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映画・演劇のレビュー

空の驛舎 『かえりみちの木』

2018-03-23 22:23:40 | 演劇
  白くて太くて大きな木が舞台の中央に、どん、とある。そして、そのまわりに3つのベンチがあるだけ。2時間の芝居はフラットでなだらかな曲線を示す。変わらないのに、少しずつ変わっていく彼らの想いが、静かな会話劇として綴られる。   とてもストレートで気持ちのいい芝居。言いたいことが直で伝わってくる。もちろんここには明確な答えなんてない。そんなもの、どこにもないかもしれない。長 . . . 本文を読む
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原田マハ『たゆたえども沈まず』

2018-03-23 22:08:01 | その他
  いつものアート小説だ。だが、話の作り方は少しいつもとは違う。今回はゴッホを主人公にする。フィンセントとテオの兄弟と浮世絵をフランスに広めた林忠正とその助手重吉、彼ら4人の話として綴っていく。テオと重吉のふたつの視点を通してお話はゆっくりと展開していく。1886から91年までの5年間の軌跡を描く。ストーリー展開は時代を追う。正攻法のドラマ作りだ。   その中で描かれる4 . . . 本文を読む
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あうん堂『五軒町商店街寄合会』

2018-03-21 21:33:20 | 演劇
  深津篤史の傑作戯曲の再演。桃園会では上演していない。外部書き下ろし作品で、いつもの深津作品とは少しタッチが異なるのだが、この単純さと、このわかりやすい構造なのに、結局はいつもの深津世界を表現し、笑えるのに怖いという娯楽作品の用件も満たしているという強者。それをあうん堂の杉山晴佳がなんだかとてもスタイリッシュに演出してみせる。役者たちの個性が際立つ。そんなキャスティングを目指した。こ . . . 本文を読む
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関口尚『サニー・シックスティーン・ルール』

2018-03-21 21:30:12 | その他
  耳の不自由な女の子がカメラで生きていこうとする姿を描く。耳の分まで目で補い、目によって世界を表現することで、生きていく力を見いだす。そんな女の子にひっぱられて、今まで言葉で世界を見てきた男の子が同じようにカメラで世界を切り取り表現するという術を手に入れる。言葉の世界(文学)で挫折した彼はカメラという映像と出会い、しかも、ムービーではなくスチルで、世界を切り取り、自分を表現することを . . . 本文を読む
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『北の桜守』

2018-03-21 21:27:46 | 映画
  1970年代を舞台にして60代の女性、という微妙な年齢設定をする。それを吉永小百合に演じさせる。この映画は彼女が初めて老人役をする、という画期的な映画なのである。そかも、アルツハイマー病を患う。   これまで網走でひとり生活をしてきた。だが、認知症になり、どうしようもなくなる。札幌で暮らす息子(堺雅人)に引き取られて都会暮らしを始めることになる。だが、そこでの生活は当 . . . 本文を読む
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『ダウンサイズ』

2018-03-18 22:46:54 | 映画
  どうしてこんな映画を『アバウト・シュミット』や『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペインが撮るのだろうか、と疑問に感じた。彼がメジャーの娯楽大作映画を手掛ける。しかも、ファミリー向けのSF映画だ。主演はマット・デイモン。人間が17センチになって生活する世界の話、なんて。   だが映画を見ていろんなことに納得する。これは確かに彼の映画なのだ。まるでメジ . . . 本文を読む
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神原組プロデュース『優呼〜やさしき呼び声〜』

2018-03-18 22:30:52 | 演劇
  神原さんにはめずらしい再演ものだ。この3月で閉鎖されるザ・九条の閉幕プログラムの一環としての1本。彼女が敢えてこの作品をここに持ってきた意図は明白だ。終わっていくことへの最大限の拍手を送る。死は負けではない。生きたことの証だ。同じように小屋を閉めるのも、敗北ではない。たった5年間ではなく、5年もの時間を劇場として生きたこと。そのことへの最大限の賛辞を込めて、この作品を贈る。 ザ・ . . . 本文を読む
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『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2018-03-18 22:27:32 | 映画
  とてもつらい話だ。傷みと向き合えない。一度はここから逃げ出したのに、再び戻らなくてはならなくなる。兄の死によって、ひとりになった甥っ子の後見人に指名される。忌まわしい記憶しかないマンチェスターに帰る。彼に何があったのかは、なかなか明らかにはならない。前半はそこが明確にならないまま、話が進行していく。ひたすら目の前の現実から逃げようとする彼の姿を追いかける。短い描写でインサートされる . . . 本文を読む
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大阪新撰組『遠くの遠くの、遠くの空』

