習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

万博設計『リボルバー』

2019-10-30 20:23:17 | 演劇
こんな芝居になるなんて、想像もつかなかった。重くて暗い。オリジナルはコメディなのに、同じ台本がどうしてこうなるのか、わけがわからない。もちろんそれは演出の力だ。そんなこと、わかっている。でも、ここまでやられると驚きを禁じ得ない。オリジナルは100分の作品だったのに、それがなんと130分になる。対面式の舞台で、象徴的な舞台美術は、このお話からリアルな感触を遠ざける。いつの時代のお話なのかも曖昧にする . . . 本文を読む
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テノヒラサイズ『憧れのデコラティブライフ』

2019-10-30 20:13:57 | 演劇
  作、演出が湯浅さんに変わって、テノヒラサイズはなんだかとても素朴でほのぼのして味わい深い作風に変わった。ある種のシチュエーションコメディなのだけど、それがお話を見せようとするわけではない。ストーリーが先行する芝居なのに、ストーリーより、空間が醸し出す空気感のようなもののほうが、興味深い。湯浅さんはこのなんともゆる~い雰囲気を大事にする。   お話自体は、あまりにたわい . . . 本文を読む
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『真実』

2019-10-30 19:28:04 | 映画
是枝映画でなければ、この素材では見ようとは思わない映画だ。あまりに地味すぎる。母と娘の確執を描く。カトリーヌ・ドヌーブとジュリェット・ビノシュが主演しても、そんなフランス映画を見たいとは思わない。 大女優とその娘。『真実』と題された母親の書いた自伝には嘘ばかりが書かれてある。娘はなぜ、本当のことを書かないのか、と詰め寄る。 アメリカで脚本家として活躍する娘が母親の自伝本の出版を機に娘と売れない . . . 本文を読む
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劇団往来『バガボンド・ララバイ』

2019-10-29 23:47:10 | 演劇
サブタイトルには「近松門左衛門半生記」とあるけど、真正面から近松を描いたわけではない。無名劇団の劇作家が近松を主人公にした戯曲を作る話だ。それをコメディタッチで見せていく。現代のお話の中に劇中劇として、入れ子構造で近松の物語が描かれていく。その対比から近松門左衛門という男の半生が描かれ、それが無名の若い劇作家の生き方とシンクロしてくる、というのがこの手の作品のパターンなのだが、彼と近松を重ね合わせ . . . 本文を読む
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ヤクタタズ!Project『ヤクタタズ!』(第一幕第一場「路上にて」)

2019-10-29 23:35:09 | 演劇
  太宰治の『人間失格』を読んだとき、誰もが「オレも(私も)人間失格だ」と思ったように、この作品を見た私たちは、自分もまたヤクタタズだ、と思うようになるだろう。だがそれは誰もが共感する、ということではない。ヤクタタズという負の存在である自分を意識することは誰にでもある。それを受け入れるところから始まる。この象徴的な作品が指示するものは明確ではない。ヤクタタズというふうに言われ、だから殺 . . . 本文を読む
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下鴨車窓『微熱ガーデン』

2019-10-29 23:09:40 | 演劇
  このなんとも不思議な芝居を見ながら、彼女たちの時間に観客である僕たちも迷い込む。ふたりの女と、彼女たちのところにやってきた男。階下の老人の死からスタートして、禁止されている草を秘密で育てる彼女の日常が、スリリングに描かれる。もうひとりの女は、そんな彼女に仕事を依頼し、時たまやってきては様子を見る。この秘密で栽培した草を売る仕事は彼女の役割か。やがて、終わりがくることはわかっている。 . . . 本文を読む
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『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

2019-10-29 23:01:55 | 映画
  この不思議な手ざわりの映画に魅了された。箱崎優子監督のデビュー作。夏帆とシム・ウンギョンによるロードムービー。このふたりの掛け合いを見ているだけで楽しい。   東京でCMディレクターをしている女(夏帆)。才能があり、売れっ子みたいだ。だけど、常にイライラしている。クリエイティブな仕事をしているという自負がある。今ある現状に満足している、はず。でも、このままずっとやって . . . 本文を読む
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劇団きづがわ『あ・り・が・と』

