幽霊の話を映画にして、ラブストーリーを作る。そのパターンは『ゴースト NYの幻』が有名だけど、これも同じパターン。もちろん味付けはホラーではない。今放映中のTVドラマ『100万回言えばよかった』もそう。仕掛けが上手くいくと面白い映画になるはず。まるで期待はしないで見たが、なかなかいい。これは低予算の小品だが思いがけない拾い物の1作だ。
この映画は、シンプルな話でほとんどふたり芝居。恋人が出ていっ . . . 本文を読む
これはたまたま手にした本だ。金継ぎを取り上げて、中学生を主人公にするなんて、なかなかないだろう。地味だけど気になるから借りた。やはり当たりだ。とてもいい作品だった。
今まで僕はこの作家を知らなかったが、児童文学の世界で有名な人みたい。たくさんの著作があり、そのほとんどが中学生を主人公にしているみたいだ。あの年頃の不安定な心情をさりげなく、そして繊細に描くのが身上なのだろう。この1 . . . 本文を読む
とんでもない勘違い。タイトルの「おきて」は「掟」だと思っていたのだが、なんと「起きて」だった。このひらがなはなんだか、曲者だ。漢字ならそんなアホな誤解は生じない。でも、あえてひらがな。しかも「おきて!」でもなく、ましてや「起きて!」は当然なく「おきて」である。(しつこい)
このひらがな表記がさかんにスクリーンに投影される。スクリーンというけど、それは下手側に垂れ幕のように掛かる部分だ。その白くて . . . 本文を読む
昨年の最新刊『過怠』があまりに素晴らしかったから、今回文庫になったこの小説も(これも、かなりの大作!)期待できると思い読み始めた。(2019年11月刊行)さすがに『過怠』を超える作品とは言い難い。まぁ、当然だろう。いくら彼女でもなかなか凄いものを連発できないし、できなくてもかまわない。もちろん、つまらないわけではないし、それどころか『過怠』を読んでなかったら、かなり高い評価をしそうなレベルの作品で . . . 本文を読む
初日の午後の回で見てきた。大阪ステーションシティシネマは当然一番大きな劇場他で拡大上映しているから余裕で見ることが出来た。『アバター』並みの3時間の大作だ。(ということは、少し不安)東映70周年記念大作で、織田信長を主人公にした時代劇。今の時代に時代劇、というのも東映らしくていい。大作時代劇はリスクばかりが高くて旨味はない。それでも東映の威信をかけて作るのだから、ヒットが難しくてもやはり時代劇だろ . . . 本文を読む
これは鶴田法男監督が中国に呼ばれて撮った映画だ。2020年作品だがようやく日本でも公開された。彼は一世を風靡したJホラーの草分けだが、中田秀夫の後塵を拝し、なかなか評価されなかったし,真価を発揮できなかった。そんな彼が今回、オール中国人キャスト(メインスタッフは日本から連れて行ったが)で、日中合作ではなく純中国映画に挑む。(原題は『網路凶鈴』)これはちょっとしたチャンスだったのではないか。だから少 . . . 本文を読む
この映画の目の付けどころが実に素晴らしいと思った。こんな題材で1本の映画を作るのか、と感心もした。宣伝のチラシを手にしてそう思った。だからぜひ見ようと思い劇場へ。いつの間にかコンビニから成人雑誌がなくなった理由がこんなアホなことだったのかと教えてくれる。知らなかった。まぁ、それほど興味がなかった、ということなのだろうけど。でも、それによって大変な思いをした人たちは多数いる。成人雑誌ファンや、この映 . . . 本文を読む
エッセイだが小説並みに面白い、と思ったのが先日読んだ三國 万里子『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』。三国さんのあのエッセイの完成度は凄い。そして同じように本作もまた凄い。でもこれはあんな感じ(純文学の味わい)ではなく、こちらはほんわか(中間小説の感触)している。エッセイなのに、実は小説として十分通用するレベル。
第1章の『上京物語』は彼女が漫画家を目指してひとりで東京に出てきた日々の . . . 本文を読む
向田邦子の新刊が盛んに出版される。その都度借りてきて読んでいる。彼女が亡くなられてからもう40年以上経つというのに、である。河出書房新社からこの本が出版されたのは2022年8月。命日に合わせたのだろう。24人の人たちが書いた文章を集めてまとめた。そのいくつかはもうすでに読んでいるものだ。だが、それを1冊にして続けて読んでいくと、改めて彼女の不在が心にしみてくる。どれだけ彼女が愛されたかも。
僕が . . . 本文を読む
なんとこれでシリーズ第8作になるようだ。僕は何冊か読んでいるけど、さすがに全部ではない。途中から読み始めたし、遡るほど熱心なファンじゃない。でも、安心して読めるから新刊が出たら気づくと読む。今回がファイナルとなるようだ。みつばの町に来て8年。郵便配達業務に励む平本秋宏も32歳。
この町で配達を通して出会った町の人たちとのささやかな交流を描くシリーズの完結編らしいお話のまとめ方をする。これまでのエ . . . 本文を読む
Netflixで配信がスタートしたメキシコ映画『ざわめき』が凄い。この映画の話を書きたかったのだが、連続してこれを見てしまった以上これを書くしかない。同じような話の映画があるな、と気になっていた映画である。それがこの『母の聖戦』なのだ。2本とも同じようにメキシコの誘拐ビジネスを描く映画だ。誘拐された娘を探し出す母親の姿を描く、あらゆる手を尽くすがみつからないというところまではよく似ている。だが、こ . . . 本文を読む
こんなモンスターを生んでしまった以上、彼女の人生終わってしまった。14歳の息子は平気で友人を殺す。これはお仕置きだ。だって自分のいうことを聞いてくれなかったから仕方ないよ、と。だが、彼は邪悪な存在ではない。みんなから慕われる。周囲のみんなは彼が大好きだ。だから彼に気に入られたいだけ。たくさんのみんなが彼のもとに集まってくる。彼は得点をつける。彼の友人お気に入りランキング上位になれるようにみんなは努 . . . 本文を読む
Eバーガーの「春のキッズセット」、その5つのおまけをタイトルに冠した5話からなる短編連作だ。前作でさすがにネタが尽きたと思わせたこのシリーズ最新刊である。タイトル通り今回は後日譚。そして新しいスタート。3人目の主人公である新人のエピソードから始めたが、そのあとはこれまでの2話の主人公たちのお話、さらにはふたりの周囲の人物を主人公としたお話も交えての5つのエピソードが綴られていく豪華な別巻仕立て。フ . . . 本文を読む
カラ/フルの新作は3話からなる短編集だ。僕はオダくんの長編が見たいと思っていたので、以前会った時に「どうして長編じゃないの?」なんて言ってしまったけど、本作を見て、彼の短編は実にうまいんだ、と改めて思い出した。ただ前作『海のホタル』を見てこういう人間ドラマを見事に裁けるのか、と感心した後だったから、それをオリジナルで見せて欲しいと思ったのだけど。
今回の短編集の魅力は「詰めの甘さと歪さ」である。 . . . 本文を読む
2時間10分の大作だ。ことさら強調するように「これはフィクションです」と最初に断り書きのように述べるのが怪しい。フィクションではないよ、と勘繰りたくなる。というか、勘繰らせる。チラシにも当日パンフにも書かれてある中古レコード店に行ったらマッサージ店になっていたという話は作、演出の筒井潤の体験談じゃないか、と思う。そこを入り口にしたフィクションなのだろうが、なんだかいろんなところがリアルで、実話をモ . . . 本文を読む