習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

私見感『並行戯曲』

2013-10-31 22:25:52 | 演劇
 前作『進化戯曲』に続いて、今回も基本的には同じスタイルだ。円盤型のスタイリッシュで、おしゃれなチラシ同様、本編もスタイリッシュでおしゃれな舞台だ。とても素晴らしい。今回は2人1組になり、4組8名の役者たちがアトランダムにセットになって、いくつかもパターンの対話劇を繰り返す。スポットの当たった2人以外の6名も同じようにそのシチュエーションを行う。舞台では並行して4つの芝居が同時進行していることにな . . . 本文を読む
コメント (1)

ザ・ブロードキャストショウ『Sagittarius』

2013-10-31 22:00:46 | 演劇
『Paradise Lost』シリーズの3作目、ということらしい。エピソード1から始まり、時間はどんどん遡行していく。これはこの物語のすべての始まりを描く前奏曲ということらしい。ちょっとした大河ドラマだ。スケールの大きなサーガなのだが、単独でこの作品を見た場合、少し物足りない。このスケールの大きな話を立ち上げるだけのダイナミズムが感じられないからだ。  人間とドール(アンドロイド)とが共存する . . . 本文を読む
コメント

『人類資金』

2013-10-29 22:50:43 | 映画
阪本順治監督最新作。4ヶ国をロケした超大作だ。M資金の謎を追ってさまざまな人たちが暗躍するサスペンス大作。手に汗握る、と言いたいところなのだが、なんだかよくわからない。何が起きているのか、どうなっているのか、あまりに複雑すぎて、僕にはそのへんの因果関係が見えてこないんですが、大丈夫か、と心配になる。でも、あれよ、あれよと見守るしかない。小説じゃないのだから、止まってくれないし、戻ってもくれない。 . . . 本文を読む
コメント

雪舟えま『バージンパンケーキ国分寺』

2013-10-29 22:49:31 | その他
 少女の見た夢を描くファンタジー。なんだかとても幸せな気分にさせられる。現実の世界は、上手くいかないことばかりでがっかりしたり、疲れてしまったりすることばかりなのだが、でも、人はそんな現実の中で傷つきながら生きていくしかない。わかっているけど、しんどい。だからどこかに逃げ場所が欲しい。それはささやかなものでもいい。ただ、そこにいるだけで、ほっとする。自分だけの居場所だ。  みほにとってそれがこの . . . 本文を読む
コメント

『クロニクル』

2013-10-25 21:38:00 | 映画
 驚きの当日入場料1000円である。特別料金とあるから、割高なのか、と思ったらなんのなんのの低価格。どうしてこういうことにしたのかは知らないけど、これからもこういう試みなら大歓迎だ。いっそのことすべての映画を当日1000円にして貰えたならかなりうれしい。まぁ、それはなかなか難しいことだろうけど。  さて、安かろう悪かろうが普通のパターンで、実は少し反対に警戒したのだが、見終えた映画は、期待を遥か . . . 本文を読む
コメント

『恋するリベラーチェ』

2013-10-25 21:37:36 | 映画
宮崎駿に続いて、映画からの引退宣言をしたスティーブン・ソダーバーグ監督の最新作。今年に入ってもう3本目だ。しかもこの数ヶ月のことだ。怒濤の新作ラッシュである。しかも、これは引退後の作品。えっ、と思うけど、そうなのだ。最後の作品という触れ込みだった先日の『サイド・エフェクト』公開からまだ何カ月も経ってない。  でも、それは僕らをだましているのではなく、これは引退宣言後の第1作だ。要するにこれは日 . . . 本文を読む
コメント

椎名誠『風景は記憶の順にできていく』

2013-10-25 21:23:24 | その他
椎名さんは自分の人生の幕引きに取り組んでいこうとしているようだ。先日の死についてのエッセイ(『僕がいま、死について思うこと』)に続いて、今回は記憶についてのエッセイである。『風景進化論』でやったことを今一度自分のこれまでの人生を振り返るためにやり直していく。これはノスタルジアではない。もっと切実なものに見えるのが切ない。 まだまだ若いのだから、もっと新しいことに挑戦すればいいのに、なんて言わ . . . 本文を読む
コメント

