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振り向けば、エアボス〜空母「ミッドウェイ」博物館

2018-07-07 | 航空機

 

空母「ミッドウェイ」の飛行甲板から見た艦載機エレベーターです。
前にもご紹介しましたが、「ミッドウェイ」博物館はエレベーターを
ハンガーデッキ階に固定して、カフェというか休憩所として解放しています。

ここで買ってきたパックのサンドウィッチやバーガーを食べながら
航空機やこの前の広場の巨大な「水兵とナースのキス」像、そして
眼前に広がるサンディエゴの眺望を楽しむこともできるのです。

左のほうに見えているブリッジで、右手全般に広がる島
コロナドと陸が繋がれています。

画面の右に行くと海軍基地が広がっています。
コロナド・ブリッジが開通するまでは、車のフェリーも操業していたようですが、
今ではフェリーは人間専用となって完全に住み分けができているようです。

ちなみにフェリー料金は4ドル75セント、所要時間は15分です。
本当に呉から江田島みたいな感覚ですね。

ところでこのエレベーター部分に展示されているのは

Douglas A-4 「スカイホーク」Skyhawk

で、今はもうない「黒騎士」とあだ名されたVA-23攻撃隊の飛行機です。
操縦しやすく、「ハイネマンのホットロッドなんてあだ名もありました。

前回は空中給油のプローブの位置にやたらこだわってみたのですが、
その目で改めてこの機体を眺めると、

「ノーズから生やすのはイマイチなのでここに付けたんだな」

とつい考えてしまう場所にある給油プローブに目がいってしまいます。
クーガーの、ピノキオみたいにノーズから給油口が生えているのもなんですが、
だからと言ってこの場所も中途半端な気がしないでもありません。

映画「トップ・ガン」ではこれが仮想敵機を演じていました。

それからここでもお話しした「ライト・スタッフ」では、海軍出身の宇宙飛行士、
スコット・グレン演じるアラン・シェパードがこの「スカイホーク」で
母に着艦するシーンが描かれていましたが、
彼が本当にスカイホークに乗ったかどうかはその経歴からは窺えません。

シェパードは海軍のテストパイロット出身宇宙飛行士で、彼がテストした機体は  

McDonnell F3H Demon Vought F-8 Crusader, Douglas F4D Skyray 

 Grumman F-11 Tiger  Vought F7U Cutlass   Douglas F5D Skylancer

カットラス試験の時にはスナップロールの時に機体が復元せず、
機体を立て直せなくてベイルアウトしています。

そういえばカットラスは「ガッツレス」(根性なし)という不名誉なあだ名以外に
「未亡人製造機」とも呼ばれていたんでしたっけね。

また、スカイランサーのテストをしてこれが気に入らなかった彼は
上に無茶苦茶な報告を上げたため、海軍はこれを導入するのをやめて
代わりにF8Uクルセイダーを導入したという話も・・・。

サービス画像、アラン・シェパード海軍兵学校時代。

さあ、今日もフライトデッキに展示されている飛行機を見ていきます。

「ミッドウェイ」博物館は展示に工夫が行き届いており、さすがは
西海岸で最も人が訪れる展示艦であると感心します。
コクピットに座ることはできないと思いますが、上から見ることができます。

 North American T-2 「バックアイ」Buckeye

Tというからにはトレーニング、つまり練習機なのですが、空自が昔
採用していて「ブルーインパルス」にもなっていた三菱製のT-2と違い、
こちらはノースアメリカン社製の練習機です。

「バックアイ」というのは後ろに目がある人のことではなく(そらそうだ)
オハイオ州バックアイにあるノースアメリカンの工場で生産されたからです。

バックアイはトチノキのことで、オハイオは「トチノキ州」と呼ばれ、
またオハイオ州の人のことはそのものズバリ「バックアイ」といいます。
ついでに州立オハイオ大学のニックネームも「バックアイ」。

中・高等練習機として1990年代まで使われていましたが、その後

T-45 Goshawk「ゴスホーク」

に置き換えられて引退しました。
「ゴスホーク」はシェイプがT-4そっくりです。

wiki

艦上で給油中のゴスホークさん。
ゴスホーク=「オオタカ」というよりイルカっぽい。

North American A-5「ビジランティ」 Vigilante
爆撃機

unknownさん、お待たせいたしました(笑)

遠目に見てもまるでヒラメのようなうっすーい機体。
超音速爆撃機である「ビジランティ」は空中給油機も着艦フックも
空気抵抗を減らすため内蔵しています。

こんなでっかいのに乗員はたった2名、冷戦時代に核爆弾搭載用に、
先日お話しした「スカイウォリアー」の後継機として作られました。

こんな薄いのにどこに核を積むつもりだったのかというとここ。
インターナル・ボム・ベイ(内蔵爆弾格納室)といい、なるほど、
薄いが胴体が長いわけがこれを見るとよくわかります。

この図は、核爆弾を射出したという想定で、全体が4つに分かれていますが、
先端が「テイルコーン」、
真ん中の二つが燃料タンク、一番後ろのが核爆弾です。

というわけでこの「ビジランティ」、導入後すぐに起こったキューバ危機では、

「アメリカも核攻撃は辞さない」

ということをアピールするため、フロリダに配備されたのでした。

 

冷戦時代、米ソはお互い核爆弾を航空機に積んでウロウロさせていました。

落ちたら一大事の核爆弾を、落ちる可能性がある飛行機に載せること自体、
はっきりいって素人目にも無謀としか言いようがありません。

実際チューレ空軍基地米軍機墜落事故を始め、この時代に、
表沙汰になっているもの、
なっていないものを含め、アメリカは実際に
核を積んだ爆撃機を何機も
(一説には30件以上の事故があったとか)
墜落させているといわれています。

