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バーキン片手に靖國神社

護衛艦「いずも」(と海自情報漏洩事件に思うこと)

2022-12-27 | 軍艦

さて、長々と語ってきたよこすかYYのりものフェスタシリーズも、
ついに最終回となりました。
最後はやっぱり日本国の旗艦たる護衛艦「いずも」シリーズです。



まずは遠景から。
横須賀基地入場前のヴェルニー公園からのショットです。
まだオープンして間もないのに、艦上に人影が見えていました。

わたしを誘ってくれた知人も、開門1時間前から並んで入ったそうですが、
皆根性あるなあ・・。


「いずも」ほどの大きさとなるともやいの張り方も複雑です。
艦首部分だけで6本をブイに係留しています。



この日は先日の観艦式の直後だったせいか人出は少なく、
岸壁に設けられた順番待ちの人のためのロープは出番がなかったようです。



こちらは艦尾側。
海上保安庁の巡視船「あしがら」の乗船待ちをしている時に撮りました。



ご存知の通り現在の自衛艦の中では最大級の「いずも」。

全長は248メートル、最大横幅が38メートル、
深さ23.5メートル、吃水7.1メートルというものですが、
「ロナルド・レーガン」は333メートル(見学した時に、これが
東京タワーと同じ高さと聞かされて忘れられない)
最大幅76.8メートルと3倍違います。

まあ空母ではないし、推進も違いますから比べても詮無いことですが。


しかしこれをご覧ください。
wikiに載っていたのですが、左が「いずも」。
真ん中がイギリス海軍の空母「クィーン・エリザベス」

「いずも」は「レーガン」といるとお兄ちゃんと弟みたいに見えますが、
これだとわりと同じサイズで安心しますよね(何が)



「いずも」「ひゅうが」などヘリ搭載型護衛艦は、
岸壁に向かって大きく開かれたハッチから乗艦します。
傾斜のある(ただし滑り止めがあって特に下りは歩きにくい)
ラッタルを渡るとそこはハンガーデッキです。

この日は見学者のために(なのかいつもあるのかは知りませんが)
巨大な艦のロゴマークが描かれたバナーが正面にどーんと飾ってありました。

ロゴマークは一般公募の中から選ばれたデザインで、
剣のバックに八匹の龍があしらわれた日の丸です。

八匹の龍ははご想像の通り“ヤマタノオロチ”であり、
剣はヤマタノオロチを討伐した“天叢雲剣(草薙の剣)”だそうです。


さて、デッキから右手(艦首側)には艦載機用エレベーター。


上から降りてくるのを待つわけですが、見学者があまり多くなかったので、
この時間は全く待ったり並んだりすることなく上にエレベーターに乗れました。


「一般見学」「艦載機エレベーター」というと、
わたしなどどうしても昔あった見学者の転落事故を思い出すのですが、
今は事故防止のために中央に柵を設け、対処しています。



写真を撮っている人もどうしても端っこに寄りがちなので、
柵とネットの設置は一般公開の際のマストです。



エレベーターを降りると皆艦首に向かって歩き出し、
最初にこのCIWSと対面します。

(実は最初これをSea RAMだと思っていてそう書いたのですが、
これはCIWSだ馬鹿者!とunknownさんのご指摘を受けました。
しかし流れとしてここでSeaRAMの説明を始めてしまったので続けます。

両者の違いは『レーダーが一体化されているかいないか』
このポイントも新たに知ることができました。
ありがとうございます<(_ _)>)

Sea RAMのシーは海、つまり艦載仕様と言う意味ですが、
あまり知られていないこととしてRAMとは

Rolling Airframe Missile

つまり「ローリングする機体状のミサイル」という意味です。

何がローリングするかと言うと、ミサイルそのもので、
周りながら飛翔していくのでこの名前があります。

RIM-116 Rolling Airframe Missile (RAM) は、
小型軽量、赤外線ホーミング地対空ミサイルで、
発射前に独自のセンサーを使用することができないため、
艦船の戦闘システムと統合し、ランチャーを目標に向けます。

西ドイツとデンマーク、ゼネラルモータースのミサイル部門が共同で開発し、
その後はデンマークが脱落し、GMは買収されて現在はレイセオンが製作し、
アメリカ海軍とドイツ海軍の軍艦で運用されており、
特にドイツ海軍では新型艦船すべてにRAMを搭載することになっています。

SeaRAMの開発は超音速海上スキミング対艦ミサイルに対抗するため、
ファランクスに付随する自衛システムとして設計されました。
(あーファランクスに似ているのはそのせいかー)

アメリカ海軍では

「ジェラルド・R・フォード」級航空母艦、
「ニミッツ」級航空母艦、
「ワスプ」級水陸両用攻撃艦、「アメリカ」級強襲揚陸艦、
「サンアントニオ」級水陸両用輸送艦、
「ウィドビーアイランド」級ドック揚陸艦、
「ハーパーズフェリー」級ドック揚陸艦、沿岸戦闘艦(LCS)


で運用されています。

ところで水陸両用攻撃艦の「アメリカ」級の一番艦「アメリカ」。
なんでこんなに主語が大きいの?
気になって調べたら、2番艦以降は「トリポリ」「ブーゲンビル」
「ファルージャ」
(予定)と普通に古戦場です。
命名基準などあって無きが如し。



これを撃ったらどうなるかというと。
空母USS「セオドア・ルーズヴェルト」から発射された
ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)。


ところでシーラム(SeaRAM)兵器システムの概要ですが、
ファランクスCIWS Mk-15 Block 1B (CRDC) のレーダーと、
電子光学システムを11セルのRAMランチャーと組み合わせ、
外部情報を必要としない自律型システムにより防衛する武器です。

ファランクスと同様、あらゆるクラスの船に搭載することができます。
メーカーのレイセオンによると、SeaRAMは

「ファランクスと全く同じ船上設置面積で、同じ電力を使用し、
船上での改造は最低限で済む」

ということでこれからも運用は増えていくことでしょう。



ちなみにこれが「いずも」艦尾側ですが、
遠目にはCIWSとSea RAMが同じように見えたりします。

「いずも」はそれぞれを2基ずつ搭載しています。


2008年、USS「インディペンデンス」に搭載されたのが
最初のSeaRAMシステムで、現在は「インディペンデンス」級の各艦に
1つのSeaRAMが装備されています。



艦首近くから見た「いずも」甲板全容。
実際に上がったことがある方はご存知と思いますが、
艦載機を乗せる甲板の床は滑り止めのため新型艦ほどギザギザです。

このとき、わたしの近くにいた女の子が、はしゃいで走り出し、
(親が止めないんだこれが)たちまち床に足を取られて転びました。

瞬時にその辺を圧する彼女の泣き声が・・。

「あー・・・やっちゃった」

「ここで転んだらさぞ痛いことでしょう」


「けがもしてそう」

「しかしよりによってこんなところでで走りますか」


わたしたちがそちらを見ずにこんな会話をしていると、
わらわらと、という言葉がふさわしいくらいたくさんの自衛官が、
たちまち彼女の声に反応して集まってきてしまいました。

「あああだんだん大ごとに・・・」

昇降機の転落事故に通じることですが、自衛隊の艦艇というのは、決して
一般人にとってフレンドリーかつ安全に配慮されているわけではありません。

もしうっかり、あるいは今回のように親がちゃんと子供を監視せず、
怪我が発生すると、誰が迷惑するかと言うとそれは自衛官です。

一般人の理解を得るために公開した施設で、一般人のミスによって
一般人が怪我をしたとしても、責められるのは公開した自衛隊なのです。

わたしもかつて掃海艇の中で滑って転んで周りを一瞬騒然とさせたことがあり、
どんな注意していても起こる事故はあると理解していますが、
それでも、昇降機の端っこに立って下を覗き込んで落ちたり、
走る子供を放置していて転ばせてしまったりという事故は、
十分予測できるインシデントであり、心掛け一つで避けることもできるはず。

自衛隊施設を見学するすべての人に留意していただきたいものです。


構造物の下に列ができていますが、これはエレベーター待ちの人たちです。
たくさんいるように見えますが、これだけの人なら
全員が乗って降りることができると思います。



航空機を艦載する艦で重要な消火設備としての消防車。
正確な名称は

艦上救難作業車 P-25J

といい、「ひゅうが」にも搭載されています。
水を2840リットル、薬液を227リットルを搭載しており、
ターレット(自動噴霧)で約90秒 ハンドライン(手持ち)で約470秒、
同時に約76秒の射出が可能です。

作業車の近くには、銀色の消防服を着た乗員が立っていました。

アメリカ製なので、米海軍の空母にも搭載されているのと同じでしょう。


「いずも」の甲板は広いですが、見学するところはそうありません。
エレベーターを降りたら一周して終わり、ということになります。


構造物沿いに歩いていると、なぜかそこに艦長が降臨。
520名の「いずも」乗員を率いる司令官です。

現在の「いずも」艦長は5代目で、2022年1月着任された
防大38期の小城尚徳一等海佐です。



エレベーターを降りたらあとはハンガーデッキの見学です。
ここには作業車各種が展示してありました。


たとえばこの自走式クレーンもKOBELCOですし、
作業車は外注で民間から導入することになっているようです。



司令官旗は海将補を表す二つ桜が揚がっていました。
「いずも」の所属する第一護衛艦隊の司令官が海将補であることを表します。

ところで自衛隊に関心のある内にかかわらず、先日の
海上自衛隊一佐の機密漏洩事件について衝撃を受けた方は多いでしょう。

わたしもその一人ですが、詳細がわかってみると、
あれ?っという内容です。

井上1佐は情報業務群司令を務めていた2020年3月19日、
かつての上司で自衛艦隊司令官を務めて退職していた元海将に
安全保障情勢に関するブリーフィングをした際、
周辺情勢について収集した情報といった特定秘密のほか、自衛隊の運用状況、
自衛隊訓練に関する情報といった秘密を故意に伝えた疑いがある。

つまり1佐はもう一般人となった「元海将」に機密を漏洩してしまったと。

情報を受け取った元司令官は、安全保障に関する講演をすることが多く、
最新の情勢を知りたいと20年1月ごろに海自側に要望し、
ブリーフィングを受けたわけですが、その際1佐は

「(元司令官に)畏怖の念を抱いており、
通り一遍ではない秘密の情報を伝えたいと思った」


加えてそのブリーフィングが業務命令であるとの誤った認識が、
1佐の正常な判断をゆがめた、と周りでは見ているようです。

元海将が現役にブリーフィングを要求したというのも、引退してもなお、
本人は自衛隊に影響を持ち続けていると認識していたからこそであり、
事実元海将は1佐に対して
「自分は将来、海上自衛隊に助言する立場になる」
という趣旨の発言をしていたといいます。

助言って・・・影のフィクサー的な?
それは少なくとも公的にはあり得ない話のような気がします。

ニュースの第一報を聞いてすぐは、懲戒免職になるほどの事案ならば
それは外患誘致に通じるような決定的な情報漏洩だろうと思いましたが、
今回の漏洩事件、漏洩した方もされた方も、
情報を金銭に変えたり悪用するつもりではなかったのは確かです。

素人考えでは、当事者の1佐より、過去の階級意識のまま、当時の部下に
情報を求めた元海将の方が、罪は重いのではないかという気がします。

この場合、「退官した自衛官はもはや自衛隊になんの影響も及ぼさない」
(少なくとも法的な権利はない)という認識が元海将に希薄だったこと、
かつての上下関係が、部下であった1佐の規範遵守意識を曖昧にしてしまい、
則を超えさせてしまったことが不幸な結末に繋がったといえるでしょうか。

誰にも悪意はなく、誰も悪人ではなく、陰謀も計画もなく、
ただ各自の認識が甘かっただけの事件、とでもいいますか。

なのでなおさら、海自が苦渋の判断として当事者を懲戒免職という
大変厳しい処分を下さざるを得なかったことを残念に思います。






海上保安庁巡視船「あしたか」〜よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-25 | 軍艦

USS「ハワード」の見学を終わり、岸壁に降りてきました。



我が海上自衛隊の「しお」型潜水艦「うずしお」が背中を公開していました。
ラッタルを渡り、文字通り「くじらのせなか」を歩いて出るだけ。

それでも時間があればやってみたいところですが、残念ながらこの日は
この後のスケジュールがタイトだったので、外から写真を撮っただけです。



潜水艦の艦尾旗はここに掲揚します。

平時において、自衛艦は、停泊中午前8時から日没までの時間、
航海中は常時、艦尾の旗竿ないし斜桁(ガフ)に軍艦旗を掲揚します。
万が一戦闘があった際は、戦闘旗として掲揚される予定です。

自衛艦において定時に自衛艦旗を掲揚し又は降下するときは、

定時10秒前に喇叭を以て「気を付け」を令して
定時に喇叭「君が代」を1回を奏するものとし、当直士官は、
艦橋又は後甲板付近に措いて掲揚(降下)を指揮しつつ、
自衛艦旗に対し挙手の敬礼を行う

艦橋及び露天甲板にある者は、自衛艦旗に対し挙手の敬礼を行い、
その他の場所にある者は、姿勢を正す敬礼を行う

海上自衛官は、陸岸において自衛艦旗の掲揚又は降下を目撃するときは、
その場に停止し、当該自衛艦旗に対し敬礼を行うものとする

大きな自衛艦旗であろうと、潜水艦の小さな旗であろうと、
当然ですが、同じ時間内で掲揚を行うということですね。



セイルの上には桜一つの尾鰭状切れ込みがある隊司令旗が揚がっていました。

正確には隊司令旗(甲)といい、この場合の隊司令、すなわち
横須賀基地潜水隊司令は、一佐をもって任じられることになっています。

この旗は、
隊司令の乗り組んでいる自衛艦等に乗艦して
部隊の指揮をとる場合、又は検閲若しくは巡視のため、
その指揮下にある自衛艦等に乗艦する場合においては、
乗艦から退艦までの間、その自衛艦等に掲揚
されます。

ということは、今この瞬間隊司令が乗艦しているってことですか?
潜水艦ですし、さすがにそれはないような気がするのですが・・。



セイルの上のリースみたいなのはなんだろう?
もしかしたらクリスマスの飾り?



と思ったらさすがにそれは違いました。
うずしおSS592と書かれていますが、輪が小さいので
さすがに救命用の浮き輪ではないと思います。
これは何するもの?

ちなみにこの「浮き輪」、端っこに取っ手みたいなのがついてます。


「うずしお」の手前には、海上保安庁の警備船、
「あしたか」が公開されていたのでこれに並ぶことにしました。


海上保安庁の巡視船「あしたか」は、
びざん型巡視船の3番船となります。

第3管区海上保安本部の横須賀海上保安部所属で、
竣工は1994年、三井造船玉野事業所で建造されました。

つまり「あしたか」はもう就役して28年のベテランということですが、
同級は最新船の「きりしま」が2022年12月21日(あれ、今日だ)
竣工予定であることから、同型が今後も増えていくのかもしれません。



電光掲示板ならぬ布には、「ようこそ あしたかへ」の文字。

あ、これ知ってるぞ。
この掲示布で、不審船に向けて「武器を捨てよ」「止まれ」などと
中国語やハングルや英語で警告するんですよね?

こういうことを言えるのも、海保の観閲式に参加して、
模擬捕物?シーンを見たからこそです。



というわけで、見学の列に付きましたが、進まないんだこれが。
船が小さい上、ソーシャルディスタンスを考慮して
入り口で人数を制限しているため、船上にいる人もほとんど動かず。

この日は暑くも寒くもない見学には好天だったので、
待つのに何の苦労もありませんでしたが、
「いずも」と警備艇の写真ばかり時間つぶしに撮りまくりました。


例えばこんな写真とか。
マスキングしていますが、ボートの上の家族の顔は
全員明らかに固くこわばっています。

まあ、遊園地のライドみたいにはいかないよね・・。


下船しただけの人数を乗船させるというシステムなので、
20分くらい待ってようやく甲板に立つことができました。

「びざん」型巡視船M61バルカンで武装しています。

6砲身からなるガトリング回転式のキャノン砲で、
日本で開発&ライセンス生産されたJM61–Mをもとに、
箱型の単装砲塔に組み込んだJM61-RFSというタイプです。
こちらは赤外線捜索監視装置との連接により、
目標追尾型遠隔操縦機能(RFS)を備えています。



見学通路は甲板を左回りに進み、上部構造物の船内に入っていきます。
入り口に立っている保安官は、船内に入るまでの間、
目の前の人に丁寧に説明したり質問を受けたりしていました。

このとき彼から、この巡視船が就役してかなり経っていること、
かつては尖閣で警備活動していたこと、そして巡視船というものは
武器などをアップデートしないということを教えてもらいました。



キャビンに入るとすぐ右手にキッチンがあります。

「どうぞ奥まで入って見てください」

と言われましたが、本当にどこかの家にお邪魔している気分。
どこかの家と違うのは、もう30年近く経つのに、
油汚れやシミなどが一切見当たらず床も綺麗なことです。

毎日の掃除がいかにちゃんととされているかってことなんでしょう。



ニンジンはありませんでしたが、じゃがいもと玉ねぎがあるので、

「カレーの材料ですか」

と聞いてみたところ、昨夜はカレーだったというお返事でした。
近くにいた人が、やっぱり金曜日はカレーなのかと聞いていましたが、
それは海自ならではの慣習で、うちでは決まっていないということです。



ここが乗員の食堂兼居間、休憩所。
小さい船なので、ここにファクシミリやコンピュータが置かれています。
LANケーブルなんかも、就役当初はなかったらしく、
配線工事をしたっぽい形跡が。


炊飯器はおかわりしやすいようにか、台所の外、食堂の一角にあります。
動揺で転げ落ちないようにするための枠は乗員の手作りっぽい。



USBとSDカードの所在を表すためのホワイトボード?

