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年末富山のきときと旅

2024-01-05 | お出かけ

みなさま、遅ればせながら明けましておめでとうございます。

年末の京都旅行のログで、unknownさんから、
「能登半島でなくてよかったですね」というコメントをいただきましたが、
実は、その直後に能登半島の根元富山にいました。

TOがお付き合いのある方の企業が高岡市にあって、
以前も会社訪問したときの報告を当ブログでさせていただいたものですが、
今回はMKが帰国してくることもあって、その企業が一般向けに出している
鋳造体験を一緒にしてみようと思い立ち、訪ねることにしたのです。

そのことをブログに上げようとしていたら、能登半島に地震が起こり、
ニアミスに驚いて現地の知人に安否を問うたところ、
皆無事であると聞いてほっとしたところです。
 

出発の前日はクリスマスイブでした。

雰囲気を味わいに、みなとみらいに新しくできたレジデンシャルビルにある
オランダ人シェフの店(名前に”ヤン”がついてる)にいってみました。

コロナに斃れたTOも復活して病以来初めての家族でのお出かけです。



みなとみらいの遊園地とスイカのホテルを眼下に臨みます。
最近は東京横浜にこのような高層住居ビルが乱立している感があります。



ヒラマサのタルタルを赤玉ねぎのグラニテ(シャーベット)、
ズッキーニとコリアンダーでシャレオツに仕上げてあります。



メインは鹿肉でした。
京都に続いての鹿肉です。
出口にヤコブ・ヤン某というオランダ人シェフがいたので、
わたしが先に、次にMKが挨拶したら、MKにだけ、

「おおー英語うまいですねー」(英語で)

と。
ふん、どうせわたしゃ日本人英語ですよーだ。


さて、次の日は羽田から富山きときと空港に向けて飛び立ちました。
羽田から日本海側に飛ぶので、スカイツリーがよく見えます。
「きときと」とは富山の言葉で魚などを新鮮だというときに使う言葉です。

人に対して使う時には気力が充実した人、と言う意味だそうですが、

「あんた、きときとやね」

と言われたら、よそ者は自分って生魚臭いのか?とか思いそう。



なんとなく下界を眺めていたら、一箇所から煙が上がっていました。
後で調べたら、10時すぎに練馬区富士見台で民家が火事になってました。


「クリスマスに火事・・・気の毒に」

と呟いたのですが、この後のお正月にそれどころではない災害が起きるとは、
このときのわたしたちには知る由もありません。


連なる山波の向こうに富士山を確認。



ものの1時間できときと空港に到着です。
2日前に大雪だったそうで、雪が積もっています。

現地に行くための服装を決める時、Siriさんに富山が雪か聞いたところ、
きっぱりと「雪は降りません」と言うので普通の靴で行きましたが、
地面にこれだけ残っているのなら、それをまず教えて欲しかったんだが。

やっぱりこの辺りがAIの限界かのう。

■ 高岡オフィスパークに到着



空港からレンタカーで30分ほど走ったところにある、
高岡銅器の老舗メーカーに到着。

駐車場の仕切り線がすでにオリジナル製品のカタチをしています。

大正年間創業後、仏具メーカーでしたが、
2000年代に可塑式のテーブルウェアなどに乗り出し、
そのユニークなデザインと発想が世界的に有名になり、
今ではへバーデン結節患者が関節を固定する医療機器、
近々本格的なジュエリーデザインにも乗り出すという勢い。

地域の元気な企業として長らく注目され成長してきました。



前回から今回までの間の会社の発展を表すように、
建物内にお洒落なカフェが出現していました。
商品の展示コーナーと隣接して窓際に並んだテーブルで、
ランチやデザートをいただくことができます。

当社の器で地元食材を楽しみ、販売にもつながると言うわけ。
美味しくてしかも安い。
このボリュームたっぷりの牛焼肉丼セットがなんと1,800円!



デザートもとってもお洒落で映えどころではありません。



「能サクッ(会社名)!アップルパイ」

と名付けられた大人気のデザートは、発酵バターのパイカゴの中に
中にさつまいもペーストを仕込んだリンゴがかくれているというもの。



このカゴも当社製品をイメージしたもの。
これが1,500円なんて信じられません。
(会長が『1,800円にすべき』とおっしゃっていたけど、それでも安い)
パイもただの飾りというにはあまりにも美味しい。

