毎年大晦日は学問(特に物理)と芸術(特に音楽)の分野から、私が勝手に思う人への惜別の辞を述べさせていただいています。
2月22日 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(ドイツの指揮者・享年89歳)
世界的に活躍した指揮者ですが、特にN響を非常に頻繁に指揮していたので馴染み深い指揮者です。オーソドックスながらもかっちりしていて安心して音楽に浸れました。伴奏ピアニストとしても感動を呼び起こしました。彼の訃報についてはこのブログでも取り上げました。
2月26日 マリー・クレール・アラン(フランスの女流オルガニスト・享年86歳)
レパートリーが大変広く、聞いたことのあるオルガン曲はほとんど録音があるのではないか。その演奏は大変爽やか。きれいな音楽だなぁ、と、心を洗われるような演奏でした。
2月27日 ヴァン・クライバーン(アメリカのピアニスト・享年78歳)
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はこの人のレコードで初めて聴いて以来、もしかしたら3番よりも好きなくらい入れ込んでいます。さすがに今となっては、純音楽的にはもっといい演奏があると思いますが、当時の冷戦中の平和に向けた異様な高揚感と抱き合わせで、私にとっては歴史的な演奏となっています。
彼の訃報についてはこのブログでも取り上げました。しかしより詳しくは、辻井伸行氏がクライバーンコンクールで優勝したときのこの記事をどうぞ。
4月15日 ジャン=フランソワ・パイヤール(フランスの指揮者・享年85歳)
パイヤール室内管弦楽団の主催者。主にこの人のレコードでバッハの管弦楽作品を覚えました。品のいい容貌そのままの演奏。どれも端正な演奏ですが、特に印象的なのは「音楽の捧げもの」。中でも6声のリチェルカーレの暖かく深みのある演奏には、聴いたあと我に返ってから音楽の持つ力を思い知らされました。
4月21日 ジャン=ミシェル・ダマーズ(フランスの作曲家・享年85歳)
前衛には背を向けた調性感のある音楽を作曲しています。多分そのせいで現代音楽作曲家として名を成していないのだと思いますが、私もそれほどいろいろな曲を聴いてはいません。しかしピアノ曲の楽譜は少し持っています。ジャズ的な楽想ですが、カプースティンとはまた違ってフランス的です。序奏とアレグロなどが有名。
5月29日 潮田益子(ヴァイオリニスト・享年71歳)
前半の5人は外国人ばかりでしたが、ここで日本人。この人の演奏でシベリウスのヴァイオリン協奏曲を初めて知りました。テレビで見た潮田益子は若さ溢れていました。もう71歳なんですね。音質がパールマンのように透徹でシベリウスによく合っていました。レコードでカップリングだったブルッフの1番も迫力がありました。
6月 9日 岩澤宏(物理学者・享年87歳)
今年の墓碑銘は音楽家が多くなっていますが、ここで物理学者です。霜田光一先生、神谷武先生とともに「レーザー物理」の共訳者です。福井大工学部長を経て広島電機大(現広島国際学院大)工学部教授。専門は量子工学特にレーザーカオス。若い人たちをよく励ましてくれていました。(ここでいう若い人たちというのは私も入れていますが、もちろん岩澤先生に比べて相対的な表現です。) 熱心に物理学会に多分毎回出席されていて、確か3月の学会にも来られていたように思います。それだけにちょっとショックです。
9月 2日 諸井誠(作曲家・享年82歳)
この人の作品もよく知っているというわけではありませんが、ピアノ協奏曲第1番は楽しませていただいた思い出の曲です。このまま忘れられてしまうのはもったいないなぁ。
9月13日 レイ・ドルビー(アメリカの音響学者、実業家・享年80歳)
この人はまあ物理と音楽の両方に関係した人です。ドルビーシステムと言えば、映画のサラウンド方式を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし私のようなオープンリールテープデッキやカセットデッキに愛着のある者にとっては、テープのヒスノイズ(シャーという定常的な高音域ホワイトノイズ)を落とすためノイズリダクションをまず思い浮かべます。高音域を強調して録音し再生時に抑制することにより、音楽の周波数特性はそのままにヒスノイズだけ相対的に抑えるものです。ドルビーB方式とかC方式がありました。特にシンセサイザーを使った多重録音には欠かせないものでした。
10月4日 三善晃(作曲家・享年80歳)
この人の作品は、好きです。同じくフランスに留学した矢代秋雄と若干傾向が似ていますが、よりフランス的な感じがします。20台前半の作品であるヴァイオリンソナタやピアノソナタからして高い完成度です。この2曲を一夜でとりあげた青柳いづみこの演奏は本当にすばらしかった。武満徹とはまた違った方向の作曲家ですが、是非名が残って欲しいものです。
以上で10人ですが補遺を少々。
・4月14日 サー・コリン・デイヴィス(英国の指揮者・享年85歳)
・5月16日 ハインリッヒ・ローラー(スイス人の物理学者・享年79歳)走査型トンネル電子顕微鏡の開発により1986年ノーベル賞受賞。
・5月22日 アンリ・デュティーユ(フランスの作曲家・享年97歳)この人のピアノソナタが最近アマチュアピアニストに人気です。ちなみに三善晃が私淑したようです。
・人間ではありませんが、11月13日プレイエル社がピアノ生産から撤退。直前の記事を参考ください。ピアノ製造会社がピアノ生産から撤退とは、今後どうするのでしょう? あの響きのいいパリのサル・プレイエルの経営は続くのでしょうか?
