詠里庵ぶろぐ

詠里庵

捏造事件(1)

2007-02-21 00:42:43 | 日々のこと(音楽)
 なんでも鑑定団はよく出来た番組だと思います。絵の値段はあってなきがごとしと言われるように、この番組の鑑定結果も絶対ということはないでしょう。でも背景説明にもしっかりお金と知恵をかけていることがわかるし、視聴者の我々も鑑定団の権威をとにかく認めて、番組に全面に乗っかって楽しもうとする、そんな番組です。

さてこの番組を見ていると、美術品に贋作はつきものということがわかります。贋作の意味はもちろん「巨匠に似せて作った人が(自分の作品としてでなく)巨匠の作品として売る」ことです。

ところがごく最近、贋作にもう一つのあり方があることがわかりました。それは「巨匠の作品を、自分の作品として発表する」ことです。そんなことが可能なのか? それが巨匠の作品であることを他の誰も知らないのでない限り、不可能と思われます。しかしクラシック音楽の演奏録音のようにブラインドテストで「あ、これは誰の何年の録音」と即座に峻別できるとは限らないものの場合、しかもそれをデジタル技術でいじくったりした場合、ある程度可能であるようです。

ことの発端はこの記事ですが、初めに断っておきますと、この記事の存在は「このブログ」を初めとするピアノサークルの人たち(みなサークルの後輩です)によって知らされました。この人達のアンテナの高さは世界のトップを行っていると言っても過言ではありません。

どんな事件かは、発端より本題に早く入りたいので、ごく簡単に流しますと、数年前に亡くなったJoyce Hatto(ジョイス・ハットー)という女流ピアニストのCDのいくつか(数多くという説もあり検証中)は他人のCDから拝借、もしくはデジタル的に速度調整をしたものだということです。犯行は-これは商売をしているので犯行と言ってよいと思いますが-ハットーのつれあいである現在70才ほどの録音技師のようです。詳細は上記記事を見てください。で、このことを、私が尊敬する上記ピアノヲタク達が見抜けなかったというのです。それどころかプロの評論家達も長いこと見抜けず、最近ようやく見抜かれたというのです。(そもそもそんなことをする人がいるということが想像を絶しているので、彼らが気づかなかったのは当たり前。むしろよく気がついたというべき。また上記ピアノヲタク達もさすが、その後の検証の速さと緻密さはすごいものがあります。)

私は「ハットーのCD」を聴いたことがないので、演奏や録音そのものの検証は彼らに任せます。しかしこれはいろいろ考えさせられる事件です。その本題に入って行きたいのですが、既に長くなったので次回に回しましょう。
コメント
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