習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

佐藤正午『アンダーレポート』

2008-01-31 22:58:26 | その他
 このあやうい話を最後まで読み終えて、とてもおもしろいのだけれど、はたしてこの中には真実があるのか、なんて思った。もちろんそんなことを思わせるところに佐藤正午のねらいもあるのだろう。  交換殺人なんてなかったのかもしれない。だいたいこの15年間の日々すら幻なのかも知れない。この小説の中に描かれてあることには信憑性なんてない。精緻に組み立てられたはずのその全てが、妄想に近いものなのだ。彼にはそう見 . . . 本文を読む
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『陰日向に咲く』

2008-01-31 22:04:09 | 映画
 この映画を見ながら、人間ってほんとに寂しいものだなぁ、なんて思った。この大都会の中で、何十万人、何百万人もの人たちがもの人たちが暮らしている。そのひとりひとりにはそれぞれの事情があり、生活がある。  この映画の複数の主人公たちは、そんな中から無作為にピックアップされた偶然の何人か、である。彼らでなくてはならなかった、のではない。誰でもよかったのだ。だいたいどこの誰であろうとも、この映画が見せた . . . 本文を読む
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『ぜんぶ、フィデルのせい』

2008-01-31 21:28:23 | 映画
 9歳の女の子が、自分の目と耳を使って、この世界がいったいどうなっているのかを考える。自分の身に降りかかった災厄に不服を抱き、反発する。  どうして急に狭い家に引っ越さなくてはならないのか。訳の分からないしらない人たちが家に出入りし、なんだか、お父さんとお母さんは忙しそうにするけれど、、そんなの納得がいかない。両親は自分勝手に政治活動なんかするから、生活が一変してしまう。「みんな、フィデルのせい . . . 本文を読む
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ニュートラル『宇宙を隠し持っている』

2008-01-28 23:27:41 | 演劇
   22世紀。人類は地球を離れスペースコロニーで生活している。そんな設定のニュートラルの芝居を見ることになるなんて驚きだ。  だが、それ以上に驚いたのは、これが「スペースゼロの思い出」に関するお芝居だったことだ。当日パンフや、塚本さんのブログで明記されているから、覚悟を決めて見たが、こんなにもはっきり、ここには古賀先生とスペースゼロへのオマージュが描かれている。しかし、それはわかる人にしかわか . . . 本文を読む
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『銀色のシーズン』

2008-01-28 21:03:41 | 映画
 充分予想していたけれど、そんな予想を遥かに超える大バカ映画だった。今時ここまで確信犯的にくだらない映画を大金投入して作ってしまう勇気っていったいどこから生まれてくるのだろうか。  驚きなんて、とうの昔に通り過ぎた。これは超犯罪的映画である。ファーストシーンから、ラストまで、考えられないようなバカな設定とストーリーで、それを結構本気に見せていく。勘違いではない。わざとこんな映画を作っているのだ。 . . . 本文を読む
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『デジャヴ』

2008-01-26 00:07:24 | 映画
 トニー・スコットは、期待したデビュー作『ハンガー』でがっかりさせられ、『トップ・ガン』の頃は、なんだかなぁ、と思っていたが、その後さまざまな「大作」映画の中で、確実に力をつけ中身のないハリウッド映画とは違い、派手な娯楽活劇の中でもしっかり自分のテーマを打ち出す作家に成長した。CM出身の中身のない映像主義の監督だったのに、今ではただのエンタテインメントだけではない作劇を見せてくれるところが好きだ。 . . . 本文を読む
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豊島ミホ『リリイの籠』

2008-01-25 23:34:34 | その他
 7つのお話は、それぞれ彼女たちの抱える痛みとともに、読み手であるこの僕の胸にしっかり届いてくる。女の子たちの特別な時間。ここで暮らす高校生活の中で、彼女たちが感じたこと、見たこと、思ったこと。地方都市の女子高を舞台にした短編連作。  豊島ミホの代表作『檸檬のころ』と同じようなスタイルの作品。今回も彼女のよさは十二分に出ている。どちらも切なくて素敵な小説だが、どうしても二番煎じという印象は否めな . . . 本文を読む
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『ダンスの時間18』

