習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ジュノ』

2008-05-30 22:25:38 | 映画
 別にどうってことない映画だが、見終えた後ほんの少しいい気分にさせられる。ジュノがたった1度のセックスで妊娠してしまい、戸惑いながらも、出産していくまでが描かれる青春映画だ。彼女はこの10ヶ月を通して、ほんの少し成長していく。妊娠、出産という人生の大事件を16歳の少女が成し遂げていく。  もちろん周囲の人たちのびっくりするくらいの愛情と協力があるからだ。それだから彼女は乗り越えていける。この映画 . . . 本文を読む
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重松清『ブルーベリー』

2008-05-30 21:58:11 | その他
 大学入試で上京した。それからの東京での暮らしの中で出逢った様々な人たちとの印象的なエピソードが12編の短編連作として綴られる。それぞれの人たちとの話のひとつひとつはささいな出来事に過ぎないのかも知れないが、それは主人公にとっては今も(あれから20年も過ぎたというのに)忘れられないことばかりだ。  あの頃(18歳から22歳までの大学生活)を振り返ると印象的なことはたくさんあった。1981年から4 . . . 本文を読む
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劇団73『Gossip Turn』

2008-05-26 23:34:00 | 演劇
 劇団73という名前通りの松岡73さんの73さんによる73さんのための大芝居。ようするに彼女のひとり芝居なのだ。と、いっても舞台に彼女が出ずっぱりというわけではない。それどころか演出としてのポジションをちゃんと心得ている。  要するにそれって、彼女の頭の中にある壮大な物語をみんなが≪劇団73≫の名の下に集まり、全力を尽くして1本の芝居として作り上げていく、ということなのだ。もちろんこれが演劇であ . . . 本文を読む
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『Watch with Me ~卒業写真~』

2008-05-25 20:58:02 | 映画
昭和54年に中学三年生だった。九州、久留米の田舎町で、転校生の彼女はカメラを持って学校にやって来た。ボックス型のライカ。そのオーソドックスな写真機を手にして、さまざまな風景をカメラに収める。彼は彼女から写真を教えてもらった。あの夏、2人はいつも彼の部屋でとりとめのない話をしていた。  あれから20年も30年もの歳月が流れた。彼は末期がんで、もうあと半年の命だ。本当ならカメラマンとして、これから . . . 本文を読む
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プラズマみかん『ぼうふらとペットボトルを巡る光彩』

2008-05-25 20:32:05 | 演劇
 その意気込みは買いたい。題材の選び方、アプローチ。ドラマの組み立て方も含めて、とてもいいと思う。しかし、それをどう見せていくのか、という地点で、あらゆる意味で失敗している。こんなにも緊張感のない芝居を作っては駄目だ。上手い下手という問題ではなく、センスの問題か、なんて思ったが、フライヤーも含めて、決してセンスがないわけではないから、これは経験不足と、勉強不足からくる空回りが原因と見ていいだろう。 . . . 本文を読む
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あみゅーず・とらいあんぐる『真夜中のレストラン』

2008-05-25 19:34:24 | 演劇
 青い鳥の『ポロロッカ』を原作にして再構成したあみゅーずの新作は、いつも通り、見ている人をほんの少しいい気分にさせてくれる、そんなお芝居だ。  青い鳥の芝居のように突き詰めていくことなく、ほんわかとした心地よさを、さらりと見せていくところにあみゅーずのよさがある。彼女たちの軽やかなフットワークとアットホームなスタッフワークで、こんなにも暖かな気分で舞台を見つめられる。そんな芝居ってなかなかないと . . . 本文を読む
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『長江哀歌』再び

2008-05-24 23:15:05 | 映画
 ジャ・ジャンクーの『長江哀歌』がようやくDVDになった。昨年僕が劇場で見た映画のベスト・ワン作品である。さっそくレンタルしてきて再見した。やはり、すごい作品だった。英語タイトルである『スティル・ライフ』が本当にぴったりの作品だ。ひとつの現実をしっかり受け止めた上で心静かに生きていく。生活していく。  ダムに沈む町。失われていく中国の昔ながらの生活。新しい生活が今までの暮らしを大きく変えて行く。 . . . 本文を読む
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『相棒』

2008-05-24 22:50:23 | 映画
 和泉聖治がほんとうに久々にスクリーンに戻ってきた。もう10年近く彼は映画から離れていたのではないか。ピンク映画からキャリアをスタートさせて、忘れもしない。1982年、『オン・ザ・ロード』で一般映画に進出。この映画は、当時、大林宣彦監督の記念碑的作品『転校生』と2本立で松竹系で公開された。今は亡き香里ミリオンまで、見に行ったことをはっきり覚えている。  あんなにも感動したことはなかった。2本が2 . . . 本文を読む
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『光州5・18』

