習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

劇団ショウダウン『ドラゴンカルト』

2017-03-29 19:50:38 | 演劇
  力作だと思う。それだけにとても惜しい。これだけたくさんの役者たちを集め、前代未聞のスペクタクルを見せようとした。その意気込みは十分伝わってくる。3時間でも足りないボリュームを2時間20分に仕立てたのも、悪くない。だけど、それでもまだ、たくさんすぎるキャストの交通整理が出来てない。   主人公は2人の刑事で彼らが事件を追うというよくあるパターンのはず。もっとふたりに絞り . . . 本文を読む
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真紅組プロデュース『馬琴の手蹟』

2017-03-29 19:39:50 | 演劇
  今年一番の傑作ではないか。(まだ3月だから気が早いけどここまでの3ヶ月では断トツでおもしろい)エンタメであるだけでなく、純粋に演劇を通して何が表現できるのかを極めようとしているのが素晴らしい。馬琴という男を主人公にして彼の晩年にスポットを当てる人間ドラマだ。もちろんそれを小難しいものではなく、まず何よりも奇想天外でおもしろい作品に仕上げてある。目的、方向性、アプローチ、表現力。その . . . 本文を読む
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N₂『 blue/amber  「居座りのひ」と「月並みにつぐ」ならびに「水平と婉曲」』

2017-03-28 20:00:12 | 演劇
実は今回はお手上げだ。覚悟して見始めてのだが、体調もよくなくて、何が何だかわからない。杉本さんの綴る観念的な世界は視覚的にも面白いし、興味深いのだけど、とりつく暇を与えない。   50分の中編作品になった「居座りのひ」と「月並みにつぐ」は、別々の作品として上演された2作品のイメージを継ぎ接ぎにして1作品とした。もちろん原型をとどめているけど、それが何を意味するのかは、よくわからない。 . . . 本文を読む
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金蘭会高校演劇部『イントレランスの祭』

2017-03-28 19:59:03 | 演劇
  久々の金蘭エンゲキである。いつもながら素晴らしい。もう今では古い話で恐縮だが、一時期は部員が少なくなり、従来のスタイルでの作品作りが難しくなっていた時期もあった。でも、今ではそんなことを忘れさせるくらいに安定したメンバーで、完成度の高い作品を作り続けている。毎年この時期ホームグランドであるウイステリアホールで3年生の卒業公演と1,2年による新作が上演されるのだが、今年はそれに金蘭座 . . . 本文を読む
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大阪新選組『弱法師』

2017-03-28 19:46:53 | 演劇
今回の新選組は三島の戯曲『近代能楽集』の1篇に挑戦した。古典とは言えないけど、新作でもないし、どちらかというとクラシックな作品を取り上げ、今、ここで見せることの意味を提示できるのか、興味津々で見たのだが、期待以上(こんな失礼な言い方して、すみません!)の作品に仕上がっていて感心した。   まず役者たちが上手い。だから緊張感のある作品になった。対峙する二組の夫婦を演じた4人が4人ともす . . . 本文を読む
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『ハルチカ』

2017-03-22 21:32:14 | 映画
1月公開の『僕らのごはんは明日で待っている』に続いて早くも今年2本目の市井昌秀監督作品だ。廃部寸前の吹奏楽部を復活させるために奮闘する新入生の女の子が主人公。彼女(チカ)と幼なじみで、偶然この高校に入って再会したハルタも、彼女に引っ張られて吹奏楽を始める。彼らの部員探しから始まる青春の日々が綴られていく。全体的にはお話自体はあまりリアルではなく、最初はコメディタッチのストーリー展開を見せるが、先日 . . . 本文を読む
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恩田陸『蜜蜂と遠雷』

2017-03-18 04:10:12 | その他
今年(昨年?)の直木賞受賞作。というか、僕には恩田陸が直木賞を今まで貰っていなかった、ということの方が驚きだ。上下2段組み500ぺージを超える大作なのだが、読み始めると止まらない。読みやすいし、一気にラストまで読み終える。(でも3日間かけたけど) 3年に一度開催されるピアノの国際コンクールを舞台にして、エントリー(登場人物の紹介)から大会前夜、一次予選、2次予選、3次予選、そして本選までの . . . 本文を読む
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『チア・ダン』

