習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『先輩と彼女』

2015-10-28 22:03:16 | 映画
また、少女マンガの映画化か(南波あつこの100万部を超えるベストセラー、ということだ)と、さすがに食傷気味なのだが、それでも、これが池田千尋監督の劇場用長編第二作である、という事実だけで、絶対にはずせない。ようやく、彼女の新作が見られる。(しかも、今年はこのあと、もう一本続くのだ!)デビュー作『東南角部屋二階の女』が素晴らしかった。なんでもない話なのに、それをちゃんとなんでもないまま見せて映画と . . . 本文を読む
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『先生と迷い猫』

2015-10-28 22:01:45 | 映画
深川栄洋監督の新作。イッセー尾形を主演に迎えた。彼が主人公を引き受けただけでも、見る価値のある作品だと思う。『太陽』以来9年振りとなる。彼を起用するのは、なかなか難しいはずだ。彼の持ち味をうまく活かせたならそれだけで、凄いものになろうが、それだけの力量のある監督は今の日本にはいない。市川準監督亡き今、深川監督がその重責に挑み、成功した。 独自のスタンスを持つ彼のキャラクターを活かすには、それだけ . . . 本文を読む
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『ラスト・ナイツ』

2015-10-28 21:59:55 | 映画
『ラスト・ナイツ』 今年一番残念な映画かもしれない。見る前のドキドキと、見た後の落胆。そのとんでもない落差に呆然とする。映画がつまらないだけではない。そのつまらなさが、こんなにも僕にショックを与えることが問題なのだ。 5年の歳月を賭けて、紀里谷和明が心血を注いだ大作映画なのだ。しかも、これによってハリウッドデビューした。アメリカに呼ばれてお仕着せ企画をあてがわれて、不本意ながら、作ったような映画 . . . 本文を読む
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瀧羽麻子『失恋天国』

2015-10-28 21:58:28 | その他
作者名だけで、やったぁ、とか思って借りてきたけど、電車の中で読みながら、このタイトルの小説を読んでいるって、どうよ、と思ったら、なんだか恥ずかしくなった。しかし、そういう気持ちはダメなんです、と大先生(失恋学校の校長)に言われるなぁ、と思い、反省した。失恋は恥ずべきことではない。自分に落ち度がない人に限って自分のせいにするパターンが多いけど、(反対に自分が悪い場合には、相手にせいにする人が多そう . . . 本文を読む
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『GAMBA ガンバと仲間たち』

2015-10-28 21:57:39 | 映画
白組が10年の歳月をかけて作り上げた3D超大作アニメーション。街ネズミのガンバは海を見たくて旅に出る。そこで出会った島ネズミを助けるため、船に乗ってさらなる冒険の旅にでる。ネズミが主人公の映画ならもうピクサーの傑作『レミーのおいしいレストラン』がある。あの映画を超えることは困難だ。 しかし、これはアプローチが違うし、壮大な冒険活劇だ。きっとドキドキハラハラの大冒険を見せてくれるはず、と期待して . . . 本文を読む
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犯罪友の会『ひまわりとブルース』

2015-10-25 20:53:09 | 演劇
犯友恒例の秋の野外興業が、今年は行われない。その代わり、秋もウイングで、室内劇を上演する。武田さんの新作だ。もう10年以上にわたり、年に2回、確実に上演を重ね、今日に至る。そんな現在のスタイルが確立してからどれだけの歳月が経つのだろうか。もちろん、調べればすぐにわかることだが、それはしない。いつも僕は記憶だけを頼りにして、書いている。事実なんかより、実感のほうを大切に思うからだ。 初めて大阪駅 . . . 本文を読む
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白石一文『ここは私たちのいない場所』

2015-10-25 20:49:30 | その他
昨年読んだ白石さんの『彼が通る不思議なコースを私も』はタイトル通りとても不思議な小説で、でも、それを読むことで、「私も」目が覚める想いがした。教育問題を扱い、こういうことってあるんだ、とちょっとした衝撃だった。昨年の僕のベストワン小説である。そんな彼の最新作である本作もまた、なんとも言い難い作品だ。 こんなことがきっかけで、まだ50前なのに、仕事を辞めて、何もせずに暮らす。管理職でエリートコー . . . 本文を読む
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ババロワーズ『ショートショート・カタログ vol.7 カムフラージュ・カラーの巻』

