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映画・演劇のレビュー

A級MissingLink『富士山アンダーグラウンド』

2024-08-31 16:54:00 | 演劇
土橋淳志が作・演出。なんだか壮大なお話で、チラシも凄い。丸い。富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海。その地下数100メートルにある大空洞・アガルタが舞台だ。そこでは、ナウマンゾウ祭りを明日に控えて準備に大わらわ。前回『幕末コンセプト』の京都に続いて今回も、非日常の場所を舞台にして、そこにいる人たちとやって来た人たちの話。そこでは非日常のイベント(祭り)を控えていつもと違う時間が流れる。今回は実にシンプ . . . 本文を読む
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『ソウルの春』

2024-08-31 11:30:00 | 映画
79年12月12日。これは『ソウルのいちばん長い日』を描く超大作映画だ。昨年韓国でNo.1ヒットとなった作品らしい。当然だろう。これだけの力作であり、オールスター映画である。だが、日本ではこんなにもひっそりと公開された。それはまぁ仕方ないことかもしれないけど、なんだかもったいない。これは社会派ではあるが、娯楽活劇でもある。  「最後は悪が勝つ」という話は、知らない人が見たらまさかの展開 . . . 本文を読む
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伊吹有喜『娘が巣立つ朝』

2024-08-31 11:25:00 | その他
50代の夫婦とひとり娘。3人の視点から娘の結婚式までの1月から6月までの半年間を描く。  主人公である父は僕より10歳くらい若いから、一世代下になるって、なんだか微妙。初老の夫婦、結婚する娘という配置。でもこれって僕の10年前にあったシチュエーションだ。そう考えたらなんだか面映い。あの頃、近くに住む一人暮らしの(認知症の)母親の介護もしていたから、重なる部分は多い。   . . . 本文を読む
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『炎の肖像』

2024-08-31 07:56:00 | 映画
70年代、藤田敏八監督は低迷する日本映画(にっかつ=日活映画)を牽引し、時代の最先端の作品を作っていた。リアルタイムには少し遅れたけど、ロマンポルノに移行した後も一般映画で、ポルノ映画で、と傑作を連打していた。 これはそんな時代の隠れた一作である。秋吉久美子3部作である『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』の直後に作られた作品。これまでなかなか見る機会がなかったが、これをBS松竹東急がオンエ . . . 本文を読む
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『クロス・ミッション』

2024-08-29 10:54:00 | 映画
韓国版『奥さまは取り扱い注意!』って感じのアクション・コメディ映画。刑事の妻と主夫の夫。だけど夫は元特殊部隊の精鋭。夫の浮気疑惑から、夫の元同僚の犯罪トラブルに巻き込まれて、やがてふたりは大暴れ。たわいない映画だけど、105分楽しめる。  主人公のふたりがいい。ファン・ジョンミン演じるいささか嘘くさい笑顔の主夫である夫と、不貞腐れたような顔して仕事に行く仕事ができる優秀な刑事の妻、ヨム . . . 本文を読む
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『ラストマイル』

2024-08-28 16:47:00 | 映画
まさかの大ヒットらしい。公開前は興業が心配されていたようだが、よかった。これはよくある安易なTVドラマの映画版ではなく、大ヒットした2本のドラマ(『アンナチュラル』『miu404』)を作った監督の塚原あゆ子と脚本の野木亜紀子コンビが放つオリジナル企画だ。骨太なアクション映画を女性(満島ひかり)を主人公にして描くのが女性コンビという布陣。これは今まで日本にはなかったタイプの作品ではないか。アクション . . . 本文を読む
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加藤元『もりのかいぶつ』

2024-08-27 17:43:00 | その他
まるで童話のような語り口だ。ひとりぼっちの6歳、男の子の名前を付けられた女の子のお話。優の母親は家を出ていった。母に捨てられて、父親からも捨てられる。魔女のような伯母のもとに引き取られる。   伯母のもとで育つ。小学校から中学、そして高校と。彼女は強くなりたかった。だから相撲を始めた。女なのに相撲? そんな偏見はここにはない。伯母は自由にさせてくれる。母は何もしてくれなかったのに。父 . . . 本文を読む
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『エターナルメモリー』

2024-08-27 15:41:00 | 映画
認知症を扱ったドキュメンタリーを『83歳のスパイ』を作ったマイテ・アルベルディ監督が手掛けるということだけで充分期待できる。最初のシーンから驚く。ピントが合ってない。ベッドでのふたりの会話が描かれるのだが、ピンぼけのまましばらく続く。もちろんこれは据え置きカメラで仕方ないけど、少し見ていてつらい。認知症の夫は妻のことが誰なのかわからない。彼女は、か「私はあなたの妻よ、」と言うけど。そんな場面から始 . . . 本文を読む
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『箱男』

