習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『きみと、波にのれたら』

2019-06-28 23:02:45 | 映画
とてもありきたりな映画で、あっさりした映画でもあり、ここには驚きはない。でも、とてもここちよく、このありふれたラブストーリーは流れていく。恋の始まり、2人の幸福な日々、そして突然のお別れ。彼の死から始まる悲しいお話。でも、驚きの奇跡の再会から始まる第2章。そのまさかの展開も、驚きではなく、映画ならありえそうなよくある展開。そんな突っ込みどころ満載のストーリーをただただ素直に受け入れてこの96分の至 . . . 本文を読む
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『嵐電』

2019-06-28 22:33:40 | 映画
これもまた旅の映画だ。京都という不思議な場所を舞台にして、3組の男女が恋をする。たぶんそんな話だったような気がするけど、定かではない。なんだかよくわからない映画なのだ。面白いといえば面白いけど、よくわからないし、メリハリのない展開はドラマとしてつまらないという感想を持っても仕方ない。 森見登美彦の小説のような幻想に近い、だけど、鈴木卓爾監督は嵐電という不思議な電車を通して、京都を日常の世界から幻 . . . 本文を読む
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『旅の終わり世界の始まり』

2019-06-28 21:57:43 | 映画
この不思議な映画を見終えて、ためいきをつく。それはつまらないのではなく、このなんともいいようのない感覚に魅了されたからだ。現実の世界からその先にある世界へと導かれる。そして、このリアルな幻想には心当たりがある。これが旅だ、 旅をしていて楽しいのはそんな自分の知らない世界に出会う瞬間だ。レポーターとしてウズベキスタンにやってきた彼女は、仕事を終えた後、ひとりで町に出る。ことばもわからないし、バザー . . . 本文を読む
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『海獣の子供』

2019-06-27 09:59:01 | 映画
いったいここから何が始まるのだろうか、先の読めない展開がドキドキ感を高める。14歳の少女のひと夏の物語なのだけど、冒頭の小さな事件(夏休みの初日、クラブでチームメイトにケガをさせたことで、クラブを謹慎させられる)からスタートして、スケールの大きなお話へとシフトしていく。2人の少年との出会い、そこから壮大な冒険が始まるのだが、そんなお話が、よくあるパターンへとシフトしていかないのだ。彼女と一緒になっ . . . 本文を読む
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劇団往来『ナイル殺人事件』

2019-06-27 09:16:41 | 演劇
アガサ・クリスティーのミステリーを取り上げるのなら、なんでオリエント急行ではなく、ナイルなのだろうか。まず、そんなことを思った。映画化作品ではシドニー・ルメットによる『オリエント急行殺人事件』が一番有名だが、あの時の2本目として、この『ナイル殺人事件』が映画化されたように、数年前のリメイクの成功の後、今回もこのナイルが映画化される。だから、まずオリエント急行から、と思うのだが、でも、往来は『ナイル . . . 本文を読む
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Unit out『ツイノスミカ』

2019-06-27 08:46:35 | 演劇
松山から来阪しての公演。でも、まったく気負いはない。この自然体、等身大がこの集団の持ち味なのだろう。70分の芝居はさらりとした感触で、あっけなく終わるのだけど、そこが魅力。登場人物はたったの4人。主人公の青年を通して、小さなお話が綴られる。作、演出の玉井江吏香は彼の日常をさりげなく追いかけるだけ。彼の目線の先にいる3人も同じ。何も説明はしないけど、そこに彼らが確かにいる。   地方の . . . 本文を読む
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『町田くんの世界』

2019-06-22 22:22:24 | 映画
石井裕也監督の最新作。昨年の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』に続く作品だ。あの作品の高校生版だったりしたらどうしようか、と期待した。今更彼がキラキラ青春映画(もう死語)を作るわけではないから、じゃぁ、少女漫画を原作にして、高校生たちの恋愛模様を通して何を見せるのか。興味津々だった。町田くんと猪原さんを演じる新人のふたりが初々しい。それだけでもこれはふつうの青春映画ではない。 しかし、それだけで . . . 本文を読む
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Gフォレスタ『偉大なる落伍者』

2019-06-22 22:19:01 | 演劇
  昨年の乱歩に続き、今年は安吾である。期待せずにはいられない。丸尾さんがどんな安吾を見せてくれるのか、従来のイメージを払拭し、新鮮な感動を与えてくれるものとドキドキしながら、劇場に向かう。   セットは昨年を踏襲する。向きだけを変えての対面舞台だ。この作品が続編としての立ち位置にあることを指し示す。では、どんなアプローチを見せるのか、お手並み拝見。テンポがよく、どんどん . . . 本文を読む
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劇団大阪『ハイサイせば』

