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映画・演劇のレビュー

イマージュ53号のための幻の原稿

2012-04-30 19:15:38 | 演劇
 ようやくイマージュの53号が発刊された。本来ならもっと早く刊行されるはずだったのだが、2月17日に木村年男さんがなくなり、3月11日には福森慶之介さんも亡くなり、態変は、劇団の中心を担う2名を相次いで失った。そんななかで、急遽、53号は彼らの追悼特集号となった。  以下の原稿は、もともとはその53号のために書いたものである。だが、特集のページ数の問題もあり、残念ながら没原稿になった。だけど、せっ . . . 本文を読む
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大島真寿美『ピエタ』

2012-04-27 22:28:03 | その他
 「よりよく生きよ、むすめたち。よろこびはここにある。」この最後のことばに胸がいっぱいになる。この長編小説を最後まで読んでよかった。  いつまでたっても話が見えないし、先にも進まないから、なんだかなぁ、と何度も思った。まぁ、僕はせっかち過ぎるのだ。それはわかっているけど、でも、この小説の先の読めなさは半端ではない。ピエタが舞台なのに、ピエタの何を描こうとするのかがわからない。だいたい、最初から、 . . . 本文を読む
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伊藤たかみ『秋田さんの卵』

2012-04-27 22:14:07 | その他
 関係が冷え切ってしまい、まるで会話もなくなった妻と、他人のフリをして、ブログで付き合う夫。嫌いになったわけではない、はずなのだ。仕事が忙しかったこともある。妻と妻の母親と、3人で温泉にでも行こうと計画した。だが、ぎりぎりでキャンセルしてしまう。急に仕事が入っていけないとか、言ってごまかす。「2人で行って来て」なんて言う。  家に帰りたくなくなった男が主人公だ。彼はネットで、偶然妻のブログを発見 . . . 本文を読む
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『アンダードック』

2012-04-27 22:05:16 | 映画
 こんなマイナーな中国映画が、ちゃんとDVDとなって、公開されていたことに驚く。一応アクション映画として、ジャンル分けされたから、発売されたのだろうが、これはつまらないB級アクションではない。だが、それじゃぁ、ちょっとした文芸映画か、なんていわれると、とんでもない。でも、なんだか分類が難しい映画なのだ。しかも、これで驚くほど出来のいい映画なら、世界の映画祭とかでたくさん賞を取ったりして話題にもなる . . . 本文を読む
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『光のほうへ』

2012-04-25 21:25:42 | 映画
『光のほうへ』というタイトルがいい。シンプルだけど、気持ちがしっかりと伝わってくる。これは兄と弟のお話だ。実は最初チラシを見たとき、これは子供たちを主人公にした映画だろうと、思ってた。だから始まって10分ほどで赤ちゃんが死んでしまい、2人の少年たちのドラマが終わってしまったときの驚きったらない。途中何度も回想シーンに入り、再び本題であるはずの「子供たちの話」に戻るのだ、と期待したのだが、そんなこと . . . 本文を読む
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宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』

2012-04-25 21:17:19 | その他
 いきなり恋人から婚約破棄された女性が主人公。結婚式が2ヵ月後に迫っているのに、そんないきなり、どうして? パニックになる。当然の話だ。自分に何か落ち度でもあったというのか? そうじゃない、らしい。ちゃんと話してもらわなければ、納得できない。  ここから始まる「本当の自分」探し。もう立ち直れない。でも、人はそれでも生きていかなくてはならない。周囲の人たちに支えられて彼女は少しずつ変わっていく。誰 . . . 本文を読む
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DRY BONES『いちご大福姫』

2012-04-25 21:12:19 | 演劇
 白いシャツに原色のリボンといういでたちが可愛い。そういう簡単なコスチュームで、子供たちの(大学生だけど)清潔感が強調される。めちゃくちゃな話も、ぐちゃぐちゃになるタイプではなく、とてもスタイリッシュで、テンポのよさと相俟って、とても心地よい。学生たちの(劇団員だけど)素直さをそのまま生かして芝居を作った。だが、後半の2本は竹内さんの好みが少し前面に出ているのではないか。そこにある停滞感や、アンニ . . . 本文を読む
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『グリーンランタン』

2012-04-24 22:55:13 | 映画
 僕はこのたわいもないアクション映画を支持する。これは決して悪くはない映画だ。先日張り切って見たこのGW公開の大作映画である『バトルシップ』と『ジョンカーター』にはがっかりさせられたのだが、劇場公開時には観客からも無視され、僕も見逃していたこの地味な大作映画が実は思わぬ拾い物だったのだ。なかなかハリウッド映画も奥が深い。  この安っぽいヒーローものが、実はその安っぽさゆえ、自らの矜持をきちんと守 . . . 本文を読む
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『サンザシの樹の下で』