2015-10-24 21:48:23 | 演劇
今月で7回目。あと残すところ2回のみ。とうとう佳境に突入した感があるけど、ここに至ってたかせさんは絶好調だ。「あとわずか」が力となっているのか、それとも、もうやけくそなのか。そのへんは定かではない。 今回の5本いずれもは、とても芝居らしい芝居ばかりで、安心して見ていられる。もう開き直りも通り越して、なんでもこい、の境地に達した感がある。MCのコメントも、サイコーの投げやりムードで、そこがまた面白 . . . 本文を読む
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『コードネームは孫中山』

2015-10-23 20:58:22 | 映画
大好きな『藍色夏恋』のイー・ツーイェン監督の新作である。なんと10数年振りの第2作だという。彼はあの傑作からずっと、雌伏していたのだ。そんなこんなで満を持して放つこの新作は、なんとコメディで、こんなにもバカバカしいお話。でも、おふざけではなく、とても真摯な青春映画になっているのが、彼らしい。夜の台北の町、彼らが通う学校。雨に濡れた舗道。そういうロケーションがとても効果的で、胸に沁みる映画になった . . . 本文を読む
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服部真澄『クラウドナイン』

2015-10-23 20:51:04 | その他
最初からかなり、ドキドキした。いったい何が起きているのだか、わからないけど、とんでもないことが、この世界のかたすみで起きているという予感。話の先が読めないまま、不気味さばかりが高まる。ムンバイで、ペット用の血の売買。輸血用の。そんなビジネスを、特別な人たちには見えない女性たちが、辺境の小屋から、立ち上げる。 舞台はアメリカに移って、検索エンジンサービスと、ビッグデータを扱う巨大企業の創業者とそ . . . 本文を読む
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『プリデスティネーション』

2015-10-23 20:28:45 | 映画
これには驚いた。まさか、こんな話になるなんて、想像もしなかった。ただのSFで、タイムトラベルもの、アクションと思って、軽い気分で見始めたのだが、なんのなんの。冒頭のアクションの後、バーテンダーとなったイーサン・ホークのもとに、一人の若い男がやってくる。ただの客のはずだった。しかし、彼が語り始めた話に、どんどん引き込まれていく。そこからはその若い男の奇妙な人生を描く映画の趣になる。ほんの少し、と思 . . . 本文を読む
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『自由が丘で』

2015-10-23 20:19:06 | 映画
67分というとても短い作品なのだが、近年のホン・サンス作品ではいちばんおもしろい作品になった。いつも同じ話を飽きもせず作る彼なのだが、さすがに観客である僕は飽きてきた。もうホン・サンスはいいかぁ、と思っていたのだが、今回加瀬亮を主役に迎えた作品ということで、見ることにした。見てよかった。彼の新境地を示す佳作だ。 何よりもセリフが少ないのがいい。加瀬亮は韓国語は話せないという設定なので、彼は英語 . . . 本文を読む
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『アメリカンドリーマー 理想の代償』

2015-10-21 21:30:24 | 映画
このタイトルで劇場公開しても、誰も見には来ないだろう。僕が見たのは公開から2週目の水曜日だったが、すでにシネコンの一番小さな劇場で1日2回上映になっていた。レディスデーなので、2、30人は入っていたけど。 映画自体はとても面白い。地味な映画だが、今、これを見る意味を十分感じさせられる作品で満足した。1981年のニューヨークが舞台となる。「アメリカンドリーム」なんて、もう誰も信じない夢の話。そん . . . 本文を読む
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吉田修一『森は知っている』

2015-10-21 21:20:40 | その他
読みながら、吉田修一は最近このタイプの小説をよく書くよな、と思った。世界を舞台にしたスパイもので、昔の彼なら、こういうのはやらなかった。でも、今の彼はやる。 でも、今回はただの産業スパイの話ではなく、ある犯罪の犠牲になった子供がその後の人生をいかに生きたか、というお話でもある。しかも、4歳で母親に殺されそうになった彼が(2歳の弟は死んだ。)その衝撃からいかにして立ち直ったのか(とうか、立ち直れ . . . 本文を読む
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舞台工房SOLA―tobu『ロマンチック・エイジ』

2015-10-21 21:16:10 | 演劇
成井豊がよくやるようなお話で、これはみんなが好きなパターンだろう。『明日、世界が滅びるとしたらどうする?』ということが現実に起きてしまったとき、我々はその非常事態とどう向き合うのか、というお話。SFファンタジーなのだが、あまりリアルじゃない。リアルな地平から話をスタートさせたのに、完全にSFになり、それ自体は構わないのだが、それ以上に発想が広がっていかないのだ。だから、100分は長い。想像力を刺激 . . . 本文を読む
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