「主航士」「航士補」「機士」「通士」

どれもこれも海自とは全く違う名称です。
これらはまず階級ではなく、職務上の資格を表し、
「航士」は「航海士」、あと「機関士」「通信士」の略です。

階級は、海自の尉官・佐官にあたるのが「保安正」「保安監」ですが、
自衛隊とは微妙に区切りが違っています。
海自の三佐は海保では一等海上保安正ですが、
一尉も海保では保安正であり(二等)、二尉は三等保安正となります。

保安士は所謂下士官、曹であり、
兵員にあたるのが「保安士補」となります。

ちなみに海上保安大学校は卒業時に学士号が授与される高等教育機関で、
4年9ヶ月の教育機関にわたり幹部保安官としての教育を受けるため、
難易度も国公立大学受験と同程度となっています。

決して簡単に門をくぐることができる大学ではなさそうです。



大ヒットした「海猿」以降となる海保を舞台にしたドラマ(のようです)。

『DCU』は、2022年1月〜3月放送されていたドラマで、
海上保安庁に新設された水中事件や事故の捜査を行う
架空のエキスパート集団DCU(Deep Crime Unit、潜水特殊捜査隊)が、
従来の海上水域だけでなく、警察の捜査では困難な
「危険極まりない日本全国の河川や湖」など、
あらゆる水中に潜り隠された証拠を探し、
「水中未解決事件」を解決する活躍を描くミステリー、ということです。

キャッチコピーは「水は嘘をつかない」

隊長が50歳の三等保安監(阿部寛)と言う設定がすごすぎ。
今見ていたら、古田敦也元監督が政治家役で出ていたのを知りました。
結構いろいろドラマとかにも役者で出てたんですね。びっくり。



操舵室はこの一階上にあります。
レーダー装置や警救情報(この言葉も初めて知った)表示装置など、
見学する人にわかりやすい説明もありました。

コクピットは非常にアナログっぽい作りです。



船長が座るのは右側の羅針盤の前でしょうか。



船室の後ろ側にはまるでバスのようにシートが並んでいます。
現場に急行する時などには全員がここに座るのでしょうか。



「あしたか」の主機はディーゼルエンジン、
推進装置はここにもせつめいのあるウォータージェット推進器です。
船底から汲み上げた海水を後方に高圧の水流として噴出し、
それを推進力にする仕組みを持ちます。

現地の説明によると、「バケット」なるものを上下させると、



水流の向きが変わって後進(下図)に切り替えることができます。
ちなみに「フリーダム」「インディペンデンス」級など、
アメリカ海軍の沿海域戦闘艦もこのシステムを採用しています。

これはこの方式が高速急行を要する場面の多い任務に適しているからで、
低速では燃費が悪いため、自衛艦で搭載している例はありません。



デッキに出て外を見てみました。
右側が例の「警告バナー」です。



コクピットの後ろは、左舷側がシート、
右側がこのような、おそらくナビゲーション室があります。
ここには通士という役職の乗員が勤務するのでしょう。


右のラッタルから降りてくるとそこはもう後甲板でした。
30年近く一度もリノベーションしていないというだけあって、
かつては白であったと思われる幕や天井のキャンバスは真っ黒です。



後甲板には複合艇が設置されていました。



おとなりに展示されている「うずしお」。



複合艇は海保では「高速警備救難艇」が正式名称です。
全長約5メートル、幅2メートルで定員は6名。

本船では出入りが困難な、浅瀬や狭い海域などで使用されます。



これどうやって海中に投下するんでしょうか。
ダビッド(というのかどうかもわからない)ごと動いて、
アームのように海上に人が乗った艇を下ろすのかな。

今写真を見てつくづくどうするのか不思議に思ったのですが、
現場にいた乗員の方に聞くことをそのときは思いつきませんでした。

一般公開あるあるです。


さて、この後、わたしは知人二人と合流して陸自の装備を見た後、
最後に「いずも」の見学に向かいました。

続く。








「ナンデモシツモンシテクダサイ」〜USS「ハワード」よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-23 | 軍艦

よこすかYYのりものフェスタで公開されていた
アメリカ海軍のミサイル駆逐艦、USS「ハワード」の艦橋にいます。

ブリッジには透明のボードがあって、航空機とのコンタクトなどを
現在進行形で状況を書いていく仕組みになっています。
透明ボードは今まで見てきたアメリカ本土の古い展示艦でお馴染みでしたが、
現役の艦でも使われているのにちょっと驚きました。

超アナログですが、アナログならではの便利さもあるのかもしれません。

それと、この透明ボードそのものは自衛艦では見たことはなく、
アメリカ海軍同時のカルチャーなのかなという気がします。
(自衛艦で搭載されていたらすみません)



といいつつ、ちゃんとその後ろにはコンピュータがあったりする。

ここに写っているのはほとんどが通信用の機器。

左は館内アナウンスの機械、その上にあるのが非常時のアラームベルで、
右のグレーが「フライト・クラッシュ」航空機事故
黄色が「コリジョン」衝突事故、緑は「ケミカルアタック」化学攻撃
赤は文字が読めませんが「アバンダン・シップ」総員退艦・・・かも。

気になるのが手書きの文字ですが、一字隠れているので
これが「METAL」でいいのかどうか悩みました。
だとしたらメタルがどうしたというのだろう。



左舷側のウィングに出てみます。
探照灯や測距儀、双眼鏡などこれは世界共通の機器ばかり。

偉い人が座るシートのついた椅子があるのが違いでしょうか。



わたしを含め何人かがここに出ていると、
一人の士官が出てきてにこやか〜〜に

「ナンデモシツモンシテクダサイ」

と日本語でいいました。
(このセリフをカタカナにしたのは、ちばてつや先生リスペクト)

横須賀勤務になるということで日本語を勉強されたようですが、
そんなことを言って、日本語でバンバン質問されたらどうするんだろう、
と心配していたら、近くの男性の質問には、即座にスマートフォンを出して
答えを日本語で示して説明していました。

さすがイマドキの海軍さんです。



写真を撮っていたら二人が出て行ってわたし一人になったので、
知らないから聞くというより、彼の質問への対応が知りたくて、
「ハワード」のバトル・エフェクティブネス・アワード、
戦闘効果賞
について聞いてみました。

前にも書いたことがありますが、この文字の「E」は
エフェクティブネス=効果から取られており、
「バトルE」といい、その艦に与えられる評価の印です。

毎年海軍内で行われるコンペティションに勝利した艦のみに与えられ、
この賞をめぐる戦いに勝利するのは、実はなかなか熾烈なのです。
なぜなら、同じ部門における全ての海軍艦艇の中で
Eを取ることができるのは、ごくごくわずかな艦だからです。

それは司令部内の作戦環境において、持続的な速さを保ち、
かつ模擬戦闘に勝つことが条件で、選考対象となるには、
6つの司令部優秀賞のうち最低4つを受賞し、
さらに司令部の直属上司から推薦を受ける必要があります。

年間を通じて実施される、認定と資格試験での優れた実績に加えて、
日常的に優れた実績を示すこと(平常点的な?)が条件となり、
訓練、武器検査、戦術準備検査など、16の項目が審査されます。

「ハワード」の受けた賞について書いておくと、左から
ブルー "E" =ロジスティクスマネジメント 物流管理優秀賞
黄色「E」=海軍陸上軍(CNSF)船舶安全司令官賞
赤 "E" =エンジニアリング/生存能力優秀賞
緑 "E" =コマンド&コントロール 指揮統括優秀賞
緑「H」=「 フォースヘルス&ウェルネスユニット賞」


繰り返しになりますが、最後のHは「ヘルス」であり、
艦に置ける健康増進とか医療の充実が受賞の対象になります。

彼はわたしの質問に対し、

「艦の受ける評価の印で、ウチはHを2回取ってます」

と答えました。

これも前に説明しましたが、評価は重ねて同じものを取れば、
「ハワード」のHのように下線が加えられ、それは3本までで、
もしそれ以上になると、今度はEの上に星のマークが付けられます。

艦歴の長さを考慮すると、「ハワード」はこのコンペで
超優秀というわけではないけれど、取っていない艦よりは取っている、
という微妙な?評価になるかと思われます。

ちなみに、超絶優秀艦として有名らしいのが、現在も横須賀勤務の
USS「チャンセラーズ ビル」のようで、
その優秀さは、バトルEのwikiに引き合いに出されるくらいです。

さて、ひととおり彼の説明を聞いてから、話の次穂に困って、

「あなた艦長さん?」

と聞いてみたら、

「いやそんな偉くないっす」

というので初めて目を落として彼の袖を見たら金線一本でした。

「あ::エンスン(ensign)ね」

「そうっす、エンスンっす」

ということはどう見積もっても20代半ばか。
どうりで若いと思ったぜ。

丁寧に少尉くんにお礼を言ってブリッジに戻りました。



先ほど記念撮影をしていて見られなかったこの謎の機器。
なんか一昔前のSFドラマに出てくるテレビ電話みたいだけど、何かな。
そして何のために二つ同じ機器があるのか。

今までのアメリカの古い艦でも見たことがないですが、
なんかもう不安になるくらいアナログな雰囲気が漂う機器です。
少尉さんにこれ何か聞けばよかった・・。



ハンドルがあればそれを回して見たい、それが少年の習性である。
乗員の監視のもとでやりたい放題。



男は永遠に少年であるという言葉がふと浮かびました(棒)



反対側ウィングにも永遠の少年たちがいっぱい。




ウィングからは前甲板がこのように見えます。



こうしてみると一人で訪れる女性も結構います。



艦橋の屋根の上にはドームを被せたレーダー。



モップがブリッジに立ててありました。
ジェシカとキティとかいう名前ついてそうです。



さりげなく隅っこにモップ。
掃除道具も日本とは仕様が違うのがおもしろい。


左舷側をブリッジの階から下に眺める。
おぢさんたちが撮っているのはおそらくスパイレーダーの写真。



構造物の上部にも至る所にセンサーが。



左舷には作業船が横付けされていました。
ホースと舫が雑然と見えながら秩序を持って配置されています。
この作業船を運行しているのは日本の会社かな?


さて、というわけでUSS「ハワード」の見学を終わり、下艦すると、
岸壁では乗員がTシャツを売っているお店がありました。

過去このような「艦グッズ」をその場の気分で買ってみたものの、
結局利用することがなく、タンスの肥やしになっているので、
最近ではめったなことで心は動かず、このときも、
写真だけ撮っていいですか、と乗員に断って撮影しただけでしたが、
こうしてみると、特に「ハワード」の龍についてのエピソードを知ると、
右側の赤い龍をあしらったTシャツなどちょっと惜しかった気もします。

まあ、そう思っても着ないんですけどね。



「ハワード」で大満足したあとは、その後ろの海保の船に並びました。
これがまた乗るのにえらく時間がかかってしまったのですが、
見学内容は次回にします。



続く。

ドラゴンとVICTORYの旗 USS「ハワード」艦橋~よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-21 | 軍艦

さて、アメリカ海軍の駆逐艦「ハワード」の見学、
甲板から左舷側を周り、ブリッジにたどりつきました。



中から出てくる人と狭い通路ですれ違いつつ進みます。



上の番号はここが艦のどの位置なのかを示す住所で、
乗員ならこの数字を見ただけで自分がどこにいるかわかるそうです。

其の下のヘッドフォンの絵と一緒に書かれているのは、

「危険な騒音は聴覚障害を起こす可能性があります」

聴覚保護が必要

✅その他の操作中(ソナー)

✅プラグとなにか
(写ってませんでした)

其のためにヘッドギアで耳を保護しましょうということのようです。
ソナー音が聴覚に障害を起こすほどのものとは知りませんでした。

関係ない話かもしれませんが、イルカや鯨などある種の海洋生物は
自然のソナー(音波探知機)を使用して移動や狩りを行います。

彼らにとって人間が起こす「騒音」が、影響を与えることが知られており、
海洋哺乳類だけでなくイカなどの頭足類も、
低周波のパルス音に弱いと言われています。

たとえば低周波音に集中して暴露されると、イカなどの生物は
外套膜が溶け、筋肉が損傷し、平衡胞に障害を受け死滅するのです。

この実験は海軍のソナー演習と同じような強さと周波数なので、
世界的にみて海軍のソナーが生態系に影響を及ぼしているといえます。

人間はソナー音の騒音を防げばそれでよしという考えもありますが、
低周波が人体に与える影響はまだわかっていないことも多いそうです。



その上で「ハワード」のブリッジにあったこの鯨早見表を見ると、
アメリカ海軍の海洋生物(特に鯨)に対する気遣いが垣間見えます。

海面に見える尾の形、ジャンプする様子、海面にどう見えるかで
クジラが何をしているのかわかる仕組みです。

「水面で動かず ただ浮いている」

「フラッキング 深く潜るまえに尾鰭を空中に持ち上げる」

「ロブテイル 吸虫を水に叩きつけて退治している」

「泳いでいる ひれやしっぽを使って推進している」

「スパイホッピング 頭を水面から高く垂直に上げる」


「ブリーチング 体を頭から空中に上げて水飛沫を上げて戻る」

「フリッパーズラッピング 転がり水飛沫で鰭を水面に叩きつける」

これを知っていたら艦隊勤務においてなにがどう役に立つのだろう、
と漠然と思うわけですが、おどろいてはいけない。

このチャートを制作し配布しているのは他でもない、アメリカ海軍です。

鯨に遭遇したら、「ハワード」艦橋では誰かがこのチャートを持ち出し、
みんなでわいわいと観察するんだろうなあ。



入ってすぐのところにある火災時用の散水ホース。


写真を失敗したので小さな写真ですみません。

ブリッジの後ろ側にあるので何か大事なものが中にあるのかと思われますが、
扉に貼られた紙には、(読みにくかった)

「受信、送信。録音、増幅、情報処理、および写真機器
(テープレコーダー、ステレオ、テレビ、カメラ、携帯電話など)
はセキュリティスペースに持ち込むことはできません」

とあります。


艦橋は今までアメリカで見たことのあるいくつかの軍艦のそれの
延長線上にあるような既視感を感じるものでした。

窓ガラスの外にワイパーがついているのに初めて気づいたのですが、
これって自衛艦にもありました・・・・よね確か。

窓際にある機器に書かれたSIMRADとは、ノルウェーのオスロに本社を持つ
船舶用電子機器メーカー、SIMRAD yachtingを意味します。

戦後の1947年に無線会社から始まって、今では
そのマリンエレクトロニクス部門がNavico に買収され、
GPSの分野で地位を確立しています。


ブリッジにお子様が登場すると、米軍さんも大歓迎モード。
親子の写メを中尉さんが撮ってあげたりして和気藹々です。


アメリカ海軍には自衛隊のように「椅子の色で階級を表す」
というカルチャーはありませんが、座る場所は厳密に決まっています。

「COMMANDING OFFICER」

と金のプレートに刻まれた椅子で艦長気分を味わう人。



「ヘルム・フォワード・ステーション・ユニット」

とありますので、キーボードで打ち込むタイプの操舵システムでしょう。
モニターは消されていますが、各画面の下には
赤いプレートに「シークレット」と素敵な文字が書かれています。


コンソールに貼られていた「ハワード」のパイロットカードです。

ここには「ハワード」のコールサイン(NHOW)をはじめ、
マストの高さと橋梁などを通過する際の安全な高さ、
ビームの最大値、重量、そしてナビゲーションレーダーの番号、
プロペラや錨の諸元、プロペラの回る方向など、
主に艦が操舵の状態にあるときに必要な情報が書き込まれています。



無線通信などの情報が記されています。
右側はなかなか面白くて、船舶の種類とその状況、
その際の信号(国際と国内とで少し違う)が一覧表にされています。

たとえば、

「動力船」が「水上を進んでいる」はツー・トンを2分間

「進行中の動力船」が「しかし停止:水路を通り抜けない」はツーツー、


みたいな感じです。
船同士で交信する暗号みたいなもんですね。

左にも

「あなたを左舷側(右舷側)に残すつもりです」

「右舷(左舷)側でおいこすつもりです」

「あなたがわたしの右舷側を通過することに同意します」

「同意できません/理解できません」

「危険です あなたの行動が理解できません/異議を唱えます」

などという会話?例が挙げられています。



USS「ハワード」のTSO

コンバットシステム・テンポラリー・スタンディングオーダー

ということで、1のリファレンス部分はわたしには理解不可能な呪文です。
それもそのはずで、1の1)~3)は

「コンピュータの水力制御が失われる可能性を軽減するための手順の説明」

なのだそうです。
かろうじて理解ができるのは3の、

「関連する人員:甲板将校(OOD)司令官(CON )操舵手、
リー・ヘルムスマン(エンジンルームにエンジン命令を伝える船員のこと。
各命令をコニングオフィサーに繰り返し伝える。
各命令を実行した後、実行されたことを航海士に通知する)
当直戦闘システム士官(CSOOW)、
電子支援システム(ESS)スーパーバイザー、当直技術士官(EOOW)」


それはここにいるほとんどの人間ではないのかと。
しかし、こんなことをわざわざ書かなきゃいけないもんなのかしら。



ジャイロというのは、どんな船でも中央線に置かれているものです。
ということが、このジャイロに書かれている

「センターライン」

という言葉によってはっきりしました。
その上に

「ジャイロ・エラー 0.4E
REP. エラー 0.0
日付 22年12月1日」

と手書きされています。


席の後ろのプレートはマスキングされていますが、
この席に座る人がシモンズさんであることはわかりました。
(座席に名前入りのバッグが掛けてある)



足元に描かれた「ハワード」のロゴマーク。
前回現役で亡くなったチャールズ・ハリス元艦長の着任の辞で
ロゴマークに刻まれたモットーの

「Ready for Victory」

が使われていたのを知ったばかりです。
そして、ロゴに描かれているドラゴンは、

「ハワード」艦長はそうしてドラゴンを率いた

という記事をの一文を思い出させました。

さらに調べてみたところ、このクレストは艦名の由来である
名誉勲章受賞者ジミー・E・ハワード海兵隊一等軍曹と、
第二次世界大戦中に活躍した同名の「ウィックス」級駆逐艦「ハワード」
紋章の一部をモチーフにしているようです。
(そちらの『ハワード』さんは第一次世界大戦で殉職した艦艇指揮官)



ここで、2021年6月7日、
「ハワード」がサンディエゴを離れる時に揚げていた赤い旗をご覧ください。
ドラゴンと「VICTORY」の文字が描かれているのがわかります。

同艦が自らを表すためにドラゴンを選んだのには、理由があります。

アメリカには、米軍で使用されている紋章と部隊徽章のデザインを管理する
軍運営の紋章学研究所(TIOH)なる組織があるのですが、
そのウェブサイトにある記述によると、

「東洋のドラゴンは、太平洋における活躍と、
ハワード砲兵軍曹の指揮下で小隊が発揮した闘志を表している」

と説明されています。

ジミー・ハワードの功績についてはすでにこのシリーズでお話しましたが、
叙勲理由となった「ヒル488の戦い」についてはこんな映像もあります。

The Battle of Hill 488

恐るべきはこれを撮っているカメラマンもまたここにいるってことです。

叙勲されたハワード一等軍曹は、1993年に死去し、
それを受けてDDG-83が「ハワード」を冠されることが決まりました。

そして「ドラゴン」ですが、これは先代の「ウィックス」級「ハワード」が
1943年、太平洋戦域に移され、マリアナ諸島やフィリピンへの侵攻など
さまざまな島嶼攻略作戦を支援したことから付けられました。

