
これはK24がいかにも好きそうな映画だ。だけどもうこの手の映画には驚かない。いささか食傷気味だ。驚かされたってそれだけ。奇想天外も飽きる。必要なのはその先に何を描くことができるのか、である。
デスという鳥がやって来て死を告げる。彼はよくある死神の一種。だけどこのデスのビジュアルに圧倒される。映画はまずこの鳥のことを丁寧に描くところから始まる。彼は人々に死を伝える。いくつものエピソードの後、本編の主人公である少女チューズデーの元にやってくる。
これは15歳の娘と彼女を見守る母の話。母は仕事もせずにひたすら娘に尽くす。だから家計は火の車。家にあるものをどんどん売って生計を維持する。そんなふたりのところにデスが訪れる。
まず娘のところにやって来て死を告げる。だけど娘は驚かない。そんな彼女とデスのお話が描かれるのが、前半戦。デスは自由自在に体を大きくしたり、人の言葉も喋るし、やりたい放題。それを少女はしっかり受け止めて対応する。
だけどお話が大きく動き出すのは母が帰って来てデスと接するところからだ。後半戦は母とデスのバトル。かなり凄絶な戦いになる。母は娘の死を受け入れたくないから、全力で戦う。
これはどうしようもない現実に抗う母と静かにそれを受け入れる娘のお話。奇想天外な設定を配して、どこにでもあるひとつの悲劇を見つめる。奇想天外な設定を排したらこれはありきたりの映画である。チューズデーの内面は描かれないから、本来必要な「その先」が描けないのが残念。