習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

劇団往来『虫』

2007-11-26 23:26:54 | 演劇
 どうして今から50年以上前の台本を再び取り上げようとしたのだろうか。この本を通して何を見せたかったのかが、今一歩伝わらない。  藤本義一のこの戯曲はとても現代の演劇としては成立しないもので、内容もそうだが、何よりまず、科白が説明的で、ためがありすぎて、しつこい。もっとさらりと見せなくては胃にもたれる。もちろん50年前ならこのくらいにこってりとした味付けでなくては観客が納得しなかったのかも知れな . . . 本文を読む
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『仮面ライダー THE FIRST』

2007-11-26 22:55:49 | 映画
 大人のための仮面ライダーが作られたなら、結構凄いものが出来るのではないか、なんて何10年も前から誰もが思い続けていたことだし、今までもそのための試みは何度となくなされてきた。しかし、その都度失敗している。SFXの技術が進歩して、ハリウッドに負けないようなCGが可能になった今、本気でそういう試みがなされてもいい。そんな時代がやってきた。『スパイダーマン』に向こうを張った『仮面ライダー』の誕生である . . . 本文を読む
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PASSIONE『子午線を咀嚼する。』

2007-11-25 21:26:37 | 演劇
 こんなにもオーソドックスな小劇場っぽい芝居を見るのって、ほんとに久しぶりのことだ。最近、いかにもこれぞ小劇場ならでは、と思わせるようなケレン味たっぷりの芝居が珍しくなっている。エンタメではなくても、こういう芝居は、かっては盛んにあった。しかし、この芝居は「いかにも小劇場演劇」というような見せ方は敢えて狙ったわけではない。  始まった時には、「これはかっての小劇場のパロディーなのか」なんて思った . . . 本文を読む
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『あなたになら言える秘密のこと』

2007-11-25 21:06:28 | 映画
 今年の2月、ひっそり公開され一瞬で消えていったこの映画をようやくDVDで見ることが出来た。とても見たかったから期待が大きすぎて、ちょっと肩すかしを食う出来だったのが、少し残念だが、何も思わずこれに出会っていたなら軽い衝撃を受けていただろう。  これはひっそりと見るべき映画だ。だから、誰にも知られず公開されたのも、この映画にはふさわしいことだったのかもしれない。難波のTOHOシネマズで2,3週間 . . . 本文を読む
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『Little DJ  小さな恋の物語』

2007-11-25 10:23:03 | 映画
 さすがに神木隆之介くんを小学生には設定できないので、主人公の少年は、中学1年生に設定し直してある。そうすると、その行動が幾分子供っぽく見えることになるのだが、さすがに神木くんが演じるから、違和感なくドラマの展開を受け入れさせてくれる。天才子役神木隆之介は見事に作品を自分の力でドライブする。  原作は甘い話なのに、納得させる力を持つ佳作だった。今時白血病ものなんて、と思い読み始めたのに、その語り . . . 本文を読む
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角田光代『三面記事小説』

2007-11-25 09:23:00 | その他
 角田光代は、怖ろしい。ここまで不快な気分にさせてくれる小説はめったにない。三面記事に載る小さな囲み記事から妄想される人の営みを、さらりと(でも、ドロリ、としてるが)描き、どこまでが、実際の事件に取材した事実で、どこからが彼女の想像力の産物なのかよくわからない世界へと僕たちを誘う。  6つの小さな新聞記事にインスパイアされた世界は、事実をベースにして、真実に至る小説の王道を行くショート・ストーリ . . . 本文を読む
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『絶対の愛』

2007-11-25 09:03:40 | 映画
 キム・ギドクの映画を見て、初めて違和感を覚えた。もちろん作品の出来、不出来は、今までだってあった。しかし、その方向性に関しては揺るぎはない。彼が行こうとするところは、しっかり伝わってきた。  その過激な描写は人を驚かそうとしてするのではなく、彼が人間というものを描く上で必要なことなのだ、と了解してきたから嫌ではなかった。  なのに、今回初めて彼に対して不信感を抱く。まず、どうしてここまで全て . . . 本文を読む
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演団劇箱『天空の書架』

2007-11-19 22:31:09 | 演劇
 とても好感の持てる作品だと思う。ハリー・ポッターみたく地下鉄の構内から、別の世界に旅立っていく一種のファンタジーなのだが、こんなにも単純な話なのに、それをきちんと作ってあるから見ていて気持ちがいい。特別奇を衒ったことはしなくても、誠実に作っていくことで、作り手の思いはしっかり伝わる。  前作『Poison Prison Personns』では今までの劇箱とは一線を画すような見事な作劇を見せてく . . . 本文を読む
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あうん堂『うらあわせ3番勝負 延長戦』

