こんなにもシンプルなタイトルはない。このタイトルのもと、とても小さな恋愛小説を作る。2つの中篇と4つの短編からなる。
2人の男たちのそれぞれの恋愛が交互に描かれていく表題作から始まる。2人は親友同士だが、性格はまるで違う。お互いの話を聞きながら、それはないよな、と思う。でも、気にはなる。自分にはない感情や、状況は聞いていて、興味深い。慎重な男と、軽いばかりの男。でも、実は2人ともよく似た性格 . . . 本文を読む
いくら三池崇史であろうとも、これはないんじゃないか。プロデューサーは、こんな無謀な企画にGOサインを出して、いいのか。しかも、それなりに大予算の映画である。ここまでふざけた映画で、怖くなかったか?
三池だから大丈夫、とでも思ったのか。でも、観客は、あきれ返ってそっぽを向くのではないだろうか。そして、劇場は閑古鳥が鳴くことになる、かもしれない。たぶん。
これはただの趣味の映画だ。やること為す . . . 本文を読む
2011年、本屋大賞受賞作品、という売り込みはこの作品にはいらない。今さら三浦しをんの新作に本屋大賞を与える必要なんかないのではないか。もっと若手で、誰も知らないような作家の作品に目を付けて日の目を当ててくれたならうれしい。まぁ、書店員のみなさんにそんなことを言っても始まらないだろうけど。
それにしても、取り上げた内容の地味さと、見せ方の軽さのあやういバランスは、かなりスリリングだ。途中から . . . 本文を読む
これはとても刺激的な芝居である。この無意味でしかない会話劇に、なぜだか、こんなにもドキドキさせられる。そして、これが最終的にはどこにも行き着かないということは、わかりきっているのに、最後までこの不毛な会話から目が離せない。
作、演出を担当した福谷圭佑さんは、そんないろんなことは、充分わかった上で、この全く意味をなさない会話をとても真摯に作っていく。「6つの会の会議を、同時に並列に舞台上に実現 . . . 本文を読む
このべたなタイトルで、しかも、主人公の女子大生の名前が「あおい」で(彼女を演じる鈴木ちひろさんが、どこにでもいそうな「とても普通の女の子」で、そんなところがとても魅力的だ! 本当はその話だけで、済ませたいほどなのだが、ここでは敢えてその話は一切しない。それと、上のチラシの写真は、彼女ではない。間違えないこと。)その同棲中の恋人が「蒼甫」。こういうネーミングを平気でしてしまう潔さが高間響さんのセン . . . 本文を読む
ソダバーグ監督の新作は、パンディミックを扱うドキュメンタリー・タッチの作品だ。こういう題材を映像として見せるのが難しい。派手な描写は皆無だ。大体そういうパニックシーンやら、炎上や、アクションとかとは、無縁の映画なのである。では、彼はどういう方法論を取るのか。
彼は、これをまず、オールスター映画として見せようとする。それはこの作品を大作映画として箔をつけるためではない。マリオン・コティヤール、 . . . 本文を読む
食を巡る小文集なのだが、これは川本さんの亡き妻への追想文集でもある。彼女のことを綴った『いまも、君を想う』の続編であり姉妹編にもなっている。「食を語ることで、そこにひそかに亡き妻を、昔のことを、記憶にとどめたい」というようなことが帯に書かれてあった。
奥さんを亡くして、ひとりぼっちになった川本さんが、食をテーマにして、日々の生活の中で感じたことを書きとめながら、そこにどうしても妻の思い出を重 . . . 本文を読む
5つのキスを巡る短編集なのだが、ほんの一瞬の心の動き(キス)にむけて、研ぎ澄まされた筆致で、彼女たちの心情が描きこまれていく。一見すると、たわいもない話なのに、読んでいてかなりドキドキさせられる。そしてそれがとても大切なことだと気付かされる。
恋愛小説を読んで心動かされるのは、彼なり、彼女なりの心情がとてもリアルに迫ってきて、そのシチュエーションでどうするのか、と身を乗り出してしまうような瞬 . . . 本文を読む
この小さな映画は、とてもかわいい。75分という上映時間も凄い。劇場用映画としては破格だろう。最近の台湾映画はこういう映画が人気なのか。小さければ小さいほどいい。ささやかであれば、ささやかであるほど、いい。そんな映画だ。2010年9月に台湾で公開されたリン・シャオチュン監督のデビュー作。
パステルカラーの青春映画。おとなしい女の子が、友だちと2人で、捨て猫を見つけるシーンから始まる。その猫を飼 . . . 本文を読む
小林政広監督がこんな恋愛映画を撮るなんて、どういう心境の変化なのか。頼まれたから仕方なく撮ったのか。しかも、低予算でとても安易に作られてある。ロベール・ブレッソンの同名傑作映画を視野に入れているのは、当然の話だろうが、ここまで素人映画のように下手に作ったのはなぜか。
しかも、それでおもしろければそれだけでいいのだが、まるでつまらないから、どうしたらいいか、と思う。途中で見るのをやめようか、と . . . 本文を読む
昨年見た三浦友和主演の『RAILWAYS 2』(正式なタイトルは『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ 』)を見たとき、やられたなぁ、と思った。ここまでベタに今に日本の現状をてんこ盛りにしなくても、いいじゃないか、と思いつつも、今、これをしなくてはいつやるのか、とも思った。定年真近の団塊で世代の第2の人生にむけてのドラマは、あざといくらいだが、『RAILWAYS』という題 . . . 本文を読む
平たい顔族プリンスを上戸彩が演じる。これはナイスなキャスティングだ。というか、彼女はプリンスではなくただのヒロインなのだが、彼女を王女さまに設定しても面白かったのではないか。大体、平たい顔族というネーミングが素晴らしい。予告編を見た時から、あの「顔が、平たい!」という阿部寛の驚きの声が、耳に張り付いて離れなかった。あれだけで、この映画を絶対に見たい、と思った。銭湯にいる老人たちの平たい顔もすごい . . . 本文を読む
今回のLINX'S はとてもコンパクトにまとまっていて、流れ方がスムーズで見やすい。6回目ということもあり、スタイルが確立できたことが大きい。選ばれた劇団もバラエティーに富んでいるが、最初に見たBプロの完成度の高さは特筆に価する。
4集団のテイストが似ていて、エンタテインメントとしての方向性が明確なので、見やすくなっている。スピード感があって後に何も残さないのもいい。キャラクターの特異性で引 . . . 本文を読む
1977年という設定だ。昨日見た『デメキング』といい、これといい、偶然だろうが、70年代がちょっとしたブームだ。(といっても、この2本だけだし、僕が偶然見ただけだが)
あの夏の日を描く。ダムの底に沈んだ村。最後の夏の記憶。少年は偶然そこに連れていかれる。ひと月ほどの時間をその村で過ごすことになる。懐かしい風景、自然、が描かれる。その中で夏休みを楽しむ子どもたちの姿が描かれる。
少年は、交 . . . 本文を読む
とても変な映画だ。まるで予備知識なく見た。マンガの映画化であることと、怪獣が出て来るらしいことくらいだ。SFチックなしょぼい映画ではないか、と思うけど、なんとなく心魅かれた。で、かなり驚く。2009年の作品だ。
何を伝えたいのかが定かではない。なのに、とても気になる。曖昧なままストーリーが流れていき、謎は謎のまま、投げ出されていき、そして結論は定かではない状態でいきなり終わる。放り出された気 . . . 本文を読む