に体当たりを食らわせれば、逃亡することが出来ます。

法執行機関である海上保安庁はちょっとまどろっこしいくらい手順を踏まねばならず、被疑者から先に撃たれない限り、撃ってはならない訳ですが、その根拠は警察官職務執行法の第7条(武器の使用)にあります。

警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。

実は、自衛隊法第88条(防衛出動時の武力行使)にも同じ「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において」という文言が登場します。

(防衛出動時の武力行使)
第八十八条 第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。
2 前項の武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。

法律の専門家ではないので、間違っているかもしれませんが、たとえ憲法を改正しても、この条文を改めない限り、自衛隊も相手から先に撃たれないと反撃出来ないのではないかと思われます。どうなんでしょう。

誰かが先に血を流さないと反撃出来ない。現場からしたら、憲法改正のようにハードルが高いものより、まずこちらを改正して欲しいような気がします。
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「はまかぜ」と「みやかぜ」 (お節介船屋)
2018-06-17 10:17:29
CL50「はまかぜ」とCL174「みやかぜ」は同型艇です。平成6年と平成30年竣工で四半世紀の差がありますが両艇とも隅田川造船製です。「みやかぜ」は最新の168番艇です。外観は余り変化はないように見受けられますが、幅が4.3mから4.5mとなり、防弾も考慮され放水銃が固定から可搬式に代償重量のため変更になっているようです。
公称船型20メートル型、総トン数23トン、20.0m、デイーゼル2基、2軸、1,820馬力、速力30kt「はまかぜ」5名、「みやかぜ」6名

RHIB
複合艇とも呼ばれますが、海保は複合型ゴムボートと呼んでいます。4.9m、6m、7m、11m等とあり、軽量で巡視船にもクレーンで簡単に搭載、降下出来る事から巡視船艇の標準装備となっています。後部に浮体がついており、転覆時に復元出来るよう考慮されていますが、海保が搭載艇としている高速警備救難艇のように完全に元に戻る、復原力180度ではありません。よって海保はこの両艇を巡視船の搭載艇として併用しています。

フランスのゾディアック社が最大手です。
Wikiを貼り付けます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A4%87%E5%90%88%E8%89%87
ただ軍用仕様で価格が高く、ある海自の方がプログにあげられていますが、使用上損傷等も多く、メンテナンスも派遣費を含め高いので困ったそうです。
国内では仕様が違うようですが、「ヤマハ」「ニシエフ」等が製造しており、価格は約半分くらいだそうで、メンテナンスを含め、海保は国内メーカーを採用していると思います。
考え方は色々ありますが、日本製は保証を含めメンテナンス対応は非常に良くて、海外製品が輸入価格が一緒でも後々の事を考えれば自明の理ですが、現代の会社の浮き沈みは激しく、数十年単位では見通す事は困難となってきました。
特に船等は塩害の影響は想像以上でメンテナンスを良く考えておかねば、腐食等が進んだり、可動しなくなったりで使い物にならない事になります。RHIBもGFRPと硬質ゴムとの組み合わせであり、動力も船外機であり、各々の補修は確立されてはいますが?の面もあるのでしょう。
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