習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『太陽』

2016-04-28 23:36:42 | 映画
小劇場のお芝居の映画化なんてあまりない。それだけに、そそられる。もちろんお話も面白い。イキウメの前川知大の戯曲を昨年初めてメジャー大作『ジョーカー・ゲーム』を手掛けた入江悠が映画化した。 地味で、重くて暗い映画だ。タルコフスキーのSF映画を思わせる内容で、こういうものにチャレンジする勇気には共感するし、応援はしたい。でも、この世界観の実現のためにはそれなりの製作費もかかる。これはいろんな意味で厄 . . . 本文を読む
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『天の茶助』

2016-04-28 23:27:25 | 映画
  SABU監督の最新作(とはいえ、昨年6月公開作品だが)をようやくDVDで見る。それなりには期待していたけど、期待はずれの一作。「オフィス北野」製作というのも、なんだか気になったけど(だって、オフィス北野は北野武監督作品を作る会社なのだから)SABUが今までとはいささか違うスタンスで挑んだこの野心的な作品が、中途半端で、まるで迷いだらけの作品になったわけが知りたい。製作側からの横槍で . . . 本文を読む
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新庄耕『ニューカルマ』

2016-04-28 23:18:04 | その他
  新しい作家と出会うのはうれしい。しかも、それが思いもしないものを見せてくれると、もっとうれしい。「夢と救済のネットビジネス」を描くこの作品は、栄光と転落なんていうよくあるパターンを踏襲しながら、そこにとどまらないものを提示して、新鮮な驚きを与えてくれるのではないか、と期待させた。本の帯に書かれてあったこの作家の前作のタイトルが『狭小邸宅』というのも、なんだかそそられた。(残念ながら . . . 本文を読む
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舞道ダンスシアター『EXTRVAGANZA3! にじのまち』

2016-04-26 22:08:49 | 演劇
    今の超人予備校をサイドから大きく支えるニランジャンの主宰する舞道ダンスシアターによるステージである。今回が3度目になる(らしい)。(このタイトルを見たら明白であるけど)僕は初めて。とても、おもしろかった。   ただのダンスの発表会なら、それは見ない。これは魔人ハンターミツルギによる演劇作品としても成り立っているのが、魅力なのだ。ニランジャンは全幅の信頼 . . . 本文を読む
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天童荒太『ムーンナイト・ダイバー』

2016-04-26 22:00:21 | その他
  震災から5年。福島。海に埋もれた遺品を回収して、遺族に届ける。だが、その行為は違法で、正義からではなく、お金儲けにつながるから。罰せられる可能性のある行為を通して、自分が変わっていく。震災後、死んだようになっていた男がこの行為を通して生き返る。自分のなかに新しいなにかがよみがえる。   いや、果たしてそうなのか。死んだものはもうよみがえらない。生き残った自分はラッキー . . . 本文を読む
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真紅組『おしてるや』

2016-04-26 21:54:44 | 演劇
  3年前の初演を見た時、感動した。正直言って、そんなに期待してなかっただけに、その驚きは大きかった。(すみません!) もちろん、それまでの真紅組の作品も好きだったけど、ここまでバランスよくエンタメと作家としての姿勢を貫く作品を阿部さんが書く、だなんて思いもしなかった。前回のアート館で初期の傑作『宵山の音』を再演した後、次の段階になる今回、そこに新作ではなくこの作品を持ってきたところに . . . 本文を読む
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『レヴェナント 蘇えりし者』

2016-04-25 21:43:28 | 映画
  3週連続で、今年のアカデミー賞受賞作品を見る。そして、今回が大トリだ。作品賞を『スポットライト』に譲ってしまったけど、実質はこれが最高作品だったのではないか。イニャリトゥが今年もやってくれた。昨年の『バードマン』は技術的な驚きだが、今回は作品としての驚きだ。根性でこんな過酷な映画を作り上げた、としか言いようがない。たいしたもんだ。(というか、なんだ、その上から目線は!) &nbs . . . 本文を読む
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『白河夜船』

