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映画・演劇のレビュー

磯崎憲一郎『終の住処』

2009-10-29 21:28:06 | その他
 いかにも芥川賞というような地味で暗い小説だなぁ、と思いながら読み始めたのだが、なんとも言い難い諦めが最初から最後まで貫き、それがこの男の生き方すら示唆するのが、おもしろい。  男は30歳を過ぎて結婚する。もう決して若くはない。熱烈な恋愛とはほど遠く、お互いに何も期待もないまま、結婚する。妻は最初から不機嫌で、彼はなんとなく浮気をする。別に家庭に不満があるとかいうのではない。だいたい最初から何も . . . 本文を読む
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『タイム・クライムス』

2009-10-29 20:52:25 | 映画
 デビッド・クロネンバーグが絶賛したとかいう広告に乗せられてついついレンタルしてしまったのだが、こういう低予算のSF映画は決して絶賛出来るような映画ではない(場合が多い)。ただし、部分的に面白いこともあり、そこがツボに嵌まったら結構嬉しい。でもなかなか難しい。危険を承知でついつい冒険してしまう。  クロネンバーグはこの安っぽさに自分がカナダ時代撮っていたB級映画を重ね合わせて感情移入が出来たのか . . . 本文を読む
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上杉 那郎『おもひで屋』

2009-10-28 23:33:38 | その他
 表紙のジャケットに魅かれて読み始めたのだが、タイトルはインパクトが弱いし、少し心配もしたが、ここまで予感が的中するとは。  読みながらこれは駄目だわ、と思った。安っぽい作り方をしている。安易なドラマは底が抜けているから、少し読めばわかる。19年前にタイムスリップして、自分が生まれる前の両親に何があったのか、を知る、だなんて手垢のついたお話を平気で書ける無神経ぶりも凄いが、それならそれで新機軸で . . . 本文を読む
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『初雪の恋 ヴァージン・スノー』

2009-10-28 22:59:53 | 映画
 こういう映画が現代の日本で作られることに衝撃を受けた。70年代ならまだしも、21世紀にこれはないだろ、と思う。だが、この映画は事実だ。2年前に確かに作られ上映もされた。しかも韓国でも、である。日韓合作映画で、監督は韓国サイドから出てきている。(新人のハン・サンヒ)とても今時の日本の監督はこういうアイドル映画はよう作らないだろう。照れてしまうし、自信を持てないはずだ。商業映画としてもこれは今はとて . . . 本文を読む
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青年団『東京ノート』

2009-10-28 22:46:09 | 演劇
 2004年から2014年へと設定変更したらしい。1994年の初演のとき10年後の近未来を想定したわけだから04年が過去になってしまった以上、設定変更は当然のことだろう。この作品の描く時間は今から10年ぐらい先という漠然とした時間なのだ。これはSFではない。いまからほんの少し先、でも状況は幾分異なる。ヨーロッパでは戦争が起きている。でもここ日本では変わることにない日常が続く。とはいえこの日常がずっ . . . 本文を読む
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大阪新撰組『夜に浸みいる朝がくる』

2009-10-27 23:29:44 | 演劇
 恒例の新撰組アトリエ公演。今回は「ことのは」の関川佑一さんを作家として迎えての会話劇に挑戦する。時代遅れのアングラ芝居を標榜する新撰組がしっとりしたドラマを淡々としたタッチでみせる、はずもない。  「なにをやってもアングラになってしまう(らしい)」と自らチラシに書いてしまう自虐的なところが彼ららしい。それを売りにしたはずの本作なのだが、いろんな意味で興味深い作品に仕上がった。  もっとさらり . . . 本文を読む
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『マンデラの名もなき看守』

2009-10-27 22:42:13 | 映画
 南アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリーがロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。グレゴリーはそこでネルソン・マンデラの担当に抜擢される。黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。妻のグロリアは夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。だがマンデラに初めて会った時から、グレゴリーは特別な印象 . . . 本文を読む
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売込隊ビーム『徹底的に手足』

2009-10-26 22:52:34 | 演劇
 『ずらり200体、海向こうの脅威への威嚇。僕らはそんな戦闘機の整備士。一度として実戦使用されたことがないこの兵器の軋みを徹底的に除去せよ。』  これはなかなか刺激的な紹介文ではないか。上手いので、そのまま引用させてもらったが、少し僕なりにアレンジし直して、そこから話を始めよう。  海に向かって巨大ロボット型戦闘機が配備されている。その様は壮観である。だが、このロボットは実戦で使用されることは . . . 本文を読む
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藤谷治『いつか棺桶はやってくる』

