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映画・演劇のレビュー

太陽族×光の領地『イエロースプリングス』

2021-06-30 16:02:30 | 演劇
これこそ演劇だ。こういう緊張感が持続可能な表現が、小劇場演劇の魅力だろう。たっとふたりの役者たちが真正面から向き合いぶつかりあう。90分間、彼らはずっとバトルを繰り広げる。実際殴り合うシーンもある。肉体と肉体はぶつかり合い、骨が削られ軋む。緊張が持続する。弾ける。息苦しい。だから、途中で換気休憩が入るのにはほっとさせられる。これはそれくらいにキツイ芝居だ。だから、素晴らしい。そうすることで、彼らが . . . 本文を読む
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『ARK アーク』

2021-06-30 15:29:49 | 映画
凄い力作だ。石川慶監督の第3作。今回も驚きの作品を見せてくれた。2時間少しの時間が永遠に思えるほど密度が濃い。主人公の135年の生涯が基本、時系列で描かれていく。17歳の彼女(芳根京子)が海で手を伸ばし空を見つめるシーンから始まり、同じ姿で海にたたずむ135歳の彼女(倍賞千恵子)の姿がもう一度ラストでも描かれる。SF映画に分類されるだろうけど、ジャンル映画ではない。これは命の尊厳に挑む作品だ。SF . . . 本文を読む
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一穂ミチ『スモールワールズ』

2021-06-30 15:26:47 | その他
6つの短編からなる作品集なのだが、すべてのエピソードが暗くて重い。いずれの作品もほぼふたりの主人公をどんどん追い詰めていく。息苦しい。彼らが出会い、(再会し)自分たちを見つめなおし、どこにたどり着くのかが描かれる。総合タイトル通りの「小さな世界」から抜け出せるか否か、だ。 独立した短編集だが1話と最後の6話がリンクする。そうすることで一応完結するという作りになっている。もちろん、大事なことはそこ . . . 本文を読む
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『夏への扉』

2021-06-30 13:27:56 | 映画
6月も終わりのこの時期にようやく公開された三木孝浩監督の新作。ハインラインの傑作小説の映画化である。青春映画の騎手である彼にとっては初めてのSF映画になる。従来のパターンとは一線を画す『フォルトゥナの瞳』が少し残念な出来だったので、そのリベンジでもある本作がどんな作品に仕上がったのかとても気になっていたから2月の公開を楽しみにしていたのにコロナのせいでここまで延期が続いた。もう今年の夏に間に合わな . . . 本文を読む
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カラ/フル『海のホタル』

2021-06-27 17:49:13 | 演劇
木下菜穂子が素晴らしい。彼女がこのバカな女を見事に演じた。彼女の弱さと愚かさを客観的に捉えたオダタクミの演出も素晴らしい。『海のホタル』ってこんな芝居だったのかという新鮮な驚きがある。この作品は、主人公であるレイコという女以上に男たちが愚かで、そんな男たちを翻弄することになるはずの彼女が結果的には自分で自分を追い詰めていくことになるのだが、オリジナルであるくじら企画の大竹野演出は彼女に寄り添いすぎ . . . 本文を読む
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Gーフォレスタ『乱歩の嘘』

2021-06-27 16:57:41 | 演劇
Gーフォレスタの最高傑作の再演である。3年前の初演時は、お話の面白さに引き込まれ、そこに描かれる江戸川乱歩像に魅了された。どこまでがほんとうでどこからがフィクションなのかなんて、どうでもいい。でも、実にリアルでここに描かれる乱歩という男こそが本当の彼ではないか、と思う始末だ。子供の頃に読んだ少年探偵団、20面相シリーズや、高校の頃に読んだ『一寸法師』や『芋虫』『陰獣』、そして『パノラマ島奇譚』。怖 . . . 本文を読む
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劇団未来『書く女』

2021-06-27 12:19:58 | 演劇
なんてストレートなタイトルだろう。何の工夫もない。シンプルすぎてこれでは観客は興味をそそられない。でも、あえてこのそっけないタイトルを永井愛は選んだ。そこには彼女の覚悟が秘められている。それでいい、というか、それがいい。それだけでいい。 樋口一葉を描く。井上ひさしの傑作『頭痛肩こり樋口一葉』とはもちろんまるで違うアプローチだ。劇団未来のしまよしみちは、このお話の素直さに心惹かれたのだろう。劇団未 . . . 本文を読む
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『地下鉄道 自由への旅路』