「アジア地域で暴れた艦」=ドラゴン

というアメリカ人の抱きがちな?イメージによるものでしょう。

そして、USS「ハワード」は、20年あまりの間、主に太平洋で活動し、
空母打撃群11の一員としても活動してきました。

2年ごとに行われる環太平洋合同演習(リムパック)や、
東南アジアで毎年行われる洋上即応訓練(CARAT)など、
数多くの演習に参加し、また、
太平洋地域での人道的な救援活動も支援してきました。

USS「ハワード」は、その名にまつわる歴史と、
どんな任務においても常に「勝利」を追い求める、という
彼らのモットーを反映した伝統的なドラゴンの旗を掲げて、
こんにち横須賀の米軍基地の戦闘艦の重要な一角を占めています。



続く。






USS「ハワード」装備あれこれ〜よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-19 | 軍艦

よこすかYYのりものフェスタのとき、海上自衛隊横須賀基地で公開された
アメリカ海軍のミサイル駆逐艦USS「ハワード」についてお話ししています。

前回は、前甲板の主砲に其の名を顕彰されていた、
前艦長(就任して3ヶ月で癌のため急逝した)である
チャールズ・ハリス中佐についてわかったことを書いてみました。

さて、今日は甲板から艦橋までの見学通路を歩きながら
目についたものをご紹介していこうと思います。



前甲板を左舷側から後ろに回り込んでいくと、
そこから階段を上っていって艦橋に入るコースです。

「アーレイ・バーク」級はイージスシステムを搭載しており、
フェーズド・アレイ・レーダーPARが装備されています。
「ハワード」が搭載しているのは

AN/SPY-1

というタイプで、ご覧のような8角形のアンテナ
(パッシブ・フェーズドアレイ・アンテナ)を4面に固定設置して
目標の捜索や追尾、艦対空ミサイルの誘導を行います。

「アーレイ・バーク」級ミサイル駆逐艦は40番艦まではSPY-1Dですが、
「ハワード」など41番艦以降はSPY-1D(V)を搭載しています。



日本でこ全く同じ型を搭載しているのは「あたご」「まや」型となります。

また、今回の観艦式に王立オーストラリア海軍から参加した
駆逐艦HMAS「ホバート」も同タイプ搭載です。

単にレーダーといってしまえばそれまでですが、この凄いところは、
探知の際、

「全周の半球空間中の所定の空間を
約1ミリ秒の間ペンシル・ビームで捜索する」

というこの一行に表されている気がします。(気がするだけですが)

走査パターンは常に最も効率的に捜索するように制御され、
ある1つのビームで1つの目標を初探知すると、コンピュータは目標に対して
複数のビームを集中的に指向して捕捉し、追尾に移行します。

「SPYレーダー表示画面に目標を視認すれば、そこには目標が存在する。
表示画面に目標を視認しなければ、そこには絶対に目標は存在しない」


とアメリカ軍が豪語するのも無理からぬことと言えましょう。

ちなみに構造物の4面に貼って使用することから、
アンテナ重量は比較的軽く設計されているそうです。


舷側の通路に木箱が無造作に置いてあるのがアメリカ海軍。
自衛隊ではおそらく絶対にやらないと思われます。



ちょうどここで舷門の後側にやってきました。
DDG83とは他でもない「ハワード」のことですが、
それよりこれは「何かを隠すためのカバー」?
それとも日頃はカバーをかけておかなくてはならない装備?

これがなんなのかお分かりになる方おられますか。

Mk.36 SRBOC
Mark 36 Super Rapid Bloom Offboard Countermeasures

艦橋に行くには右側に見えている階段を上るのですが、
幅が狭くて一人しか通行できないので、降りてくる人が途切れるまで
けっこう長時間待っていなくてはなりません。

この日はのりものフェスタというイベントの性質上お子様も多く、
小さな子が親の助けも借りずえっちらおっちら降りてくるのを、
ひとの子なのにハラハラしながら眺める場面などもありました。
(こういうときすみません、というのが日本の親。
アメリカ人の親はThank you.という)

わたしは人の流れが切れるのを待ちつつ、チャフランチャーの撮影を。

このデコイシステムは自衛艦でもお馴染みのスタンダードタイプで、
「スーパーアーボック」などと呼ばれたりします。

ランチャーはあっちこっち好き勝手な方向に向いているようですが、
実は1列は45度、もう1列は60度に設定されていて、
発射されたデコイを効率よく拡散するようになっています。

発射速度は75m/sです。

各ランチャーには12~36発の弾丸が搭載されており、(艦によって違う)
搭載されるランチャーの数や配置は艦船の大きさによってこれも違い、
小型戦闘艦は2基、空母だと8基まで搭載します。




Mark 38 25ミリマシンガンシステム

高速機動水上標的(HSMST)、浮遊機雷、
敵の遊泳者に対する短距離能力を艦船に提供する。

これはもしかしたら海中にいる人を狙うという意味?(;゚Д゚)

また、陸地に近い艦船では、敵の人員や軽装甲車両に対して使用する。
低コストな兵器であり、昼夜・天候に関係なく運用することができる。
軍艦の配備要件に合わせて恒久的または一時的に設置することが可能。


とにかく価格はお安いってことですね。



ちなみに海上自衛隊での使用はなく、観艦式参加組でいうと、
オーストラリア海軍の「ホバート」級駆逐艦と、
シンガポール海軍の「フォーミダブル」級フリゲートが搭載しています。



全く何にするのか想像もつかないものがありました。
赤い札や「警告」などというプレートがびっしりとお札のように貼られ、
大変危険なものであるのは確かです。

まず正面の赤いプレートには、

MK58 スモークフロートオペレーター手順

ステップ1:スモークの上からプラスチックカバーを取り外す

ステップ2:スモークフロートの上部にあるアルミニウムのタブを引いて
ポケットにいれる

ステップ3:水中の人に向けてスモークフロートを投げる

注記;浮遊する煙は海水で活性化されます

警告;タブがスモークフロートの上部から取り外されると、
交換することはできません。
詳細なガイダンスについてはOP4の最新バージョンを参照してください

これから類推するに、どうもスモークを使って

"Man overboad !"「人が落ちた、実際」


の際になんとかする装備のようです。
煙で水上の要救難者の位置をピン留めするのでしょうか。


こういうオレンジスモークで場所が特定できるようにするのです。

昔掃海艇から乗員が落ちた事故がありましたが、
この装置のように落水者の近くにすぐさま位置特定するための
フロート式マーキングは自衛艦に搭載されているのでしょうか。

今までの見学で気にしたこともありませんでしたが・・。


右舷側の25ミリマシンガンシステム。
「アーレイ・バーク」級はこれを両舷に1基ずつ、合計2基備えています。


舷側から岸壁を見ると、乗員がお菓子を打っているテーブルが見えました。

拡大してみると、お菓子はほかにもお馴染みハーシーズなどがあり、
ほかにも「ホバート」のパッチ、シール、第7艦隊のパッチ、
そして「ハワード」のキャップ、マグカップなどもテーブルに乗っていて、
まわりに群がっている男性たちのお目当てはこちらのようです。

自衛隊の公開イベントにいくと、かなりの高確率で
米軍のロゴの入った帽子やワッペンをつけた男性とすれ違いますが、
そういう人たちはこういう機会にグッズをゲットしているんですね。


海洋業務・対潜支援群
Oceanography ASW Support Command


この写真にもこのワッペンをバックパックに付けている人がいました。
鯨に蛇の絡まった銛、桜二つは、司令官が海将補であることを表します。


さらに上甲板階より臨む「ハワード」後部。
艦に搭載するこのようなゴムボートのことを、

複合艇 Rigid-hulled inflatable boat:RHIB RIB

と呼びます。

「アーレイ・バーク」級は重量対策を兼ねて、従来の内火艇、
ダビッドを廃止してRHIBでその任務を行なっています。

軽量ではありますが、高性能・高容量のボートで、
船底が硬く、側面に形成されたエアチューブが接合されており、
高圧の空気で膨らませ船底に沿った側面に復元力を持たせた構造は、
安定性、軽量性、高速性、耐航性に優れています。

チューブ式のゴムボートは、パンクしないように中は何層にもなっており、
チューブの破裂を防ぐための圧力の調整も自動的に弁を使って行われます。

「ハワード」が現在搭載しているのは

ゾディアック社製のハリケーンH733

ウィラード社製シー・フォース

のどちらか(判明せず)であるようです。


わたしが乗艦したときにはほんの少しだったのに、
あっという間に見学を待つ人の長い列ができていました。



階段を上がると、そこはもうブリッジです。
それではいよいよ中に入っていくとしましょう。


続く。


チャールズという名の主砲〜USS「ハワード」前艦長に捧ぐ

2022-12-17 | 軍艦

YYよこすかのりものフェスタで公開されたアメリカ海軍の駆逐艦、
USS「ハワード」の見学レポート、続きです。



見学者はまず前甲板を左回りに歩いていくことになります。
普通の艦艇見学でつまづきやすい錨鎖の部分は立ち入り禁止なのに、
ここでは何の制限もされていないので、ちょっと驚きました。

というか、自衛隊での見学に慣れていると、
つまづきやすいところに黄色と黒のテープが貼ってあったり、
赤いリボンがしてあったり、危なそうなところは立ち入り禁止だったり、
あるいは狭い階段などのそばには必ず見張りの人がいて
場合によっては交通整理するやり方というのは、
アメリカでは全く採用されておりません。

全てに対して言えることですが、日本以外の国は基本、
自分から望んでそこにやってくるからには、
何をするのも自己責任の上であり、結果も然りという考え方です。



艦首にはアメリカ軍の国籍旗が翻っています。

2001年に同時多発テロが起きたとき、アメリカ軍は、
一時的に赤い線に蛇あしらわれ、
「Don 't tread on me」(わたしを踏みつけるな)
というロゴの入った南北戦争時代の旗、



ファースト・ネイビー・ジャック
(First Navy Jack)

が使用されていました。

わたしがコネチカットの潜水艦基地に展示されている
原潜「ノーチラス」を見学した時も、これが掲げられていた記憶があります。

その後2019年の6月4日のミッドウェイ海戦戦勝記念日に、
海軍は国籍旗を従来のユニオンジャックに戻すことを決めました。



艦首近くに立ち米軍の基地を眺めれば、そこには

USS「バリー」(Barry)DDG-52

が。

1995年就役から27年も経過している老齢艦で、イラク戦争、
リビア内戦などにも出動し多経験を持ち、2016年に
USS「ラッセン」の配置換えにともない、近代化を完了し、
このときにイージス・ベースライン9という
航空機・巡航ミサイル・弾道ミサイル・水上艦・潜水艦・
陸上目標に対する防御・攻撃が可能な最新の戦闘システムを換装しました。

ですから、老艦でありながらQOLを重視した環境を備え、
艦橋も完全統合された近代的なもの、そしてなにより、
調理室には最新式の設備が備わっているのだそうです。

外見は今ひとつでも、中は凄いんです。(多分)



何をするものかはわからず。
赤いオリジナルカバー付き。



甲板の上は満員御礼状態でした。



この範囲の見張りのために立っているのはこの水兵さんただ一人でした。
ただ立っているだけとはいえ、だらしない様子は全くなく、さすがは軍人、
立ち続けることには慣れきった様子です。(退屈そうでしたが)

ときどき英語の喋れる人にいろいろ質問されていましたが、
彼は性格なのか、終始無表情で淡々と任務をこなしていました。



キャプスタンに日本語も交えて「立ち入り禁止」と書かれていますが、
これは錨鎖のなかに足を踏み込まないでね、という程度の軽い禁止で、
基本的にどこを歩いても水兵さんから怒られることはありません。

レイクショア(LAKE SHORE) Inc.は、民間、防衛のどちらもの分野における
海事関係の装備や機材を設計し供給する会社で、
従業員の15%がアメリカ軍の退役軍人からなる会社です。

クレーン、ドア関係、荷物の積み込みのための装備、エレベータ、
給油システム、錨周りシステム、そしてキャプスタンまで広く請け負います。

同社は、わたしがこの夏徘徊していたミシガン湖の左上にあります。


■ ”チャールズ”という名の主砲


「ハワード」の主砲には「チャールズ」と名前がついています。
武器に愛称をつけるのはアメリカ軍では多々あることなのですが、
今回はこの”チャールズ”の由来についてわかったことをお話しします。

まず、「ハワード」の主砲のスペックから見ていきましょう。

MK.45 5インチ砲
(5"/54 caliber Mark 45 gun)
5-inch (127 mm)/62 Mk 45 Mod 4
 (lightweight gun)

Mark 45マウントに127 mm (5 in) L54 Mark 19砲を搭載した砲で、
水上艦、対空、水陸両用作戦支援のための対岸砲撃用に設計されています。

砲架は20発の自動装填装置を備えており、弾丸は完全自動制御で発射され、
最大発射速度で弾丸を使い切るのに1分少々しかかりません。


1960年から開発が開始され、最初に配備されたのは1971年。
「ハワード」が搭載しているMods4は2000年から運用されています。
もう22年目になりますが、次のバージョンは出てくるのでしょうか。

採用されなかったMods3を除いて、今まで3回改装がされてきましたが、
Mods4になってからの大きな違いは、自動装填装置の搭載で、
従来、継続的に使用する場合に、甲板下に6名の乗員
(砲塔長、パネルオペレーター、弾薬装填手4名)が配置され、
弾薬を継続して補給していたのが、これ以降はマウント内に人がなくても
20発の弾丸を発射することができるようになったことです。


Mods.4

アメリカ海軍では「タイコンデロガ」級と「アーレイ・バーク」級が、
海上自衛隊では「もがみ」型「あたご」型、「まや」型、
「あきづき」型、「あさひ」型
護衛艦にこのMods.4が搭載されています。

導入されて20年も経っているのに軒並み新しい護衛艦が採用するのは、
それだけ主砲として安定した評価をされているのだと思われます。

■ チャールズ・アルパンゾ・ハリス2世元艦長



甲板に出たその瞬間から、わたしはこの主砲の後ろに書かれた

Dedicated to
CDR Charles Harris
1979-2021

Guns Up, Ready to Fire.

チャールズ・ハリス中佐を讃えて
銃を上げ 掃射用意


という言葉に目を惹きつけられていました。
英語でこのような表現がされた場合、(そして書かれた年から想像して)
ハリス中佐という人はお亡くなりになったと考えるのが妥当です。



そこでわたしは構造物近くで見張りに立っていた女性中尉に目をつけました。
目をつけたというのは人聞きが悪いですが、なんとなく
こういうことは士官に聞いたほうがいいような気がしたのです。

彼女は親子連れに頼まれて、子供との記念写真に収まっていたので
それが終わったら、と思ったら、写真を撮るや否や行ってしまいました。

それならば仕方ない、と(ごめんね)わたしは
後に一人残ったアフリカ系の二等兵曹に、
チャールズ・ハリスって誰ですか、と聞いてみました。

その答えは、わたしが想像した以上に衝撃的でした。


左:チャールズ・ハリス前艦長

アメリカ海軍のニュース画像です。

カリフォルニア州サンディエゴ

チャールズ・ハリス司令官は、2021年5月6日、米海軍
「アーレイ・バーク」級誘導ミサイル駆逐艦USS「ハワード」(DDG83)
の艦内で、ソーシャルディスタンスを保った指揮官交代式を行い、
ウォルター・パーカー3世司令官の後任となりました。



潜水艦「シルバーサイズ」の艦長交代について説明した時、

A relieved B as commanding officer.

という構文は、直訳すると「AがBを解任する」となってしまいますが、
これは海軍独特の言い回しらしく、

Aが後任に就いたのでBは離職した
=Bの離職に伴い後任にAが就任した


ということをこのように表現することが確認できました。

前任のパーカー中佐についても言及されています。

ジョージア州出身のパーカー中佐は、2019年11月から指揮官を務めました。
彼の指揮のもと「ハワード」は基本的なフェーズの認証を完了し、
海軍のための最新の武器や、技術のいくつかをテストする
複数のCSSQT演習を実施し、Covid-19 Surgeの展開を実行しました。

『乗員諸君(チームと称している)、
わたしは諸君が共にやってくれたことをとても誇りに思います 』

とパーカー前艦長は述べました。

『この艦と乗組員は、すべての総和をはるかに超える働きをしたと思います』

パーカーの次の任務は、ワシントンD.C.の統合参謀本部です。
「ハワード」の副長は、直近ではチャールズ・ハリス中佐が務めていました。

海軍の軍艦では、副長には必ず艦長と同じ階級の者が配置されます。
それは有事に最も先任である者が指揮をとるからであり、
艦長に万が一のことがあれば、自動的に副長が指令を引き継ぐからです。

さて、そのハリス新艦長の経歴ですが、以下の通り。

USS「ドナルド・クック」(DDG-75)の通信士兼電気士、
英国海軍との人事交流プログラムに参加した際には
HMS「ヨーク」とHMS「エンデュランス」の航海士、
USS「デューイ」(DDG-105)の主任技師、
USSフリーダム(LCS-1)の作戦士など。


陸上では、海軍人事局水上配給部の配置担当官、
米太平洋艦隊副司令官のエグゼクティブ・アシスタントを務めた。


一見して典型的な「艦(ふな)乗り」のように思われます。
そしてハリス新艦長は就任時の抱負をこのように述べました。

「2021年のページをめくった今日、
皆さんの前に艦長として立つことを光栄に思います。

我々は日本に母港を移し、最も厳しい海や水路に出航していきます。
前途はきっと多難なものになることでしょう。
しかし、我々は第7艦隊で最も有能な軍艦を持ち、
最高の訓練を受けた乗組員であります。

『レディ・フォー・ビクトリー』の精神とともに」

これを読む限り、ハリス艦長が「ハワード」に着任したのは2021年5月です。
しかし、わたしの質問にアフリカ系の二等海曹ははっきりと答えました。

"He passed away."

