このあやうい話を最後まで読み終えて、とてもおもしろいのだけれど、はたしてこの中には真実があるのか、なんて思った。もちろんそんなことを思わせるところに佐藤正午のねらいもあるのだろう。
交換殺人なんてなかったのかもしれない。だいたいこの15年間の日々すら幻なのかも知れない。この小説の中に描かれてあることには信憑性なんてない。精緻に組み立てられたはずのその全てが、妄想に近いものなのだ。彼にはそう見 . . . 本文を読む
この映画を見ながら、人間ってほんとに寂しいものだなぁ、なんて思った。この大都会の中で、何十万人、何百万人もの人たちがもの人たちが暮らしている。そのひとりひとりにはそれぞれの事情があり、生活がある。
この映画の複数の主人公たちは、そんな中から無作為にピックアップされた偶然の何人か、である。彼らでなくてはならなかった、のではない。誰でもよかったのだ。だいたいどこの誰であろうとも、この映画が見せた . . . 本文を読む
9歳の女の子が、自分の目と耳を使って、この世界がいったいどうなっているのかを考える。自分の身に降りかかった災厄に不服を抱き、反発する。
どうして急に狭い家に引っ越さなくてはならないのか。訳の分からないしらない人たちが家に出入りし、なんだか、お父さんとお母さんは忙しそうにするけれど、、そんなの納得がいかない。両親は自分勝手に政治活動なんかするから、生活が一変してしまう。「みんな、フィデルのせい . . . 本文を読む