習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『初恋の想い出』

2009-11-30 20:58:08 | 映画
『山の郵便配達』のフォ・ジェンチイ監督が、80年代の中国を舞台にして2人の男女の子供時代から、青春時代、さらには大人になってからまでの、ずっと続くお互いの想いを綴っていくラブ・ストーリー。“家族”の問題に引きずられてお互いの想いを素直にぶつけられないまま、でもずっと変わることなく想い続けた日々が描かれていく。見ていてもどかしくなる位だ。  2人がまだ幼い頃の親同士のトラブルから、互いの家同士が . . . 本文を読む
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角田光代『くまちゃん』

2009-11-30 20:17:09 | その他
 痛ましい恋愛小説だ。それはこの小説に出てくる主人公たちの誰もが失恋していくからではない。彼らが人を信じきれないまま恋愛をしていくことが、読んでいて胸に痛いのである。誰かを好きになっても、本気で好きになってないから、振られたとしても、それが心からの痛みにはならない。致命的ではないからいくらでも立ち直りがきく、なんていうことではない。とことん何かを(というか、それはこの場合恋愛なんですけど)遣り遂げ . . . 本文を読む
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コンブリ団『ムイカ 妄想を忘却するには法則が必要か?』

2009-11-29 11:01:47 | 演劇
 副題と、冒頭の展開から、観念的なお話か、と思ったが、そうではない。芝居はいつものようにはしぐちさんの前説から始まる。実家である広島に帰るときの話から始まり路面電車の駅名をたどりながら一体どこに僕たちを連れて行ってくれるのだろうか、とワクワクさせられる。  ぼんやり見ていたので、しばらくするまで、タイトルの『ムイカ』が、昭和20年8月『6日』のこととは気付かなかった。でも、そのほうがはしぐちさん . . . 本文を読む
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突劇金魚『ビリビリHAPPY』

2009-11-29 10:44:00 | 演劇
 最近のサリngROCKはなんだかテンションが低い。『しまうまの毛』以降ずっとそんな感じだ。で、今回はことさらそれが進行している、気がした。大丈夫か、と心配になる。  だが、これでいいのだ。だいたいハイテンションだと思うのは最初の衝撃が大きすぎたからだ。きっと。実は、彼女はずっと変わらない。内省的でシャイで、異常なイマジネーションは彼女の中では当たり前のことでしかない。だから、慣れてくれば見てい . . . 本文を読む
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『映画は映画だ』

2009-11-29 10:13:17 | 映画
 キム・ギドクの助監督をしてきたチャン・フンがデビューした。まぁ、チャン・フンという人に対しての知識はまるでない。ただキム・ギドクのDNAを受け継ぐ新人だということにそそられて見た。  このアイデア自体は悪くはないと思うのだ。ヤクザ映画で主人公を演じる役者と実際のヤクザが出会い、1本の映画に2枚看板として共演する。映画スターは役者としてのプライドがある。素人のヤクザになんかに負けるわけにはいかな . . . 本文を読む
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『SAW6』

2009-11-29 09:52:39 | 映画
 04年に『SAW』が登場した時の新鮮な衝撃は大きい。この手のスリラーは今までなかったはずだ。閉ざされた空間、限定された人物(1対1だ!)、理由もわからないまま、そこにいて、ギリギリの状況を与えられ、、生き残るために、文字通り命を賭けて相手と向き合うことになる。ただの残忍なホラーとは一線を画する。しかし、このアイデアは1本で充分だった。  なのに、なんと今年で6年目である。お話も連続ものとなり、 . . . 本文を読む
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吉田修一『横道世之介』

2009-11-29 08:55:28 | その他
 吉田修一の『パレード』が映画化され、間もなく公開される。だが、ほんとうのお楽しみはこれからだ。なんと彼の最高傑作『悪人』も映画化されているのである。あの長編がどんな映画になり甦るのか、期待で今から眠れない。(最近、よく寝てるからちょうどいいか)  さて、彼の新作である。なんと今回はよくある青春小説だ。大学生になり地方から上京してきた青年がさまざまな人たちと出会い、青春を謳歌する。漱石の『三四郎 . . . 本文を読む
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唐十郎演劇塾『腰巻お仙 義理人情いろはにほへと篇』

