習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

自由派DNA『祭区』

2006-11-30 21:48:02 | 演劇
 いつもの彼らの芝居とはかなりタッチの違ったものを目指した最新作。昨年の前作『classic』で今までの集大成を果たした今、再スタートは、かって彼らがそれを破壊するための標的とした《物語》というもの。そこに立ち返り芝居を作る。しかし、普通の芝居を目指すのではない。梶原さんの中に今ある《物語》はどんなものなのか。それに答えるための作品である。  芝居におけるストーリーは、自分たちの内面世界を構築す . . . 本文を読む
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『007 カジノロワイヤル』

2006-11-28 22:51:58 | 映画
 久々に映画らしい映画を見た。2時間24分もの長さを、次から次へと見せ場でつないで、ドキドキハラハラさせながら、それはないやろ、と突っ込みどころ満載の大バカ映画。ここまでアホらしい話をこんなにも必死に作る活動屋魂に敬服する。映画はまず面白くなくてはあかん、という当たり前の事を強烈に教えられる映画だ。  CGで何でも出来るようになり映画のライブ感が失われて、何があっても驚くことがなくなった時代に、 . . . 本文を読む
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尼崎ロマンポルノ『健康』

2006-11-28 21:51:45 | 演劇
 とても丁寧に作られてあるし、よく考えてある。好感の持てる芝居である。勢いだけで見せようというのではなく、しっかりと、作品世界を練り上げていこうとしている。  しかし、残念だが<怖さ>が足りない。考えすぎてしまって理詰めで芝居全体が出来ているから、余白がない。とはいえ、完璧な芝居というわけでもない。どちらかというと突っ込みどころ満載の芝居だったりもするのだ。ダムの話にしても、家族のことも、今一歩 . . . 本文を読む
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空の駅舎『空を覗にいく』

2006-11-28 20:35:30 | 演劇
 山間に佇む研修センターを舞台にした教師たちによるディスカッション劇。タイトルに込められたコンセプトと内容は作っているうちに、最初の予定から少しずれてしまったようだ。それくらいに教師を巡る現実は強烈で作、演出の中村賢司さんが考えていた「都会では失われた完全な静寂を求めて郊外に行く」というガイドラインは霞んでしまっている。  しかし、この芝居を見終えた後、我々が本当に求めていたものは何なのか、と改 . . . 本文を読む
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三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』

2006-11-24 20:29:20 | その他
 今までこのブログでは故意に本(小説等)を取り上げなかったが、そろそろ解禁にする。わざわざ宣言しなくてもいいのにね。  同時にDVDで見た映画も特に面白かったものについては、書いてみようと思う。テレビで見る映画は、映画ではないのであまり取り上げたくなかったけれども、書き残しておきたい物はメモとして残しておくほうがいい。劇場で見た映画と芝居だったら、どうしても数に限りがあるし、つまらないもの(書く . . . 本文を読む
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『短歌 TANNKA 』

2006-11-23 22:54:04 | 映画
 作詞家が映画を作るというのは、写真家が映画を作るときと同じような感じで、映像としては美しいけど、ドラマを作り上げる力が生じない、ということになるのか。作詞家の阿木耀子監督作品。  生活のスケッチなので劇的な展開も映像としてのダイナミズムも期待しないけど。それにしても、個々のシーンはとても綺麗に撮られているのだが、それ以上のものが全く感じられないのはどうなんだろうか。俵万智の短歌をモチーフにして . . . 本文を読む
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砂原カーニバル『帝郷・華の章』

2006-11-20 21:56:14 | 演劇
 天六から東に5分程行ったところに音太小屋はある。古い建物の2階を改造したフリースペースで、80人程人が入れば満杯になる。元々劇場として作られた空間ではないのでタッパもないし、何よりステージ部分が狭い。しかし、ここには小劇場演劇の原初的なものがある。なにもないところから芝居が始まること。そのワクワクドキドキがここにはある。今回の作品はこの空間の、《なにもなさ》を見事に取り込んだものになっている。 . . . 本文を読む
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『天使の卵』をもう一度考える

2006-11-18 10:44:42 | 映画
 きのう村山由佳の『ヘブンリーブルー』を読んで、映画『天使の卵』について、もう一度書きたくなった。あの映画が目指したものがより明確になった気がする。そして、それは続編である『天使の梯子』を読むことでさらに明瞭になる。  この3作品全体を映画化するためにあの作品はあったのだろう。そうであるなら尚更あの映画は言葉が足りなすぎた。死んでしまった五堂(春妃の夫)という男の影。そこを明確にしなくては映画が . . . 本文を読む
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『テキサス・チェーンーソー・ビギニング』

