「恋」(小池真理子著 新潮文庫)を読んだ。
それなりに面白かった。
読み始めは小説の世界にぐんぐん引き込まれていった。
この小説の鍵となる秘密がもったいぶって明かされてから、私は鼻白んでしまった。
なんかどうでもよくなってしまったが、最後までは読んだ。
どんなふうな結末になるかは興味があった。
舞台は、東京と軽井沢がほとんどです。
軽井沢も私の住んでいる中軽井沢です。
なんとなく書いてある場所が想像できる。
しかし、この小説の時代は1970年代です。
現在の軽井沢とはずいぶん違うはずだ。
でも、“おもかげ”はある。
自分の住んでいるところが小説の舞台というのはちょっと楽しいです。
矢野布美子は、猟銃で人を撃ち殺し10年服役した。
そのとき布美子は、女子大生だった。
その当時、どの大学にもいるような普通の女子大生の布美子が、人を殺してしまう。
1972年2月28日、軽井沢の浅間山荘で、連合赤軍と警官隊の銃撃戦に決着がつき、
人質にされていた山荘管理人の女性が無事に救出された日に、
その同じ日に同じ軽井沢で矢野布美子は猟銃の引き金を引いた。
なんで平和な女子大生が、猟銃なんかで人を殺してしまったのか?
布美子は、大学助教授・片瀬信太郎の翻訳の仕事の手伝いのアルバイトをする。
妻の雛子は美しい。信太郎の教え子半田と付き合っている。
それを信太郎は認めている。
そればかりか、軽井沢の別荘にいるときの妻の愛人副島のことも許している。
副島は六本木でバーを経営しているんだが、信太郎はそこによく行っていた。
布美子は、信太郎に恋心を抱く。
そしてあるとき寝てしまう。
それでも信太郎は雛子を愛している。
こう書くとなんかふしだらな関係に見えてしまうが、そういうことが整然と書かれている。
あるとき別荘の電器製品が次々と壊れ、軽井沢の電気店を呼ぶ。
そのときカタログを持ってやってきたのが、大久保勝也だ。
信太郎の妻の雛子がこの若者に恋をしてしまう。
そこから物語は急展開する。
雛子と勝也は最初、指も触れない付き合いをする。
これまで教え子の半田や副島とセックスをして帰ってきても仲良く雛子と話していた信太郎が、
身体の接触のない付き合いをしている勝也のことは許せなかった。
信太郎と雛子が仲良くしているときにそばにいるのが好きだった布美子は、大久保勝也が憎くなる。
そして…。
> 信太郎以外に、千人の男を相手にし、嬉嬉としている雛子は聖女だった。だが、
> たった一人の男に魂をまるごと預けようとする雛子は淫売も同然だった。
私としてはストーリーは好きだった。
妻が男と遊んでいてもそれを認めている信太郎という男の存在を面白いなと思った。
旦那が、バイトの女の子と寝てしまっても認めてしまう雛子も魅力的だった。
ところが、その2人が…、ということはここでは書くまい。
これから読む方のために。
でも、その設定が私はいらないと感じました。
もし、暇でこの小説に興味のある人は読んでみて下さい。
私は、ブックオフで105円で買いました。
文庫本で492ページある小説です。