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映画「Here Come The Waves」(WAVESがやってきた)2

2024-09-07 | 映画

第二次世界大戦時のアメリカのWAVES勧誘映画、
「Here Come The WAVES」、二日目です。


ジョン・キャボットを責任者、ウィンディをアシスタントにした
WAVES勧誘のためのコンサートの企画が進められていました。

そこにやってきたスージーは、嬉しさのあまり、ウィンディに
この計画のためにジョンを騙って嘆願書を書いたことを言ってしまい、
「ダグラス」を降ろされて不満だった彼は、彼女に腹を立てます。



しかも、スージーからローズマリーとジョンが接近していると聞かされ、
ローズマリーを好きだったウィンディは、
彼女にウソを言って、ジョンの印象を悪くさせようとします。

「彼は本当は艦に乗りたくなかったんだ。
なぜって海の上には女の子がいないからね」

「信じないわ」

「僕は本人から聞いたからね」




これを聞いて、ローズマリーは

「誰かが僕を嵌めて艦から追い出し、この任務に就かせたんだ」

と言うジョンの言葉をもう信じられなくなってしまいました。



そして二人は「ダグラス」を揃って降りることになりました。
昨日入隊したと思ったらもう下士官になっているのはさすが映画。



彼が指揮を執ってプロデュースした最初のショーは、
空母USS「トラバース・ベイ」のハンガーを使って行われました。

この「Traverse Bay」はもちろん架空の空母です。
ハンガーなので、画面の手前には航空機の翼が見えています。


観客は海軍軍人ばかりのはずなのに、今更勧誘色があからさま。


で、これが、この映画が後世の一部から「糾弾」される問題のシーンです。
ジョンとウィンディは顔を黒塗りにして黒人の郵便屋に扮し、

「Ac-Cen-Tchu-Ate the Positive」

という、日本では無名ですがアメリカでは何度もカバーされ、
スタンダードナンバーのようになっている曲を歌い踊ります。

タイトルは

「Accentuate the Positive」
(ポジティブを強調=ポジティブでいこう)?

Ac-Cent-Tchu-Ate The Positive - Bing Crosby & The Andrews Sisters (Lyrics in Description)

フレーズになんだか聞き覚えがある!と言う方もおられるかもしれません。
それくらいキャッチーなメロディです。

Clint Eastwood ~ Ac-cent-tchu-ate the positive

クリント・イーストウッドが歌っているバージョン。
決して上手くありませんが、クリント好きだから許す。というか(・∀・)イイ!!

内容を一言で言えば、


「何事も積極的に、どっちつかずになるな」

どっちつかずの人のことを「ミスター・イン・ビトウィーン」と言ってます。

ハロルド・アーレンとジョニー・マーサーという、
知っている人は誰でも知っているゴールデンコンビの曲だけあって、
1945年度のアカデミー優秀音楽賞を受賞しています。

(戦時中でもアメリカって普通にこういうことしてたんですね。余裕の違い)

ただ、この映画のシーンについては、当時の流行りに乗って
顔を黒塗りしてしまったことが祟って、近年では大変不評です。


「1940年台だから許された」

という感想もありますが、それをいうなら日本では、1980年台にも関わらず
顔を黒塗りにした「シャネルズ」というバンドがあってだな・・・。



ジョンは自分の「潔白」(好きで『ダグラス』を降りたのではないこと)
を証明するために、自分のサインが(スージーによって)偽造された書類を
ローズマリーに見せて誤解を解こうとしていました。

スージーは、
彼がローズマリーに見せる前に書類を奪取しようとします。
姉が見れば、筆跡で書類の偽造をしたのが自分だとバレるからです。

ウィンディに唆された奥の手として、彼と一緒に甲板から海に飛び込み、
どさくさに紛れて書類を奪うつもりをしていたスージー。


ローズマリーを待っていたジョンに密着するためキスをお願いしたところ、
流れとはいえ、あっさり応じてくれるではありませんか。

(すかさず『深い意味のないただのキスだよ』と念を押すズルい男ジョン)