スウィーツのデザインは、新社長の娘さん(子供)がしているそうです。
普通にすごい。

■ 体験制作と工場見学

さて、食事が済んだら、この旅の目的である制作体験です。



これも以前はなかった「ラボ」。
同時に何組もがグループで体験制作をすることができるスペースです。

手前にあるぐい呑み、小皿のどれかを選んで製作します。

この日は女性ばかり六人のグループと一緒になりました。
ラボの反対側では中国人らしい旅行客の三人組がいて、
インストラクターは英語で対応していました。


わたしとMKはぐい呑み、TOは小皿。
土に型を埋め込んで、インストラクターの言う通り、
こねたり型から取り出したりしているうちに、型ができるので、
そこに錫を流し込むとすぐに固まります。

商品として売るためにはこれらに見えるような模様は
研磨して取り去らねばなりませんが、体験ではそのまま持って帰ります。

最後は器の底に好きな文字を刻印してできあがり。



土に埋め込む型とはこのようなものです。
錫が土と型の間に入って中空の形ができます。

今は使っていない型を美術館のように展示していますが、
このような説明も前きた時にはありませんでした。



この後は、新社長自らのご案内による工場見学。
地震を知った時、真っ先にこの型展示が崩れなかったのかを思いましたが、
いくつかものが落ちた程度で何か壊れたと言うような被害はなかったそうです。



しゃがんでいる方は、さっきわたしたちが体験したのと同じ工程を
専門の場所でしておられます。
土を固めるとき、わたしたちは道具で押さえましたが、
本職の方は上に乗って体重で踏み固めていました。



職人の仕事にもいろんなレベルがあって、
この研磨によって模様をつけたり滑らかにする作業は
ベテランにならないと手がけることができないのだとか。

前にある掃除機の大きなノズルは粉塵を吸い込むものです。

工場内は夏でもクーラーをつけることができませんが、その理由は
クーラーによる風が粉を撒き散らすからだそうです。
夏の職場はきっと超過酷でしょう。



仕上がった製品が梱包前に置かれる場所。
ミッキーマウスの形のお皿が見えますが、もちろん
ディズニーと契約をしています。
他にはドラえもんとのコラボ商品もあったと思います。


一般の人には見せないのですが、と特別に見せてもらった倉庫には
過去依頼されて納めたもの(お寺の飾りなどが多い)が、
会社の資料&目録として展示されていました。



前回来た時にはあったかな?
2階から作業場が俯瞰できる見学通路。
通路だけでなく作業場そのものも明るく綺麗に改装されています。


わたしたちはショップでこの猫3匹(有名なデザイナー作らしい)の
箸置き(1匹ずつ切り離して使う)と、


ペンダントを購入させていただきました。
右上のチャームは宿泊した民家にあったギフトです。

■ 宿泊体験



この会社は富山県下の「木彫りの町」として有名な伊波にある
Bed and Craftという宿泊施設とタイアップしており、
地元の古民家を買い上げて一棟単位の宿泊所として売っています。

まず、本社から車で30分ほど行ったところにある伊波に到着。
この素敵な古民家は、この地域に5軒ある宿泊所の「フロント」です。



かつての姿を残しながら居心地の良い今風空間に改装してあります。
そして至る所に見られる「木彫の街」のアーティスト作品。
廊下の突き当たりにも作品である木彫の額が見えています。



家具もアンティークを中心に、懐かしさを感じる空間に。
ここでお茶とお菓子をいただきながらチェックインをし、
宿泊する家の場所とキーの暗証番号を教えてもらいます。



われわれが泊まった家は、元料亭だったそうです。
軒にかけられた「金中」というのが料亭時代の屋号。
今は部屋の名前となっています。


床はもともと畳だったのを張り替えてありましたが、
敷居や柱はオリジナルをそのまま使っています。
この手の古民家は北国では冷凍庫のように寒いのが相場ですが、
ここは全館ダイキンのエアコンが空調を行い、
さらに石油ストーブでガンガン温めることができるようになっています。

お風呂も全自動で水回りは大変快適でした。


かつてのお座敷を洋室に作り替えました風の居間。
違いのわかる男がタバコの煙をふかしそうなイメージの部屋ですが、
いまどきなのでもちろん全館禁煙です。



雪見障子、(壊れていて半分しか上がらない)雪の積もった坪庭。
立派な観音開きの扉の向こうにはかつて仏壇でもあったような・・・。



大画面テレビだけがはいっていました。
扉を開けると隙間風が猛烈に入ってきました。
やっぱり基本的に日本家屋寒いです。



キッチンは無印良品(風)の製品多し。

ウェルカムドリンクとしてシャンパンが一本用意されていましたが、
旅先では誰も飲まないので持って帰っていただきました。

フロントとの連絡は、ルームサービス含め、皆iPadから行います。
さすが今時の宿泊所です。



朝起きてコーヒーを淹れてみました。
長期滞在できるように食器も什器も揃っています。


浮き彫りの目隠し模様が入ったガラスは年代を感じさせます。
キッチンの窓は道路に面していて、ここからも冷気が入ってきますが、
それもそのはず、窓の鍵が昔あったような「ねじ式」なんだ。