2008-05-24 22:20:46 | 映画
 『木浦は港だ!』のキム・ジフン監督最新作。昨年韓国で大ヒットとなった作品。前半はとてもおもしろい。ドキドキさせられた。しかし、後半に入ったら、急に緊張感がなくなってしまい、甘いメロドラマと化してしまうのは、どうしたものか。  光州事件を本格的に扱った初めての作品らしい。『ペパーミント・キャンディー』という凄い映画が既にあるが、あの作品は、事件そのものを描いたわけではない。韓国の歴史に於いてタブ . . . 本文を読む
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寺坂小迪『湖水地方』

2008-05-24 21:43:00 | 映画
 2つの中篇からなる作品集。村上春樹を思わせる。こういう胸の奥に秘められた痛みを静かに描き出していく作品を書く若手は登場したことをうれしく思う。  『湖水地方』の方は少し単純すぎて、つまらなかったが、『シャルル・ド・ゴールの雨女』は単純なのにおもしろい。その差って何だろう?かなり微妙な部分が、とても大きな影響を及ぼしていることは確かだろう。  姉の香夏と妹の夏実。妹の恋人の煉が、香夏を好きにな . . . 本文を読む
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『DIVE!!』

2008-05-23 21:01:05 | 映画
 森絵都のコミックのようにおもしろいスポ根小説を映画化。4冊分を2時間にまとめあげてしまったので、ストーリーの展開がとても早い。しかし、原作を知らず初めてこれを見た人は、反対にテンポが遅いと思ってしまうのではないか。というのは、映画の8割以上が主人公たちがプールで、ダイブする姿ばかり描かれているからだ。単調に見えるし、そのあまりのくりかえしにちょっと退屈してしまうはずだ。  あんなにおもしろい小 . . . 本文を読む
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『愛おしき隣人』

2008-05-23 20:28:32 | 映画
 ロイ・アンダーソン監督のオチのないショート・ストーリーのつみ重ねに、まんまと乗せられていく。けっこう長まわしする。ずっと待っている。なのに、何も起きない。そんなシーンが続く。またかよ、と思う。なのに腹は立たない。何も起こらないエピソードの羅列が、なぜか、心地よい。  なのに、「どうせ、なにもないだろ」と高を括っていたら、とんでもない感動が突然やってきたりもするから、タチが悪い。いつものバーに少 . . . 本文を読む
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『最高の人生の見つけ方』

2008-05-23 20:03:11 | 映画
 悪魔のジャック・ニコルソンが、善良なモーガン・フリーマンを唆して、旅に出る、なんて図式にすら思えてしまう。相変わらず悪人ずらのニコルソンである。枯れても従来のイメージを損なうことなく、笑うだけでまだ『シャイニング』時代の面影が残る。(そんなの、あたりまえか)老いてなお精力的な彼のイメージをそなまま生かしたロブ・ライナー監督最新作である。彼らしい優しさと思いやりに満ちた素敵な映画に仕上がった。 . . . 本文を読む
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『キャプテン』

2008-05-23 19:34:16 | その他
 文庫15冊をあと少しで読み終わる。4代に渉る墨谷2中の野球部キャプテンと、その仲間たちの野球漬けの毎日を描くちばあきおの傑作漫画である。  こいつら滅茶苦茶しよる。ちょっと今の時代には通用しない世界だが、たとえどんな時代であってもここに描かれる精神は不滅だ。(僕も無茶苦茶言いよる)野球命の子供たちってこんなものなのだろうか。  1日3冊のペースで読み進めて今日で5日目突入だ。最終日である。谷 . . . 本文を読む
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『ゼア・ウイル・ビー・ブラッド』

2008-05-21 01:16:50 | 映画
 期待が大きすぎたせいか、なんだか肩すかしを食らった気分だ。ポ-ル・トーマス・アンダーソン監督の4年振りの新作。故ロバート・アルトマン監督への追悼の献辞をラストに掲げた超大作である。群像劇ではない。たったひとりの男の生き様をひたすら見つめ続けていく。カリフォルニアで石油王となった男の地道な生涯を年代記として追っていく作品だ。  ひたすら石油を掘り続ける。彼は実業家というより山師みたいなものだ。成 . . . 本文を読む
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