しかし爆弾の小型化と戦略原潜がその代わりをすることになったせいもあって、
核の爆撃機搭載は(ソ連との協議もあり)自然に廃止の方向に動きました。

しかしそれをいうなら現代の原潜も

「核を積んでウロウロしている」

ことには間違いないのですが、なんというか、空を飛んでるのと
海底に貼り付いているのでは随分安全度も違う気がします。

 

ちなみに「ビジランティ」とは「自警団員」という意味です。
試しに自動翻訳にかけると「自衛隊」となりました(´・ω・`)
自警団員といっても自宅警備員という意味ではありませんので念のため。

 

その後「ビジランティ」は、戦略爆撃機構想が終焉したので
変換を行うことになったわけですが、いかんせん発想が
特殊すぎました。

投下時はテイルコーンを切り離し、核爆弾をドローグガンで後方に射出するのですが、
この時、目標地点で空になった燃料タンクも一緒に射出する仕組みです。

しかし、カタパルトから射出すると、しばしば衝撃で燃料タンクが脱落したり、
また、ベイ内には1発の核爆弾しか搭載できない・・・・。

つまり爆撃機としては使えねーと判断され、どうなったかというと
その機体のでかさにも関わらず偵察機に生まれ変わったのでした。

・・というか、偵察機くらいにしか使い道がなかったんだと思います。

しかし転んでもだだでは起きないアメリカ海軍、核爆弾投下の際には
ウェポンベイだった部分に、偵察機本来の偵察用カメラだけでなく、
監視のための電子機器を一切合切内蔵するための「カヌー」と呼ばれる
フェアリング(空気抵抗を減らすためのエアロパーツ)をつけました。

写真機体下部に見えているのが「カヌー」です。

こちら、横から見た「カヌー」。

カヌーには電子偵察システム用のアンテナ、赤外線センサー、
そして側方監視レーダーなどが収納されていました。


「ビジランティ」の横に黄色い機械と紫の人がいます。
紫の人は通称「グレープス」という燃料補給隊。
燃料補給ができるのは「紫のシャツの人」だけです。

最初黄色い車は航空機の牽引車ではないかと思っていたのですが、
コメント欄でunknownさんに「それエンジンのスターター」とご指摘を受けました。

ですが、それ繋がりでトウイングの話題に突入してしまっていたので、
今更流れを変えるわけにいかず、そのまま掲載します。


牽引を行うのはやはり黄色いシャツを着た「イエローシャツ」軍団です。

このタイプは陸上でも使われるのですが、空母にはもう一つ別の形の牽引車があり、
それは高さがわずか50センチくらいの小さな形をしていました。

牽引車の操縦のベテランになると「名人芸」並みのスキルを身につけていて、
航空機同士の間隔わずか数センチのところを、ものすごいスピードで
スルスルと引っ張ってしまうのだとか。

もちろん牽引していて航空機を何かにぶつけるなんて、ありえません。


ちなみに、牽引の時にはこの車がトー・バーという接続のためのバーで
牽引する航空機に取り憑くのですが、その間航空機のコクピットには
必ず人が乗っていなければなりません。

八戸基地の記事でも出てきましたが、「ブレーキ・ライダー」という役です。

ブレーキ・ライダーの役目は、例えば海が荒れていたり、あるいは
牽引車の重さが足りなくて、機体が滑ったり動いてしまったりした場合、
ブレーキをかけて機体の暴走を止めることです。

ただ、自分で操縦するならともかく、牽引車に引っ張られるコクピットに
ただ乗っているのは、パイロットでもない者にとって本当に怖いものだろうなと思います。

特に怖いのがエレベーターに乗る時

機体はコクピットを外に向け、しかもヘリコプターなどは、
スキッドを端ギリギリに寄せてエレベーターを動かすため、その時
コクピットはパレットから完全に海の上に突き出した状態になります。

この時、海が荒れていたりすると、機体がもろに波をかぶることもあるので、
ただでさえ避けられがちな「ブレーキ・ライダー」、こんな日は誰もやりたがりません。

海に慣れ、艦を住処として、いつも任務をこなしている乗員にも
怖いものが存在するということは興味深いですね。

ちなみに、ただ一つ、率先してブレーキライダーを皆がやりたがるケースは、
先日もお話しした、
アラートの際のコクピット乗りこみだけでした。

ただじっとして寝ていれば、じゃなくて目をつぶって待機していればいいからです。


余談ですが、かつての「ミッドウェイ」乗員の証言によると、その人が勤務中、
当時の「ミッドウェイ」のエアボスは、どういうわけか牽引車の操縦が好きで、
しょっちゅうフライトデッキに降りてきては(エアボスの勤務場所は艦橋)
「イエローシャツ」になりきって、艦載機を牽引するのが趣味という人でした。

彼は一般的なエアボスがそうであるように、戦時平時を問わず
「寝ない」人でしたが、エアボスにしては超気さくなタイプと評判で、
そうとは知らずに気安く牽引を任せた何も知らない新入りを、
背中の「AIR BOSS」という文字でしょっちゅうビビらせていたそうです。

ただ黄シャツ軍団のベテランによると、くだんのエアボスの牽引は
いわゆる「下手の横好き」というやつだったそうなので、エアボスでなかったら
趣味の牽引などとてもやらせてはもらえなかったと思われます。

おそらくエアボスが牽引する機のブレーキライダーには、
部隊の「生贄」が乗らされるはめになったことでしょう(-人-)ナムー


 

続く。