2009-11-28 23:23:19 | 演劇
 今から42年前に唐十郎が新宿の花園神社で初めて紅テントを建ててこの芝居を上演した。状況劇場の始まりである。その伝説の舞台を近大の学生たち(OB含む)が唐十郎の直接指導を受け上演する。凄いことだ。  唐十郎演劇塾と銘打たれたこの作品は今年で3年目を迎える企画だ。僕は4年前、この企画の前身であるゼミの実習公演として上演された『少女都市からの呼び声』も見ている。あれは本当におもしろかった。あの時は、 . . . 本文を読む
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『2012』

2009-11-28 23:10:55 | 映画
 エメリッヒである。ディザスター映画の超大作なら、彼に任せろ! なのだが、でも、ね。正直言ったらこの映画に、最初から誰一人期待なんかしていないだろう。もちろん僕もそうだ。だいたい世界中がこの映画に対して何一つ期待しないはずだ。  凄まじいスケールの超大作である。予告編も見たが(しかも、何10回も!)さすがに驚くほどの迫力だ。こういう映画はDVDなんかで見ても意味はない。出来る限り大きなスクリーン . . . 本文を読む
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『笑う警官』

2009-11-28 23:09:48 | 映画
 角川春樹渾身の力作である。12年ぶりに監督に復帰し、思いの丈をすべてこの1本にぶつけた大作映画となるはずだった。なのに、結果は見るも無惨な仕上がりになり、結局これで彼は映画界から完全に引退することになるだろう。少なくとも監督としての復帰はもう不可能だろう。プロデュサーとしても、この大失敗を取り戻すことは難しいはずだ。刑務所から出てきて、プライベートフィルムのような小品『時をかける少女』のリメイク . . . 本文を読む
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『曲がれスプーン』

2009-11-28 23:08:09 | 映画
ヨーロッパ企画と本広克行監督によるコラボ・シリーズの第2弾。前回(『サマータイムマシーンブルース』)と違って、今回はオリジナルのキャラを設定し、そこに主役として長澤まさみを迎えての作品となった。その結果台本は大幅に変更されてしまうことになる。そこで、作品自体の方向性も含めての見直しが必要なのに、木に竹を接ぐような台本となり、映画は残念ながら中途半端な出来となる。せっかく期待したのにがっかりだ。 . . . 本文を読む
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evkk(エレベーター企画)『voy』

2009-11-28 22:31:14 | 演劇
 ラスト20分で謎解きが入る。ここまでのすべての事情がはっきりと明かされる。しかもそこにはどんでん返しさえある。しかし、外輪さんはこの部分を見せる気がまるでない。とってつけたようにヤル気なく描いていく。ほとんですべてを字幕で処理する勢いである。彼にとってはそこまでにちりばめたミステリアスなドラマのほうに興味がいき、説明部分なんかどうでもいいような話なのだ。でも、それだけでは納得がいかない観客は確か . . . 本文を読む
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A級MissingLink『無神論者は幽霊を見ない』

2009-11-28 22:21:08 | 演劇
 イマージュ46号で、この作品の試演会である『プロ倫』について書いた記事の中で、「74年の死」と定義したのだが、今回の本公演では主人公の死が、77年に変更されているということに驚いた。しかし、後でパンフにある土橋さんの作成したカモメ島年表を見ると、74年に「カモメ島坑内で爆発事故発生。多数の死者が出た」という表記の後、77年「落盤事故発生(中略)2名の殉職」とあり、主人公の前園はこの事故により死ん . . . 本文を読む
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『SOUL RED 松田優作』

2009-11-28 21:56:09 | 映画
 よもや松田優作の映画を今、劇場で見ることになるなんて思いもしなかった。彼が死んで20年。今もう一度彼の仕事を振り返るため、このドキュメンタリー映画が制作された。監督は『世界はときどき美しい』の御法川修。あの映画で優作の奥さんである女優の松田美由紀が御法川監督と出会ったことがきっかけとなり、この映画の監督を引き受けることとなったのだろう。  残念ながらこれは御法川監督の視点は前面に出ない映画にな . . . 本文を読む
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堀江敏幸『彼女のいる背表紙』

2009-11-20 22:15:12 | その他
 このエッセイ集を読みながらなんて上手な文章だろうとため息をついた。堀江さんの小説もそうなのだが、実に丁寧で端正。そのへんに転がってるエッセイって安っぽいものが多くいつも閉口させられるのだが、彼の書く文章はそのひとつひとつがまるで芸術作品だ。  これは彼が出会った様々な小説の中にいる女性たちについて書いたエッセイなのだが、紹介される小説の数々を体感したような気分にさせられる。読んだ気分ではない。 . . . 本文を読む
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