写真が出てきました。よく顔や体型が変わったので別人みたいに思われることがありますね。変わったのが顔なのか体型なのかは想像にお任せするとして、あるときそう言われて「そりゃ別人だよ。新陳代謝があるから7年も経てば体の物質はすっかり入れ替わるんだから」と言い訳したことがあります。どこで読んだか忘れましたが、7年で総入れ替えになるという説を聞いたことがあります。もちろん短時間で入れ替わる皮膚や爪もあれば時間のかかる部位もありますが。ま、こんな言い訳が成り立つなら、昔の悪事に「それをやったのは私ではない。7年前の別の物体がやったんだ」と開き直ることも出来てしまいますが。
7年で「入れ替わってしまう」というのはどうやって推定するのでしょう。「電子や同種原子が入れ替わったかどうかは、量子力学的には意味がない」などと突っぱねることはしないとして、多分若い細胞が生まれてから死滅して排泄のコンベアに載せられるまでの時間のことなのでしょう。その「時定数」をきちんと測定するにはどうするのでしょうね。たとえば炭素の同位体自然比はC12が99%でC13が1%です。で、C13でつくった栄養ドリンクばかり摂らせて体全部を同位体人間にするのに7年かかるとか、その人が逆に普通の食事で1%に戻るのに7年かかることがわかるなら誰も納得するでしょうが、そんな実験しているわけがありませんね。ちょっと生命体分野の専門家に聞いてみたいところです。
さて、7年かはともかく本当に物質がすっかり入れ替わるとすると、「私」「あなた」「彼」「彼女」のアイデンティティーは物質にあるのではなく、それが運んでいる「ソフトウェア」にあるということになるんでしょうか? 脳細胞も、脳の記憶は保ったままに何年かで入れ替わるのでしょうか?
そうだとすると「私」「あなた」「彼」「彼女」の記憶は炭素系化合物の上に乗って存在する必要はなく、シリコンや他の物質系、はたまたコンピューターやロボットのような機械の上に存在してもいいのでしょうか? もちろん脳の記憶はコンピューターのように全て0と1で覚えるのと違うやり方だとは思いますが。
疑問のタネは尽きません。
7年で「入れ替わってしまう」というのはどうやって推定するのでしょう。「電子や同種原子が入れ替わったかどうかは、量子力学的には意味がない」などと突っぱねることはしないとして、多分若い細胞が生まれてから死滅して排泄のコンベアに載せられるまでの時間のことなのでしょう。その「時定数」をきちんと測定するにはどうするのでしょうね。たとえば炭素の同位体自然比はC12が99%でC13が1%です。で、C13でつくった栄養ドリンクばかり摂らせて体全部を同位体人間にするのに7年かかるとか、その人が逆に普通の食事で1%に戻るのに7年かかることがわかるなら誰も納得するでしょうが、そんな実験しているわけがありませんね。ちょっと生命体分野の専門家に聞いてみたいところです。
さて、7年かはともかく本当に物質がすっかり入れ替わるとすると、「私」「あなた」「彼」「彼女」のアイデンティティーは物質にあるのではなく、それが運んでいる「ソフトウェア」にあるということになるんでしょうか? 脳細胞も、脳の記憶は保ったままに何年かで入れ替わるのでしょうか?
そうだとすると「私」「あなた」「彼」「彼女」の記憶は炭素系化合物の上に乗って存在する必要はなく、シリコンや他の物質系、はたまたコンピューターやロボットのような機械の上に存在してもいいのでしょうか? もちろん脳の記憶はコンピューターのように全て0と1で覚えるのと違うやり方だとは思いますが。
疑問のタネは尽きません。
脳の神経細胞は別で、胎児の時、細胞数として最大です。生後、(極めて希な例外を除くと)一切、分裂、増殖しません。日々神経細胞は死滅し、数は減少の一途です。つまり、今使っている神経細胞は昔の脳の生き残りなので、過去の行為に対して責任があるといえるでしょう。
赤ん坊の脳の方が大人の脳より神経細胞の数は多いのに、大人の方が脳が大きいのは、ネットワークは増え続けるからです。神経細胞同士の配線は日々更新されます。よく使われたネットワークは回線が増え、増強され、使われなかった配線は枯渇し、消滅します。子供の時からある回線は消滅しにくいようですが。昔の悪事に「その行為を命令した回線はすでに枯渇し、消滅した」と抗弁するのはありかもしれません。
解剖学者より
記憶はどうやら神経細胞間の複雑な配線そのもの、あるいはそこを流れる電気信号にあるらしく、外部へ移動・コピーすることは難しそうです。脳は皮膚や感覚器からの入力を集め、吟味し、記憶を参照し、どういう運動をすべきかを決定し、実行のためのプログラムを書く装置なので、皮膚、感覚器、筋肉と切り離して存在することはできないと思います。
脳にある仕事用のプログラム(というかサブルーチンのようなものか?)をチェロの演奏でも、工作でも使っている、と実感することが多くなりました。結局同じ脳を使っているということでしょう。
脳が違うことを違う場所でやるのでなく同じ回路でやっているという感覚、わかる気がします。
人間では無理ですが、動物実験では次のようにします。核酸に標識(たとえば放射性同位元素)を付けたものを静脈に注射します。すると、この核酸が分裂に備えて遺伝子のコピーをしようとしている細胞に取り込まれ、コピーの遺伝子の一部になります。遺伝子は分裂後の細胞では細胞の「核」という場所に広げられ、日常的にタンパクを作る時の設計図として機能しています。
たとえば注射後1年たって、この動物を殺し、あちこちの臓器を薄く切ってガラスに載せ、暗室で写真乳剤を塗布し、暗箱に入れます。すると放射性同位元素から出た放射線で写真乳剤が感光して黒くなります。これを現像して顕微鏡で見ると、1年前、最後の分裂の準備をしていた細胞の核の部分に黒い銀粒子が乗っている、ということになります。
この原理を使って、いろいろ生存期間を変えたり、注射の回数、間隔を変えたりしてデータを取れば細胞の寿命を測ることができます。