と。

亡くなった年が砲に記されている通り2021年だったとすれば、
ハリス中佐は艦長職に在りながらわずか41~2歳で亡くなったことになります。

さらに検索してみると、2001年9月11日の同時多発テロで亡くなった
ニューヨーク市消防局の消防士、スティーブン・シラーを追悼して
設立された慈善団体で、アメリカの軍人や警察官、消防士など
殉職した人たちを讃え、記憶することを目的にしたサイト、

Tunnel to Towers Foundation

にその名前が見つかりました。



2021年8月28日、米国海軍中佐チャールズ・アルファンゾ・ハリスIIが、
米国海軍での勤務に起因する珍しい進行性の癌で亡くなりました。


ハリス中佐は、5月6日に「ハワード」に着任してわずか3ヶ月後、
「海軍での勤務に起因する癌で」
亡くなったということになります。

これほどはっきり進行性の癌の原因とされた勤務とは何だったのでしょうか。

このページの、在りし日のハリス艦長が「ハワード」の帽子を被った夫人と、
「ハワード」艦上で写したと思われる仲睦まじい写真からは、
直後に病に斃れかえらぬ人となるような様子は気配すら見られません。

「ハワード」の艦長に就任した時には、病状はかなり進行しており、
ステージも進んでいたと考えられますが、人事に影響なかったということは
周りは勿論、本人も病気に全く気づいていなかったのでしょう。


病の原因となったのは数年昔の勤務上の何かであるのは間違いありませんが、
これ以上のことがわからない以上、全ては想像に止まります。



このページにおけるハリス中佐についてのプロフィールは、以下の通り。

ハリスは、米国海軍兵学校で軍歴をスタートさせ、
経済学の理学士号を取得して卒業し、海軍兵学校で軍務に就きました。
その後、USS「ドナルド・クック」(通信・電気担当)
USS「トゥーワン」(訓練担当)USS「デューイ」(機関担当)
USS「フリーダム」(作戦担当)USSハワード(副長)に配属され、
艦長としてUSS「ハワード」に勤務。

また、英国海軍との人事交流プログラムでは、
HMS「ヨーク」とHMS「エンデュランス」で当直兼航海士として勤務。

2021年5月6日、ハリスはUSS「ハワード」DDG83の飛行甲板に立ち、
その艦と強力なドラゴンズの指揮を執ることになりました。

海軍の駆逐艦の指揮官になることは彼の生涯の目標であり、
19年間の激務の末、400日以上の休暇を犠牲にし、
配備のために数え切れないほどの月日を経て、彼はそれを実現したのです。

妻エリザベスは、彼の軍服にCommand at Seaの星章を付けた日ほど、
彼を誇りに思ったことはないと述べています。

米国海軍司令官チャールズ・アルファンゾ・ハリスJr.には、
妻のエリザベスと娘のアニカとクインがいます。



わたしがハリス中佐について質問した二等海曹に、

「彼が艦長のときあなたはこの艦にいましたか?」
(つまりあなたは彼のことを知っていましたか)

と尋ねると、彼はイエス、と答えました。

突如逝ってしまった現役の艦長の名前は、おそらく「ハワード」最後の日まで
主砲に刻まれ、其の砲身は「チャールズ」と呼ばれるのでしょう。


改めて砲に記された献詞を見ていたら、あることに気がつきました。
明らかに以前の「誰かを偲ぶことば」を消した上から書かれています。

消した文字はもしかしたら艦名由来となったジミー・ハワードの名だった?
そして上からあらたにチャールズ・ハリスと書いた?

万が一そうだったとしても、現役の艦長を失った乗員たちの気持ちは
おそらくハワード陸軍軍曹なら察してくれることとは思いますが。


続く。



USS「ハワード」アーレイバーク級ミサイル駆逐艦〜よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-15 | 軍艦

今回のよこすかYYのりものフェスタの一番の目玉、
それはなんといってもアメリカ海軍の駆逐艦、

USS「ハワード」Howard(DDG-83)

であったのはまちがいありません。

「ハワード」は、アメリカ海軍の「アーレイ・バーク」級駆逐艦です。
艦名は海兵隊のジミー・E・ハワード一等軍曹(USMC)に因みます。



ハワード一等軍曹は、朝鮮戦争、ベトナム戦争のベテランですが、
名誉勲章を与えられた「ヒル488の戦い」で、
小隊15名の海兵隊員、2名の海軍兵を率いて敵陣の背後に降下し、
ベトコンの1個大隊(300人以上)と交戦し、12時間の戦闘で、
6名の犠牲者を引き換えに、敵200名を殲滅するという働きをしました。

ハワードは敵の手榴弾で重傷を負いながらも指揮を続け、
帰還して無事に退役しています。

ベトナムで一緒に戦った部下は、彼のことを

「ジョン・ウェインのような、ポーカーフェイスのハードな男で、
彼を見ていると『硫黄島の砂』のテーマソングが聞こえてくるようだった」


と回顧しています。

ハワード軍曹は64歳で亡くなりましたが、USS「ハワード」は、
サンディエゴから出港する時、彼が葬られている
フォート・ローズクランス国立墓地(コロナド近くのカプリロ国定公園)
の前を通るときに、必ず敬礼を行う慣習になっています。


ここで唐突に、元自衛官の方からいただいた、
「トップガン」のサンディエゴ聖地マップです(笑)

左にある
『アイスマンの葬儀をやった国立墓地』
ここに、ハワードさんも眠っているわけです。


「アーレイ・バーク」級というのもとてつもなく数が多くて、
「ハワード」はDDG-51からDDG-121までの現役艦、
そしてDDG-139までの建造中、建造予定艦のうち33番艦となります。

同級の命名基準はお察しの通り人名なので、
まあいうたらネタは無尽蔵です。

リソースには全く困らない上、艦名に名前を残すことが、軍人にとっては
至高の褒章となるのですから、言うことなしのシステムですね。

同級にはリチャード・オケインローソン・ラメージ
チャールズ・’スウェード’・モムセンなど潜水艦畑の人、
ジョン・ポール・ジョーンズなど古の海軍軍人、ルーズベルトなど政治家、
ミッチェル、スプルーアンスなどという海軍の英雄がいるかと思えば、
同じ船に乗っていて戦死した三人兄弟「ザ・サリバンズ」などの、
名もない水兵たちの名前もあります。

女性の名前もあります。



第一次世界大戦で海軍看護隊に加わり、女性として初めて十字賞を受けた
レナ・サトクリフ・ヒグビー
(ネットニュースでHigbeeを”ハイビー”としていたけどそれはないかと)
そのミドルネームを含むフルネームを
USS Lenah Sutcliffe Higbee (DDG-123)に残しました。

また、日系アメリカ人の政治家(元陸軍第442日系部隊)の、


左・イノウエ(爆弾で右手を失い医師の道を諦めた)

「ダニエル・イノウエ」USS Daniel Inouye 
(DDG-118)

また、史上初のアジア系アメリカ人将官となった、


Gordon Paiʻea Chung-Hoon
ゴードン・パイア・チュン=フー(1910ー1979)

の名前をとった、

「チャン・フー」USS Chung-Hoon (DDG-93)

さらに、第一次世界大戦時、USS「サンディエゴ」がボイラー爆発した際、
顔に火傷を負いながらも現場を離れなかったフィリピン人の消防士、


テレスフォロ・デ・ラ・クルス・トリニダード(1890-1968)

の名前をつけた、

「テレスフォロ・トリニダード」
USS Telesforo Trinidad (DDG-139)

が、建造予定となっています。

おっと、つい艦名由来の話になると夢中になってしまいます。
先に進みましょう。



持ち物検査は一応基地の入り口で済んでいるということで省略ですが、
「ハワード」に乗艦するためには免許証などの身分証明が必要でした。

乗艦するためのラッタルは通行を制限するため、
(ときどき写真のように荷物の積み下ろしが行われる)
5〜10分くらい並んで待ちました。

この様子を見ていただいてもお分かりのように、
並んでいるのはわたし以外全員が男性です。



積み下ろした物品は、なんとアメリカのお菓子。
TWIXというのはアメリカのパーキングエリアの食堂のレジなんかに
ちょこっと置いてあるようなクッキーバーです。

M&M(これをアメリカ風に発音すれば”エメネム”)とか
チーズイット(チーズクラッカー)なんかも。
艦内のPXの在庫整理をかねて(しらんけど)売るつもりのようです。

ところでセーラー服の二人、全く日本人のようで、
自衛官が制服だけ替えていると言われても信じてしまいそうですが、
この人たちも当然アメリカ軍人なんだなあ。



並んでいたら横でなにやら修理らしい作業をしているのに気がつきました。
乗員と海自の女性隊員、そして民間人らしいアメリカ人のおじさん。
これはどういう状況かな?
(多分ヒントは上から下された青いホース)



ラッタルの途中で通行者の見張り?をしているのも東洋系。
第7艦隊に配属される軍人はやはり東洋系が多くなるのかしら。
日系でなかったらあまり意味がない気がしますが。



舷門には5旒の旗が。
左から、

アメリカ合衆国海兵隊旗
🇯🇵日本国旗
🇺🇸アメリカ合衆国国旗
アメリカ合衆国海軍旗

 POW戦争捕虜/MIA任務中行方不明者の旗

となります。

また、左側の赤いテントに黄色い文字で書かれた、

”READY FOR VICTORY”
(もうこれで勝つる:意訳)

は、「ハワード」のモットーです。



構造物に掲げられている15とトロージャンが描かれたパッチは、

第15駆逐戦隊(Destroyer Squadron 15, DESRON 15)

のもので、「アーレイ・バーク」級DDGの8隻から成ります。



舷門から右側に進み、トンネルのようになった通路を通り抜けます。

「負荷容量」

「パント」(The punt)は少なくとも3人が乗れるものとし、
総荷重600ポンド(人員・機材)でなければなりません。

「パント」とは、一般的に小船の意味なので、
おそらく作業艇のことを言っているのだと思います。


赤い札というのはだいたい危険を告知するものですが、これも

危険
ここ(今いる場所)はミサイル爆破エリアに通じています。
うろつかないでください。
警告なしに発射が行われる可能性があります。


となっています。
ミサイル発射のときに甲板をうろうろしていたら
大変なことになるのはこれを読んできるみなさんならよくご存知ですね。



通路を抜けると前甲板に出ます。



Mk.41 垂直発射システム(Mk.41 Vertical Launching System)

自衛隊のほとんどの護衛艦に搭載されているのでお馴染み。
「あさひ」型以降の「まや」型、そして「もがみ」型もこのタイプです。

今回観艦式に参加した外国艦では、
タイ海軍の「プミポン・アドゥンヤデート」フリゲート
王立オーストラリア海軍の「アンザック」級フリゲート「アランタ」
同じくRASの駆逐艦「ホバート」

などが同じVLSを搭載しています。


甲板に出てとりあえず振り返ってみよう。

上部構造物の正面に鎮座するのは、

Mk.15 20ミリファランクスCIWS

「アーレイ・バーク」級の中には
前部にファランクスCIWSが搭載していない艦もあります。
2002年に就役したDDG-85以降は後部の1基だけになりました。

おそらく代わりに
Sea RAM(Rolling Airframe Missile)
を搭載するようになったからと思われます。

近接防空ミサイルとしてSea RAMを搭載している自衛艦は
「いずも」型護衛艦と「もがみ」型護衛艦となり、
「いずも」型はCIWSを2基にSea RAMを2基、
「もがみ」型はSea RAM のみでCIWSは搭載していません。


続く。

よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-13 | 自衛隊

観艦式も終わって間もないある金曜日の夕方のこと、
先日外国艦艇の一般公開に声をかけてくれた方から電話がありました。

明日横須賀でのりものフェスタがあるから行きませんか、とのお誘いです。

外国艦艇公開で久々に上げた重い腰がそのおかげで軽くなっていたことと、
「当日はお天気もいいみたいです」という言葉に促されて参加を決めました。

前回と違って今回横須賀基地で公開されるのは海自艦艇だから、
そんなに朝早くから並ぶ必要はないはず、と、あまり気合を入れず、
開門に間に合う程度に現地に到着しました。



ヴェルニー公園では出店の準備が進んでいましたが、これにはびっくり。
JR職員のコスプレしたお店の人と思ったら、本物のJR職員でした。

鉄オタさんたちにはたまらない、その手のグッズを売っているようです。
電車や貴社のプラモとか、実際に使われたプレートとか。

国有時代ならいざ知らず、現在のJRってこういう「商売」もありなのね。
売るものなら、それこそ売るほど倉庫にあり余っていそうだし、
捨ててしまうくらいなら欲しい人に買っていただこうと。

One man's trash is another man's treasure.

つまりこういうことですね。



前日聴いていた時間より早く、横須賀基地は開門したようです。
もうすでに「いずも」の上には人の姿が見えています。



ヴェルニー公園を歩きながら抜かりなく米軍基地側もチェック。

ところで、いつの間にか海自の潜水艦隊は引っ越しをしたらしく、
今までいつも見えていた岸壁からはすっかり姿がなくなっていました。

あそこは何かと動向が人目につきやすかったからに違いない(断言)

で、これはアメリカ海軍の「ヴァリアント」級ハーバータグボート

「デファィアント」Defiant (YT-804)

ゴムボートかと思ったらちゃんと1隻ずつ名前がついていました。

「ヴァリアント」級タグは全部で6隻あり、タグボートとしてだけでなく
人員輸送、護衛任務もできるような設計になっています。

一応船室は4つあり、機関長とタグマスターがそのうち二部屋を、
残りの4人の乗員が二人で一部屋を使用します。

同級6隻の名前とそのネームシェイクは、それぞれ以下の通り。

「ヴァリアント」(勇敢)
「リライアント」(信頼)
「デファイアント」(反骨)
「セミノール」(Seminole族から)
「ピュアラップ」(Puyallup族から)
「メノミニー」(Menominee族から)


いうてはなんだが、相変わらず遠目にも錆が目立つDDG 52「バリー」



戦艦「陸奥」の主砲に、主砲弾がこめられ寸前ぽく置かれています。

こんな砲弾、前からあったっけ?と思って調べたところ、
元々海上自衛隊横須賀基地内に展示されていた41粍徹甲弾が無償貸与され、
追加で展示に加えられていたことがわかりました。

支援者たちは、横須賀海軍工廠で建造された戦艦「陸奥」に、
ここに主砲を置くことで「里帰り」させたかったそうです。



この後横須賀基地の門を入り、途中のテントでまず体温チェック。
並んでいる人は全くおらず、普通に歩く速さで通りすぎ、
岸壁に入るところで手荷物検査を受けて、これも一瞬で終了。

この日はとにかく呆気に取られるくらい人がいませんでした。

先日の「大河フリートウィークシリーズ」で写真をくださったKさんは、
観艦式で気力と体力をごっそり使い果たされたのか、
自衛艦だけの見学ならまいっか、とお休みになっていたそうですが、
他にもそういう人たちが多かったと見えます。

Kさんもですが、そんな人たちも、まさかこののりものフェスタで
米海軍の駆逐艦が内部公開をするとは思いもしなかったため、
後で知ってから途端に、行けばよかったと思われたようです。


■「こいずも」DDH1.83と「ちびしま」DDG1.74



観艦式でもどこかに展示されていたらしく、別の方から
「こいずも」「ちびしま」の写真をいただいていましたが、
この日は岸壁の、皆が通るところで脚光を浴びていました。

まずDDH 1.85の「こいずも」ですが、これがすごいんだ。



「こいずも」艦長は「いずもん」。

「艦内にヘリコプターを収納できるところを、
おなかに赤ちゃんや貝などを乗せるラッコに見立ててデザイン」

よく見ると制帽にヘリのローターがついているのがダメおし。


「艦内にヘリコプター”を”収納できる」

・・言い切ってはいけない。
収納できるのはヘリコプターだけじゃないだろ!


これとか。

というツッコミはともかく、この「いずもん」ですが、



こんな自衛官は実在する(断言)



「ちびしま」は以前もここでご紹介したことがあります。
その時にはキャラは居ませんでしたが。

だいぶ前だったはずだけど、ちゃんとメンテナンスしているらしく、
ピッカピカで、台座が新しくなっていました。



赤の艦長席でしどけなく横たわっている「ちびしま」艦長「きりまる」。
前回からいつの間に艦長に就任したのだろう。

「イージス艦の8角形のレーダーをアザラシの眼鏡に見立ててデザイン」

こんな自衛官もどこかにいそうな気がする。



甲板にはちゃんとハンドラーの姿もあり。
そうそう、この黄色い線、実際の「いずも」にもありましたよ。

ここで唐突に。

海上自衛隊護衛艦「いずも」F-35B発着艦試験映像(着艦~発艦まで)/U.S. Marine Corps F-35B Lands on JMSDF DDH Izumo

並行に移動してラインの上に降りるとき、つい
「UFOキャッチャー」という言葉がよぎりました。

で、飛行ボス?みたいな人とか、不思議なんですが、
「いずも」のワッペンをつけてるのに、アメリカ軍人なんです。

F-35Bでこの発着艦試験を行った行ったのは米海兵隊だそうですが、
これは、「いずも」がプラットフォームとしてOKかという試験ですかね。

YouTubeのコメントにもあるけど、75年前戦争していた両軍が、
今こうやって一つの艦に乗って同じことをしているって、色々と胸熱です。



「ちびしま」のチャフ・ランチャーの後ろには
トナカイとサンタと普通の人が。

ところで、最近「ざんねんないきものシリーズ」で知ったことですが、
クリスマスにツノを生やしているトナカイは全てメスなんですよ〜。

オスがツノを生やしているのは春先だけで、
その理由は「雌をめぐる争いをするため」ですって。



ところで、ある方から送っていただいたフリートウィークのときの
「こいずも」の甲板のようすをご覧ください。
展示してあった場所はどうも同じなのですが、
わたしは外国艦公開の時にこれは見なかったなあ・・・。

観艦式ではみごとに登舷礼が行われていました。



すごい(色んな意味で)

■岸壁の展示艦


最初の目的地はこの岸壁です。

岸壁に入るところで、入り口が三分割されており、行き先ごとに
「米艦ハワード」「うずしお」「海保船」と通路が分かれていました。


二人が歩いて行っている一番向こうが「ハワード」の通路です。

抱っこした子供に小さな旭日旗を持たせたお母さんが、
岸壁を左に行こうとして自衛官に分かりやすくストップされております。
(”Talk to the hand!"のお手本的な)

もしかしたらパパがこの向こうにいたりするのかな。

わたしはとりあえず今日の最大目標である「ハワード」の通路を選択し、
たっぷりと時間をかけてアメリカ海軍の駆逐艦を堪能しました。



観艦式でパキスタン海軍の「ナスル」らが係留されていた岸壁には
DD110「たかなみ」と同型艦(たぶんDD111『おおなみ』)の姿。

両艦は第6護衛隊の4隻のうち2隻です。



これは「ハワード」の甲板から見た両「なみ」。
こうしてみると結構な擦り傷やペンキのムラがありますね。

「おおなみ」は、この夏、「やまぎり」とともに、沖縄で
米海軍の「ロナルド・レーガン」らと日米共同訓練を実施しています。


この日はシャッタースピードを確認したので、
ほとんど失敗はありませんでした。

風に綺麗に靡く旭日旗。



「ハワード」艦橋ウィングから岸壁を臨む。

これを撮っていてちょっと苦労したのが逆光。
いくらちゃんと使い方を勉強しても、しばらく使わなければ
全てはすっかり脳内から消えてしまっているのだった。

この問題は、「ハワード」を降りて合流した二人のカメオタ友人に
解決してもらいましたが、人任せだからまたすぐ忘れるんだよな。

でも反省なんてするもんか。


■のりものフェスタならでは!「ジェミニ・ディンギー」体験乗艇



この高さから見事に波を一直線に立てて疾走する警備隊のゴムボート。
ボートに乗っているのは水中処分員(EOD)の資格を持つ隊員です。

ボートは処分艇「ジェミニ・ディンギー」が正式名。

ところでですね。


疾走していた処分艇はともかく、この日、
頻繁に海上を行き来していたこのディンギー、
よくよく見ると乗っている人が一般人ぽくない?


