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映画・演劇のレビュー

劇団May『夜にだって月はあるから』

2011-08-30 20:05:14 | 演劇
 今、大阪で一番優れた作品を作り続ける劇団Mayの新作。昨年の東京先行上演を受けて、満を持しての大阪初公開である。今までのMayの最高傑作であり、もちろんその到達点となった『ボクサー』以降、金哲義さんは一体どこにむかっていくことになるのか。それを占う作品でもある。『風の市』『チャンソ』と加速をつけて在日であることや民族の歴史と正面から向き合い、自分たちにしか出来ない、語り得ない芝居を作ってきた彼が . . . 本文を読む
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『2H』

2011-08-30 19:57:50 | 映画
『靖国』のリ・イン監督作品。東京で一人暮らしの100歳にならんとする中国人の孤独と死を2時間(2H)に集約したドキュメントということらしい。だが、この独りよがりの映画に付き合うのは容易ではない。退屈で死にそうになる。それがこの老人の日常なのだ、と言われれば「なるほど!」と思わないでもない。だが、そんなものを僕らが追体験する必要は感じない。こういう独りよがりの映画はたちが悪い。  「1998年冬、 . . . 本文を読む
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劇団 太陽族『S t y l i s h (仮)』

2011-08-28 20:57:51 | 演劇
 今年2月『大阪マクベス』を作ってしまった岩崎正裕さんと太陽族の新作である。あの作品の後、もっともっと前のめりになり、より攻撃的な芝居を作ることも可能だった。しかし、岩崎さんはここでほんの少し足踏みをする。あわてることはない。彼らはもうベテランであり、長距離ランナーだ。今は立ち止り、視点を変えて芝居と向き合うことも必要だ。いつもいつも全力疾走することはない。ということで、今回の作品である。  今 . . . 本文を読む
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川上弘美『東京日記3  ナマズの幸運。』

2011-08-28 20:16:39 | その他
 ほんとうにくだらない、どうでもいいことばかりが書いてある。読みながら苦笑して、なんだか幸せな気分になる。これが3冊目になる川上弘美の嘘日記。一応本当のことがベースなのだが、すぐに暴走(妄想か?)して、気付くと嘘になる。今回は9割くらいは本当のことも書いてあるそうだ。確かに前に比べると、嘘くささがずいぶん少なくなった気がする。さらに洗練もされてきたし。というか、ますますどうでもいいことばかりになっ . . . 本文を読む
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『ツリー・オブ・ライフ』

2011-08-26 20:23:27 | 映画
 『シン・レッド・ライン』『ニューワールド』以来のテレンス・マリックの新作である。というか、40年近いキャリアなのに、これでまだ5作目である。超寡作のこの巨匠が、しかも、今回初めてこんな普通の人を主人公にして、その日常を描く作品を作る。それだけで期待は高まるばかりだ。しかもカンヌでは最優秀作品賞(パルムドール)を受賞した。  そんなこんなの期待の新作だったのだが、ずっこけてしまった。なんじゃ、こ . . . 本文を読む
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『世界侵略 ロサンゼルス決戦』

2011-08-26 20:07:12 | 映画
 日本公開が危ぶまれたこの映画がようやく公開されることとなった。このなんともストレートなタイトルには驚かされる。だが、始まった映画自身にはもっと驚かされる。ここにはまともな話なんかない。宇宙人がやってきて、地球を襲う。それを阻止するために戦う。ただそれだけ。  敵のただ中で、生き残り取り残された人々を救出する部隊の活躍をドキュメンタリータッチで描く戦争大作。映画が始まってしばらくすると、どかん、 . . . 本文を読む
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子供鉅人『バーニングスキン』

2011-08-26 19:45:06 | 演劇
この暴力的な作品の持つインパクトは強大だ。重度のアトピー性皮膚炎を患う女は、あり得ないような暴力を家族に対して奮う。妹も両親も為す術もなく従う。あげくには妹は殺されてしまうし、彼女の変わりにわけのわからない男がやってきて、妹を名乗ることとなる。このオープニングの一連のシーンは強烈な印象を残す。彼らの関係性は何なんだろう、と思う。不安にさせられる。凶暴な彼女の横暴に両親はただ怯え、従順に彼女の言う . . . 本文を読む
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村上龍『心はあなたのもとに』

