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サブ・フェクトI〜シカゴ科学産業博物館U-505展示

2023-05-08 | 博物館・資料館・テーマパーク

さて、ハンターキラータスクグループによるU-505の捕獲と、
Uボート乗員たちの捕虜になるまで、その後の待遇について書きました。

ここからは、展示の順番に従って、U-505の解説をしていきます。



ここからは、潜水艦の重に外観まわりのスペックと
その機能などの紹介となります。

「サブ・ファクト」

Underseeboot 505 Typ IX C

全長:76.5m
高さ:9.5m

乗員:54名
重さ:750トン

最大深度:230m
ビーム:6.4m

吃水:4.70m

最大速力:
33.7 km/h; 20.9 mph 海上航走時
13.5 km/h; 8.4 mph 潜航時

航続距離:
47.450km 水上
217km 水中

■ 艦首部分



【艦首デッキ】



軍艦の甲板は松の木の素材が一般的でした。
潜水艦の甲板を定義するなら
「外側を移動するための安定した水平なプラットフォーム」
となります。

ここに木材を使うことでボートの重量が軽く抑えられます。

表面は柔らかい松材をカーボリニウム、またはウッドタールで塗装しました。
これは防腐剤としてのものですが、黒く塗ることで
航空機が上空から潜水艦を見つけにくくするカモフラージュとなります。

【魚雷チューブ発射ドア】


展示ではまさに海中で魚雷が発射された瞬間を再現していて、
どこが発射ドアかとてもよくわかるようになっています。


U-505には6つの魚雷発射管がありました。
前方の左舷側、右舷側に各2つずつ、計4本、
後方には両舷に2つずつです。

魚雷室の乗員は、艦長が魚雷発射の命令を出す直前に
これらのドアを開けます。
すると、圧縮空気ピストンが魚雷を発射し、
魚雷は次に自走式となって目標に向かいます。

【前部潜水舵 Forward Dive Planes】



俯瞰図と断面図の潜舵の位置が示されています。
特に右側の潜舵の形が、これを見ただけでは不可解ですね。



というわけで、この画面上方の潜舵をご覧ください。
今までアメリカ海軍の潜水艦の潜舵を見てきた目には斬新です。

この潜舵の前にあるバーはなんなのでしょうか。



横から見たところ。

U-505の潜舵は艦体外側に1基ずつ付いています。
潜舵は水中で深度を変更したり、
艦長が指示した深度を維持するための装置です。

乗組員は、コントロールルームのダイビングステーションから
このダイビングプレーン、潜舵を調整しました。

そして、潜舵の前にある湾曲したバーの正体ですが、
なんと破片などから潜舵本体を保護するためのガードなのです。

アメリカ潜水艦の潜舵にはない工夫ですね。

【ハイドロフォン】



断面図によると艦体の下の方にあります。

ハイドロフォンというのは聞き馴染みのない言葉ですが、
要は水中聴音機です。
ソノブイみたいなものと考えればいいかもしれません。

音が水中では遠くまで届くという原理を利用したこの機器ですが、
潜水艦は水中マイクやこのハイドロフォンを使って敵を検出しました。

U-505には上の図の二箇所に水中聴音機が備わっていました。

最初に設置されたのは、前進潜舵の上にある

Gruppenhorchgerätグルッペンホルヒゲレート
(集合型聴音装置)

で、その後、ボックスキールの前部に追加されたのが

Balken Gerätバルケンゲラート =Balcony Apparatus
(バルコニー聴音装置)

という。集合型の改良タイプで効果的なパッシブソナー水中聴音機でした。
U-505はこのバルコン・ゲレートを採用した最初のUボートの一つであり、
U-505が捕獲されたことによって、連合国側は
最新のUボート技術に関する重要な情報を得たことになります。

■ 艦体中央部



【魚雷装填ハッチと装備】

U-505は最大22発の魚雷(3,500ポンド)を搭載することができました。
出航前に乗組員はハッチから魚雷を搭載します。(写真)

一部は魚雷室に保管されますが、残りは
メインデッキの下の耐圧チューブに保管することになっていました。

海上でこの保管チューブから積載ハッチに移動するためには
小さなクレーンを起こして甲板の下から魚雷を回収し、
積載用台車を使って行うことになっていました。

【水密救命艇用コンテナ】



具体的にどこにあるか見ることはできませんが、
甲板の左舷寄り、魚雷装填ハッチのすぐ近くには、
救命艇を格納している水密式のハッチがありました。

ギャラリー大佐率いるタスクグループに攻撃された後、
U-505は損壊して浮上し、総員退艦が行われました。

一部の乗組員は、一人乗りの膨張式救命いかだを使用しましたが、


一人乗り

他の乗組員は、この水密コンテナに格納されていた
25名乗りの膨張式救命艇を展開するために、
全員が前甲板に駆けつけました。


25人乗り

しかし、彼らは全員が筏に乗らず、負傷した艦長、
ランゲ大尉を真ん中に寝かせるため、20名もの乗組員が筏に乗らず、
海に浸かって救出されるまでの間船端につかまっていました。