なんと、自衛官の他に一般人の親子連れが乗ってるではありませんか。



親同伴の子供に限り、という条件で、
(そらそうだ、もし年齢制限がなかったら、オサーンばかりになっちゃう)
今日はなんと処分艇体験ができたようなんです。

さすがYYのりものフェスタ。
いろんな乗り物に乗れるイベントとはいえ、海自がここまでするとは。



「あしたか」の待ち時間が長かったので、並びながら何組も
家族が乗ったボートが通るのを見ましたが、湾を小回りに一周し、
「あしたか」の横に来たら自衛艦旗を下ろして退出、
というコースは厳密に決まっていた模様。

この日は波もなく、さぞ楽しかろう、と思ったのですが、
写真を撮っていて、ボートの上の人たちが、
親はもちろん、子供ですら、全く笑っていないのに気がつきました。

「あしたか」の近くを通る頃には、皆一様に、なんというか
魂の抜けたような無表情にすらなっていたのは、なぜ?

ボートには水中処分員と自衛官が付き添い、
救命胴衣もつけて万全の体制ですし、何かあっても
人命救助はEODの本業ですから何も心配することはないはずですが、
これはよっぽど乗り心地が悪いんだとみた。

加えておそらく、カメラやスマホでの撮影は禁じられていたため、
大人は手持ち無沙汰だったのかもしれんね。

■ 陸空自装備展示



この日は近くの武山駐屯地から陸自の装備が出張していました。
偵察用バイクに乗る男の子、これぞのりものフェスタならではの光景。


82式式通信車

陸上自衛隊で初めての国産装輪装甲車で、
3軸6輪駆動による装輪式を採用しており、
水深1m程度の渡河能力を有します。


1 1/2t 救急車

中型車両の後部を負傷者等後送用に改造した負傷者搬送車両で、
負傷者などを担架に乗せたまま乗せることができ、
大4名の横臥の状態での搬送をすることができます。

救急車の「アンビュランス」を省略して「アンビ」と呼ばれます。


高機動車

4輪駆動の中型トラック、10名が乗車可。
一般道路での高速走行性能に加え、車体全高は低く、高い最低地上高を持ち、
また前後左右のタイヤ間が広くとられた車体バランスと、
タイヤ空気圧の調整機能を持つことによる悪路での高い走行性能が特徴。
装備しているランフラットタイヤは被弾時も走行性能を保ちます。

わたしの連れは二人で、

「どうですかこれ、普通に欲しくない?高速走れますよ」

「オフロードにはいいでしょうねー」

と真面目に話しあっていました。
こんなもの置くところあるのか。


ペトリオットミサイル

空自からはPAC3がきていました。
ペトリオットミサイルを輸送し、最大16発ミサイルを発射する装置です。



わたしたちが通りかかったとき、横にいて質問に答える係が
PAC-3の整備をしているという可愛らしい女性隊員だったものだから、
おじさん二人は大喜び。

ミリオタ知識を得意になって彼女に開陳し、隊員さんからは、

「よくご存知ですね!」

とか言われてご満悦です。
わたしが彼女に、整備を最初から志望して配属されたんですか、と聞くと、

「空自には飛行機に乗ろうと思って入ったつもりですが、
いつの間にか落とされる側じゃなくて落とす側に・・」

(誰うま)


■ のりものフェスタ



海保からも出店があり、海自と並んで制服お試しコーナーや
キャラクターとの触れ合いコーナーなどで頑張っていました。

オレンジのスーツを着ているのは海保の「海猿」かしら。
海猿なのに猿ではない(シロクマ?)のはこれいかに。



SH-60Kがヘリポートに駐機していました。
操縦席に乗せるなどのサービスはしてなかったようです。

もし見学者を近づけるなら、ヘリのローターは畳みますよね。



横須賀音楽隊の演奏は次の日に行われたようです。



ヴェルニー公園ののりものフェスタは、この時間佳境に入っていました。

なんと運転手の制服を着てバスの運転席に乗れるコーナーまである!
横須賀の少年たちは幸せ者だなあ。


というわけで、艦艇見学以外ののりものフェスタはこんな感じでした。
次回はアメリカ海軍の駆逐艦「ハワード」乗艦報告です。


続く。



観艦式ロスの癒し方〜横須賀軍港模様と青海の艦艇公開・音楽まつり

2022-12-11 | 自衛隊


さて、「あたかも自分が行ったように人の撮った写真で語る観艦式」
シリーズ(少しずつタイトルが変わっている)も、
いよいよ今日で最終回となりました。



最後に、観艦式が終わって帰投する艦写真の続きを。
177「あたご」と「いずも」が反航する瞬間です。

「あたご」は帰路に着いていたはずなのに、とのことです。



こういうときって、お互いに手を振ったりするのかしら。



観艦式に出席したMCHヘリ。
もしかしたら総理大臣を乗せていたかもしれません。

素敵な写真の公開を快く了承してくださったKさんには
心から感謝しつつ、最後までご報告をやり遂げたいと思います。

■ 「祭りの後」の横須賀



さて、観艦式も終わりました。
横須賀には内外の艦艇が溢れています。

ある艦は祖国に向かう準備、そして元の住民である
横須賀の艦艇は、それぞれの係留岸壁に一応落ち着いて・・・。


タイ海軍の「プミポン・アドゥンヤデート」の艦上では
来日記念写真の撮影が行われていました。



今回初めてタイ海軍の軍人たちを見た気がします。


観艦式に参加した補給艦「おうみ」。
今から着岸でしょうか。

ところで「おうみ」の上部をよくご覧ください。


ヒューイヘリが・・・・。

しかし、この画像、どちらが先に撮られたのかわかりません。
離艦したのかそれとも着艦したのか?



ただ、その後の写真がこれ。
「おうみ」から降りて海自のヘリポートに移ったんでしょうか。



それからこれは「いずも」の甲板にいる「アパッチ」。
要人輸送はいつも白いヘリで行うので、
戦闘ヘリであるアパッチがなんのために「いずも」にいたのか?

と思ったら、A H-64D「アパッチ」は観艦式で観閲飛行を行ったようです。


ヘリを離艦させた「いずも」は、休むことなく任務に出て行きました。
わたしがYYのりものフェスタで乗艦したのはこの後です。


巨大な「いずも」を動かすタグボート。
(おそらく反対側にもう一隻いると思われます)
出入港作業でタグボートを見るたび、すげー!と心から驚嘆します。
目立ちませんし縁の下の力持ちですが、カッコいいですよね。



あれ?タグ1隻だったか・・・。
そしてまだ甲板にはアパッチくんがいたのでした。

アパッチは離艦したのではなく着艦したようで、
Kさんによるとローターを回すことなく、
人力で甲板を行ったり来たり(って・・)していたようです。



お手入れ中のアメリカ海軍の駆逐艦USS「バリー」の横を通り
横須賀港を出ていく「いずも」。

「バリー」の名前の由来は、アメリカ海軍の父である

ジョン・バリー(1745-1843)

バリーはアメリカ大陸軍の最初に就役した艦の最初の艦長、
つまり「アメリカ海軍初の艦長」というべき軍人であり、
ジョージ・ワシントン大統領に命名されて最初の海軍士官、
コモドアの階級を付された人物ですので、
アメリカ海軍の艦艇には安定のネーミングとして
過去同名の軍艦はこれを入れて4隻存在します。


3隻目までは普通に駆逐艦でしたが、この「バリー」から
ミサイル駆逐艦になったため、DDG(Gはガイデッドミサイルの意)
となりました。



*アメリカ艦おまけ*

全く別の日ですが、横須賀にとんでもないものが来ていました。

最新鋭駆逐艦「ズムウォルト」・・・全くフネ艦がないんですがこれは。
コンクリートの要塞みたい。



沿海域戦闘艦「オークランド」

これはまたすごい。
この前から見たところ、ジャバ・ザ・ハットの顔を思い出しちゃったよ。

【超高速44ノット三胴船】インディペンデンス級沿海域戦闘艦の最新装備


原潜「スプリング」も密かに来日していたようです。


さて、「いずも」の跡の岸壁には「おうみ」が着岸して。



■ 青梅艦艇公開

さて、この写真をもちまして本当に観艦式は終了したわけですが、
「観艦式ロス」のKさん、このあと青海客船ターミナルで行われた
艦艇公開に突撃されたというではありませんか。

これにはわたしもびっくりですわ。



おお、「もがみ」と「くまの」の兄弟が並んで係留されていると、
なんだかとっても近未来的。

ところで、どうやってこんな位置からの写真が撮れたのでしょうか。



正解はこれ。
Kさんたら、東京水上タクシーをチャーターして、
海側からのアプローチでこのショットを決められたそうです。

因みに気になるお値段は、一艘30分で一万円なり。

こんなに短時間フラッと海上散歩ができるなんて知りませんでしたが、
なんかそう言うことがしたくなった時のためにメモしておこう_φ(・_・

東京ウォータータクシー

タクシーは定員8名だそうですが、(小さい)
Kさん8名でシェアして割り勘されたとのこと。

「これで観艦式ロスが治癒なら安いわ」

ということですが、ごもっともです。




クリスマスのリースが主砲に。
平和そのものである。


「もがみ」と「くまの」に旭日旗を振ってみた



Kさんご一行が水上タクシーから自衛艦旗を振ったところ、
帽子を振って”good job call”をする隊員のみなさん。

自衛官の方々にとっても、こういう応援は嬉しいだろうなあ。
たまたま通りかかって手を振るだけならともかく、
わざわざ旗を用意して船をチャーターして、って。

乗員の方たちは今日は一般艦艇公開のイベントということで、
作業着ではなく、制服を着て乗艦されています。



一度こんな位置から(しかも海面の高さから)
艦艇を見てみるのも、なかなか新鮮でいいかもしれません。
「こちらも海の上」っていうのがライブ感ありますし。



このあと船がエンジンを全速(かどうか知らんけど)し、
30分のツァーは終わったと思われます。

水上タクシー、大変親切で良心的な会社&スタッフだったということで、
Kさんも心からおすすめということでした。



水上タクシーを降りて、国際クルーズターミナルから艦艇を臨む。
この時間なので人がまばらになっていますが、
これは既に甲板見学は終了していたためです。

午前中、見学者のすごい混雑で早々に受付は終了されました。



もしかしたら見学者の順番待ちのためのロープも
結構みっちりとなるくらいの人出だったのかな・・。

芸術的なくらいきちんと設営されたロープの通路は感嘆に値します。

「これぞ自衛隊」。



こちらは「もがみ」。
甲板の主砲の前に上kんが集合していますが、なんだろう。



この後岸壁からも見学。

「もがみ」型の舳先は尖っておらず、なめらかなカーブが美しい。
舷腹はいきなりスパッとカットされたようになっていて斬新です。



「もが美」ちゃんと「もがみ」くん(たぶん)もお出迎え。
バラクラバにお面という超節約モードのマスコットキャラですが、
こういうおもてなしのスピリットがとにかく嬉しいよね。

お面もデザインから頑張って作ったんだろうな。

■ 自衛隊音楽まつり



音楽まつりが再開しました。

今回わたしは入院騒ぎがあったりして、そもそも
応募したりチケットの入手を心配したり、ということを全くせず、
いつの間にか終わっていて、Kさんからの写真で思い出したくらいでしたが。

会場を見ると、客席をひとつづつ空けて感染対策をしていたようですね。

これは予行演習だったそうです。



自衛官じゃないよね?と思ったらやっぱり違いました。

テレビを見ないわたしはその情報に全く疎いのですが、
フジテレビではついに陸自ドラマ「テッパチ!」なんてのをやったみたいです。

(変換したら勝手に!が付いてきたので、まさかと思ったら
『テッパチ!』が正式タイトルだった)

で、この予行演習ならではのサプライズとして、GENERATION
(EXILEの別働隊?)が生歌とキレッキレのダンスを披露したそうです。

【フル尺】GENERATIONS、『テッパチ!』主題歌『チカラノカギリ』
陸上自衛隊中央音楽隊と全力パフォーマンス!
『令和4年度自衛隊音楽まつり』リハーサル公演




国旗掲揚。



第302保安中隊のプログラムはやはり
「陸軍分列行進曲」で最後を飾ったようです。
そのほかの曲は「歌よ」「U」「我が山河」
↓「我が山河」とはこれのことかな。

田辺恒弥:我が山河


途中で「富士山」の一節をアレンジしたメロディが出てきます。
サブタイトルは「富士山を象徴として」



東京音楽隊でのお披露目に立ち会った、
初の男性歌手橋本晃作(36)二等海曹
(36って年齢のことかしら)

Kさんによると技術海曹としての任用ではないかということ。



向こうから、陸、海、海、空の専属歌手となります。

『令和4年度自衛隊音楽まつり』Live DVD/Blu-ray風


規模が縮小されたらしく、参加した外国海軍は、在日米陸軍海兵隊の他は
パプアニューギニア軍楽隊、パキスタン陸軍軍楽隊だけになりました。

パプアは「ふるさと」「上を向いて歩こう」、
パキスタン陸軍は「風の谷のナウシカ」を演奏してくれたようです。

そして、これは聞きたかったなと思ったのは、
空自、陸自、米軍楽隊による「トップガン」の「アンセム」。

Top Gun: Anthem

これをやるのにどうして日米どちらにも海軍はいないんだ?
という疑問が残りますが・・。


さて、というわけで、長々お話ししてきた大河観艦式シリーズを終わります。
長らくお付き合いありがとうございました。

写真を提供くださったKさんには、心からお礼を申し上げます。




浦賀水道艦模様〜2022年国際観艦式

2022-12-09 | 軍艦

「人の撮った写真で語る国際観艦式シリーズ」もそろそろ最終回です。
今日は、観音崎写真特集からです。

横須賀で抜錨した外国艦は、その後観音崎の前を通過し、
相模湾で一晩待機して観艦式に備えました。
こういう動向がわかるのも、Kさんのような方が
観音崎展望園地でチェック&お見送りしてくださればこそ。

進行上一度公開した写真もありますが、
カーテンコールのように、おさらいも兼ねて順にご紹介します。



王立オーストラリア海軍(RAN )の補給船、

HMAS「スタルワート」Stalwart A-304

HMAS Stalwart Commissioning

「コミッション」ということなので、日本で言うところの
引き渡し式(就役)ですね。

もしちゃんとスピーチをお聞きになれば、オージー英語ならではの
「レピュタイション」なんて発音が聴こえてくるのがわかるでしょう。

白いセーラー服の一団の行進する様子が美しい。
1:32のところで、なんかすごい原住民っぽい格好の人が映りますが、
この人は一体何者?

そして軍艦旗が引き渡され、乗艦が終わったら、全員が、

「ひっひっひ」「フレー!」(帽子回す)
「ヒヒッヒッヒ」「フレー!」(帽子回す)

「〇〇〇〇!」「◯ー◯ー!」(帽子上に止める)

と全員で一緒にやっています。
これはオージー海軍の伝統で、日本の「帽振れ」みたいなものでしょうか。

わたしが「ホバート」のラッタルで士官が降りてくるのを目撃したとき、
乗員がやっていたのもこれだったような気がします。
帽子は回してませんでしたが。




王立オーストラリア海軍(RAN)の駆逐艦、

HMAS「ホーバート」Hobart D-39

HMAS Hobart SM-2 missile firing in Australian waters 

こちらはSM-2ミサイルを発射した時の映像をどうぞ。
艦長の最初の言葉は「Today」(トゥダイ)ですので念のため。



先日一項を割いて語ってしまった、RANの「コリンズ」級潜水艦

HMAS「ファーンコーム」Farncomb SSG 74

この潜水艦は11月15日に帰国して行ったのですが、
そのときのシーンを動画に上げている方がおられました。

豪潜水艦 ユリカモメ大群に見送られ横須賀を出港 2022年11月15日
「見送られ」と言うより、ユリカモメちゃっかり後ろに乗って移動してます。
彼らがこのままどこまで乗って行ったか、そのゆくえは杳として知れない。



王立ニュージーランド海軍(RNZN)の補給艦、

HMNZS「アオテアロア」Aotearoa 

前も書きましたが、「アウテアロア」は南極に行くことも想定し、
氷上で運用することもできるようになっています。

Royal New Zealand Navy: HMNZS Aotearoa in Antarctica 

氷を割って進む「アオテロア」、文字通り空を飛ぶペンギン、
そしてスコット基地で積荷を降ろすシーン。
高画質で「補給艦のお仕事」が堪能できる良ビデオですので、ぜひ。


パキスタン海軍(PN)の補給艦、

PNS 「ナスル」Nasr (A47)

【国際観艦式】パキスタン海軍補給艦『ナスル』横須賀入港 PNS NASR(A47)【 پاکستان بحریہ】

「ナスル」横須賀入港のシーン。



シンガポール共和国海軍(RSN)のステルスフリゲート艦、

RSS「フォーミダブル」Formidable R68

後ろに何も写っていないと、まるで模型のような現実感のなさですね。

Republic of Singapore Navy's RSS Formidable fires OTO Melara Super Rapido 76mm A-gun
ところで、初めて「フォーミダブル」のレーダーが回っているのを見て、
ビジュアル的にかなーり衝撃だったので、上げておきます。

「いつもより多く回しております」という言葉がついよぎった・・。


ん?「いずも」が小さく見える?
この67番の艦って、何?

