久々となる息吹の春演参加作品。短編と中編の2本立て。それぞれ木田さんと大坊さんという劇団の重鎮が主役を演じる。2作とも狂言を題材にしたシンプルな作品である。
『花がたな』は若い役者ふたりとのコラボ。(ひとりは現役高校生!)初々しいふたりと向き合う木田昌秀はとても若々しく老人を演じた。ぬけ作演じる寒川紘暉との掛け合いが楽しい。また、寒川紘暉と彼の妹である寒川結月との兄妹による掛け合いはなんだかかわ . . . 本文を読む
小さな作品だが、昨年こんな映画があっただなんてまるで知らなかった。どこで公開されたのだろう。大阪はナナ芸かシネヌーヴォーでひっそりと上映されていて、気がつかなかったのだろう。きっと。
知らない女の子たち(僕が、だけかもしれないけど)が主演した、たった82分の青春映画。でも一応角川映画みたいだ。なんでもありの城定秀夫監督作品。
だいたい「アングラーって何?」とヒロインの女 . . . 本文を読む
クリストファー・ノーランのデビュー作。98年作品だから、もちろん『メメント』以前の作品である。モノクロで70分の小さな映画だけど、まるで今と変わらない。時間を前後させて無意味に掻き回す。見ていて必要以上に混乱する。相変わらずの作者の意図とはいえ、やはりこれはいやらしい。
ただ今回は登場人物が少なく、シンプルな映画だから、一応大丈夫だったけど僕は『メメント』も『インターセプション』も1 . . . 本文を読む
往来の代表作とも言える一篇。久々の再演となる。でも僕はもう3回以上見ている。今回、劇団往来創立40周年作品としての再演だ。2006年の初演から見ているし、僕が在籍していた高校でも生徒に見せている。気分的にはセリフの三分の一くらいが中国語である。これは大変な芝居だ。主人公の耀子をはじめとして視覚障害者の役がキャストのほとんどを占める。90年代、中国天津を舞台にした音楽劇。視覚障害者のための日本語学校 . . . 本文を読む
シリーズ第3作。(敢えて『遺言未満、』含む)シーナさんも80歳になる。(ちなみに僕ももうすぐ65歳になる)もうあまり後がない。だから終わりを考えてしまう。今回の緊急出版(?)は、盟友目黒考二の死が大きな影響を与えているのは明白だろう。シーナさんの相棒である彼が死んだ。やがて自分も死ぬことはわかっているけど、目の前の死にどう反応したらいいか、わからない。彼は葬儀には行かなかった。行けなかった。シーナ . . . 本文を読む
3月の『戻り道に惑う』に続いて太陽族が2作品連続でウイングフィールドに登場した。これは今回の再演大博覧會参加作品。タイトルの「1/3」というのは、今回の参加作品は『トリビュート』の中の3分の1だからだ。オリジナルは30分ほどの短編作品だったと思うが、それを長編化して再演博に挑む。3話からの短編集(4話だったかも?)の1本を80分の長編として再演するってことだ。こんな大胆な形での再演博への参加って、 . . . 本文を読む
辻堂ゆめの新作は夢の話。そして『二人目の私が夜歩く』というタイトルから主人公は私だけであるのではなく、二人目でもあるであろうこともわかる。解離性同一性障害を扱う。
前半部分は「昼のはなし」で後半は「夜のはなし」の二部構成。ふたつの話は同じ時間を生きたひとりの中にいるふたりがそれぞれのエピソードの主人公になる。
まずは茜の話。交通事故で首から下が麻痺して動かなくなった咲子さんと出 . . . 本文を読む
侯孝賢(ホゥ・シャオシェン)が最後の映画として(認知症から引退宣言をした)プロデュースした台湾映画。ホゥの助監督をしていた若いシャオ・ヤーチュアン監督は、ホゥ・シャオシェン監督の初期の初々しい映画を思わせるタッチでバブル期89年から90年の台湾を舞台にして、クールな映画を作った。正反対な2人の大人(父親と地主)の間で揺れ動く11歳の少年の成長物語である。暗い夜の町が効果的。ふたりが自転車で走るシー . . . 本文を読む