2019-06-22 22:14:11 | 演劇
  作品はとても小さなお話としてまとまってある。それでいい。このお話を大々的なメッセージで押し出すと、つまらなくなる。ささやかなお話でいいのだ。彼ら4人が体験したある日のできごと。戦時下、海軍省の一室を舞台にして、2人の津軽出身の男女と、2人の沖縄出身の男が、訳もわからないまま寄せ集められて、秘密の作戦に従事させられる。何のために、どういう理由で選ばれたのかもわからないまま、ここに連れ . . . 本文を読む
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『ゴジラ キングオブモンスターズ』

2019-06-15 19:55:17 | 映画
期待の新作ゴジラ映画はなんと東宝チャンピオン祭りだった。なんですか、この安易なお話は。もう荒唐無稽で子供だましで、バカバカしい展開に大喜びしながら見る。マジないわぁ、と思いつつ、これだけの予算を使いながらこんなにもチープな話で、でも、もうやりたい放題してて、もっとやれ、もっとやれ、と応援したくなる。これがハリウッド映画だというところに驚く。オタクの作ったマニアックな怪獣映画。ラストシーンは怪獣ラン . . . 本文を読む
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『ウィーアーリトルゾンビーズ』

2019-06-15 19:18:05 | 映画
13歳の少年が両親の死を通して、旅に出る。火葬場で出会った同じ境遇の3人の男女。彼らは同じ時に同じように両親を同時に死なせている。今、ここで焼かれている最中。そんな都合のいい設定はふつうない。そんな同世代の4人はこの火葬場から抜け出して旅に出る。 でも、行く当てはないから、家に帰る。それでは旅じゃないじゃん、という突っ込みを入れるしかない展開。さらには順番に4人の家に行くとか。ふつうの映画のよう . . . 本文を読む
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 額賀澪『イシイカナコが笑うなら』

2019-06-15 18:38:30 | その他
今の自分の気持ちに近い小説ばかりを読んでいる。たまたま手にした小説がそういうものばかりになるのは、意識的に選ぶのではなく、(だって選択の余地はないから)ほんとうに偶然なのだ。僕がたまたま図書館に寄れる時間に新刊コーナーで並んでいた本というのが、選択の理由だからタイミングが合わなければたぶん永遠に読まない。ほんとうにたまたま出会えた。 31歳の高校教師が主人公だ。熱心な先生で、生徒からも慕われてい . . . 本文を読む
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『空母いぶき』

2019-06-10 20:48:32 | 映画
  この大作映画がよく出来ているのは、これが単なる娯楽アクション映画ではなく、政治的な問題を扱うからでもなく、(もちろん、その2つの案件をちゃんと満たしている)これがふたりの男の生き方を対比させながら描いた点にある。群像劇であるにもかかわらず、主人公は同期の西島秀俊と佐々木蔵之介に焦点が当てられる。自衛隊に入り、お互いエリートコースを歩み、空幕と海上と別の部署に入った彼らが艦長と副艦と . . . 本文を読む
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『小さな恋のうた』

2019-06-10 20:20:31 | 映画
今はこういう青春映画が作られる。一時期はやったキラキラ青春映画はすたれた。なのに、東映は懲りずに作る。東映はなぜか音楽をテーマに据えた高校生による「学園もの」も作る。散々作られた少女マンガを原作にした恋愛ものではなく。もちろん東宝のまねをしてその手の映画も作ったけど、まるでヒットしない。だから『キセキ』を当てた実績に則り、こういう映画に手を出す。そしてまた失敗する。今年は『愛唄』に続いての興行的敗 . . . 本文を読む
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『長いお別れ』

2019-06-09 19:55:10 | 映画
認知症を扱いながらとても前向きな姿勢を貫く映画。でも、現実はとても厳しく、重くて暗い映画になりそうな題材だが、そうはさせない。でも、それをファンタジーして描くわけでもない。現実を踏まえてその中で、どう忘却と向き合ていくのかがちゃんと描かれる。そこがいい。 記憶を失っていく父親(山崎努)の内面には踏み込まない。介護にあたる妻(松原智恵子)にもシフトしない。では、どこに? というと、視点は2人の娘た . . . 本文を読む
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