アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

不死の薬を飲みそこねる

2024-08-01 03:31:29 | 無限の見方・無限の可能性

◎羿(げい)と楚王

 

中国には、長生術というのがある。もののあはれが染みついた日本人は、長生きしても寝たきりになったり介護されるのはたまらないので、長寿もそこそこにと思うのも人情である。だから中国人が長生術と言って専ら寿命の長いのをよしとするのは奇妙なことだと思う日本人は少なくないだろう。

ところが中国でいう長生は、意外にも不死のことなのである。

 

『羿(げい)が、死をつかさどる神である西王母に不死の薬をねだってもらい受けた。ところがある日、妻の嫦娥(こうが)が不死の薬を盗み出して、早速服用して飛昇成仙し、月に逃亡した。これを知った羿は追いかけるでもなく、ただがっかりして茫然自失し、がっかりして死を待つばかりとなった。』(「淮南子」「覧冥訓」)。

月というのは、異世界ということを強調するもので、西洋オカルト本で金星人とか火星人とか木星人が単に異世界であることを強調するのに力点があるのと同じ。霊界、天国止まりではあるまい。

 

似た故事がある。

『春秋戦国の末期、さる客人が楚王に不死の薬を献上した。 取次ぎの役人がそれを持 って奥に入っていくと、宿衛の士が「食べてもいいですか?」ときいたので、「いいです。」と答えると、宿衛の士は、奪い取って食べてしまった。王は非常に立腹し、その宿衛の士を殺させようとしたが、王に弁解するには、

「私は取次ぎ役が食べてもいいというので食べました。

もしこの不死の薬を食べた私が殺されるのであれば、客人の献上したのは、実は死の薬であったことになる。そうなると客人は王をだましたことになる。

楚王が客人に騙されたという外聞の悪いニュースが公表されるよりは、私を許した方がよい。」

楚王はそれを聞くと殺すのをやめた。』

(韓非子/「説林(上)」)

 

不死の薬は、ソーマのこと。

死においては、財産も名誉も家族も愛人も人間関係もすべて喪失する。不死の薬を服用できさえすれば、そのリスクを永遠に回避できると、持てる者は思う。

持てる者とは、天国をベストとする考え方なのだと思うが、天国は天人五衰であり、結局永続するものではない。

財産も名誉も家族も愛人も人間関係も不変の生活は、実は退屈きわまりないものであり、それは真の幸福、永劫不壊の歓喜とは異なるものなのではないだろうか。

既にこの世の世俗面での充実というものが何かを知っている楚王は、そこに気がついていたのだろうし、羿の妻の嫦娥は、ソーマを服用して飛昇成仙という名の大悟覚醒を遂げたのだと思う。

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