2017-03-18 04:08:47 | 映画
昨年の河合勇人監督の『俺物語』は極端な人間を描くコメディなのに、とてもリアルで感動的な作品だった。あり得ないことがありえる。それが映画の魅力なら、あの映画はそれをコメディタッチで見せながら、リアルな青春ドラマとして立ち上げることに成功した。もちろん、そこに貢献したのは鈴木亮平である。あの映画は彼という稀有の存在があったからこそ可能だったのである。30くらいの男が高校1年生を演じるという暴挙を実現し . . . 本文を読む
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『ひそひそ星』

2017-03-17 19:55:07 | 映画
  園子温の究極のプライベートムービー。こういう映画を作れるのが、今の彼の置かれた状況なのだ。それはとてもすごいことだ。そして幸せなことだ。今や彼は売れっ子のスター監督になり、こんなにも自由な映画作りが可能になった、ということか。   これは25年前の企画だったらしい。『自転車吐息』でデビューした頃、次の作品として用意していたようだ。でも、これがとても個人的な企画で自主映 . . . 本文を読む
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ザ・ブロードキャストショウ『のんちゃん、旅に出る』

2017-03-15 02:05:25 | 演劇
最初このタイトルだけ見て、これは見たいと思った。『のんちゃん、雲にのる』のパクリなのだが、あの小説の世界へのリスペクトが今の時代の中でどんなふうに映るのか(描かれるのか)それを目撃してみたいと思ったのだ。 小さなスペースでの公演である。初めての劇場(なんばのリバープレイスにあるアカルスタジオという場所)なので、そこもドキドキしていた。この作品の目指すものがそこにも象徴されている気がして勝手に . . . 本文を読む
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川村元気『四月になれば彼女は』

2017-03-15 02:04:19 | その他
正直言ってうさんくさい、と思った。『世界から猫が消えたなら』を読んだとき、あざとすぎて無理、と思った。でも、映画になった作品のほうは監督が彼ではないからかもしれないけど、とても静かないい映画だと思えた。あの原作から、こういう映画ができるのだ、と感心した。川村元気は映画監督ではない。プロデューサーなのだけど、作家としても活躍している。そこにはプロデューサーとしての、リサーチされた観客の嗜好に合わせた . . . 本文を読む
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『ブラインド・マッサージ』

2017-03-15 02:01:49 | 映画
こんなにも強烈な映画を見るのは久しぶりで、完全にノックアウトされた。先日見たパク・チャヌクの『お嬢さん』も確かに強烈だったけど、その比じゃない。これは表面的には恋愛映画なのだけど、そこに盲人というフィルターを通すことで、普通じゃなくなる。盲人だから普通じゃないとかいうのではない。彼らの貪欲な性への渇望に圧倒されるのだ。当たり前のことなのに、それがこんなにも切実で凄まじい。いつものことだが、ロウ・イ . . . 本文を読む
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KUTO-10『あたらしいなみ』

2017-03-15 02:00:12 | 演劇
今回の工藤さんは、なんと台本にサカイヒロト、演出に樋口ミユという大胆な布陣を敷いた。これはすごい冒険だ。まず、このコンビの芝居が見られるというだけで、うれしい。それをKUTO-10でするというのだから、もっとうれしい。十分ありえたはずの、でも、今までなかったこの組み合わせが、工藤さんのもとで、どういう化学反応を起こすのかを楽しみにして劇場に向かう。 予想通りの妥協のない芝居だった。ふたり(も . . . 本文を読む
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レトルト内閣『オフィス座の怪人』

2017-03-15 01:58:40 | 演劇
もうこれは明らかに『オペラ座の怪人』のパロディなのだが、(数年前にこの同じ近鉄アート館で同じコンセプトの芝居をスクエアもしていたけど、)それを三名刺繍さんがしたならどうなるのか。興味津々で見た。アート館の3周年企画である「VIVA!ミュージックアート館2017」の一環としての公演である。普段のレトルト内閣の本公演とはいささか趣を異にするのは仕方ない。イベント企画だから、。準備期間も十分じゃないし、 . . . 本文を読む
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『若葉のころ』

2017-03-15 01:57:11 | 映画
映画を見て号泣するなんてことは最近めったにない。というか、昔だってなかなかそこまではしない。だから、声を出して泣く人(僕ですが)なんてほんとに久しぶりに見た。これを映画館で見なくてよかった、と思う。もし、昨年5月の公開時に予定通り劇場で見れていたならとても困ったことだろう。昨日、夜明け前のリビングでひとり見た。 でも、だからこそこんなに素直に泣いてしまったのかもしれない。今という時期も僕には . . . 本文を読む
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