と思っていたら、まずこれは「いずも」ではなく
DDH-181、JS「ひゅうが」

そして「ひゅうが」とすれ違っているのは、アメリカ海軍の

ミサイル巡洋艦USS「シャイロー」Shiloh CG−67

であると思われます。

「タイコンデロガ」級と言うことでこの大きさですが、
さすがに「いずも」は全長248m、
「シャイロー」は172mなので、もし並んだらかなり違うかな。
ちなみに「ひゅうが」は全長197mです。

「シャイロー」、演習を終えて帰投するところでもあったのでしょうか。

なんか無駄にかっこいい「シャイロー」がトップの海軍ホームページ

今回の観艦式で第7艦隊から参加したのは
「シャイロー」の姉妹艦であるミサイル巡洋艦、

「チャンセラーズビル」USS Chancellorsville, CG-62

であったはず。

ネームシップの「タイコンデロガ」が表すように、
同級の命名基準は基本南北戦争と独立戦争の古戦場です。

「バンカーヒル」「ゲティスバーグ」

などは我々日本人でもすぐにわかります。
しかし同級、数が増えすぎて独立&南北戦争だけでは足りなくなったため、

第二次世界大戦「レイテガルフ」「フィリピンシー」「ノルマンディー」
「アンツィオ」(上陸作戦)「ケープ・セントジョージ」「ベラガルフ」

テキサス独立戦争「サン・ジャシント」

米英戦争「レイク・シャンプレイン」「レイク・エリー」

米墨戦争「モンタレー」

朝鮮戦争「チョーシン」(長津湖)

ベトナム戦争「ヒュー(フエ)シティ」

人名「トーマス・S・ゲイツ」(アイゼンハワー政権の国防長官)

地名「プリンストン」(?)

と、各方面に名前の由来があります。



続々と海自艦艇も相模湾の錨地に向かっています。



「ましゅう」型補給艦「おうみ」LST-4003


うむ、この独特の突き出した船首の形。

試験艦「あすか」JS Asuka, ASE-6102

しかしなぜ?

「あすか」は観艦式に参加予定にはなっていなかったようですが。
名簿にはないけど急遽後から追加されたとか・・・・?


これは観艦式が終わって帰投する艦を撮った中にあったのですが、
「あすか」、やっぱり参加して帰ってきたんですよね?


「あさひ」型護衛艦DD−119「あさひ」

建造中のこの甲板を歩いたことあるのが自慢(もういいって)


「はたかぜ」型練習艦「しまかぜ」TV-3521

はて、「しまかぜ」っていつから練習艦になったんだろう、
と思って調べてみたところ、2020年、
「まや」型護衛艦「まや」が就役したことで、
「はたかぜ」と共に練習艦に種別変更されていたことがわかりました。

艦番号もDDG-172から変更になりました。



「おおすみ」型輸送艦「くにさき」LST-4003

各艦種が1隻か2隻ずつのコンパクトな参加布陣です。



本番6日の朝、Kさんが浦賀水道の見える宿泊所で
前夜の伊勢海老のお造りで出汁をとった朝食を召し上がっていると、


「いずも」と・・



「ひゅうが」が通り過ぎたのでした。
この後Kさんは午前中を千代ヶ崎砲台跡見学に費やされ、
観艦式の様子を遊覧船から見る計画をされていたようですが、
ライブ映像の様子を見てキャンセルし、観音崎に戻られたそうです。


そして観艦式を終えて帰ってくる艦たちをお出迎え・・。
「仏舎利塔のような」と言う言葉があまりにもハマった、
王立オーストラリア海軍(RAS)

「アンザック」級フリゲート艦
「アルンタ」HMAS「Arrunta」FFH151


王立ニュージーランド海軍(RNZN)の補給艦、

HMNZS「アウテアロア」Autearoa S-12


「あさひ」も帰投してきました。



「ましゅう」も。

この一連の写真、手前の構造物がすごくいいアクセントなんですが、
大きさが全くわかりませんでした。
この写真のボートと中にいるサギらしい鳥の大きさから類推するに
なんとなく結構大きなものなのかな?と・・・。


「ひゅうが」。



「いずも」。



きっと浦賀水道を帰投する自衛艦たちは、
この自衛艦旗を目に留めていたに違いありません。


(まだ)続く。



横浜地区・田浦地区の艦艇展示〜2022年国際観艦式

2022-12-07 | 軍艦

さて、観艦式に参加した外国海軍の艦艇を紹介し終わりました。
(最後のはあまり紹介になっていませんでしたが)

というわけで、今日は横浜地区で係留された
海自艦艇の写真(例によってKさん提供による)を取り上げます。

この日なぜ横浜に海自の艦艇が集結したかと言いますと、
同じ日に横須賀では外国海軍艦艇の一般公開が行われたからです。

いつもの「いずも」の場所には(お、韻を踏んでる)
タイ海軍の「ディポヌゴロ」とカナダ海軍の「バンクーバー」
「ウィニペグ」が係留されていたからですね。

■横浜地区展示

展示は山下公園から通称「くじらのせなか」である大桟橋、
そして赤煉瓦、海上保安庁の基地の隣の、
ハンマーヘッドこと横浜新港に分けて行われました。

係留場所はこの通りです。


少し前にご紹介した日本の古い映画、「金語楼の海軍大将」で
どこか中国の陸戦隊基地があるという設定でロケが行われた場所です。

その時に写っていたビルは割と最近取り壊されて、
(今でもGoogleマップに残っていると思う)その代わり?
その奥にガンダム・ファクトリー・ヨコハマのガンダムが立っています。

GUNDAM FACTORY YOKOHAMA official movie

まさに「こいつ、動くぞ」です。
このガンダムは2023年の3月いっぱいまで展示されています。


案内に書かれているのは、輸送船LST-4003「くにさき」だけですが、
実際には3隻も係留されていました。



ガンダムの横に係留されているのは、イージス艦「あたご」DDG-177



外側にいるのは「もがみ」型のようです。
FFM-1「もがみ」FFM-2「くまの」かはここからは分かりません。

最新型の注目艦である「もがみ」型なので、
観艦式にはどちらも参加したようです。


ガンダムの埠頭(って名前じゃないんですけど)から
大桟橋を見遣ると、そこには旗艦DDH-183「いずも」が。

実はこれをタイプしている12月3日、横須賀で「YYのりものフェスタ」があり、
「いずも」の内部が公開されていたので久しぶりに乗ってきたところでした。



「いずも」が横浜にやってくると、必ず大桟橋の
「くじらのせなか」というデッキに横付け係留されます。

横浜展示で一般公開は行われていたそうですが、
前もって整理券が配られ、それを持っている人だけが対象でした。

わたしはそもそも会場にも行っておりません。



そうそう、前に「いずも」が「くじらのせなか」に泊まっているときには、
夜間わざわざやってきて写真を撮ったんだったわ。

夜間撮影用に三脚まで持って・・・・。



「くじらのせなか」から見た「いずも」右舷側。
この後に行われた観艦式では、「いずも」は旗艦として、
内閣総理大臣が乗艦する観閲艦の役を努めました。

紅白のテープが巻かれた柵があるところは、
岸田総理が本番で立った観閲台です。

この後一国の総理が乗艦する予定だったのですから、
「いずも」は横浜では一般人を乗せなかったのではないでしょうか。



同時刻の「ハンマーヘッド」に泊まっていた「あさひ」級の
DD-120「しらぬい」には見学者の姿が見えます。

昔長崎で「あきづき」の体験航海に参加させていただいたことがあります。

「あきづき」は航海後、三菱重工で入渠することになっていたため、
岸壁で建造中の「あさひ」と並んでメザシに係留し、そのおかげで
就役前の甲板を歩くという貴重な体験ができましたが、
その後あっという間に2番艦の「しらぬい」が就役していました。

「あさひ」の就役は2018年、「しらぬい」は翌年ですから、
まさに「矢継ぎ早に」といった感があります。

今回「しらぬい」は所属基地である大湊からの参加です。

ちなみに、2010年、海賊対策でソマリア海に派遣されていた
護衛艦「ゆうぎり」で、屎尿処理の際に発生した硫化水素が管内に逆流し、
殉職者一名を出すという悲惨な事故がありました。

その後自衛隊では新幹線にも採用されているタイプである、
負圧により引き込むシステムのトイレの採用が始まりましたが、
護衛艦では「あさひ」型からこの変更が行われるようになったそうです。



「しらぬい」の前方には「たいげい」型潜水艦のネームシップである
SS−513「たいげい」が来ており、その文字通りの、

「くじらのせなか」(誰うま)

には、見学者の姿が見えます。

潜水艦はそもそも滅多なことでは中に見学者を入れませんが、
甲板には簡単に乗艦できるため、よくこのような見学を行います。

おそらくですが、これだけは予約はいらなかったのではないでしょうか。

「たいげい」級潜水艦はその後着々と同級艦を建造中で、現在は
三菱重工製だった本艦の姉妹艦として、

SS−514「はくげい」川崎重工

SS−515「じんげい」三菱重工

が鋭意建造中です。

「たいげい」級は6番艦までが予定されているので、
あと3隻が「何鯨」になるのか、楽しみにしていましょう。

そして、今回の観艦式に参加する潜水艦は、

SS-592「うずしお」(就役2000年)
SS-509「せいりゅう」(就役2018年)
SS-513「たいげい」(就役2022年)

と、海上自衛隊潜水艦隊が運用する潜水艦の3タイプ、
「しお」「りゅう」「くじら」がそれぞれ1隻ずつとなりました。

この3隻はいずれも横須賀基地所属となります。

■横須賀港第二区展示



ここでもう一度横須賀第二区と言われる
(この名称、皆さんほとんどご存じなかったようですが)
船越?田浦?の海自艦艇の写真をご紹介します。



「あわじ」型掃海艦の2番艦、MSO-305「ひらど」

「あわじ」型掃海艦は「やえやま」型掃海艦の後継で、
1番艦の「あわじ」は2017年、「ひらど」は18年から就役しています。

機雷を扱うという任務の関係上木製が主流だった掃海艇、艦ですが、
繊維強化プラスチック(FRP)製に切り替え中です。


興味深いことに、その横の岸壁には、
MSO-304「あわじ」MSC-605「ちちじま」が並んでおり、
両型の艦体の大きさの違いがよくわかるようになっていました。

MSOはMineSweeper Ocean
MSCはMineSweeper Coastalで、
つまり大きさ的にはMSO>MSCとなります。




こちらには、同じ「えのしま」型掃海艦のMSC-604「えのしま」と、
2015年から就役している3番艦MSC-606「はつしま」が並んでいました。

前に「コックムス」の技術について言及したように、
「えのしま」「はつしま」はユニバーサル造船で建造された際、
FRPについて「コックムス」から技術支援を受けています。

ちなみに今回の観艦式、どういうわけか掃海艦は参加しなかったようです。



なんかじわる。


続く。





韓国海軍が補給艦「昭陽」を参加させたわけ〜2022年度国際観艦式

2022-12-05 | 日本のこと

前回の「ファーンコーム」をもちまして、
国際観艦式参加艦艇の全てを紹介し終わったわけですが・・・

・・・おっと、実はまだすんでませんでした。

これまでのように、好奇心を持ってその歴史について
真摯に調べる気に一向にならない(これはもう仕方なし)あの国の船が。



■ 昭陽(ソヤン)

ROKS「昭陽」(AOE-51 ソヤン Soyang)

なのですが、この韓国海軍の艦艇の参加については、
全くもって事前からとほほなニュースばかりが囂しく、
ハッキリ言って真面目に語る気にもならない心情なのです。

ウィキにも全くと言っていいほど資料がなく、

●昭陽江にちなんで名付けられた。

●2018年防衛事業庁は現代重工業が大韓民国海軍に宗陽を引き渡したと発表

●2020年11月17日、新型コロナウィルス感染症に伴う支援のため、
マニラ沖においてマスク、消毒剤等の支援物資を3隻のボートを介して
フィリピン海軍艦艇BRP Conrado Yap(PS-39)に引き渡した。

●2022年10月27日、2022年11月6日に日本で開催される
「海上自衛隊創設70周年記念国際観艦式」へ参加する事が発表された。


としか紹介されていません。
補給艦なのでこんなものかと思ったのですが、
「アウテアロア」なんかはもっと色々詳しく紹介していたよなあと。

よっぽど特筆する点がないのか?

ちなみに、接頭のROKSとは

Republic OKorea Ship

を意味します。
なぜ"of"の「O」をに入れたのか。
これが気になるのはわたしだけ?
RKNではあかんかったのか?



Kさんが艦艇巡りや田浦などで目撃した艦影を
送ってくださっているのですが、キャプションに曰く、

「南朝鮮の🇰🇷不審船も御出掛けの様子です」

ふしんせんって・・・。
誰がうまいこといえと。

しかし、不審船かどうかはともかく、この輸送艦、
正直言ってかな〜り変わった作りだとは思います。

なんか見た目のマンション感がすごい。


前から見たところですが・・・トップヘビーっていうんですか?
実にバランスが悪いというか、素人目にも不細工な設計だと思います。

純粋に疑問なんですが、仮にも日本に対して敵愾心を燃やす国なら、
こういう時少し見栄えのいい船を送って「どや」ってやるもんじゃないのか?

この件についてちょっと調べてみたところ、どうやら韓国は、
本来なら憎たらしい日本の観艦式などに海軍を参加させたくはないが、
北朝鮮関係で、昨今安全保障情勢がいよいよ厳しくなり、
(アメリカに怒られるし)形だけでも参加せざるを得なくなったようなのです。

そこで苦肉の策として、戦闘艦でなく支援艦を派遣し、せめて、

「旭日旗である海自の自衛艦旗に
韓国の戦闘艦乗組員が敬礼することだけは回避」

することで、なんとか国内にアリバイを作ったということらしいですね。
なぜ戦闘艦の乗員が敬礼するのがダメで、
支援艦ならいいのか、その辺も全く意味が分かりませんが、
彼方の国の中では、誰が言い出したか名案ということになったんでしょう。


そういえば、2018年に南部・済州島で行われた韓国主催の国際観艦式に
海上自衛隊をを招待した際、自衛艦旗を揚げて入港すること、
観艦式での自衛艦旗の使用を禁止し、代わりに国旗の掲揚を要請したため、
海自側がそんななら行かねえわ、と参加を拒否した事件がありました。

これには、ごく最近始まった、韓国内における、

「旭日旗を旧日本軍の象徴と決めつけ糾弾・排斥する民族運動」

が根底にありました。

とにかく旭日旗を目の敵にして、放射線状のものを見つけると、
相手が誰であろうと、どんな意図のものであろうと、
いつできたものであろうと、(アメリカの古い大学に文句をつけたことも)
どこにあったものであろうと、とにかく騒いで相手にそれを撤去、消去させる、
というビジネスをしている一韓国教授がこの運動の文字通り旗振り役でした。

反日ビジネス活動家ソ・ギョンドク
(wikiがえらいことになってる)

今回も、案の定その人物は、観艦式参加予定国海軍に対し、

「旭日旗は『戦犯旗』(意味不明)であるから参加を取りやめるように」

とメールを送って見事に全員から無視されております。

アメリカをはじめ、日本と戦争をしていた国、
日本が軍事占領していた国も今回の観艦式には参加していますが、
そんなことで騒ぐ国は世界ひろしといえども韓国だけなのです。

そもそも、肝心のなぜ韓国軍が観艦式参加を取り止めなかったのに、
なぜ他の海軍が参加をやめると思ったのか。


いずれにしても、こういうノイジーマイノリティが大騒ぎした結果、
観艦式の参加も、自衛艦旗に対するプロトコルとしての敬礼も問題化し、
海軍同士の交流も、昔は普通にやっていたのに、今では
ことあるごとに上へ下へと右往左往する慌てぶり。
すっかり常識のある世界の失笑を買うようになってしまいました。

最初に旭日旗を問題化したサッカー選手と、反日ビジネスおじさんの罪は重い。



それでも韓国海軍は観艦式に参加しました。
アリバイ作りのため、韓国議員の中から、苦し紛れに、

「自衛隊旗は旭日旗ではない」

という意味不明な(そして非常識な)言い訳のつもりの言葉まで捻り出し、
選挙があるからという理由で出席の返事を送らせるなどやりたい放題の挙句、
「昭陽」は結局観艦式に出席し、岸田総理大臣の観閲する
「いずも」にプロトコルに則って無事登舷礼を行いました。

終わったら終わったで、韓国の野党はこれに改めて文句をつけ、与党は、

「自衛艦旗は(旭日旗と異なり)国際的に認められている」

「旭日旗に対して(敬礼を)したわけではない」


などと苦しい言い訳をし、何とか野党の政治問題化を収めようと試みました。

ところが、観艦式が終わってすぐ、まだ韓国議会が揉めている
このタイミングで、我が海上自衛隊の酒井良海幕長が、
例のレーダー照射問題に対し、バッサリと、

「ボールは韓国側にあると認識している。
今後韓国側から整理された回答があると認識している」

(意:問題をいつまでも有耶無耶にしてねえでさっさと謝れゴラア)

という発言を行い、さらには、

韓国による自衛艦旗(旭日旗)の不当な排斥

日韓の防衛当局間の問題として挙げた上で、

「二つの問題が明確にされない限りは、
(日韓間の)防衛交流を推進する状況ではない」
(意:今回は観艦式だからマルチの枠組みで呼んでやっただけ。
そっちが謝るまで一対一の付き合いは絶対にしねーからそのつもりで)

とあっさり切り捨てました。

韓国側にすれば、散々苦労して旭日旗に敬礼までしてやったのに、
全くその「譲歩」に対し、日本側は報いることをしない、と言ったところです。

現に全てのメディアが同じ論調で、MBCなどは、このことを

「後頭部を殴られた」
(韓国人特有の表現、不意をつかれ打撃を受けた的な)

とまで表現しています。


日本の国旗を揚げながら半旗を上げる「昭陽」

あれこれ文句をつけ、選挙中だからと出席の返事をいつまでもよこさず、
戦闘艦に敬礼させたくないという自意識過剰な理由で補給艦をよこし、
係留中は半旗(多分圧死事故の件)を揚げて一般公開には全く応じず・・。

