詠里庵ぶろぐ

詠里庵

楽器を作る

2006-09-04 00:29:54 | 日々のこと(音楽)
あるいは整備する人というのに私は興味があります。もちろん調律師さんも含みます。自分が弾ける(弾けた)楽器であるピアノ、シンセサイザー、ギターのうちピアノはとても作れませんが、シンセサイザーは売り物でなく自分好みのものを作りたいと思うくらいです。時間のある自分を仮想するならば、ギターも作ってみたいものです。イエペスの十弦ギターみたいなものを。

日本のピアノ製造・整備技術については以前のブログで少し触れ、草思社の「日本のピアノ100年-ピアノづくりに賭けた人々」を紹介しました。他に大変感銘を受けた本として杵渕直知の「ヨーロッパの音を求めて」を挙げたいと思いますが、これは杵渕家の自費出版らしく、入手は困難かもしれません。ヨーロッパで客死された杵渕氏のご遺族から私はいただいたのですが、その後連絡法がわからずにいます。連絡法を知っている人がいたら是非nob@fuji.email.ne.jpに教えていただきたいものです。

さて楽器製作についての本は、実はピアノより先にヴァイオリンのものを読みました。自分では弾けないから作るはずもないのに、興味があったのです。その本とは無量塔蔵六(むらたぞうろく)著の「ヴァイオリン」という岩波新書で、1975年くらいのことです。日本初のヴァイオリン製作マイスターとはどんな大家なんだろうと想像しながら小さな新書を両手で握りしめて読んだ記憶がありますが、今から思うとマイスター無量塔がこれを書いたのはなんと40代後半、今の私より若いときだったんですね。それでも今読み返しても、自分など及ばない巨匠という感覚が拭えません。今ご存命なら80才近く。マイスター無量塔に関する5年ほど前の情報が写真入りでここにありましたが、その後どうされているのでしょう。

自分の所属する学部・研究科で「ものづくり」や「モノの性質」を扱っているから言うのではありませんが、どう考えても私はマネーゲームで稼ぐだけの人より「ものづくり」に携わるあるいは関係する人の方が素晴らしいとしか思えません。(もちろん実際に作らないけどその「理論」などをやっている人も含みます。)

ところで無量塔蔵六というのは本名なのでしょうか? 村田蔵六こと大村益次郎を意識して付けたマイスター名なのでしょうか? どこにも書いてないのでこれも誰か知りませんかねぇ。
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4 コメント

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イギリス人 (田中)
2006-09-05 15:39:44
工作をやっていていつも思うのは、イギリス人がうらやましい、ということです。参考書が実に充実しているのです。今回ヴァイオリン族製作のために購入した「The art of violin making」など実に素晴らしい。



私は何でも自分で作りたいタチ(本当は家も自動車も飛行機も自分で作って使いたいし、料理も自分で作るのが好き)ですが、イギリスの大きな本屋にはどの分野に関しても充実した参考書が並んでいました。道具類もその辺の店に結構マニアックなものも売っています。



つまりイギリス人はこういうことをやる人口が多いのです。かなり重要な地位にある人でも、定刻になると帰宅し、夜は夜で別の趣味、工作、研究を楽しんでいました。そういうことを社会が認めているのですね。また、規制が少なく、自作の飛行機を飛ばすのにも簡単な安全検査だけです。日本ではキットから完成させた自動車でさえ、登録は不可能です(光岡の原付が唯一の例外)。



私もおよばずながら彼らを見習って、夜8時から10時は自分だけのために使うように務めています。駄目なことも多いですが、一日1、2時間の工作を半年ちょっと続けるとヴァイオリンが一つできます。ギターならもっと速そうですよ。



私のこれまでの人生で最も重要なポイントは、最初に家を買ったとき、子供部屋よりも自分の部屋を優先して確保し、工作室としたことです。後から思うに、これなくして私の人生に幸せは無かった、と思います。工作は途中でやりっぱなしにして、片づける必要も掃除する必要もない。毎日、一刻も早く帰宅して自分の工作室に直行したい気分になるのです。途中でひっかかって飲み屋に行くなんて時間が勿体なくてできません。
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イギリス人 (詠里庵)
2006-09-06 06:13:03
そんなに工作をなさるとは素晴らしい。作ったものは残るからいいですね。私は絵も好みがありますが、親戚の知人にかなりいいと思うアマチュア画家がいて絵をもらったので飾ってあります。その方は亡くなったのですが絵はずっと人を楽しませ続けるるわけです。