藤谷文子が脚本、プロデュースして、井浦新が主演した日米合作のインディーズ映画。今年の大阪アジアン映画祭のクロージング作品でもある。監督のマーク・マリオットは寅さん映画の助監督経験者。どうりで、と思う。お話がなんだかなぁな思ったけど、やはり映画自体もなんだかなぁ、の古くさい作品だった。今時こんな人情劇で映画を作るなんて、松竹でもしない。効率重視のバリバリの企業人間だった男がアメリカの牧場を再建する。 . . . 本文を読む
環境活動家の若者たち。彼らの行為はテロでしかない。それは彼ら自身もわかっているが、止むに止まれぬ想いが彼らを突き動かす。映画はドキュメンタリータッチで8人の若者による命がけの石油パイプライン爆破を描く。タイトルのカタカナ表記ではない『HOW TO BLOW UP』は日本語タイトルとしては異色。UPの後ろのa Pipelineは記載しないのは長くなりすぎるからか。原題は『How to Blow Up . . . 本文を読む
第10回エネルギーフォーラム小説賞受賞作品。こんな賞があることも知らなかったけど、若い作家の(25歳)本格デビュー作だし、うちの凜ちゃんと同じ名前の人だし(まぁ関係ないけど)ということで一応読み始めたが、あまり文章は上手くないし、目新しいお話もない。
コロナ禍で仕事をクビになって、回転寿司屋でのバイト暮らしをしている24歳の女性が主人公。そんな彼女の日常を描く。偶然、同じ理由からクビ . . . 本文を読む
こんな無茶苦茶な映画があっていいのか。全く理解不能。というか、一切説明はない。何がどうしてどうなったのか。最後まで見てもわからない。「第1回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞したという下津優太監督による同名短編をもとに、下津監督が商業映画初メガホンをとり、あのキングオブホラー清水崇が総合プロデュースを手がけた。脚本は昨年『ミンナのウタ』を担当した角田ルミである。これは清水崇門下生による(自主映画では . . . 本文を読む
大正浪漫の歌劇物語。女学校を卒業して東京にやって来た妙子、16歳。女優を夢見て帝国歌劇団(帝国劇場洋楽部)に入るが、まるで役は付かない大部屋暮らし。叔母の家で暮らすが、彼女も売れない作家で生活はカツカツ。そんなある日、街頭バイオリン弾きで生計を立てていたハルと知り合う。ふたりの友情物語のようにも見えるが、必ずしもそうではない。ふたりは一緒に夢に向かうのではない。一緒に暮らしてもお互いはひとりひとり . . . 本文を読む
夜、たまたまTVをつけたらこの映画がやっていた。もうすでに2時間近くが過ぎているから、お話はもう事件の終末に入っていた。ほんの少しだけ見るつもりだったけど、気がつくと最後まで見てしまった。さすが市川崑。久しぶりに見て、ラストがあんなにもさらりとしてあっけないことに驚いた。
この映画は封切りの時に見た。これが角川映画のスタートだった。映画は大ヒットして、僕も感動した。だからあの頃何度も見た。衝撃的 . . . 本文を読む
22歳という時代を圧倒的な臨場感で描く青羽悠の新作長編。京都の大学に入学した僕が過ごす4年間が描かれる。大学に馴染めず、漫然と日々を過ごしていた田辺朔。キューチカでひとりの女の子に出会う。キューチカは旧地下。古ぼけた大学の学生会館の地下。ここはたぶん京大だけど、そんなことはあまり気にしなくていいだろう。ある種の普遍を描く。京都、大学というところだけでいい。大学内のバー、キューチカにあるディアハンツ . . . 本文を読む