2009-10-23 20:16:06 | その他
 まるで安部公房を読んでいる気分だ。要するにわけのわからない話が有無を言わさずに展開していく、ということだ。独特のテンポが心地よい。  いきなり妻が家出して、次から次へと謎の事件が彼のまわりに起こる。だいたい彼が勤める研究所も怪しいし、そこでの研究がまた、さらに怪しさ2乗。謎のプロジェクト「まむし」ってなんだ? だいたい彼と彼の妻の成り染めがまた怪しさ3乗。この先どうなるのやら、気になる。   . . . 本文を読む
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小路幸也『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』

2009-10-22 21:02:02 | その他
 『東京バンドワゴン』シリーズのスピン・オフ。時代は遡って、戦後すぐの風景の中、勘一のもとにサチがやってきた顛末が描かれていく。このシリーズの誕生編とでもいうべき作品。この不思議な古本屋の様々な謎が解き明かされるファン垂涎の一篇。  この『東京バンドワゴン ビギンズ』は幾分本編とはタッチを異にしている。なんと国家存亡の機密文書を巡るお話なのだ。(とは言えこれは本編にも描かれていた事件なのだが)だ . . . 本文を読む
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『僕らのワンダフルデイズ』

2009-10-21 22:32:33 | 映画
 竹中直人主演映画って久しぶりではないか。彼のようにアクの強い役者は主演としてはなかなか使いにくいはずだ。結局自分が作る映画でしか主演は出来ないなんてことにもなりかねない。最近のビートたけしも同じだろう。  今回の彼の役は、50代のオヤジ。自分がガンだと思い、死ぬ前に自分が本当にやりたいことをやってから死のうとする話。彼はもう一度バンドをしたい、と思う。しかも高校時代の仲間と再結成して、である。 . . . 本文を読む
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エンゲキングXシバイズム VOL.2

2009-10-21 22:25:12 | 演劇
『エンゲキングXシバイズム』と題された企画の第2弾である。「造船所跡地の廃墟じみた室内劇場で、自己満足に徹した4つの短編を上演!」というキャッチコピーのもと上演された作品群はそれぞれ魅力的で、看板に偽りはない。組み合わせの問題で、3作品しか見れなかったが、いずれもよく考えられた短編で、刺激的だった。  ウラナチの『居留守図書館』はワンシチュエーションの不条理劇。台詞も動きもほとんどないまま見せて . . . 本文を読む
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オリゴ党『西には果てがないから』

2009-10-21 22:07:23 | 演劇
 バーチャルな世界で冒険を楽しみながら、そこに自分が生きる意味を見出すための目標をみつけていく。『西遊記』のキャラクターになり現実の砂漠を旅するというこの体験型システムはなんだか古くさい。ゲームの世界に入って冒険するなんていうネタはもうずいぶん昔にはやった今では「古典的なもの」だ。それを敢えて今頃やろうとした意図はどこにあるのか。まずそこから説明してもらいたい。システムは完璧なはずだった。なのに綻 . . . 本文を読む
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『あの日、欲望の大地で』

2009-10-21 21:42:18 | 映画
 イニャリトゥの脚本家として注目を浴びてきたギジェルモ・アリアガの監督デビュー作である。通俗的なメロドラマすれすれのお話を神話的なドラマのレベルにまで高めて見せてくれる。その手腕は確かなもので、それはそれで高く評価されてもいい。だが、ここには大切な「何か」が足りない。だから、見終えて素直には感動できない自分に戸惑うことになる。  理屈としてはわかるけど、これでは人の心の深くにまでは沁みてこない。 . . . 本文を読む
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『さまよう刃』

2009-10-19 21:07:10 | 映画
 いくらなんでもここまで杜撰な捜査を今の日本の警察はしないんではないか?最近の映画は(といっても僕が見た映画だが)『ヘブンズ・ドア』といい『やがて復讐という名の雨』もそうだが、酷過ぎないか。もう少しリアルに警察を描いてくれなくては映画に集中できなくなる。  まぁそれでも前半はまだそれなりに緊張感もあり悪くはなかった。音のない部分とか、なんでもない風景のインサートとか、効果的だと思ったが、寺尾聰が . . . 本文を読む
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