熱烈なファンだった彼女は、隙を見て書類を奪うのに成功しますが、
憧れのアイドルにキスされて一瞬気を失い、



ジョンが去ったあと、海に落下してしまいました。

「Man Over Board ! (人が落ちた)」

さすがは海軍、瞬時にあちこちからMOBの声がかかります。
もし本当に空母の甲板から落ちていたら、もっと大事になると思うけど。

近くにいたウィンディがMOBに応じ、救助に飛び込んでびっくり。

「スージー!何してんだこんなところで」

ジョンから体を張って奪った書類は、海に沈んでいきました。



書類がスージーに奪われたことに気づかないジョンは、
ローズマリーに見せようとしますが、

「あれ・・・?誰かに盗られたかのな」

「・・・もういいわよ」


ここは海軍航空基地管制塔。
WAVES勧誘映画ですから、たぶん本物です。


ローズマリーは管制官としてここに配置されていました。
有線によるアナログな通信や、管制塔から発光信号を送るなど、
この頃のシステムでの管制塔の様子が興味深いです。

中でも、(おそらく発進する)航空機への通信の中に、

「Anchor away」

と聞こえるのですが、海軍では航空機に対してもこれを言うんですね。

今現在でもそうなんでしょうか。



任務があるからショーには参加しない、と友人のルースにいうローズマリー。
その理由は・・・明らかです。



そこに空気読まないことでは天性のスージーがやってきて、

「ジョニーが歌を皆わたしに歌わせてくれるって!」

暗い顔をいっそう曇らせるローズマリー。
しかしルースの奨めでショーが行われるニューヨークに行くことにします。



楽屋でスージーはたまたまローズマリーと同じ髪のカツラを見つけ、
冗談半分で被ってみました。



茶色い髪のスージーに驚いたウィンディは、
またまたとんでもないことを思い付きます。



ローズマリーのフリをして、ジョンを失望させる作戦発動。
飲み物をローズマリー(と思っているが実はスージー)に勧める彼に、

「ここだけの話、ジンジャエールなんかつまらないわ」

びっくりしているジョンの前でボトル一気飲み。
(中身はウィンディが用意したお茶)

思いっきりぷはー!とやってから、

「もう一杯(another nip)やってもいい?」

「・・・Nip?」

この言い方にはかなりドン引きのようです。

多分かなり下品な言葉なんでしょう。



そしてジョンがこっそり見ているのを意識しつつ、
ウィンディと(間に手のひらを入れて)熱いキス(のふり)を・・・。



当然ショックを受けるジョン。



ウィンディはパーティ会場にいた本物のローズマリーをスージーだと思い、
さっきの続きをしようとして引っ叩かれております。


失意のジョンは、ショー直前、「ダグラス」が出航することを知ります。
何とか自分を乗せてくれるように頼むのですが・・。


彼の企画した今宵のショーは、

「もしウェーブがセーラーみたいだったら」
"If WAVES Acted Like Sailors"


WAVEなのに水兵みたいな喋り方や掛け声、腕に彼氏の刺青をしていたり、
港港に男がいる、と自慢したり・・・。



彼女らの集うバーに掛かっている絵は半裸の男性が寝そべる姿。
バーテンダーもよくよく見れば女性です。


そこで歌われるのが、

1944 June Hutton - There’s A Fellow Waiting In Poughkeepsie

「ポキプシーに私を待ってる男がいる」

ポキプシーはニューヨークとアルバニーの間にある都市ですが、
響きが面白いせいか、いろんなシーンで引用されます。
(『アリー・マクヴィール』のジョン・ケージ弁護士の口癖とか)

寸劇の内容通り、女性なのに水兵のセリフのような歌詞です。

ポキプシーで待っている男がいる
彼はとても優しい
(略)
それとは別にポモナで待っている男がいる
(略)
そして、デイトナでも一人
(略)
でも、もしあなたがわたしの手を握ってくれたら
みんなわかってくれるわ

わたしがただのジプシーだと思わないで
でもわたしはあなたを正したいの

ここからは、本物の女性ではなく水兵のセリフになります。

ビロクシで俺を待つWAVEがいる
結婚できなきゃ死んでやると言ってくる
もし信頼できる狼を見つけたら代理結婚させてやる

ウォーキガンで待つSUPER(女子海兵隊)がいる

彼女は他の女と一味違う
名前はレーガン
俺はその名を胸に刺青している

ハッケンサックにはWAC
ポンティアックにもWAC
至る所に

中にはボビー・ソックス(グルーピー)みたいなのもいる
(略)
ビロクシで待っているWAVEがいる
でも今夜は俺、ひとりぼっち


映画ではこの歌詞よりバリエーション豊かに、
サンディエゴ、パームビーチ等各地に女がいる、と言っています。

このショーは実際とても楽しいものですが、
実際に見ないと全く伝わらないと思いますので内容は省略。


ショーの合間に大変なことが発覚しました。
なんと、ジョンが「ダグラス」に乗るために
ショーをすっぽかしかけていたのです。



なぜそれが自分のせいなのか、全く理解できないローズマリー。



ウィンディとスージーは荷造りしているジョンを引き止めようとします。
せめてショーの出演だけでも最後まで果たして、というのですが、
彼はガンとしていうことを聞こうとしません。