アメリカ軍に救出される可能性などあるかどうかもわからないのに、
これは何とも胸を打たずにいられない話です。
映画「Uボート」でも描かれていたように、
どこの国でも、特に戦時中の潜水艦乗員の仲間意識は
ある意味血より濃い側面があったのかもしれません。

【アンテナ】



セイルの端から艦首まで張られたラインがアンテナです。



U-505のアンテナには二つの目的がありました。

第一に、それは潜水艦基地との間で無線を送受信するための
高周波無線アンテナとしての役割。
そして第二は、網やその他の危険な物体が
外から司令塔に巻きつかないようにする防汚装置としての役割でした。

写真はわかりにくいですが、司令塔の上から見張をする乗員の前を
艦首までつながっていくアンテナが写っており、
もう一つは三方から艦首に伸びるアンテナが確認できます。

正面すぎて見にくいですが

【スプレー&ウィンドディフレクター】



まず、中央の写真をご覧ください。
この5名の乗員たちは、Uボート航走時に見張を行うメンバーです。

見張りに支障をきたさないように、Uボートには
波飛沫が司令塔にかからないようにするため、あるいは、
司令塔の側面と見張り場所の頭上に風をまっすぐ向けるための
スプレー&ウィンド・ディフレクタープレートが装備されていました。


セイルの端から垂れ下がるようにかぶさっている部分です。
ちょうど正面の部分にプレートがありませんが、
これはタスクグループの航空爆撃の際吹っ飛ばされました。

司令塔の周りにもいくつかの弾痕が確認できます。

この剥がれたプレート部分は見つかっていません。

【磁器コンパス収納所】


U-505の磁気コンパスは、制御室ではなく甲板に設置されていました。
写真にも写っているように司令塔の根本に出っぱっている部分です。


司令塔の根本をごらんください。



これですね。

わざわざ外付けした理由は、潜水艦の鋼製船体の
妨害的な磁気効果から装置を保護するためです。

しかし、さすがはUボート、精巧なプリズムとミラーの配置により、
乗組員は制御室から磁気コンパスを読み取ることができました。

磁気コンパスは、電子ジャイロコンパスのバックアップとして機能し、
大変効果的でしたが、電気的な故障時には使用できませんでした。


次は艦体中央部からです。

続く。



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1 Comments

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潜舵 (お節介船屋)
2023-05-09 15:05:52
Uボートは艦首船底に設置されていますので保護のためガードが付いています。
これは出入港や岸壁係留で当てて損傷を防ぐためです。
なおこの水中潜舵の保護フェンダーは大きな抵抗源であったので水中高速型のⅩⅪ型は水線上に上げ、旋回格納式とされました。

通常は艦首上部に設置しています。
旧帝国海軍は岸壁での係留や荒天での波浪での損傷を防ぐため使用しない係留時や水上航行では90度回転させ、船首内へ格納していました。
米海軍ガトー級等は90度上方に折りたたみ格納していました。

現代の潜水艦はセイルに設置か艦首上部に格納可能で設置されています。
特異な設置は英海軍原子力弾道ミサイル潜水艦「ヴャンガード」級と原子力攻撃潜水艦「アスチュート」級が艦首上部に出っ張って設置されたままです。

>一部は魚雷室に保管されますが、残りは
>メインデッキの下の耐圧チューブに保管することになっていました。
大部分は魚雷発射管室で予備数本が上構上の耐圧格納筒に保管でⅨ型が何本か記述がないのですがⅦ型が艦前後に2本ずつ計4本でした。
なおこの予備の魚雷が爆雷攻撃で被害が続出しました。

>アンテナ
セイルから艦首尾にそれぞれ展張してあり、ジャンピングワイヤーとも呼ばれ、呼ばれていました。

セイルに画かれた帆立貝の貝殻は1943年12月以降4代目の艦長で描かれていました。前3代は各々違う紋章だったとのことです。

>そして第二は、網やその他の危険な物体が
ジャンピング・ワイヤーとも呼ばれていました。

>見張り場所の頭上に風をまっすぐ向けるため
セイルに当たった風を上向きとして艦橋上を真っ直ぐ抜ける風を防ぐ遮風板と呼ばれていました。
この下側にあるセイル中段の出っ張りは波除けと呼ばれていました。

参照海人社「世界の艦船」No471,567、791、926、949
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