2007-11-19 21:34:26 | 演劇
 なんて気持ちのいいお芝居なんだろう。大人が隠れ家で過ごす時間。ゆっくりお酒を飲む心地よい時。それを殊更誇示しようとするのではなく、さらりと見せて、いいなぁという気分にさせてくれる。誰のものでもない自分だけの時間と場所がある。  仕事に疲れた体を解きほぐし、また明日からも無理せず生きていこうと思う。そのための一時を提供してくれる。みんなで飲む酒もきっと楽しい。仕事の憂さをはらすために飲む酒もいい . . . 本文を読む
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篠田節子『純愛小説』

2007-11-18 23:01:45 | その他
 読みながらそのあまりの痛ましさゆえ、目を背けたくなる。いい年した大人がこんなふうに恋をするなんて醜いと思う。だけれども、「大人だからこそ、隠せない想いがある。」という帯の言葉は、きっと正しいのだろう。大人になり、恋愛から降りてしまったはずの人たちが、恋に嵌ってしまって、取り返しのつかないことをしてしまう。そのことを否定も肯定もしない筆致は、かなり怖い。  タイトルの『純愛小説』という一見甘いネ . . . 本文を読む
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遊劇体『夜叉ヶ池』

2007-11-18 22:15:01 | 演劇
 絢爛豪華なスペクタクルとしての『夜叉ヶ池』ではなく、モノトーンで、静謐な世界。このとんでもなく単純な物語を、物語とすら言えないくらいにメリハリのないものとして、淡々と見せる。キタモトさんによる語りの部分は観客が芝居の世界にのめり込んでいこうとするのを拒絶するかのように、観客と舞台を分断する。きちんとした距離を取ってこの世界を外部から凝視することを強要する。恋愛ものとしてこれを読むことは出来る。し . . . 本文を読む
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トランスパンダ『ひとつでもいい』

2007-11-18 21:47:54 | 演劇
 これは、とても幸せなラブストーリーだ。でも、それって、これが甘いお話だ、ということではない。それどころか、これはいつもながらのとっても痛い話でもある。ここに居るのに、誰もいない。自分がひとりぼっちで、自分すら見えない。  ナカタアカネさんの作る世界は彼女自身にとてもよく似ている。自伝的なお話だから、なんていうことではない。だいたいそんなことは一観客には分からない。ただ、自分をここまで痛めつめな . . . 本文を読む
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『オリヲン座からの招待状』

2007-11-13 23:31:27 | 映画
 これは短編小説でしかない内容を、無理から長編に仕立てたため、見事なまでにスカスカの映画になってしまったという失敗作。2,30分程度の上映時間なら、きっと気持ちのいい映画(というか映像詩)になるはずなのに勘違いも甚だしい。  昭和30年代。京都西陣にある映画館。記憶の中にある風景。それはもう風化して、イメージの残滓のみが残る美しい思い出。そんな幻を見せようとする。これは現実ではない。記憶に残った . . . 本文を読む
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アジア虫『新訳・みんなの好きな日本野球論 著 ジェームズ・ジェー』

2007-11-12 23:58:21 | 演劇
 なんと客席の後ろにピッチング・マシーンを入れて、そこから舞台目がけてボールを投げ込む、というのだ。もちろん客席には防御ネットが張り巡らせてあるが、舞台にいる役者たちのところに凄いスピードでボールが飛んでくる。丁度舞台中央を直撃する。  舞台中央の花道には、ブランコが架けられ、観客と同じ方向を向き、ブランコに座っているキティーちゃんの着ぐるみを着た人物がいる。彼(彼女か)の頭上をボールは飛ぶこと . . . 本文を読む
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超人予備校『イノブタくん』

2007-11-12 23:08:10 | 演劇
  この脱力感は並ではない。ここまでどうでもいい話を、学芸会的ノリで90分間も見せ続けてしまうなんて、なかなか凡人に出来ることでない。普通ならもう少し内容のあるものを作ろうとか、テーマとかも、言い出しそうなところ。でないと情けなくてやってられなくなるはずなのだ。なのに、ミツルギさんは全くそんなこと気にしないし、別に興味ないみたいに、ひたすらただ動物達によるヨタ話を、誠実に見せていくことに終始する。 . . . 本文を読む
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