いつもの変装をして空港に向かうためにホールを出て行きました。


スージーは人通りの多い街路で彼に足をかけて転ばせ、

「ちょっと!ここにジョン・キャボットがいるわよ!」

たちまち女性に群がられて身動きできなくなるジョン。
もう今日は飛行機に乗ることはできなくなりました。


ジョンはスージーが自分を陥れたことを本人の告白によって知りますが、
ローズマリーとウィンディが「できている」と信じているので、
舞台の袖で彼女に冷たく当たり、義務的にステージに上がります。
そしてその心と裏腹にこんな歌を歌うのでした。

誠実な心を約束するよ
いつも自由だったから
夜には腕いっぱいの星
僕はそれを自分のものだというフリをする

富める時も貧しき時も
分かち合えたら幸せ
あなたが取った僕の手
草原の太陽、暗がりのなかの炎
約束しよう 僕はそこにいると


「約束しよう」(I Promise You)という曲をデュエットしながら、
男の心が自分にないと知って、切なそうなローズマリー。

ところであれ?いつのまにこの人少尉になったんだ。
ショーの役柄ってことかな。



という二人とは全く関係なく、ショーはフィナーレを迎えていました。

「Here Come The Waves」というマーチ風の女性コーラスに乗って、
ステージには本物のWAVESたちが続々と登場します。



そして後ろのスクリーンにはジョンのアイデアで、
WAVESの軍隊生活がフィルムで映し出されていきます。

この二人は職場恋愛に発展しそうな雰囲気ありですが、
こういうシーンも志願者を増やすためと思われます。



飛行訓練のシミュレーション機のオペレーターとして。



以前当ブログでご紹介したことがあるシミュレーターですね。



開発機の実験にもWAVESが協力します。





スクリーンを使った銃撃シミュレーターのオペレーション。



通信オペレーターにタイプはWAVESの独壇場です。



航空機の整備は日本軍でも女性がおこなっていました。



こんな場所(空母甲板)なのにタイトスカートにパンプス。
このスカートでどうやって飛行機の翼の上に乗ったんだろうか。



曳航機を使った砲塔の実験も主導します。


二人はエンターテインメントを成功させた今、
海上勤務に戻っていいとWAVESのヘッドオフィスから通達を受けます。
左のWAVES隊長タウンゼント中尉が、

「スペシャリスト・ローズマリー・アリソンが、
あなたが艦に戻ることを強く望んでいると言っていましたよ」

「ローズマリーがそんなことを・・・?」

しかし、彼らの鑑はもうすでに出航した後のはず。
すると隊司令である大佐は、

「今ロスアンジェルス港に停泊しているから海軍の輸送機で送らせる」


司令室を出たジョニーはローズマリーとすれ違いますが、
彼女とウィンディがキスしていたと信じているので、冷たくあしらいます。

しかしこの男、自分はスージーに「意味のないキス」とかしたくせに・・。



そこで今や反省?したスージーが、あの時ウィンディとキスしていたのは、
ローズマリーのフリをした自分だったと打ち明けます。

喜んでローズマリーのもとにかけていくジョニー。



そして、ウィンディとスージーですが、瓢箪から出た駒?とでもいうのか、
フラれたもの同士で発作的に付き合うことにしたようです。

お互いそんなことでいいのか。


ショーのラストシーン、ステージ奥のスクリーンには、なぜかリアルタイムで
二等水兵として「ダグラス」に乗るジョンとウィンディの姿が映し出され、



スクリーンに手を振るスージーとローズマリーの姿で終焉となります。

ローズマリーは涙を浮かべていますが、実際、この時期、
西海岸から出撃する駆逐艦は、おそらく太平洋の激戦地に向かったはず。

姉妹二人の愛する人たちを乗せた「ダグラス」が、
無事に帰ってこられるかどうかは、映画で描かれることはありません。



終わり。