建設経済常任委員会は、11月10~12日、長野県飯田市、東京都調布市、愛知県刈谷市へ
「観光振興・ごみ広域処理・交通政策」についての3つをテーマに管外視察に行ってきました。
ツアー・オブ・ジャパンについて
初日は、観光振興施策として長野県飯田市(人口約10万4千人、3万9千世帯)にツアー・
オブ・ジャパン(略称TOJ)について、研修に行きました。
TOJとは、毎年5月に日本で行われる自転車ロードレース大会で、自転車月間推進協議会が
主催し、自転車月間(5月)における最大のイベントであり、来年5月には京田辺市(普賢寺地域)
と精華町で共同開催されます。
10回目の開催となる第18回TOJ南信州ステージ(全7ステージ)では、海外チーム8、
国内チーム9、計17チームの102名の選手が参加。来場参加数は3万7千人で、子ども達にも
観戦させたいとのことで、保育所8園・小学校4校・中学校2校の約1400人が、手作りの応援
小旗で観戦したそうです。
TOJ開催の情報発信としては、レース中継にバイクカメラと空撮映像(ドローン)を導入され
ています。また、映像が観られるように飯田ケーブルテレビや、インターネットライブ映像配信サ
イトUSTREAM、ニコニコ生放送により、レース中継に取組んでいました。
レース開催後には地域振興の目的として、小中学生を対象にレース観戦の感想を川柳にし、実行
委員会が優秀作品を表彰することや、プロを目指す育成チームの選手に講師に来てもらいロードレ
ースにまつわる話を聞く学習会を実施するなど取組まれていました。
京田辺市では、開催まであと6カ月後にせまり、道路の修繕や観客の安全対策、また地元住民へ
の理解と協力を得ることなど、課題があると感じました。
ごみ処理施設整備運営事業と市民参加について
2日目は、東京都の三鷹市(人口約18万人、9万世帯)と調布市(人口約22万人、11万世帯)
で、ごみを共同処理している「ふじみ衛生組合」に行きました。
両市では、ごみ処理施設の建替え時期が近いこと、また、可燃ごみの処理と不燃ごみの処理は、
同じ構成市で行ったほうが効率的であることから、三鷹市と調布市が共同で可燃ごみの処理施設を
整備することに合意し、平成11年8月に両市長が「新ごみ処理施設整備に関する覚書」を締結し
ました。両市では、ともに市民参加が盛んで、新ごみ処理施設整備事業も例外ではなく、基本計画
策定段階から現在に至るまで、市民とともに計画を策定し事業を推進、覚書締結から11年後の
22年8月、新ごみ処理施設の建設工事を着工し、25年4月から運営されています。
両市は、14年1月「新ごみ処理施設整備基本計画検討委員会」を設置。委員は委員長の他に
学識経験者2名、市民20名(両市各10名、うち公募各3名)、市職員4名(両市各2名)の計
27名で構成。委員の任期は2年で、施設規模、処理方式、建設候補地、事業方式など新ごみ処理
施設の基本的事項について検討を行い、処理方式と建設候補地では議論が白熱し、ついには任期の
延長となりました。
処理方式では、ストーカー炉とガス化溶融炉で意見がわかれ、また、建設候補地は、選定方法や
手順について検討が行われ、6カ所まで絞り込めたものの、それ以上の絞り込みは困難を極めたそ
うです。
最終的には、委員会15回、勉強会20回、施設見学会8回、アンケート1回、市民委員主催に
よるシンポジウム2回を開催し、16年3月に委員会より答申が提出されました。
一方処理方式については、17年9月、学識者5名からなる「処理方式選定委員会」を設置し、
検討した結果、溶融スラグ化とエコセメント化を比較すると、経済性では大きな差はないものの、
エコセメントが順調に販売できているのに対して、溶融スラグは順調に販売できていない事例も多
く見受けられたことから、17年11月「灰の処理をエコセメント化することとし、処理方式はス
トーカー炉とする」という答申が提出されました。
また、事業方式については、17年12月に「新ごみ処理施設整備基本計画(素案)」を作成し、
説明会を開催するとともに市民アンケート(各市1500名、計3000名)を実施し、説明会や
アンケートの意見を踏まえ、18年3月「新ごみ処理施設整備基本計画」を策定しています。
18年10月、ふじみ衛生組合に新施設建設準備室が設置され、このころになると新ごみ処理施
設を、ふじみ衛生組合用地に建設することに強く反対していた周辺の住民も、建設するのであれば
良い施設を造ってほしいという空気に変わってきたそうです。
ふじみ衛生組合では、具体的な内容について検討を行うため18年11月「ふじみ新ごみ処理施
設整備市民検討会」を設置。委員は会長の他に学識者1名、市民12名(両市6名、うち地元推薦
各2名、公募各3名)の計14名で構成しています。この検討会では、建設規模、公害防止基準、
煙突の高さ、焼却炉の炉数、白煙防止装置の有無などについて検討が行われ、焼却炉の炉数では
1炉停止したときに備えて、3炉とする意見と、経済性を考慮し2炉とする意見がほぼ半数に分か
れ結論がでなかったため検討会の議論を踏まえ、ふじみ衛生組合で2炉決定されました。
(288t×1炉・144t×2炉・96t×3炉)
このように、各段階において市民との協働の取り組みがなされ、これらの委員会・検討会・協議
会はすべて公開で行われていました。
京田辺市においても、甘南備園近隣の4つの区自治会のみの説明だけではなく、枚方市と京田辺
市の両市民との協働の取組と、積極的な情報公開と丁寧な説明により、市民との信頼関係を深めな
がら進めて行くべきだと思いました。
交通施策について
3日目は、愛知県刈谷市(人口約14万8千人、6万2千世帯)の交通政策について研修しました。
同市の都市交通では、地域活力の維持・向上とともに、東日本大震災を教訓とする防災・減災対策の
推進、地球規模の環境問題への対応に向けた低炭素化の推進、高齢者など交通弱者が安心かつ安全に
移動できる移動環境の確保など、多岐にわたる検討課題がありました。
また、同市の中心部には、大規模事業所が多数立地していることから、朝夕の通勤時には、主要幹
線道路や刈谷駅周辺の道路において激しい渋滞が発生しており、生活道路への迂回交通の進入や、中
心市街地へのアクセス、利便性の低下などの問題が発生していました。これらの問題について、自動
車交通への対応のみならず、鉄道、バスさらには自転車など多様な交通手段を含む総合的な観点から、
その解決策を探る必要がありました。そこで、総合交通体系の視点から、同市が目指すべき都市交通
のビジョンを明確にするとともに、その具体化に向け、24年7月に「刈谷市都市交通戦略・平成
24年~42年」を策定したとのことでした。
同市は、南北に細長い地形で9つの駅が東西を結び、南北にバス路線が走っています。市民アンケ
ートからは、「バスの利便性の向上」が一番多く、高齢者など交通弱者をはじめ、市民が自動車に頼
ることなく生活できる環境を創出するため、市民の日常生活の移動手段として公共施設連絡バスを無料
で運行していました。同市の費用負担としては、6路線(10台)を4事業者に委託し、平成26年度
委託料として約2億円、民間バス1路線に約1700万円の補助を行っていました。
その他に、自転車ネットワーク計画や、交通バリやフリー基本構想、ゾーン30における交通安全対
策についてなど研修しました。
3日間の研修を通して、各市それぞれで先進的な取り組みがなされ、参考にすべき点がありました。
今後、京田辺市の施策に活かせるように頑張りたいと思います。