2018-03-18 22:26:33 | 演劇
  ついに南田信吉作、演出作品の登場である。彼が大阪新撰組の座長に就任してから、幾星霜、待ちに待った真打ち登場である。なんて、いうのは嘘だ。そんな気合いの入ったものではなく、(要するに、渾身の力作ではなく、)肩の力の抜けた小さな作品を彼が提示するのがうれしい。それは自信のなさではなく、大人の余裕だと思う。アトリエでの公演というのもいい。でも番外編ではなく、劇団としての本公演だ。まぁ、そ . . . 本文を読む
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林田鉄+あみゅーず・とらいあんぐる『SOULFUL DAYS 逆縁』

2018-03-18 22:24:56 | 演劇
  ザ・九条のオーナーである林田鉄による私小説をリーディーング・ドラマとして舞台化した。不慮の事故で亡くなった彼の妻を描いたノンフィクションである。ラストの妻への手紙の部分は林田さん自身が読む。そうすることで彼が彼自身を演じていることになる。   あみゅーずによるリーディングは小説を役者たちのアンサンブルにより見事に立体化する職人芸の域に達しており定評があるのだが、今回は . . . 本文を読む
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げきだんS―演S?『怪シイ来客簿』

2018-03-18 22:23:07 | 演劇
大竹野の狂気が影を潜め、とてもクールなタッチの作品に仕上がっている。演出の土橋淳志のアプローチは間違いではない。ただ、役者の芝居にばらつきがあり、演出の伝えたい微妙なニュアンスが伝わりきらない恨みが残る。感情的になることなく、描かれる現実を冷静に丁寧に見せていく。兄と弟を演じた関川佑一と柴埼辰治のパートは素晴らしいのだけど、全体のアンサンブルはうまくいってない。   台本にも問題があ . . . 本文を読む
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KUTOー10『財団法人親父倶楽部』

2018-03-14 20:23:47 | 演劇
後藤ひろひと作、演出作品がウイングフィールドで上演されるなんて、初めてのことではないか。遊気舎時代だってウイングですることはなかったはずだし、ウイングに彼が立つなんてことも記憶にはない。今回工藤俊作の招聘で、彼がここでどんな芝居を見せてくれるのか、とても楽しみにしていた。しかも、主役は工藤さんはもちろんなのだが、あの羽曳野の伊藤を呼んできたのだ。さらには保とのゴールデントライアングルである。久保田 . . . 本文を読む
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『犬猿』

2018-03-11 22:23:34 | 映画
  『ヒメアノ~ル』に続く吉田恵輔監督最新作。今回は久々のオリジナル台本なので期待も高まる。前作も気味の悪い映画で強烈だったが、今回もまた別の意味で強烈に気味が悪い映画だ。犬猿の仲の兄弟と姉妹を新井浩文、窪田正孝と江上敬子、筧美和子の4人が演じる。よくある「賢兄愚弟もの」のバリエーションなのだが、いろんな意味で過剰なのだ。   史上最低の兄貴を演じた新井浩文が凄い。こんな奴と関わり合いたくは . . . 本文を読む
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最近見た映画、簡単な感想メモ

2018-03-11 22:11:40 | 映画
『オマールの壁』 ガザ地区で暮らす男の日常を描くラブストーリーなのだが、お話の展開自体も理解できないような日常が描かれる。政治的なお話なのでパレスチナ問題に疎い僕たちにはわからないことだらけだ。でも、親切な解説は一切ないまま、テロ活動が描かれ、スパイ行為を強要され、恋を諦めて。とても辛い話で見ているのがしんどい映画なのだが、最後まで目が離せない。この映画の不親切さがとてもいい。見ている間、圧倒さ . . . 本文を読む
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『七月と安生』

2018-03-05 23:16:51 | 映画
  もうすぐ、第13回大阪アジアン映画祭が始まる。今年も刺激的なラインナップが並んでいる。数年前までは毎回4,5本は見ていたのだが、昨年から見るのをやめた。時間もないし、チケットも取りにくいからだ。わざわざ前売りを買ってまで見るのは僕にはムリ。映画は当日、時間が出来たときに見るようにしている。以前はそれでも十分対応できたのに、最近はすぐに売り切れるようだ。いいことだとは思うけど、これでは僕の出番 . . . 本文を読む
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