うわー懐かしい・・・。
こう言うの見なくなって何年くらいになるだろう。



地元のアーティストとコラボしているというのが売り。
この家ではまず、階段の踊り場に鹿の彫りものあり。



階段を上から見ると踊り場に鹿がいて・・・、



見上げると吹き抜けにこれもアート作品、
木彫りのシャンデリアがあって、これがここのメイン作品らしいです。



玄関に並んだ小さな額も全て木彫作品。



寝室は2階に2室。
わたしはこの部屋を一人で占領しました。



こちらの部屋はほとんど昔のまま。
和室に床の間、引き戸の外の廊下にある謎のテーブルと椅子。

■ 地元の会席料理



その夜は会長と社長のお招きで地元の創作料理屋さんへ。
なんとこの日、お店は貸切になっていました。

ここのお料理も会社とコラボして器をふんだんに使っています。

「しふく」というこの料亭の料理は、
一棟貸切のプランに含まれているそうです。

地元の店や企業と連携して都会や海外から人を呼び、
地域の活性化を図っている様子がうかがえます。



お好きな方にはたまらない。
コウバコガニまるまる1匹。
だがしかし、MKはもちろんわたしはカニ苦手・・・。

会長の、この味噌がもうたまらんのですとか、
小さい時にはおやつがわりに食べていたと言う話をへーほーと聞きながら
実はモテアマしていたことを懺悔と共に告白します。



それからこの巻貝。

爪楊枝を引っ張ってみたらずるずる〜〜〜と中から出てきて
それを見たわたしは内心ひええええと怯えてしまいました。
お好きな人すみません。

我が家全員、前世で何があったのか、甲殻類貝類が苦手なんです。
帆立貝の刺身は好物なんですがね。

これはMKはもちろん、TOすら食べなかったそうです。

でも、とにかく「とれとれきときと」の海の幸、
特にお刺身は大変美味しゅうございました。



次の朝コーヒーを飲んでいると、楚々とした若いお嬢さんが
頭に布を被った出立ちで朝食を届けてくれました。

温かいおにぎりと半熟卵のサラダ、スープ。

■ 木彫りの町



玄関のアート作品の間に古い集合写真あり。
説明がないからわかりませんが、職人風の人が多いことから、
昔この辺で仕事をしていた木彫職人の記念写真ではないかと思いました。



チェックアウトしてから、前の日から目をつけていた
「ただものでない」感じの珈琲店に行ってみました。

ここも古民家改造店舗で、反対側にはやはり宿泊所があります。



宿泊室への入り口が同じところに。



隣の家の壁は触るわけにいかないのでそのまま残されています。
崩れそうな土壁。
こういうの、地震が直撃していたら危なかったのでは・・・。



なんと、ゲイシャをプアオーバーで淹れてくれる店でした。
いやもう地方の文化程度はすごいことになっています。

しかも、プアオーバーで淹れたコーヒーは、
冷めていくと味が変遷していくこともよくわかっているバリスタで、
カップとビーカーに分けて運んできてくれるとは。

感激です。



店舗の2階が喫茶室になっていました。
柿の実のオレンジが雪景色の中でほっこりと温かい。



パン屋さんの壁。これも木彫りです。



木彫りの町井波を少し車で走ってみました。
人の姿少なめ。



地元のお酒一種類だけを扱っている酒屋さん。
看板はもちろん木彫りです。



越後屋という木彫りの店。



ネズミさんが木彫りで看板を製作中。
尻尾を命綱にしての作業です。



新聞屋さんの看板猫も木彫りです。



木彫りの町の中心にある瑞泉寺は、山門が見事な木彫でできています。
木彫りのお手本のような建物で、よく職人が勉強に見にくるのだとか。
この山門は有形文化財に指定されています。



さすがは木彫りの町、自動販売機も木彫りのカバー付き。



というところで、空港に行く前に富山駅近くでご飯を食べました。



駅のお酒屋さんでジンを味見しているMK。
ジン好きの彼は、オールドトム系ジンを今回東京で買って持って帰りました。
(といわれても何のことかわたしにはわからないのだが)

この後地震が起こった時、ニュース映像で
富山駅のこのモールの映像が流れたような気がします。

わたしたちが能登の地震のニュースにびっくりしたのは
これから6日後のことでした。