2019-10-29 22:53:58 | 演劇
  障害を持つ子どもを抱えた家族を描くのだが、告発とかメッセージとかいうテーマが前面に出てくる芝居ではない。これはまず、ほんわかとしたある家族のお話になっている。あくまでも心温まるホームドラマなのだ。そこからスタートする。そこに終始する。だから素晴らしい。  終盤で、和田雅子演じる主人公の祖母が、過去を懺悔する重いシーンもあるが、そこにドラマの主張が集約されるのではなく、そ . . . 本文を読む
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劇団大阪『麦とクシャミ』

2019-10-29 21:52:33 | 演劇
  彼らは、今、目の前にあることをきちんとこなしていく。この作品は、自然の不条理と戦争という不条理を前にして為す術もない人々の姿を描いている。だが、そうであるにもかかわらず、この芝居の登場人物である彼らのたくましさは何だろうか。泣き言も言わず、ただ、為されるがままに生きていく。不貞不貞しいわけではない。無力だというわけでもない。現実を受け止め、そこでただ生きるだけだ。   . . . 本文を読む
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『楽園』

2019-10-27 21:52:30 | 映画
けさ洗濯の合間に「90年代映画ベストテン」を作っていて、日本映画の1位を『雷魚』にした瞬間、いてもたってもいられず、瀬々敬久監督の最新作『楽園』を見てきた。今一番見たい映画だったのだけど、今日まで見なかったのは、忙しくてかなかな時間が取れなかったからだ。だいたい今日だって、午後からクラブだし、その前に芝居を1本見たし、で、夜の回に何とか間に合ったから見ることが出来たのだけど、大変だった。それにして . . . 本文を読む
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90年代 外国映画ベストテン

2019-10-27 08:56:19 | 映画
90年代 外国映画ベストテン   1位 八月のクリスマス(ホ・ジノ)韓国98 2位 恋する惑星 (ウォン・カーウァイ)香港94 3位 愛情萬歳(ツァイ・ミンリャン) 台湾94 4位 欲望の翼(ウォン・カーウァイ)香港90 5位 ふたりのベロニカ(クシシュトフ・キエシロフスキ)ポーランド91 6位 髪結いの亭主(パトリス・ル・コント)フランス90 7位 ラブソング(ピーター . . . 本文を読む
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90年代 日本映画ベストテン

2019-10-27 08:45:59 | 映画
90年代 日本映画ベストテン   1位 雷魚 (瀬々敬久)97 2位 Love Leteer (岩井俊二)95 3位 CURE(黒沢清)97 4位 打ち上げ花火 下から見るか、横から見るか(岩井俊二)95 5位 四月物語(岩井俊二)98 6位 月とキャベツ (篠原哲雄)96 7位 東京日和 (竹中直人)97 8位 KAMIKAZE TAXI(原田眞人)95 9位 HA . . . 本文を読む
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『見えない目撃者』

2019-10-24 21:13:01 | 映画
  韓国映画をリメイクした中国映画をさらに日本でリメイクする。同じ題材を複数の国で共有するというこのパターンがアジア圏では結構流行っている。というか、日本と、中国、韓国で、だが。それぞれ見較べれば、お国柄の違いが見えてきて楽しいかも。『怪しい彼女』なんてタイ版とか、ベトナム版とか、どれだけあっただろうか。   さて、今回のこの映画だが、気合いに入った作品であることは認める . . . 本文を読む
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真紅組プロデュース『Bar あの夜Ⅴ』

2019-10-24 21:08:31 | 演劇
  確か前回は見逃したので、久々の『Bar あの夜』だ。相変わらずで、ゆる~りとした時間がそこには流れている。2話からなる。途中の幕間ライブを挟んで110分。舞台上ではお酒を飲みながら、あの夜の一歩手前にあるBarで女たちが同窓会(?)を繰り広げる。   今回は巴御前たちによるおしゃべりと、お登勢たちによるおしゃべり。いつの時代でも、女たちは強い。歴史の影に隠れて、しっか . . . 本文を読む
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『空の青さを知る人よ』

2019-10-20 08:51:35 | 映画
  18歳の選択、13年後の後悔。ふたつの時代を通して、どんな大人になるのか、が問われる。映画としては実にシンプルだ。ミュージシャンになるという夢を抱いて東京に出て行く青年と、彼を見送り故郷に止まる少女。13年の歳月を経ての再会。手垢の付いたパターンなのだけど『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない、』『心が叫びたがっているんだ。』のチームは丁寧にふたりの再会から始まるドラマを追いかけ . . . 本文を読む
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