2008-01-25 22:20:52 | 演劇
 今年も早速『ダンスの時間』がスタートした。毎回素敵なチョイスで楽しませてくれるこの企画だが、今回にはいつも以上に唖然とさせられた。見終えて思わず「これって一応、ダンスですよね」なんてプロデューサーの上念さんに聞いてしまったくらいだ。  ほんとに「なんでもあり」だと思う。しかし、その「なんでもあり」があくまでも、まずこれは身体表現であり、それがこんなにも自由度の高いものとして示されているという事 . . . 本文を読む
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尼崎ロマンポルノ『映りゆけ咲子』

2008-01-24 21:01:55 | 演劇
 とてもねらいどころは面白いのだが、それをどう見せるか、という地点で失敗している。彼岸と此岸とか、いたこの口寄せとかいう仕掛けにばかり気を取られ過ぎて、核心にある「失踪した女性が監禁されたことで自分を見失っていく」過程が描ききれていないのは、惜しい。全体のバランスが悪いからこういうことになるのだ。  ドラマの入り口はこれでいい。しかし、核心部分に行くまでが長い。そのため大切なことが中途半端になっ . . . 本文を読む
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『ジェシージェームズの暗殺』

2008-01-20 21:53:58 | 映画
 2時間40分の大作なのだが、週末の梅田ピカデリーはがらがらだった。こういう独りよがりの映画にお客さんは集まらないのは当然のことかもしれない。気合いの入った映画だとは言える。しかし、なんだか勘違いしてる気もする。  ブラッド・ピット入魂の一作である。彼の中での拘りは痛いほどよくわかる。だが、それが作品に結びつかない。ナレーションとか映像の美しさとかからテレンス・マリックの『天国の日々』を引き合い . . . 本文を読む
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『ボビー』

2008-01-17 22:38:44 | 映画
 昨年2月の公開から約1年を経てようやく見ることが出来た。エミリオ・エステベス監督作品。ロバート・F・ケネディ暗殺直前の16時間が描かれる。  20人以上のメーンキャスト。彼らの群像劇である。よくもこれだけの豪華キャストが集結したものである。しかも決してスター扱いされないような役の人も多々いるのに、だれも文句も言わずに(まぁ、文句言った人がいてもわからないが)この群像の中に埋もれるようにして存在 . . . 本文を読む
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井上荒野『ズームーデイズ』

2008-01-17 21:27:48 | その他
 こういう恋愛小説を読んでいるとなんだか人の心を覗き込んでいるような錯覚に陥る。これは作者の実体験では到底ないだろうとは思いながらも、かなり作者自身が投影されている気がして。その生々しさは、小説というより、よく出来た日記を読んでいる気分にさせられる。先日の金原ひとみ『星に落ちる』もそうだった(主人公が小説家で、彼女の恋愛を描いているという共通項のみで括るのはどうだか、とは思うが)  さて、この痛 . . . 本文を読む
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椎名誠『玉ねぎフライパン作戦』

2008-01-14 20:26:15 | その他
 椎名さんが日常のスケッチを綴っていく最新刊。いったいこの手の本を彼は何十冊(100冊を軽く超えている気がするが)出版してきたことであろうか。少なくとも僕は50冊以上読んでいる。(ちょっと調べたら椎名さん、350冊も本を出してるよ! そのほとんどを読んでいた。というのは、嘘だが、かなり読んでいる。350冊というのは文庫、再発売とかも含むみたいなので、厳密には200冊くらいだろうか。大体チェックする . . . 本文を読む
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そとばこまち『TURN』

2008-01-14 19:46:21 | 演劇
 そとばこまちが新アトリエを例によって十三に構えた。今回はその杮落とし公演となる。10編程のショートストーリーからなるコント集である。2時間ほどのショーは当たり障りのない内容で、見ていて少し退屈もするが、飽きることなく、なんとか最後まで見ていられる。  観客参加型アトラクションを3度ほど挟んで、変化をつけようとしているし、とりあえず見に来てくれたお客に対して自分たちにできる最大限の . . . 本文を読む
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『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』

2008-01-12 21:30:52 | 映画
 あきれた映画が登場した。なんだ、これは? 話自体が成立していない。独りよがりな自主映画のノリで、一応劇場用劇映画。しかも、日活製作のとりあえずメジャー作品なのに。  こういう無茶苦茶が許させるのならば、もうなんでもありになる。もちろん面白ければ何をしても許される、かもしれない。今年は新年からとんでもない映画ばかり見る。(もちろん『スウィーニー・トッド』のことを言ってるんだよ!)ただし、この映画 . . . 本文を読む
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