おそらく自衛隊や他海軍と全く交流もしないまま帰っていったのでしょう。
(国内にバレないよう海軍同士こっそり親睦会をした可能性は微レ存)

そんな経緯だったはずなのに、どうやら韓国側は、観艦式で

「自衛隊旗ではなくいずもに敬礼した」

だけで、何かものすごい貸しでも作ったような気になっていたようです。

海幕長の「ボール」発言は、まさにその後頭部をぶん殴る結果になりました。

ちなみに、レーダー照射問題については、

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案

として、我が国と防衛省の立場を日本語、英語、そして
韓国語で世界に訴えています。

このページには、事件発生時のP-1からの撮影動画、
そして英語、韓国語による同じ動画、さらには
火器管制用レーダー探知音と創作用レーダー探知音のデータなどが閲覧でき、
日本の立場を明確にするための発信を行っています。

日本側からはこの問題を決して有耶無耶にしないという
強い姿勢が伝わってきます。

今後の日韓関係はどうなっていくのか。
最近、解決の糸口がより見えなくなりつつあると感じているのは
決して一部の人だけではないと思います。


続く。




オーストラリア潜水艦 HMAS「ファーンコーム」

2022-12-03 | 軍艦

さて、とりあえず今回の国際観艦式参加国海軍について
一通りあらためてその概要を知る試みがほぼ終了しました。

今日は今まで紹介してこなかったKさん写真を中心にお送りします。


もし何の気なしにここを通りかかったとして、
こんなものを偶然目撃したとしたらさぞかし盛り上がることでしょう。

これは観艦式会場に向かうオーストラリア海軍の潜水艦、

HMAS「ファーンコーム」Farncomb SSG 74

の姿です。

今回の観艦式には、当初「コリンズ」級潜水艦が参加している、
ということしかわかっておらず、ここに挙げた参加予定表にも名前がなく、
どこからともなくそれは「ランキン」であるという噂が流れておりましたが、
最終的にHPに載っていたのは「ファーンコーム」でした。
潜水艦なんで最後まで確かめようがないですが。

なんで、今日は潜水艦「ファーンコーム」の説明から入ります。

「ファーンコーム」の由来は、オーストラリアで訓練を受けた将校として
初めて艦長に昇進し、1941年から1944年まで
旗艦HMAS「オーストラリア」で指揮をとった、

ハロルド・ファーンコーム少将
Harold Bruce Farncomb 1899-1971

から取られています。

ところで「コリンズ」級は全て海軍軍人の名前を由来にしているのですが、
ちょっと気がついたのでこれをご覧くださいませ。

SSG73「コリンズ」ジョン・オーガスティン・コリンズ少将

SSG74「ウォーラー」ヘクター・ウォーラー大佐
(1941年日本軍との交戦で済んだ海峡にて戦死)


SSG75「デシェニュー」エミール・デシェニュー大佐
(1944年レイテ湾における日本との交戦で艦上機の榴散弾が直撃・戦死)


SSG77「シーアン」エドワード・テディ・シーアン水兵
(1942年沈む『アーミデール』艦上で最後まで零戦を銃撃した。享年18)


SSG78「ランキン」ロバート・ランキン中佐
(1942年『ヤーラ』で船団護衛中日本軍機から艦橋に受けた直撃弾で戦死)

あの・・もしかしたら同級の命名基準って、基本、
日本軍と戦って死んだ人なんですか?

「コリンズ」「ファーンコーム」だけは違うようですが、
それでも二人とも戦歴は第二次世界大戦で日本と戦っているし。


■ HMAS「ファーンコーム」SSG74



艦バッジはクロスした剣の下に鳥(多分カワウ)。
モットーは、With Skill and Resolve「技と覚悟を持って」
モットーの上の石槍とブーメランなどのマークは、
オーストラリア海軍艦艇全てに標準装備らしいことがわかりました。


「ファーンコーム」は1993年に起工され、1995年12月に進水。
オーストラリア国内で建設された最初の潜水艦「コリンズ」級の2番艦です。
建造はオーストラリア潜水艦株式会社(ASC)です。

国内完全製産された潜水艦ですが、雛形となった艦があって、それは
少し前に開発され、スウェーデン海軍とシンガポール海軍が運用している、

「ヴェステルイエトランド」Västergötlandsklass 級潜水艦

でした。

「ヴェステルイエトランド」を建造したのはスウェーデンの
SAABグループのコックムス社であり、「コリンズ」級潜水艦は
いわば「ヴェステルイエトランド」潜水艦の拡大版とされます。
コックムスの技術がそのまま受け継がれていると言ってもいいでしょう。

ちなみに、我が海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦において、
コックムスの技術はスターリングエンジンに生かされているので、
この会社の名前を耳にしたことがある人は多いかもしれません。

また、コックムスの技術は潜水艦のシステムのみならず、FRP分野に及び、
「えのしま」型掃海艇を建造したユニバーサル造船は、
FRP艦の造船でも先進だった同社から技術支援を受けています。

「コリンズ」級潜水艦 諸元

全長77.42メートル
幅7.8メートル
喫水7メートル
浮上時3,051トン
潜航時3,353トン


「コリンズ」級は現在、通常動力型潜水艦としては世界最大の大きさであり、
ステルス仕様として、ソナーによる探知を最小化するために
艦体は高張力超合金鋼製で、さらに無響タイルで覆われています。

正式な潜水可能深度はもちろんわかりませんが、情報源によると
180メートル (590 ft) 以上とされているということです。

武装
魚雷発射管6基、魚雷33本を標準搭載

推進
18気筒ディーゼルエンジン3基搭載

速度
浮上時:10.5 ノット (19.4 km/h; 12.1 mph)
水中:1.5ノット

航続距離
浮上時:時速19kmで20,000km
シュノーケル深度:時速19kmで17,000km

最大速度:60.4 km


ところで、「コリンズ」と「ファーンコム」だけ、
どちらも名前が(戦死しなかった)少将から取られていますが、
この2隻は同時に企画されたという理由によるものだと思います。

「コリンズ」を進水の予定日に間に合わせるために、
「ファーンコーム」は建造日程を遅らせて調節させられています。

ちなみに2番艦「ファーンコーム」が初の純オーストラリア産になったのは、
ネームシップ「コリンズ」の一部はスウェーデンで組み立てられたからです。

純国産潜水艦の誕生はオーストラリアにとってよほど名誉なことだったのか、
当初「ファーンコーム」のフィンには、大きく、

MADE IN AUSTRALIA

というロゴが掲げられていたということです。

「コリンズ」の建造がが少しだけ先んじて行われたことで、
「ファーンコーム」の計画にはその試験結果がフィードバックされ、
訓練資料も改善したものが反映されることになりました。

よく長男長女より次男次女の方が要領の良い子になるといいますが、
後発ならではのメリットを享受できた艦と言えるかもしれません。

「ファーンコーム」は 1998年1月31日に正式にRANに就役しました。


■ 「ファーンコーム」運用の歴史

オーストラリア海軍では、潜水艦における
「男女混合乗組員の実現可能性を検証」するための、
つまり潜水艦に女性隊員を乗せるための実験が1997年に行われました。

これは、6名の女性水兵からなる2つのグループを、お試しに
「コリンズ」と「ファーンコーム」に配属して経過を見るというものでした。

この試験は良好な結果を産んだため、その成功を受けて、
翌年1998年から、11名の女性水兵と1名の女性士官が、
潜水艦勤務に向けて訓練を開始するという運びになりました。

そしてほぼ現在の2020年「ファーンコーム」の映像をご覧ください。
「艦隊評価期間」から帰航した時の映像です。

HMAS Farncomb returns to Fleet Base West from Fleet Certification Period 2020

着岸の作業を行う方にも女性隊員がいるのが目立ちますが、
(カメラもわりと女性を狙ってます)
「ファーンコーム」艦上で接岸作業を行っている女性隊員もいますね。
彼女の肩の階級章から、彼女がNATOコードOR-3の水兵であるとわかります。


同艦のアクシデントや演習の成績などにも触れておきます。

●1998年、ティモールから帰還中、ディーゼル発電機3台すべてが故障。
「ファーンコーム」は何とかダーウィンまで辿り着いて、
そこで交換部品の整理と輸送を数週間待った。


発電機が全部故障してどうやってダーウィンまで行けたんだろう。


●1999年、戦闘システム試験で、「ファーンコーム」は
HMAS「トーレンス」にマーク48モッド4魚雷を実射し沈没させた。


それって単なる退役艦の始末任務・・・いやなんでもない。

●2007年3月19日、アジア海域での5ヶ月間の情報収集任務中に、
釣り糸が「ファンコーム」のプロペラに絡まった。
そこで、穏やかな夜間、国際海域で浮上し、
5人の乗員がプロペラを解放するためケーシングに出ていたが、
天候が突然悪化し、乗員が海に流される事態となった。

すぐさま元水泳選手を含む3人の志願者からなる救助隊が結成され、
90分の努力の末に、5人全員の回収に成功した。


この事件は、海外の海域における潜水艦事故ということで、
およそ2年半もの間、機密扱いになっていましたが、
RANが泳いで同僚を救出した3人の乗員に勲章を推薦したことで、
初めて世間に明らかになりました。

RANのそれまでの大きな潜水艦事故は、1981年、
HMAS 「オンズロー」Onslowでのケースでした。


ノーズのドームが目を引くデザイン「オンズロー」

演習中、「オンズロー」が哨戒機を発見し潜航を行おうとした時のことです。

シュノーピング(艦の二つのディーゼル発電機を動かすために空気を取り入れ、
生じた排気をシュノーケルを通して排出する作業)を停止させたところ、
潜水してすぐに右舷のディーゼルが起動していた(スイッチを切らなかったか、
あるいは再起動した)ことが判明し、排気シュノーケルを密閉した結果、
艦内に一酸化炭素の排気がに充満してしまいました。

「オンズロー」はすぐさま再浮上し、空気の入れ替えが行われましたが、
当時潜水艦の下甲板にいた上級士官が窒息と一酸化炭素中毒で死亡し、
他の18名は中毒症状で意識不明、あるいは痙攣を起こしていました。

また生存者の3分の1の血液中に、致死量の2倍の一酸化炭素が見られました。

この時に救出に当たった二人の潜水士は
その勇敢な行動に対して叙勲されたのですが、
「ファーンコーム」の3人は、その事故以来の叙勲者となったのです。


■ 「コリンズ」級潜水艦大ピンチ?

様々な要因が重なり、「ファーンコーム」は、2009年半ばには
「コリンズ」級潜水艦の中で唯一運用可能な状態となっていました。

その原因は乗員不足。

2008年くらいから配備可能な「コリンズ」級潜水艦の数は3隻に減り、
メンテナンススケジュールといくつかの艦のバッテリーの不具合が重なり、
2009年半ばには「ファーンコーム」の1隻だけになってしまっていました。

2009年、シドニー湾で行われたオーストラリア建国200周年以来、
最大のRAN艦の集合である艦隊入港と艦隊閲兵式で、
「ファーンコーム」は唯一の潜水艦として参加しています。


観艦式の際の「ファーンコーム」。(回遊式観艦だった模様)
乗員同士私語をしているらしい瞬間がバッチリ写っております。

しかも・・・・

●2010年1月、「ファーンコーム」は発電機の故障により緊急帰港。
これにより、姉妹艦「ウォーラー」が唯一の完全運用潜水艦となる。
「コリンズ」は制限任務、他の3隻は修理や整備中であった。

●2011年8月、「ファーンコーム」は潜望鏡深度でシュノーケルを使用中、
突然推進力を失った。
再始動が機能せず、船は後方に倒れ始めた。
緊急バラストのフルブローで潜水艦は浮上し、エンジンは再始動された。


いやこれ、艦体の絶対的不調だったんぢゃないんでしょうか。
直したのか?

しかしながら、世間に敷衍する噂とは全く対照的な、
「コリンズ級優秀」説も実在するらしいことがわかりました。

その一つの実証がこれ。

●「ファーンコーム」は2012年の環太平洋合同演習(リムパック)で
旧弾薬艦USNS「キラウエア」に向けてマーク48魚雷を発射し、
同艦を真っ二つにして沈没させた。


これって普通にすごくないか?
なのに、なのに、

 ●数日後、充電中に潜水艦の重量補償システム?のホースが裂けて浸水した。

充電中に浸水させてんじゃねーし。

つまりこれって、間のスペックというか練度は高いのに、
艦体そのものに問題あり、といことだったんでしょうか。


リムパックのためハワイに着いてレイをかけられた「ファーンコーム」
色々あったのは全てこの後のお話

この時「ファーンコーム」は潜望鏡深度から大きな事故なく浮上し、
パールハーバーまで航行して修理を行なっています。

「ファーンコーム」艦歴の最後にはこう書かれています。

2022年10月、「ファーンコーム」は、
日本の海上自衛隊の70周年を記念して開催された
国際観艦式に参加するために横須賀を訪れた。


日本にわざわざ来てくれてありがとう、「ファーンコーム」。
なんか、個人的にものすごく応援したくなる潜水艦です。


続く。



マレーシア海軍とKD 「クランタン」〜観艦式に伴外国艦艇一般公開

2022-12-01 | 軍艦

ブルネイ海軍、インドネシア海軍とご紹介したので、次は当然
両国と同じ一つの島ボルネオを分け合うマレーシア海軍だろうと思っていた方、
なぜか広報に最初は名前のなかったオーストラリア海軍の
HMAS「アルンタ」に横滑りしてしまいどうもすみませんでした。

今日こそは、マレーシア海軍と今回の観艦式参加艦艇についてです。



その前に、おなじみKさんがマレーシア艦に乗艦した時の写真をどうぞ。
この日KD「クランタン」は夜レセプションを控えていたそうで、
見学の人を入れるのを打ち切ったのですが、
Kさんはその最後のグループにいてギリギリ乗ることができたとか。

なんでもない写真ですが、明らかに日本やアメリカとは違う仕様がわかります。
例えば転落防止柵の貼り方とかね。



カクテルテーブルの飾り付けがお洒落です。



ここにはレセプションのデザートが乗る予定。
なになに?何が出てくるのかな?


「ピュレ・セランディング」Pulet serunding

餅米をココナッツミルクで練ったものを揚げた団子。
玉ねぎやひき肉も入っているらしい。

「サラワク・ケーキ」Sarawak layer cake

「世界で最も難しいケーキデザイン」と言われる(知らんけど)
レイヤーケーキ、「サラワク」。
なんでも、四角い焼き型におたま一杯ずつ、色を変えてケーキの地を入れ、
3〜5分上火で焼いて次のを入れ・・・を延々と繰り返して層を作ります。

色は単に着色料なので美味しいかどうかはわかりませんが、
とにかく綺麗で手間がかかっていることはわかります。

こんなめんどくさそうなものを軍艦のキッチンで、という気もしますが、
もしかしたらインドネシアやマレーシアでは、
これがないと盛り上がらないくらいポピュラーなお菓子なのかもしれません。

あとはスイスロール、カナッペ、プディング各種と書かれています。

スイスロールってなんだっけ、と思ってダックったら(DuckDuck goユーザ)
普通にクリームやジャムを巻いたロールケーキのことでした。

ちなみに日本で最初にスイスロールを発売したのは山崎製パンで、
1960年代にはスーパーに出回っていたそうです。

■ マレーシア海軍

というわけでひょんなことからマレーシアのお菓子について
その片鱗を知ることになってしまいました。

今回の、観艦式参加国の海軍について調べるという企画が、
これまで知らなかったことや歴史を探究する機会になったことに
心から感謝しつつ、マレーシア海軍についてお話ししたいと思います。


ロイヤル・マレーシア海軍
Tentera Laut Diraja Malaysia TLDM;
Royal Malaysian Navy RMN,
تنترا لاءوت دراج مليسيا

活動領域は、マレーシアの沿岸地域と排他的経済水域(EEZ)をカバーする
603,210平方キロメートル。
マラッカ海峡やシンガポール海峡など、国内の主要な海上交通路(SLOC)。

また、スプラトリー海域など、主張が重複する海域の
国益を監視する責任も担っています。


【海峡植民地王立海軍志願予備軍】

1934年にシンガポールの英国植民地政府が結成した

Straits Settlement Royal Naval Volunteer Reserve
SSRNVR

が、マレーシア海軍の原型です。

シンガポール海域で英国海軍を支援するための組織結成の背景には
当時アジアで自己主張を強めつつあった日本の台頭がありました。

第二次世界大戦の原因を一言で言えば、それは
「南方における資源の取り合い」に尽きます。

ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発すると、資源を確保するために
英国海軍は軍艦を供与するなどしてSSRNVRの戦力を一層増強しました。

これが「マレー海軍」と呼ばれるマレー系住民による海軍の基礎となり、
戦争が始まった1941年には、兵力は1,450人に増えていました。

第二次世界大戦中、マレー海軍は連合軍と共に太平洋の作戦地域に従軍し、
1945年に終戦になると、戦後の経済的制約から海軍は解散させられました。


【第二次世界大戦後 - マレー海軍の結成】

1948年、「マラヤ危機」が勃発しました。

これは、イギリス植民地政府に対する反乱で、
決起したのは共産主義勢力に扇動されたマレー民族解放軍です。

「マラヤ危機」は実質「危機」ではなく内戦だったのですが、
イギリスではこれを内戦としてしまうと、ロンドンを拠点とする保険会社が
保険金を支払わなくなるという事情から、
意地でも「危機」と呼んだという事情でそう呼ばれています。

ちなみにこのとき反乱を扇動した「共産主義者」の親分は
中国系マレー人、通称「陳平」本名王文華という筋金入りの怪しい人でした。

結局マラヤ政府が反乱組に恩赦を与えて収束を図り、
この陳平が大陸に逃げて騒動は終わっています。

しかしこの内戦をきっかけに休止していた海軍は活性化されることになります。

英国海軍の「リバー」級フリゲートを取得したほか、
装備した艦艇の中には旧日本海軍の機雷掃海艇などもありました。
それは・・・


デジャブかな?