2021-06-27 11:03:37 | 映画
こんな凄い作品と出会えてよかった。僕はTVシリーズはほとんど見ないのだけど、たまたまこれが『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督作品だと知り、とりあえず1本だけ、と思い見始めたのだけど、凄すぎた。4日間で見た。一気に見るのはきついし、勿体ない。すごい力作である。見るだけでクタクタになる。 これは通常のTVドラマではない。完全に映画の作り方をしている。もちろん、映画だとかドラマだとかそんなのは . . . 本文を読む
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劇団大阪シニア演劇大学3次生『ジュリエットたち REVENGE』

2021-06-24 10:53:56 | 演劇
昨年の4月に上演されるはずだった。何度となく延期され、今年の5月、3度目の延期後、5月15日に無観客での上演をビデオに収録して、ネット配信で公開することになった。僕は届いたDVDによる鑑賞だったが、本番さながらの緊張感で見ることにした。劇場にいるように見たい。本来の形に近い鑑賞をすることが作り手の苦労に報いることになるのではないかと思った。ちゃんと劇場で上演したかったはずだ。そんなことは当たり前。 . . . 本文を読む
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谷 瑞恵『神さまのいうとおり』

2021-06-23 17:24:29 | その他
50代の男が仕事をやめて主夫になる、というストーリーに心惹かれて、(自分もこの4月から仕事をやめて主夫をしている)読み始めたのだが、主人公はこの男ではなく、高校生の娘のほうで、田舎の祖母のもとに引っ越した家族のお話だった。期待したようなお話しではなかったけど、反対に期待以上に楽しいお話でそんな意外性に感謝。自分の想像とまるで違った展開にまんまと乗せられた。娘は最初は父親のことを恥ずかしく思うが、与 . . . 本文を読む
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『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』

2021-06-23 17:09:17 | 映画
3大スター夢の共演、なんていうキャッチフレーズで宣伝が出来たような時代はもう過ぎて、今ではこんな豪華キャストの映画もひっそりと公開される時代になった。でも、じいさんになった彼らは実に元気だ。デ・ニーロはコメディに活路を見出して、今回も実に楽しそうに演じる。 老人になってもう忘れ去られたハリウッドスターを担ぎ出して復活させる映画を作る、なんていうお話。でも、実は映画を作る気なんかなくて、主演スター . . . 本文を読む
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『モータルコンバット』

2021-06-23 16:24:40 | 映画
どんなお話なのか全く知らないし、そんなことはどうでもいい。ポイントは真田広之がこの映画に出たこと。しかも、アクションをするということ。それだけで、この映画は見るべき価値がある。60代に突入する(した?)彼がハリウッドのアクション映画にメインキャストで参加したのは、それだけで意義がある。どういう形でこの映画とかかわるのかを確認したかった。アクションスターとしてキャリアをスタートした彼がやがてアクショ . . . 本文を読む
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『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』

2021-06-23 13:48:24 | 映画
ようやくこの映画を見ることができた。この映画だけではない。続々と公開延期になっていた作品が上映されている。さまざまな困難を乗り越えて、いくつもの映画がよくやく日の目を見る。でも、現状は過酷だ。本来なら大ヒットが可能だったはずの作品が十分な興行成績を収めることもなく劇場から消えていくというパターンも続出している。この先も映画界にとっては試練が続く。(もちろん、コロナ禍においては多かれ少なかれ、どこで . . . 本文を読む
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『ヒノマルソウル』

2021-06-23 13:12:36 | 映画
こういう「感動の実話もの」は好きではない。感動の押し売りになる可能性が高いからだ。実話だから、嘘がつけない。しかも、モデルである実在の人物たちが生きているから、彼らが納得しないような映画は作れない。いろんな意味での制約が多すぎて身動きが取れない映画になる。実話に寄りかかり、映画としての冒険が出来ない。いろんな意味で難しい題材なのだ。 「舞台裏の英雄たち」というサブタイトルも好きじゃない。彼らの支 . . . 本文を読む
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『キャラクター』

2021-06-18 19:34:18 | 映画
とても楽しみにしていたのだが、細部におけるリアリティがないから集中できない。無名の漫画家志望がいきなりヒット作を作るのはいいけど、たった1本のヒットですぐにあんな贅沢な暮らしが可能になるのだろうか。しかも、単行本はまだ3冊くらいしか出版されていない、というか、あれだけ短期間で3冊って可能なのか。よく知らないけど、週刊誌の連載だから1冊の分量になるのには2か月くらいはかかるのではないか。事件から何か . . . 本文を読む
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