2011-08-26 19:36:24 | その他
村上龍初の本格恋愛小説である。彼は(たぶん)やると決めたら徹底的にしなくては気が済まない主義なので今回もとことんやってくれる。600ページに及ばんとする大作で、50代の経済的にも満たされた男と、30代で病気を抱えた風俗の女の不倫を描く。男はお金に物を言わせて何人もの女を自由にしてきた。そんな中、偶然出会ったこのひとりの女に入れ込んでしまう。最初はいくらなんでもこの設定はないだろう、と思った。村上 . . . 本文を読む
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『乱反射』『スノーフレーク』

2011-08-25 22:59:06 | 映画
 昨年、仲里依紗主演の傑作『 時をかける少女』を監督した谷口正晃監督が、今回は桐谷美玲を主役に迎えて2本の映画を作り上げる。ひとつは17歳の高校生を主人公にした青春映画で、もうひとつは20歳の短大生を主人公にしたミステリー映画だ。舞台も、設定も、もちろんドラマの方向性も全く異なる2作品を2本立として同時公開するという画期的な企画だ。今時ありえないアナクロ振りのアイドル映画だ。彼女のファンのためだけ . . . 本文を読む
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劇団ひまわり『コルチャック先生と子どもたち』

2011-08-25 22:48:03 | 演劇
 劇団ひまわり創立60周年記念作品。全国で5つのチームがこの作品に挑む。僕が見たのは大阪ヴァージョンのAプロ。何よりもまず、これだけの大人数を捌くだけでも大変な作業だっただろう。本当に幼い子役たちがとても頑張っていて、なんだかそのけなげさに心打たれる。満足に喋れないような小さな子供が一生懸命セリフを言う。それだけでも十分感動的だったりもするのだが、正直言って芝居自体には、ちょっと不満がある。きっと . . . 本文を読む
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Micro To Macro『ハネモノ/ブルー・ヘブン』

2011-08-21 17:07:43 | 演劇
 とても芝居らしい芝居で、安心してラストまで見ていられるのがいい。メリハリがあり、テンポもいい。バンドによる生演奏と歌がポイント、ポイントでこのドラマを盛り上げていくのも、いつものことだが、的を射ていていい。お約束をちゃんと守って定番のストーリーをきっちり見せきってくれるから、こんなにも心地よいのである。  ストーリーは単純なのだが、複雑な構成をわざととる。なかなか先が見えないまま、いくつものド . . . 本文を読む
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『乘著光影旅行』

2011-08-21 16:05:06 | 映画
 これは台湾の撮影監督のリー・ピンビンを追ったドキュメンタリー映画で昨年の台北映画祭では劇映画を退けてグランプリに輝いた作品だ。昨年東京国際映画祭にも出品され『風に吹かれて―キャメラマン李屏賓(リー・ピンビン)の肖像』というタイトルで上映されたようだ。  リー・ピンンビンへのロング・インタビューも含むドキュメンタリー映画を日本語字幕なしで見るという無謀にチャレンジしたのだが、飽きることなく90分 . . . 本文を読む
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オセロット企画『放課後のふたり、線路沿いを左』

2011-08-21 09:17:48 | 演劇
 久しぶりに個人的にとっても好きなタイプの芝居を見ることが出来てうれしい。見せ場がたくさんあり、派手な仕掛けで、熱いドラマに心揺さぶられる、という芝居もいいけど、こんなふうにとても静かで、素直で、これといった仕掛けはないけど、意表を突かれる設定に「なんだ? なんだ!」と思わされ、何もないのにドキドキする、そんな芝居が好き。心地よい緊張感を持続し、ラストまで一瞬たりとも舞台から目が離せない。  彼 . . . 本文を読む
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『ボローニャの夕暮れ』

2011-08-18 07:37:20 | 映画
 ハートフルな家族映画だと思い見始めれば手痛い思いをさせられる。DVDのパッケージに騙されてはならない。だが、最後まで見たなら、やはり心暖かくされる。あのパッケージには偽りはない、と思わされる。これは隠れた傑作だ。こういう映画がひっそりと、誰に知られることもなく公開され、DVDにもなり、ひっそりと棚の隅にたった1本だけ忘れられたように並んでいる。まだ、発売されて間もないから、どこのビデオ屋にも置か . . . 本文を読む
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『プチ・ニコラ』

2011-08-18 07:05:23 | 映画
 たわいもない児童映画かもしれない。弟が出来たら自分は両親から愛されなくなるのではないか、と心配する少年の話だ。学校に行くとなかよしグループがいて、彼らと無邪気ないたずらをして毎日を過ごす。父親の知り合いのところに行きそこの娘さんが好きになる。そんなこんなのどこにでもある風景が描かれる。フランスの児童文学(絵本らしいが)の映画化で、今までも散々作られてきたパターンの映画だ。だが、見ていてなんだかと . . . 本文を読む
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