シンガポール海軍の歴史にも登場した「若鷹」
「若鷹」この地域で大人気でした。
シンガポールが1966年に取得する前に、マラヤ海軍によって

HMMS「ラブアン」Laburnum

として1963年まで運用されました。

1952年、女王エリザベス2世は、マラヤ危機における海軍の功績を称え、
「ロイヤル・マラヤ海軍」Royal Malayan Navyの称号を授与しました。


船旗1957-1963

【マレーシア独立】

マレーシアがイギリスから独立したのは1957年8月31日のことです。

マレーシアではこの日を「ハリ・ムルデカ」と呼び、
毎年盛大に独立記念日を祝うイベントを行ないます。

独立から1年後、統治に残されたイギリス海軍の資産が譲渡され、
ロイヤル・マレー海軍に所属するすべての艦船、施設、人員は、
マレー政府に継承されると同時に、王立マラヤ海軍は
名実ともにマラヤの海上防衛を一手に担う責任者となりました。

このときから、ロイヤル・マラヤ海軍の「ロイヤル」は、
英国女王ではなく、マレーシア軍最高司令官と指すとされました。

新生海軍は、英国海軍から移管されたLCT1隻、沿岸掃海艇1隻、
「ハム」級掃海艇6隻、「トン」級掃海艇7隻など沿岸艦隊を擁していました。

そして1963年9月16日、 シンガポール、イギリス保護国北ボルネオ、
イギリス領サラワクがマラヤ連邦と統合し、マレーシアが成立

ロイヤル・マラヤ海軍はこのとき、

Royal Malaysian Navy (RMN)

と名称を変更しました。


船旗1963-1968

それまでの旗と何が違うのかわかりませんでしたが、
よく見ると赤い線が6本から7本に増えています。



マレーシアの新生海軍がアメリカのボスパー有限会社に18隻注文したのは

「ケリス」Keris 級哨戒艇

その後しばらく王立マレーシア海軍の主力となりましたが、
これは時速27ノット、実のところ耐久性も低かったそうです。


そして独立するなりマレーシアとインドネシア両国の対立が始まりました。

これによって両国は互いに海軍力の増備を図っていくわけですが、
RMNはかつての宗主国であったイギリス海軍から、


「ロッホ」級フリゲートHMS 「ロッホ・インシュ」

を取得し、

KD「ハン・トゥア」Hang Tuah

として運用しました。
現在も使われる接頭語のKDKapal Di-Raja=「陛下の船」という意味です。
「ハン・トゥア」は15世紀の実在の武将の名前から取られました。

同艦はインドネシアとの対立の中、近海警備を担い、
1970年代でスクラップになるまでRMNの旗艦として活躍しました。

その後も、マレーシア海軍は組織の改革などを行ない、
沿岸海軍(ブラウンウォーターフォース)から
外洋海軍(グリーンウォーターネイビー)へと徐々に変貌していきました。

【1970年代以降】

1977年、RMNは退役した「ハン・トゥア」の後継として、
イギリス海軍からフリゲート艦HMS「マーメイド」を獲得し、
2代目 KD「ハン・トゥア」 と命名されました。



今度のは2,300標準トンの軽巡洋艦で、102ミリ砲2門装備です。

その後マレーシア海軍は、エグゾセを搭載したミサイル艇、
元アメリカ海軍の第二次世界大戦時のLST数隻を輸送用に購入し、
掃海艇なども新たに取得していきました。

同時に主にイギリス海軍から譲渡された装備で航空団も組織していきます。

【近代化】

RMNの近代化は1980年代後半に始まりました。


「ニミッツ」と「レキウ」級フリゲート

「ラクサマナ」Laksamana級コルベット(イタリア)
「レキウ」Lekiu級フリゲート(UK)
「カストゥリ」Kasturi級コルベット(ドイツ)

「スコーペン」Scorpène級潜水艦(スペイン&フランス)

「ケダ」Kedah級海洋パトロール船(マレーシア独)
「ケリス」Keris級沿岸任務船(中国)
「マハラジャ・レラ」maharaja-Lela級フリゲート(マレーシア仏共同)

などを次々と装備しています。

【海賊対策】

2011年、ケミカルタンカーに対するハイジャック事が起こりましたが、
マレーシア海軍は、攻撃ヘリで海賊の母船を突き止め、
海兵隊員のコマンドが乗り込んで戦闘を行い、その結果
船員 23 人が救助され、ソマリアの海賊 7 人が拘束されました。

ソマリア人犯人グループの中には15歳未満が3人いたそうです。

また、2015年に起きたインドネシアの海賊によるハイジャック事件でも
マレーシア海軍はベトナム国境警備隊、ベトナム沿岸警備隊、
オーストラリア空軍、インドネシア海軍で行われた共同作戦に加わりました。


2013年2月11日には、フィリピンから侵入しボルネオのサバ州で
領有権を主張する200名以上の武装勢力に対し、
マレーシア海軍は艦艇を用いて海上封鎖を実施し、
海軍特殊戦部隊を送り込みました。

【マレーシア海軍基地配置図】



マレーシアという国が地図上で判然としない方もこれでOK。

マレーシア海軍特殊部隊 PASKAL
(Pasukan Khas Laut or Naval Special Warfare Forces)


■ KD「クランタン」


「クランタン」入港から内部までが見られるyoutubeをご覧ください。

KD「クランタン」は先ほど説明した、「ケダ」級哨戒艦の5番艦です。

建造はドイツ海軍グループの    ブローム+フォス/HDW、
ブーステッド重工業株式会社(旧PSC-Naval Dockyard)。

容積 1,850トン
全長 91.1m
喫水 3.4 m (11 ft)

主推進力
キャタピラー社製3616(5,450kW)ディーゼル

速度 24ノット(44km/h、28mph)
航続距離 6,050海里(11,200km、6,960mi)
耐久日数 21日

定員 78名(98名収容可能)

兵装
76mmオトーメララ
30 mm ブレダ-マウザー

搭載ヘリ:スーパーリンクス300


「ケダ」級洋上パトロール船は、当初は27隻が計画されましたが、
計画の遅れやオーバーランにより、最終的に6隻が建造されました。
艦名は全てマレーシアの州名にちなんでいます。

F171 KD「ケダ」Keda  2006
F172 KD「ペハン」Pehang 2006
F173 KD「ペラク」Perak 2009
F174 KD「テレンガヌー」Terengganu 2009
F175 KD「クランタン」Kulantan 2010
F176 KD「セランゴー」Selangor 2010



KD「クランタン」は 2005 年 7 月に BHIC, Lumut, Perak で起工され、
2008 年 11 月 24 日に進水し、2010年5月8日に就役しました。

こうして見ると艦尾側が黒くて特殊なデザインですね。
この色の塗り分けには何か機能的な意味があるのでしょうか。


「ケダ」級のサイズはコルベット級ですが、マレーシア海軍では
オフショアパトロール船(OPV)と分類されています。

というのは、同級は完成した段階で兵器やセンサー、
電子機器を搭載しておらず、搭載できる設備だけを持つ船だからです。

というわけで、現在、同級の武装は砲のみ。
このサイズの艦艇としてはかなり軽装備で脆弱であるため、
コルベットではなくOPVとして登録されているのです。

当初27隻も注文しておいて6隻で打ち止めになったのは、
引き渡し前の海上試運転に合格せず、進捗が甚だ遅れたためでした。

【特徴】

MEKO 100コルベットをベースにしていており、
レーダーによる被探知能力が低く、静音性があり、低発熱で、
経済的な巡航速度を持つよう設計されています。

高度な制御システムを持ち、推進、電気、ダメージコントロール、
補助機械やシステムを含む監視と制御に使用されています。

船舶の数が6隻と少ないため、運用の効率と生存率を高めるために、
高度な自動化設計が採用されました。

インテリジェントな電子機器とセンサーこれにより、
船内の複数の場所から機械の監視と制御が可能になり、また、
生存率を高めるために冗長化(バックアップ)システムを備えています。

先ほど少し説明しましたが、「ケダ」級は、
地対空ミサイルと対艦ミサイルが搭載可能ですが装備していません。
巡航ミサイルも購入すれば1日で取り付けられるので、
必要になったらそのときに搭載するという状態だそうです。

そんなので乗員はいざというとき武器類をちゃんと運用できるんだろうか。


続く。




HMAS「アルンタ」オーストラリア海軍の「アンザック」級フリゲート〜国際観艦式

2022-11-29 | 軍艦

今回の国際観艦式では、全く公開されなかった外国軍艦もあります。
ご存じ韓国海軍の「ソヤン」もそうですし、
この不思議なシェイプのオーストラリア海軍のフリゲート艦、

HMAS「アルンタArunta」FFH 151

もその一つです。

Kさんの下さった「アルンタ」観音崎沖を通過している写真を見て、
この独特の上部構造物と、向こうの観音像との組み合わせが絶妙だったせいか、
わたしなどてっきりこれをタイ海軍(仏教系の国)の艦だと思い込んでいて、
後からオーストラリア艦だと知りびっくりしたのはここだけの話。

今回、この「アルンタ」が佐世保港に入港する様子を
動画に挙げている方がおられました。

超高画質で独特の構造物もアップで見ることができます。
お馴染みの赤いカンガルーもバッチリ映っておりますが、
この動画を見て、

「カンガルーは船の進行方向に向けて飾る」

らしいことが判明しました。
右左どちらに向いていてもOKとされていたのはこのためだったのか。

オーストラリア海軍フリゲート艦アランタ」(Ⅱ)入港 


おっと、右舷になんか怪しげな傷が・・。
これは何かにこすったかな?( ̄▽ ̄)



「アランタ」の艦バッジに描かれた謎の原住民。
実は、艦名の「アランタ」の名前の由来は、

アランテ人(Arrente、Aranda、Arrantaどれでも可)

というオーストラリアのアボリジニの一民族なのです。

この艦章にはそのアランタ?アルンタ?人そのものと、
彼らの日常の狩猟道具であるブーメランなどがあしらわれています。

アルンタの民の「歓迎の踊り」1901

そしてインシグニアのアレンテ?人の下にあるのが艦のモットーで、

"Conquer or Die" (征服か死か)

うーん選択肢極端すぎ。

ところで、「Arunta」という艦名の綴りは、
たくさんあるアレンテ族を表す単語の綴りと一つも一致していません。
このことは当事者も十分理解の上で、修正も検討されましたが、
RANは前艦と同じ綴りを使うことにしたということです。


■ アンザック級フリゲート

HMAS「アレンテ」は、「アンザック」級フリゲートの2番艦です。



「アンザック」級(ANZAC級、MEKO 200 ANZ型とも)

は、

オーストラリア海軍(RAN)
ニュージーランド海軍(RNZN)


二カ国によって運用されているフリゲート艦です。


今回の横須賀での一般公開で、オーストラリアとニュージーランド海軍艦艇が
仲良く同じ岸壁に係留していたのを見て、
隣同士の国なのに珍しく仲がいいのね、と思ったのですが、
実は1980年代頃まで関係は悪くはないが別に良くもなかったようです。

なのにそんな両国が共同で同じ軍艦を持つに至った経緯、というか、
現在に至る「仲良し」のきっかけは、1980年代、
RANがイギリス製の護衛艦「リバー」級の後継艦を検討していた同じ頃、
RNZNも「リアンダー」級の代替を模索していたことでした。

その頃ニュージーランドは、安全保障と非核をめぐって(多分核実験の件で)
アメリカとの関係が悪くなっていたのをきっかけに、
隣国と関係を改善することにし、オーストラリアもこれを了承しました。

そこで、両国は軍艦取得計画をすり合わせて、その結果、
同じ軍艦を共同で取得することを決めたのでした。

というわけで、艦級名の「アンザック」という名前は、第一次世界大戦中、
共同で戦ったオーストラリア・ニュージーランド陸軍部隊を意味する

Australia and New Zealand Army Corps
→ANZAC

となりました。
仲良きことは美しき哉。

入札の結果、ドイツのブローム・アンド・フォス社案が選ばれ、
モジュラー設計されて6つの部分に分けられ、
別々のところで完成したものを最終的に統合しました。

RASの「アンザック」級フリゲートは全部で8隻、
それぞれの名前の由来も書いておきます。

「アンザック」Anzac 150 =Australia and New Zealand Army Corps

2「アルンタ」Arunta 151 =Arrente族

3「ワラムンガ」Warramunga 152 =Warumungu族

4「スチュアート」Stuart 153=スコットランド・スチュアート朝

5「パーラマッタ」Parramatta 154=Parramatta河

6「バララット」Ballarat 155=Victoria州の都市

7「トゥーンバ」Toowoomba 156=Qeensland州の都市

8「パース」Perth 157=パース(都市)


命名に基準というものはないんか、と思うのはわたしだけでしょうか。
ついでに、ニュージーランド海軍に行った2隻はというと、

1「テ・カハ」Te Kaha 110=マオリ族の言葉『戦闘力』『強さ』

2「テ・マナ」Te Mana 111 =マオリの概念『地位と権威を持つ高潔な人物』


となっています。


ただし、全く同じスペックの艦体と言いつつ、搭載する武装については
RAN と RNZN は、個別に追加や能力向上を試みています。

■ 改造と改良

二カ国から発注を受けたという特殊な事情のせいだと思うのですが、
「アンザック」級は最低基準の攻撃・防御兵器を搭載し、
その他の装備は「あってもなくてもいい」?ように設計されていました。

RANとRNZNは、すべての艦が就役する前にアップグレード計画を始め、
これらのアップグレードは国家単位で計画・実行されました。

【オーストラリアの改修】



バックの巨大観音像とあまりに違和感なくマッチしていたため、
よもやオーストラリアの艦だと思わなかった独特の上部構造物。

これは案の定、アップグレードの為せるもので、HMASパースに装備された

CEAFAR能動電子走査型アレイレーダー

でございます。

RANは、フリゲート艦の戦闘能力を向上させるアップグレードを
1996年から計画し始め、研究と試験を経て2012年には
6億5千万豪ドルの改装作業が開始し、 2017年に全8隻が完成しました。

この計画完成以降、同級は、シースパローミサイルの代替として
RIM-162(ESSM)を搭載・発射できるようになりました。

「アンザック」級3番艦の「ワラムンガ」Warramun FFH152
ESSMを搭載した世界初の艦船となりました。

また、オーストラリアのフリゲート艦の魚雷発射管には
フランス・イタリアのMU90インパクト魚雷を搭載することに変えられました。

「アンザック」級7番艦「トゥーンバToowomba」
2008年、試験発射でオーストラリア艦として初めてMU90魚雷を発射、
4番艦「スチュアートStuart」は武装MU90の
「warshot」発射を初めて実施しています。

なお、オーストラリアは、2024年までにハープーン対艦ミサイルを
コングスベルグ海軍打撃ミサイル(NSM)に置き換えることを計画しています。

この海軍打撃ミサイルは、陸と海の両方の標的に対して使用することができ、
射程を大幅に増加させることができるとされます。

RANは2024年までは「アンザック」級を運用しますが、
それ以降は代替艦として「ハンター」級新型フリゲートを建造する予定です。

新型艦は最大7,000トンの排水量を持ち、対潜戦を指向しつつ、
航空・水上・陸上目標に対しても有効なものとされています。
(これは世界的な海軍の傾向みたいですね)


■ HMAS「アルンタ」

オーストラリア海軍からは、潜水艦「ファーンコム」も入れると
総勢4隻で来日してくれていたわけですが、
「アルンタ」は観艦式の日、Kさんが撮った写真によると
こうやってちゃんと観艦式会場に向かっています。

一体いつ来てどこに係留していたんでしょうか。


船級・艦種 
「アンザック」級フリゲート

容積 3,810トン
全長 118m(387フィート)
ビーム 15 m (49 ft)
喫水 4m(13フィート)

推進力
General Electric LM 2500 ガスタービン
MTU 12v 1163 TB83ディーゼルエンジン
速度 27ノット(50km/h、31mph)
航続距離 11,000km、18ノット(33km/h、21mph)時

乗員数 約170名
士官22名下士官兵141名

兵装

砲とミサイル
 1 5 in/54 (127 mm) Mk 45 Mod 2 砲
Rafael Mini Typhoon 12.7mm (.50 cal) CIWS、

小型武器
4 Harpoon Block II 対艦ミサイル
Mk 41 Mod 5 VLS for Sea SparrowおよびEvolved Sea Sparrow

魚雷
2基の324mm Mk 32 Mod 5発射管とMU 90魚雷

搭載機 
Sikorsky MH-60R Seahawk

■ HMAS「アルンタ」運用の歴史

【タンパ号事件】

2001年8月、オーストラリア政府が、438名のアフガニスタン難民を載せた
ノルウェー船「タンパ」号(MV Tampa)の海域への立ち入りを拒否した、
「タンパ号事件」が発生。

この時、「タンパ」の難民要請をオーストラリア政府は拒否。
「タンパ」船籍のあるノルウェー政府はこれに反発しますが、
難民に食料を与えた上ですかさず国境保護法を提出し、
海軍を出動させて船ごとナウル共和国に送ってしまいました。

この事件後、「アルンタ」はオーストラリア北部海域に展開し、
やはりアフガン難民を乗せた不法侵入船の侵入阻止と返還に関与しています。

【テロ対策作戦】

2002年、「アルンタ」はイラクに対する国連の制裁の実施に関与し、
国際テロ対策連合軍の一員としてイラク沿岸に近いところで活動しました。

【ペルシャ湾派遣】

2007年、「アルンタ」はペルシャ湾で2回目の現役任務に就き、
イラクの石油プラットフォームの保護、船舶のプラットホームへの乗船を保護、
イラク海軍の訓練に貢献などを行いました。

【人命救助】

2008年12月19日、「アルンタ」は、単独世界一周ヨットレースに参加し
負傷したヨットマン、ヤン・エリーズを救助しました。

エリーズはパースの南西1480キロメートル で、
大波に足を折られて座礁していたということです。

Rescue of Yann Elies, Generali by HMAS Arunta.

救助した乗員のスマホか何かで撮ったらしく、何が何だかわかりませんが、
とにかく大変だったらしいことだけはわかります。

【アップグレード完了】

2014年6月、対艦ミサイル防衛プロジェクトのアップグレード完了。
「アルンタ」はアップグレードされた同級の2番艦であり、
18ヶ月の改装中にCEAFARフェーズドアレイレーダーと
アップグレードされたSAAB戦闘管理システムなどの改造が行われ、
6月末に改装後の海上試運転が開始されました。

【哨戒警備作戦】

2017年7月、「マニトゥ作戦」の一部として中東に配備され、
この地域で長期パトロールを行うRANの最初の艦船になりました。

 2020年11月、「オペレーション・アルゴス」
北朝鮮に対する制裁を強化するための作戦に参加しました。

この作戦で、RANは哨戒機「ポセイドン」を嘉手納基地に配備、
「アルンタ」以外にも「ワラムンガ」「バララット」など、
同級のフリゲートが参加しています。


続く。