『危険なプロット』

2013-10-23 21:17:01 | 映画
 フランソワ・オゾンの新作はなんともとんでもない内容で、あきれる。どん引きしてもいいような話だ。ありえない。でも、それをありえさせるのが、オゾンだ。しかも、それをユーモア交えて描く。なんだ、これは! と思う。  こんな話だ。国語教師が宿題に出した作文を読む。大多数は箸にも棒にもかからない駄文ばかりなのだが、その中にちょっと目を引くものがあった。彼はその生徒を個人的に呼び出し作文指導することになる . . . 本文を読む
コメント

遊劇体『往生安楽国』

2013-10-23 21:13:24 | 演劇
 キタモトさん久々のオリジナル台本による新作。これは『闇光る』からスタートした大阪南部の山あいの町、ツダを舞台にした連作の最新作でもある。  役場の3人が、ツダにある標高400メートルの雨恋山、その登山道の調査のためにやってきた。だが、途中で道に迷う。登山道は荒れ果てていて機能しない状態だったことも、影響した。1時間で山頂までいけるはずなのに、3時間半もかかった。ようやく山頂に辿り着いた時には、 . . . 本文を読む
コメント

犯罪友の会『ゆづり葉』

2013-10-23 21:10:03 | 演劇
 久しぶりに犯友の野外劇を見た。とても懐かしくて優しい。そうそう、こういう感覚。なんだかいい気分。今の時代に失われつつある世界がここにはある。派手なスペクタクルではない。(昔の犯友はそうだったけど)とても地味でひそやかな世界だ。今の犯友が目指すのは、路地裏の人と人とが寄り添いながら生きている世界だ。それは劇場での公演も同じ。以前のような狂気は影を潜める。  とても丁寧に作られた路地裏の一角の風景 . . . 本文を読む
コメント

乃南アサ『いつか陽のあたる場所で』

2013-10-23 21:07:29 | その他
読む本がなくて、たまたま手に取った。刑務所から出てきた2人の女が、下町で(谷中)ひっそり暮らすさまを描いた中編連作スタイルの長編小説。4話からなるのだが、この感じならどこまでも続けられることができる。  7年間も服役していて、20代の大半を塀の中で過ごした芭子は、普通に社会生活が営めるかどうか、どきどきしている。過去を知られたくはないし、知られると、もうそこでは生きていけないと恐れる。祖母の残 . . . 本文を読む
コメント

『キッズリターン 再会の時』

2013-10-21 22:13:13 | 映画
 北野武監督の青春映画の傑作『キッズリターン』の続編だ。何故、今頃これが映画になるのか、まるでわからない。興行的に成功するはずもない。しかも、北野武監督がやりたいと望んだのなら、まだ理解できるが、そうではない。彼は製作にタッチしていない。では、なぜ?  10年の時を経て、シンジとマサルが再会する。主役は安藤正信と金子賢から、平岡祐太と三浦貴大にバトンタッチされる。10年後ならオリジナルキャストで . . . 本文を読む
コメント

石井光太『東京千夜』

2013-10-21 21:53:41 | その他
先日映画化もされた『遺体』の石井光太によるエッセイ風ノンフィクション。実を言うとこの人の本を読むのは初めてで、あの映画も見ていない。たまたま図書館で手に取った。あまり期待せずに読み始めたのだが、読みながらとても嫌な気分にさせられた。それはこの本が不快なのではない。描かれることがいずれもしんどいことばかりで、救われないことが原因なのだろう。だが、それだけではない。彼が取材とかで、自分が出会ったさま . . . 本文を読む
コメント (1)

ON LINE『真夜中のカウガール』

2013-10-20 09:40:25 | 演劇
「韓国人俳優と日本人俳優が共演する劇団を目指して」立ち上げられた。その試みがまず興味深い。まず最初に役者ありきなのである。そこから芝居を立ち上げる。  阿倍野区民センター大ホールで公演する。だが、大ホール自身を使うのではない。なんと舞台だけで賄う。どういう経緯でこういうことが可能になったのかは、わからないけど、なんとも不思議な空間だ。今までも何度か舞台上劇場は体験しているけど、今回は実にシンプ . . . 本文を読む
コメント

『R100』

2013-10-20 09:31:07 | 映画
 こんなにも自虐的な映画はない。しかも、それをギャグにしている。だが、全体のタッチはとても重い。バカバカしいと笑い飛ばすには、痛すぎる映画だ。この作品は、昭和の重苦しい空気を全身から充満させている。時代背景は特定されない。だが、明らかに今ではないほんの少し前の日本。昭和時代なのだ。セピアトーンのカラーは懐かしさではなく、やるせなさを募らせる。高度成長期に突入し、この国が安定し、豊かになっていった時 . . . 本文を読む
コメント