
『未来世紀天下茶屋 最終章』とある。これはもともと(明らかに)テリー・ギリアムの最高傑作『未来世紀ブラジル』をもじったタイトルである。わかる人にはわかるけど、いまさらこのタイトルって思う人や、まるでわからない人もいるはず。だけど作り手はまるで気にしない。
オリジナルの芝居『未来世紀天下茶屋』シリーズはもう何年前に上演されただろうか。もちろん何本か(何本も!)を見ているけど、内容は忘れている。今回、あの芝居の続編なのか? わからない。わからないけど、酔族館の芝居がまた見れるなんて夢のようだ。正式タイトルは「未来世紀天下茶屋 最終章【西区辺境部物語】WES★ SID★ STO★Y」。明らかに『ウエストサイド物語』。しかも『ロミオとジュリエット』との豪華2本立て。懐かしの大毎地下劇場へのオマージュから始まる。もちろん大毎地下なんて知らない若い人はスルーしていい。そんなことより今の時代にこんな芝居を見ることができる若い人たちは幸せだ。でも、初めて酔族館を見る若い演劇ファンは何人くらいいるのかな。
昔むかし、僕は彼らの芝居を毎回見ていた。バカバカしかったり、切なかったり。泥くさい昔ながらの(当時でだって古かった!)芝居だった。はず。(かなり忘れている)前回から何年が経ったか? 今回久々の復活である。再びの旗揚げではなく、旗下ろし公演。もう一度、最後にみんなでやりたいという願いを叶える。彼らは90年代、さまざまな芝居を上演した。あの頃の冒険を今一度蘇らせる。前回の30回公演は見てないから『レモン』以来13年振りに見る。
1年前から告知して、中大路さんによるさまざまなチラシをばら撒いてきた。最初は驚き。公演は2024年4月だと思った。だけど劇場名がない。よく見ると2025年、4月とある。それから本チラシまで何種類の借りチラシが登場したことか。次のチラシはまだあるのか、と楽しみだった。
そしてようやく、本日、本番を見ることができた。こんなにも楽しみだった芝居はない。彼らはやりたい放題する。39年の総決算ではない。久しぶりのお祭り騒ぎだ。芝居は今はもうない昔ながらのアナログ芝居。昭和の臭いをプンプンさせた泥臭さ満載。過剰なはしゃぎ回りで、他の人たちがしたなら滑りまくるような芝居だけど、もう若くない彼らがやれば涙が出るほど、楽しい。(楽しいのに、涙って!)
お話は実にたわいない。だけど、みんなが一緒懸命に作った。チラシにある設定はよくある近未来SFである。長い戦争が終わった後の世界。放射線に汚染された大阪。老いた肉人間と廃棄された合成プラスチック人造人間の争いを描く。そこにロミオとジュリエット(ウエストサイド自体がロミジュリの設定のいただきだけど)ばりのラブロマンスを絡めたエンタメ芝居。どこまでもバカバカしくて、ひたすらに大騒ぎする。
終演後のお見送りもすごかった。20名に及ぶキャストが総出で観客をお出迎え。これが最後の酔族館をみんなで祝っている。ありがとう!酔族館。
ゴレンジャー宜しく5色のチラシの後に、フルカラーのキャラクター全員のイラストを描いた本チラシが居並ぶ会場で、沢山のお客様。
かつての芝居仲間や、広瀬さんにもお会いできた。
長いマラソンを走って、しっかりとゴール出来てご褒美頂いた気分です。