2012-04-24 22:54:09 | 映画
 チャン・イーモウ監督によるラブストーリーである。彼は時々、この手のハートウォーミングを作ってくれる。『初恋の来た道』とか『至福のとき』といった作品だ。かわいくてけなげな女の子が、一生懸命頑張って生きていく姿を描くドラマだ。苦しくて、過酷な状況の中でも笑顔を絶やさす、自らの愛を心の糧にして精一杯に生きていく姿を見ていると、なんだか元気が出てくる。たとえその結果が悲しいものであったとしても、彼女たち . . . 本文を読む
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劇団ショウダウン『月下人魚』

2012-04-22 22:09:36 | 演劇
 劇団ショウダウンの林遊眠さんによる一人芝居だ。ナツメクニオさんの作、演出によるこの作品は、小劇場で見せる芝居であることの魅力を最大限にまで引き出している。こういう芝居が見たかった、と思った。「小」であることの意味を履き違えた芝居が多い中、この作品は「小」の持つ可能性を極限まで極めようとする。何よりもまず、この船場サザンシアターの贅沢な空間をここまで活かしきったことを褒め称えたい。こんなふうに使っ . . . 本文を読む
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あみゅーずとらいあんぐる『女と男のShow・Oh・Waaa』

2012-04-22 20:59:48 | 演劇
 今時リーディングだなんて、流行らない。一時期とても流行ったけど、最近では、やらない。なのに、条あけみさんは、今時リーディングに挑戦する。その時代錯誤ぶりが素敵だ。流行なんかには流されない。もちろん、それって気張っているのではない。彼女のスタンスなのだ。あみゅーずとらいあんぐるを始めてなんと、20年になる。毎年1回必ず公演がある。それを楽しみにしている人もたくさんいるはずだ。でも、そんなことより何 . . . 本文を読む
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『ジョン・カーター』

2012-04-19 20:50:21 | 映画
 実はかなり期待した。こういうタイプの映画はもう今では誰も顧みないから、きっとすぐに劇場から消えていくだろうが、その前にできるだけ大きなスクリーンで見たくて、無理した。体力もないし、時間もまるでないのに、劇場に行った。おかげで今週は芝居は1本しか見れなかった。  なのに、少しも心弾まない。『ファインティング・ニモ』はともかく、あの『ウォーリー』を撮ったアンドリュー・スタントン監督が初の実写映画に . . . 本文を読む
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劇団ひまわり『世界のどこにでもある、場所』

2012-04-19 20:49:43 | 演劇
 大森一樹監督の同名映画を原作にして木嶋茂雄さんが構成、演出した大作だ。総勢30名以上にも及ぶキャストによるアンサンブル・プレーである。交通整理だけでも大変だろうが、そんなことは普段から大人数の芝居に慣れているから問題ない。それよりこの人数を逆手にとって、人海戦術スペクタクルを目指す。アップテンポの芝居は見ていて心地よい。  しかも、アイホールの広い舞台を縦横に使った壮大なドラマは見ていて、まず . . . 本文を読む
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西加奈子『円卓』 他2冊

2012-04-19 20:16:34 | その他
 忙しすぎて映画も芝居も見に行けないから、本ばかりを読む。と言っても、仕事に行くための往復の時間の間だけだが。 桜庭一樹『傷痕』  これも短編連作スタイルだ。日本のポップス界を背負うスーパースターが51歳の若さで死んだ。カリスマ的な存在であった彼をめぐるさまざまなトラブル、憶測、噂。真実はまるでわからないまま、世界中が彼の死を悼む。マイケル・ジャクソンをモデルにして、謎に包まれたスターと彼の私 . . . 本文を読む
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宮下奈都『誰かが足りない』

2012-04-19 20:14:12 | その他
 最近こういうタイプの小説がやけに多い。短編連作は確かに読みやすいし、作者にしてみれば設定を用意して、あとはその枠の中で話を転がすだけだから、いちから書き始めるよりも楽なのだろう。それは読者にとっても同じだ。まず向き合う時の姿勢が、構えることなく済む。なんだか安易な気もする。まぁ面白ければそれでいい話なのだが。そして、当たり前の話だが、宮下奈都さんはとても面白い。  ハライという、町の小さな、で . . . 本文を読む
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