2016-04-25 21:35:42 | 映画
  吉本ばななの初期の傑作小説の映画化である。(最近気付いたのだが、「よしもとばなな」から吉本ばななに改名、というか、戻している!)は昨年3月大阪アジアン映画祭で先行上映されて4月に劇場公開された作品だ。実は公開時、敢えて見なかった。見る勇気がなかったのだ。大好きな小説の映画化は自分の中に確固としたイメージがあるから、それが損なわれるのが怖い。映画と小説は別物、と単純に割り切れたならい . . . 本文を読む
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石田千『からだとはなす、ことばとおどる』

2016-04-25 21:21:00 | その他
  詩人であり、小説家でもある石田千さんの書く詩でもなく、小説でもない、ましてや、安易なエッセイでもない作品。このノンジャンルの文集は、ことばと戯れるわけではなく、ことばによって、人間や時間とのかかわりを描く。帯には「あたりまえに失われる毎日をひきとめたいと書くことは、だいそれた望みと思う」と書かれてある。これはそういう文集なのだ。   最初の数編を読んで、そのあまりのと . . . 本文を読む
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『奇跡の2000マイル』

2016-04-21 21:09:01 | 映画
    ラクダと砂漠を横切る旅に出る。そんなことをして何になるのか、と言われると答えようもない。ただ、そうしたかった。だから、する。それだけ。何かをするのに、理由はいらない。いや、ちゃんとした理由はいる。でないと、始められない。でも、大事なことは理由なんかじゃない。   4頭のラクダを手に入れるために奴隷のように働くけど、めげない。愛犬となんとかして手にしたラ . . . 本文を読む
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西加奈子『ふる』

2016-04-21 21:05:46 | その他
  2012年に刊行された小説で、今回文庫になったので、読んだ。西加奈子の小説は好きだから必ず読んでいるけど、ときどき読み落としてしまう。実は『漁港の肉子ちゃん』も文庫で読んだ。なぜだか知らないけど、読み落としていたこの2作品の傾向が似ている気がして、はっとする。   たまたまだけど、この2冊以外は、ほぼすべてをリアルタイムで読んでいるのに、なぜか、この2冊を飛ばしていた . . . 本文を読む
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『光りの墓』

2016-04-19 19:49:27 | 映画
  タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督最新作。『ブンミおじさんの森』で世界を驚かせた彼が放つ新作は原因不明の眠り病に罹った人たちを収容する廃校となった場所を利用した仮設病院での日常を描く。ファンタジーではないけど、不思議な日常が淡々と綴られていく。主な登場人物は3人だけど、彼らがドラマを牽引するのではない。 アピチャッポンの故郷であるタイ東北部イーサン。そこでの日常が静かに描 . . . 本文を読む
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『きみはいい子』

2016-04-19 19:45:18 | 映画
  原作を読んだときはさらりとしていたのだが、こうして映画になるとやけに生々しい。描かれる問題がきついから映像でそれを見せられると、確かにこうなるのは必至だ。呉美保監督は前作『そこのみにて光輝く』と同じように淡々としたタッチでこの現実をスケッチする。アプローチとしては悪くないし、正しい選択だ。これを必要以上に熱くやられると、反対に冷めてしまうはずだ。だが、静かに描かれるドキドキするよう . . . 本文を読む
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小路幸也『ロング・ロング・ホリディ』

2016-04-19 19:33:24 | その他
  81年札幌。大学生。喫茶店でバイトしている。バイト先と学校の往復だけ。すべての時間がバイトと授業で埋まる。でも、そんな毎日が嫌ではない。バイト先は楽しい。仲間たちと過ごす時間は心地よい。お客さんは常連がたくさんいて、彼らと話すのも、生活の一部で、仕事と学校だけで、十分なのだ。それ以上何も望まない。今は。ずっとこんな幸福な日々が続くわけはない。3年になって、4年になると就職活動をする . . . 本文を読む
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『もう少しだけ近くに』

2016-04-19 19:23:15 | 映画
  この韓国映画を以前見たことがある。レンタルされたときに、手に取り、借りてきた。2010年作品で、2012年リリースされているから、最近のことだ。なのに、また、間違えて借りてしまった。たまたま、こういうことがある。見たことを忘れていたのだ。 それくらいに印象の薄い映画なのだ。なのに、気になる映画なのだ。そうじゃなくては、借りてこない。DVDのパッケージの宣伝に乗せられたのだろう。韓 . . . 本文を読む
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