確かに日本の余暇の使い方は飲みに行くとかゲーム・パソコンの類ですね。これは家が狭いことと関係あるかもしれません。イギリスは全土人が住めますが日本は8割が山で、イギリスと日本は人口密度が同じなので、一人当たりの土地が5倍あることになります。家も平均すると日本の数倍はあるのではないでしょうか。玄関は広いホールになっているのが当たり前ですし。夕方5時になると皆帰って、サマータイムのときなど帰ってから4時間くらい明るいので一仕事ガーデニングなどやってますよね。だから一般家庭のフラワーガーデンやハーブガーデンなんかきれいです。チェンバロ自作したイギリス人というのは実は私の滞在先である「光の量子論」を書いた大家なのです。庭でディナーとかもいいですよねぇ。隣の視線や隣への音の遠慮など考えなくていいですし。またそこら中に野生のブラックベリーが群生しているので、実を摘んではジャムやブラックベリーパイを作るなど、うーんイギリスのことがにわかに恋しくなって来ました。(夕方5時の一斉帰宅渋滞の方が朝のさみだれ渋滞より酷いのには閉口しましたが。)



近所の村に昔お酒のための煉瓦倉庫があったのが産業の変化とともに使われなくなり、そこで行われるコンサートの音のいいこと。内田光子がよく録音に使っていたということです。コンサートのハズレは大陸ヨーロッパの方が少ないと思いますが、プロムズなどイギリスにはイギリスの良さもありました。



そういうのを思い出し、豊かな----物質だけでなく精神も----生活を送る願望が蘇って来ました。ありがとうございます。

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残るのも困ります (田中)
2006-09-06 17:00:04
 楽器製作は、作ったものが残るから、あまり作れないのです。今のところ、最初の習作のヴァイオリン以外は家族に使ってもらっていますが、これからは、だれかよその人に使ってもらう当てがないと作りにくいのです。家中楽器だらけになってしまいます。今作っているヴィオラを息子が使ってくれれば、プロが使えるヴィオラということで、誰かが弾いてくれることを期待して作れるかもしれません。



 アマチュアの画家、彫刻家、陶芸家達はどうしているのでしょう?そういう面で、料理は毎日作っても、あとに残らないので気が楽なのです。



 イギリスに住んでいたとき(文部省在外研究員でロンドンにいました)、これでもし、英語をしゃべらずに済み、家に日本式の風呂があり、新鮮な魚の入手経路があったなら、永住したいと思うほどイギリスが気に入っていました。個人の自由と尊厳が尊重されるとは、こんなにも素晴らしいことか!家が狭いことよりも、みんな横並びを好む世間の白い目が、日本人を無趣味に押し込めているのだと思います。



 ちょっと昔はロンドンの聴衆と批評家はレベルが高いが、イギリス人の演奏家に超一流は少ない、と彼らが言っていましたが、最近はチェロのイッサーリスをはじめ、なかなか活躍していますね。
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イギリス人 (詠里庵)
2006-09-07 06:24:49
実は別のアマチュア画家がちょっと遠い親戚にいて、こちらはいまいちなんだけど強引に絵をくれて、飾る気もなく捨てるわけにも行かず困っています。モノとして残るものは処分に困ることは確かですね。



イッサーリスは聴いたことないけどそんなにいいんですか。日本に来るようなら今度聴いてみようかな。イギリスには日本にあまり知られていない人も結構いました。ヴァイオリニストのナイジェル・ケネディとか。あと郊外の村に住んでいましたが自主コンサートなど盛んで、ギャラが安くてすむプロを呼んでくるのですが、イギリス国内でも全く無名なのに恐ろしくいい演奏をする人がゴロゴロいました。バルトークやシマノフスキーのVn.ソナタ(このピアノパートの難しさはありえない)を素晴らしく演奏した青年ピアニストなど、急遽代役で数日前から練習したとか、信じられない話です。ヴァイオリニストも無名でしたがこちらもピアニストに対応したすごい演奏でした。15年ほど前の話です。



イギリスを含めヨーロッパは地方まで層が厚いと思いました。もっとも日本も近年裾野が広くなって来て、必然的にピークにひしめく人たちは無名でもすばらしい演奏をしていますが。

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