2024-08-27 13:11:00 | 映画
石井聰亙と永瀬正敏が27年前に作っていた作品が、ようやく完成した。これはドイツで準備してクランクイン前日に撮影がいきなり中止になった作品だ。まさかの出来事である。 それから27年。その間石井は名前を岳龍と変えている。紆余曲折があり、仕切り直してようやく今回の完成に漕ぎ着けた。安部公房の原作を現代に置き換えるのではなく、当時のまま作る。だけどそれは原作に忠実にするということではない。原作を大事にし . . . 本文を読む
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小路幸也『失踪人 磯貝探偵事務所ケースC』

2024-08-27 07:59:00 | その他
これはタイトル通り探偵ものミステリーである。だけど小路幸也だからタッチは軽くて読みやすい。このシリーズはこれで3作目だけど、少し模様替えしているから、気がつかなかった。たまたま図書館の新刊コーナーにあったから手にした。   磯貝は失踪した姉を捜して欲しいという依頼を受けて、調査をするが、なかなか手掛かりは見つからない、というよくあるパターン。ハードボイルドではなくハートボイルド(って . . . 本文を読む
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朝比奈秋『サンショウオの四十九日』

2024-08-26 12:09:42 | その他
『植物少女』の朝比奈秋が芥川賞を受賞した。今回も不気味な話だ。ひとつの体でふたりが生きる。右と左が別々の人間でふたりはそれぞれ人格を持つ。まるでエンタメSF小説のような設定から始まった。いや、まず、その前にお話は彼女たちの父親の話から始まる。父は伯父の体の中で生まれた。もともと3人で生まれてきたが、体はひとつしかなかった。別々の体なら双子とか三つ子ということになるのだが。この話の設定はかなり怖い。 . . . 本文を読む
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ゲキゲキ『短編作品集』 B side

2024-08-26 07:11:00 | その他
昨日見たAプログラム(Aside)が面白かったので、調子に乗ってBも見せてもらうことにした。ほぼ毎回全席完売らしいので無理なら仕方ないけど、というくらいの気分で問い合わせたのだが、ラッキーにもOKだった。よかった。   こちらはAほど刺激的ではないけど、素直に笑える作品が並ぶ。たぶんほとんどの観客はこちらのほうが好きだろう。僕が先にこちらを見ていたら、きっとAは見ない。ここには単純に . . . 本文を読む
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松永K三蔵『バリ山行』

2024-08-26 05:28:00 | その他
今年の芥川賞作品。これを最新の「純文学」作品として受け止め読んでみる。(まぁ、あまり期待はしないけど)僕はあまり芥川賞受賞作品は好きではない。(もちろん一括りして判断するのは無謀だけど)選ばれた作品はあまり完成度は高くないし、とんがってばかりで、中身が薄いというケースが多いからだ。   だけど、これはそんな従来の感じとは一線を画す作品だった。決して読みやすいわけではないけど、この諦め . . . 本文を読む
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ゲキゲキ『短編作品集』A side

2024-08-25 06:25:00 | 演劇
ゲキゲキ2024夏公演のタイトルは実にシンプルに『短編作品集』とつけられている。AB2プログラムで3本ずつ。各80分という上演時間も適切。「7年間で創作してきた短編作品をコメディ中心に集めました」とチラシにはある。きっと自信を持って挑む公演なのだろうと思った。スケジュール的に少し厳しいと思ったけど、見せてもらうことにした。ウイングフィールドを使って小さな芝居を丁寧に見せるという姿勢を買う。そして、 . . . 本文を読む
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浜口倫太郎『コイモドリ 時をかける文学譚』

2024-08-24 13:25:00 | その他
これは楽しい。こんなライトノベルを読みたかった。文学を題材にしながら、ここまで軽くて楽しい。文豪たちの傑作を使って寅さんのような恋をする。しかも『ベルリン 天使の詩』のような設定だ。なんだかあり得ないけど,あり得た。もちろん軽いタッチ(ライトノベルですからね)で、なんとSF風味付け。(時をかける、ですから)取り上げた作品もあまりにポピュラーで、笑える。最初は漱石の『こころ』。最後は梶井基次郎は『檸 . . . 本文を読む
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