2006-11-17 21:24:01 | 映画
 オリジナルのテイストを現代に甦らせようと、細心の腐心を凝らした作品になっている。その結果、残酷なシーンはリアルで、生理的な不快感はMAXまで高められていく。マイケル・ベイ製作のメジャー映画のはずが、インディーズの怪しげな雰囲気を漂わせ、ザラザラした荒涼感溢れるドキュメンタリータッチの作品となっている。  描き方は即物的で、エンタティンメントとは程遠い。オリジナルの車のドアで指を挟むシーンにあっ . . . 本文を読む
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『デスノート』

2006-11-17 00:28:28 | 映画
 前後編、併せて4時間半の大長編である。これを金子修介は全く息もつかせず一気に見せてしまう。こんなにも面白いものになるなんて、予想さえしなかった。マンガの映画化で、ペラペラのCGの死神が出てきて、安っぽい設定のB級映画だとたかをくくっていたのに、それが何の何の、次は一体どうなるのかと興味をどんどんかきたてていく。  しかもよく考えられているから、そんなバカなと思いつつも、乗せられてしまいラストま . . . 本文を読む
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-レンチ『ダイアモンドは・・・』

2006-11-16 23:34:38 | 演劇
 最後まで緊張感を持続しきれない。1時間の芝居なのに、破綻してしまう。いや、いっそのこと破綻しきってくれたならいい。なのに、中途半端にまとめてしまうのがもったいない。  仕事を辞めたいという彼をなんとか引きとめようとする上司。2人の対話が静かに描かれていく。姉のダイアモンドのストラップがなくなったから。先生がセクハラで訴えられたから。等々。口ではそんなふうに言うが、それだけが理由ではない。いきな . . . 本文を読む
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AI HALL+岩崎正裕『ルカ追送』

2006-11-14 21:38:30 | 演劇
 ルカ追悼でも追想でもなく追送というところに、作り手の基本姿勢がうかがえる。しかし、ルカという人物をどんどん追い詰めていこうとする姿勢がもっと欲しかった。岩崎さんはあまりに中島らもを賛美しすぎている。もちろん中島らもへのオマージュを否定するつもりはない。僕だって彼は好きだ。しかし、それによって観客が退いてしまうようではまずい。  作り手が熱くなりすぎて作品との距離感がうまく取れてないのではないか . . . 本文を読む
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ugly duckling『スパイク・レコード』

2006-11-13 20:44:31 | 演劇
 『トキシラズ』2部作から、アグリーは自分たちの新しい形を明確に打ち出してきた。柴田隆弘の美術から池田ともゆきに変わり、隅々まで緻密に作りこんだ具象から、何もない空間も取り込んで組み立てられた抽象へと変わったことも大きく影響した。それをきっかけに、演出のスタイルが作品自体の方向性を明確にする形に変わってきたのだ。今までの台本が作品をリードするというパターンを脱することになった。  池田ともゆきさ . . . 本文を読む
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猫壺企画『elle dit;』

2006-11-12 01:33:38 | 演劇
 とっても真面目な芝居で、それ故見ていて、息苦しくなる。芝居自体が思いつめたように一直線に張り詰めたままラストまで突き進んでいくのだ。もちろんこういう芝居は嫌いではない。しかし見終わった時、たった1時間程の芝居なのにどっと疲れる。でも、その疲れは実はとても心地良い疲労だ。こんなふうに一生懸命、芝居と向き合う作家と出会えたことはうれしい。  閉じられた空間の中で、ハムスターがずっとあちらこちらと動 . . . 本文を読む
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そとばこまち『キャビア・ウーマン』

2006-11-12 00:03:09 | 演劇
 そとばこまち30周年記念作品である。そして、あの上海太郎が約20年振りにそとばこまちの舞台に立つ。しかもゲスト出演ではなく、準主役のポジションで本格的にストレートプレイに取り組むのだ。そこに限りなく魅力を感じた。なぜ、彼がこの企画に参加することにしたのかに興味が湧く。その答えが作品を見ることで見つかるか。それがこの作品を見た1番の理由。  『丈夫な教室』以降、久しぶりにそとばこまちを見た。『シ . . . 本文を読む
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