先週の「劇団有遊人」に続くカナリア条約の若手支援プロジェクト参加作品。これがとても面白くて、期待通りの作品だったことが嬉しい。まだまだ若手でこれから面白い芝居を作ってくれそうな才能がたくさんある。この企画でそういう集団を発掘して欲しい。
これも近大の劇集団のようだ。今、関西の小劇場を支えている才能は一時期の大阪芸術大から完全に近大にイニシアチィブが移ったようだ。恐るべし近大。というのは、冗談 . . . 本文を読む
これは四世鶴屋南北の『桜姫東文章』と山東京伝の著作を原作とするらしい。映画の最後のクレジットで知った。もちろん、そんなことが大事なのではない。このバカバカしいにもほどがある映画が、そういうところにインスパイアされてあることがおもしろい。歌舞伎や黄表紙、洒落本なんて江戸時代にはゴシップ本でしかなく、荒唐無稽な庶民のための興味本位の講談なのだ。ただ面白ければそれだけでいい。だからエロ、グロ満載で、理 . . . 本文を読む
吉田修一の原作は『悪人』の後の書かれた作品としては、なんだか物足りない。だが、そんな淡さが彼の本来の持ち味で、『悪人』はの方が異質なのだ。そんな原作をもとにして作られた大森監督によるこの作品は原作にはなかった粘つくような重くて暗い情念がある。2人の道行きのシーンが延々と描かれる。圧巻である。映画は原作とお話は同じなのに、感触はまるで違う作品になった。そして、それだから面白い。
これは犯罪を . . . 本文を読む
今回の太陽族は岩崎さんのオリジナル台本ではない。こういうことはめずらしい。しかも、若手作家の初長編ということだ。想流私塾で岩崎さんに師事した西史夏さんの作品。岩崎さんは彼女の個性を尊重し、彼女の世界観に寄り添うように芝居を作ろうとする。作品としてはいささか物足りない。だが、それを強引に自分の世界観の中に引き寄せることはしない。そんなことをするのなら彼女に書いてもらった意味はない。だが、彼女の世界 . . . 本文を読む
劇場公開時はちょっと気になっていたのだが、例によって見逃していた1作だ。DVDになった時にはもう興味を失い、今回BSプレミアムでやっていたので、たまたま時間も合ったため見ることにした。最初はどうしてこんな辛気臭いコスプレ映画を観なくてはならないのか、と辞めたくなったが、我慢して最後まで見た。
運命に翻弄される美人姉妹のお話なのだが、なんかこういうのって嫌い。彼女たちは国王の子を産むための道具 . . . 本文を読む
短編連作で、ピアノの調律師が主人公。(タイトルそのまま) 心に傷を抱えた彼が、自分の本来の人生から逃げて、ただ生きているだけの日々を描く。仕事でさまざまなピアノに出逢う。同時にそのピアノを所有する人たちとも。彼(彼女)たちのピアノへの想い、もちろん自分自身の抱える想いもそこには反映される。ひとつひとつのエピソードが主人公である彼に影響を与えていく。
やがて、静かにゆっくりと変わっていく。はず . . . 本文を読む
普段はエッセイと評論については、読み流して、ここには書かないのだが、今回の2冊については、なんだかとても書きたくなった。大好きな角田光代さんと椎名誠さんだから、というわけではない。今の自分の気持ちにド・ストライクだったからだ。もともと、僕はこの2人の考え方が好きだし、だからその膨大な著作のほぼすべてを読んでいるのだが、なんだか今回は区切り、のようなものをそこに感じてしまった。
69歳になった . . . 本文を読む
これはとても気になっていた映画なのだ。劇場公開時、少し怖くて行けなかった。(ホラーが怖いのではない。もちろん。)同じ時期にダニエル・クレイグは007の新作が公開されていて、「ダニエル2本立じゃん」なんて思っていた。でも、行かなかった。(007は公開初日に見たのに)
ジム・シェリダンがホラー映画なんかを撮る。しかも、主演は先にも書いたようにダニエル・クレイグだ。上映時間は92分。なんだかこれは . . . 本文を読む
ウディ・アレンの3本前の作品である。今劇場で公開中の大傑作『ローマでアモーレ』は今年の正月、飛行機の中で見て狂喜乱舞した。こんなにも面白い映画をたまたま見ちゃったよ、しかも、日本では公開されてないし、と大喜びした経緯はこのブログでも書いた。大体正月パリに行った理由はウディ・アレンの前作『ミッドナイト・イン・パリ』を見てしまったからだ。パリになんか、行きたくもなかったのに、あの映画を見て、夜のパリ . . . 本文を読む
戦争のころのあれこれなんかもう散々いろんな映画やTVで見て、小説でも読んでるから、そんなのを窪美澄に書いてもらわなくてもいいよ、なんて思いながら読み始めた。不遜でした。
第1章は、2011年3月11日に75歳だった老女が主人公。彼女の戦争体験が描かれる。それがもちろん3・11と重ねられる。震災と戦争は違うよ、なんて言わない。今から始まり、時間は遡行していく。少女の頃。戦争があった。戦争は彼女 . . . 本文を読む
思いがけない映画に出会うと、なんだか得した気分になる。正直言うとまるで期待していなかった。海外ミステリーの翻案映画化は、設定の変更がうまくいかなければ、つまらなくなる。しかも、うまくいっても、それが作品の本質ではない。どうしても嘘臭くなる場合が多い。よく出来ている小説である場合には余計にそうなる。リアリティーが損なわれるのだ。
この小説もかなり嘘臭い。だが、お話の面白さと、役者たちの熱演から . . . 本文を読む
なまいきなこ作、演出、主演の一人芝居。30分の短編だ。ひとりの女の子の日々を描く。小学1年生からスタートして6年生まで。両親の離婚、友人(?)の自殺。今日の献立。大きなことから小さなことまで、さいころが決める。偶数、奇数で話の展開が変わる。
だが、この芝居が面白いのは、そんな仕掛けではない。10分の休憩を経て、同じ芝居が役者を変えて演じられる。あべ川つまるヴァージョンだ。ほんの10分前に見た . . . 本文を読む
なんて大胆なタイトルだろうか。雪降る中、ある場所に閉じ込められた女たち。彼女たちはここである男がやってくるのを待つ。彼は5人(彼女たちの世話をする女も含めると6人になる)の愛した男だ。彼女たちは彼のためにとんでもないことを仕出かした。もう後戻りはできない。だが、いつまで待っても彼は来ない。じりじり追い詰められて行く。だんだん疑心暗鬼の状態となる。
彼が本当に愛したのは、この5人の中の誰なのか . . . 本文を読む
1920年代を舞台にしたミステリー。丸尾さんお得意のエンタメ芝居なのだが、実はそれだけではない。これは久々に震災を扱った作品なのである。阪神大震災の直後真正面から自分たちの問題として震災を取り上げた彼が今再び震災に挑む。しかも、今回はミステリーという今のGフォレスタ定番スタイルの中で、エンタメ作品として提示するのだ。今の自分のフィールドでの様々なアプローチのもと、それを見せようとする。
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きづがわ創立50周年記念公演の第二弾。とても力のこもった作品だ。ダイキンによる大量解雇を扱い今彼らが置かれている現状をドキュメントする。ノンフィクションであるということより、リアルタイムの現在進行形の実情を丁寧に伝えることを第一とする。これは他人事ではなく、我々の置かれた問題なのだ。ダイキンだけでなく、こういう理不尽が日本中でまかり通っている。弱者は泣き寝入りするしかない。だが、ただ言われるまま . . . 本文を読む