かつてのひまな野球人の記

野球が好きだった医者が書きたいことを書き散らすブログ。今は保健センター教員をしつつ神経内科医と研究者もやっています。

急転直下の結末

2010年08月13日 23時59分52秒 | 医者仕事
今日は13日の金曜日。
だからというわけではないが、朝から受け持ちの1人の様子がどうもおかしい。発熱があり血圧が下がったという。尿も出ていない。見てみると、確かに熱くてしかも肌が若干黄色い。採血と血培採取して、レントゲンをオーダーして、外液を少し負荷することにした。
肺はきれいだったが、CRPは著増し、肝不全は起こりかけで腎不全はかなり深刻になっていた。すぐに抗生剤とノルアドレナリンを始めたが、血圧はいっこうに上がる気配がなく、ノルアドレナリン増量で末梢を締めてもまったく上がる気配がない。それどころか下がる一方だった。家族にすぐに連絡を取り、病院に来てもらうことにした。
2時前に呼吸の間隔が延び始め、下顎呼吸になった。対光反射をとってみると、瞳孔は散大して対光反射は消失。しばらくしてついに呼吸停止。辛うじて保っていた酸素飽和度も一気に下がり、ペースメーカーで心臓は辛うじて脈打つのみ。リズムは完全にペーシング。最後に呼吸音と対光反射を診て、最後の宣告。
昨日までは予想だにしなかった展開で、進展の速さは恐ろしいものだった。発症からほぼ8時間で急転直下、手を尽くしたが生命を守ることはできなかった。医者として忸怩たる思いがする。
初めて自分の名前で死亡診断書を発行した。丁重に病棟から見送り、霊安室で線香をあげ、最後にお見送りをして、それで一日が終わった。
きっと、今日のこの一日のことはこれから忘れられない出来事になるだろう。

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