・12月10日 ジム・ホール(ジャズギタリスト・享年83歳)ジャズもときどき聴く私としては思い出のギタリストの一人です。
それでは、今年もあと1時間半ですが、良いお年を。
2月22日 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(ドイツの指揮者・享年89歳)
世界的に活躍した指揮者ですが、特にN響を非常に頻繁に指揮していたので馴染み深い指揮者です。オーソドックスながらもかっちりしていて安心して音楽に浸れました。伴奏ピアニストとしても感動を呼び起こしました。彼の訃報についてはこのブログでも取り上げました。
2月26日 マリー・クレール・アラン(フランスの女流オルガニスト・享年86歳)
レパートリーが大変広く、聞いたことのあるオルガン曲はほとんど録音があるのではないか。その演奏は大変爽やか。きれいな音楽だなぁ、と、心を洗われるような演奏でした。
2月27日 ヴァン・クライバーン(アメリカのピアニスト・享年78歳)
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はこの人のレコードで初めて聴いて以来、もしかしたら3番よりも好きなくらい入れ込んでいます。さすがに今となっては、純音楽的にはもっといい演奏があると思いますが、当時の冷戦中の平和に向けた異様な高揚感と抱き合わせで、私にとっては歴史的な演奏となっています。
彼の訃報についてはこのブログでも取り上げました。しかしより詳しくは、辻井伸行氏がクライバーンコンクールで優勝したときのこの記事をどうぞ。
4月15日 ジャン=フランソワ・パイヤール(フランスの指揮者・享年85歳)
パイヤール室内管弦楽団の主催者。主にこの人のレコードでバッハの管弦楽作品を覚えました。品のいい容貌そのままの演奏。どれも端正な演奏ですが、特に印象的なのは「音楽の捧げもの」。中でも6声のリチェルカーレの暖かく深みのある演奏には、聴いたあと我に返ってから音楽の持つ力を思い知らされました。
4月21日 ジャン=ミシェル・ダマーズ(フランスの作曲家・享年85歳)
前衛には背を向けた調性感のある音楽を作曲しています。多分そのせいで現代音楽作曲家として名を成していないのだと思いますが、私もそれほどいろいろな曲を聴いてはいません。しかしピアノ曲の楽譜は少し持っています。ジャズ的な楽想ですが、カプースティンとはまた違ってフランス的です。序奏とアレグロなどが有名。
5月29日 潮田益子(ヴァイオリニスト・享年71歳)
前半の5人は外国人ばかりでしたが、ここで日本人。この人の演奏でシベリウスのヴァイオリン協奏曲を初めて知りました。テレビで見た潮田益子は若さ溢れていました。もう71歳なんですね。音質がパールマンのように透徹でシベリウスによく合っていました。レコードでカップリングだったブルッフの1番も迫力がありました。
6月 9日 岩澤宏(物理学者・享年87歳)
今年の墓碑銘は音楽家が多くなっていますが、ここで物理学者です。霜田光一先生、神谷武先生とともに「レーザー物理」の共訳者です。福井大工学部長を経て広島電機大(現広島国際学院大)工学部教授。専門は量子工学特にレーザーカオス。若い人たちをよく励ましてくれていました。(ここでいう若い人たちというのは私も入れていますが、もちろん岩澤先生に比べて相対的な表現です。) 熱心に物理学会に多分毎回出席されていて、確か3月の学会にも来られていたように思います。それだけにちょっとショックです。
9月 2日 諸井誠(作曲家・享年82歳)
この人の作品もよく知っているというわけではありませんが、ピアノ協奏曲第1番は楽しませていただいた思い出の曲です。このまま忘れられてしまうのはもったいないなぁ。
9月13日 レイ・ドルビー(アメリカの音響学者、実業家・享年80歳)
この人はまあ物理と音楽の両方に関係した人です。ドルビーシステムと言えば、映画のサラウンド方式を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし私のようなオープンリールテープデッキやカセットデッキに愛着のある者にとっては、テープのヒスノイズ(シャーという定常的な高音域ホワイトノイズ)を落とすためノイズリダクションをまず思い浮かべます。高音域を強調して録音し再生時に抑制することにより、音楽の周波数特性はそのままにヒスノイズだけ相対的に抑えるものです。ドルビーB方式とかC方式がありました。特にシンセサイザーを使った多重録音には欠かせないものでした。
10月4日 三善晃(作曲家・享年80歳)
この人の作品は、好きです。同じくフランスに留学した矢代秋雄と若干傾向が似ていますが、よりフランス的な感じがします。20台前半の作品であるヴァイオリンソナタやピアノソナタからして高い完成度です。この2曲を一夜でとりあげた青柳いづみこの演奏は本当にすばらしかった。武満徹とはまた違った方向の作曲家ですが、是非名が残って欲しいものです。
以上で10人ですが補遺を少々。
・4月14日 サー・コリン・デイヴィス(英国の指揮者・享年85歳)
・5月16日 ハインリッヒ・ローラー(スイス人の物理学者・享年79歳)走査型トンネル電子顕微鏡の開発により1986年ノーベル賞受賞。
・5月22日 アンリ・デュティーユ(フランスの作曲家・享年97歳)この人のピアノソナタが最近アマチュアピアニストに人気です。ちなみに三善晃が私淑したようです。
・人間ではありませんが、11月13日プレイエル社がピアノ生産から撤退。直前の記事を参考ください。ピアノ製造会社がピアノ生産から撤退とは、今後どうするのでしょう? あの響きのいいパリのサル・プレイエルの経営は続くのでしょうか?
・12月10日 ジム・ホール(ジャズギタリスト・享年83歳)ジャズもときどき聴く私としては思い出のギタリストの一人です。
それでは、今年もあと1時間半ですが、良いお年を。
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