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映画・演劇のレビュー

劇団愛人の会『町破れて』

2013-02-28 21:54:32 | 演劇
 とても大胆で斬新な作品だ。舞台上に特別な仕掛けがあるわけではないのに、ドキドキさせられる。ここで何が起こっているのか、彼らがどこにたどり着くのか、先が見えない。だから、舞台から一瞬さえ目が離せなくなる。冒頭から、一気に引き込まれる。暗闇から浮かび上がる。ひとりの男。3人の男が順々にアサノ、アサノ、アサノと呼びかける。縦に並んだ彼らの姿。彼らは同じように自分の指をなめる。さらに、そこにマイノがやっ . . . 本文を読む
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『草原の椅子』

2013-02-28 21:18:27 | 映画
『八日目の蝉』の成島出監督が再び幼子を主人公にした映画に挑む。前回も子役が主役の2人を完全に凌駕してしまう凄さで圧倒したのだが、今回の少年も前回以上に凄い。母親から虐待されてきた4歳児である。彼は人とのコミュニケーションが取れないし、満足にしゃべることもできない。そんな少年の面倒を見ることになる中年男を佐藤浩市が演じる。この2人の交流を中心にして、佐藤が50歳にして出来た新しい友達(同い年!)、 . . . 本文を読む
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劇団大阪 新人公演『温室の花』

2013-02-26 22:02:35 | 演劇
これはスケッチブックシアター・プロジェクトの武藤豊博さんが、劇団大阪に入団して初めて手掛ける作品。今井一隆さんの台本を彼の演出で見せる。とても楽しみにしていたのだが、残念な出来になった。まず、この台本があまり面白くない。なぜ、この本を使ったのだろうか。これなら武藤さんのオリジナルのほうが面白いものができたのではないか。まぁ、劇団の問題なのだろうが、既成台本でどれだけうまく演出できるのか、新人演出 . . . 本文を読む
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空の驛舎『ライオンのいる場所』

2013-02-26 22:01:53 | 演劇
 5つのエピソードからなる短編連作スタイル。大きな事件を核にした1本の話としては構成しない。発表会でのビデオラインを巡るお話が最初と最後で描かれるけど、それがこの作品の核を為すというわけではない。一見ささやかな話の積み重ねから、問題の本質に迫る。  支援学校の休憩室としても利用されている会議室。そこに集まる先生たち。さまざまな問題を抱える学校現場の内実がさらりとしたタッチでスケッチされていく。大 . . . 本文を読む
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『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』

2013-02-26 21:57:52 | 映画
 ツイ・ハーク、久々の新作。この1月には、これも久々にジェット・リーと組んだ3D大作『ドラゴン・ゲート』(これは一昨年正月に中国で見た『竜門飛甲』だ!)も公開されたが、これはその直前に製作された作品。しばらく彼の映画を見ていなかったから、『竜門飛甲』を見たときには、ドキドキしたのだが、字幕なしで見たので、話がいまいち、よくわからないし、それでつまらなかったのだ、と当時は思ったがそうではなかった。じ . . . 本文を読む
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『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』

2013-02-25 22:24:19 | 映画
 なぜこんな地味な映画が公開されることになったのだろうか。なんとも不思議だ。しかも、東映配給というのも。ドイツのパニック映画で、ナチスの話で、陰謀と冒険とラブストーリーの娯楽スペクタクル大作。盛りだくさんだけど、それだけ。  最初はロバート・ワイズ監督のアメリカ映画『ヒンデンブルグ』のリメイクかと思ったがそうではなかった。大作を装って、実は劇場映画でもない代物をわざわざ公開するのはなぜか。しかも . . . 本文を読む
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『ポテチ』

2013-02-25 21:22:23 | 映画
 中村義洋監督本人が出演している。とても、重要な役だ。しかも、ラストシーンは彼で終わる。とても目立っている。自作、自演のひとり舞台だ、とはいわないけど、とてもチャーミングで、ワンポイントリリーフの任を的確にこなす救援投手だ。  68分という上映時間が素晴らしい成果を上げる。そこも最初から確信犯だ。さらには、今年の最新作にして彼の最高傑作『みなさん、さようなら』へ向けてのウォーミング・アップにもな . . . 本文を読む
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瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』

2013-02-25 21:21:36 | その他
 駅伝物である。『風が強く吹いている』がある以上、どうしてもハードルは高くなる。でも、瀬尾まいこだから、大丈夫だ。主人公は田舎の中学3年生。だから、舞台は箱根ではない。中学生活最後の駅伝大会だ。でも、これは彼らにとって箱根と同じ。死ぬ気で戦うしかない。彼らにとってこの戦いが最後なのだ。この後、高校に行けばもっと、ハイレベルで、すごいことが待ち受けているかもしれない。でも、それはまた別のお話だ。今こ . . . 本文を読む
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『サニー 永遠の仲間たち』

2013-02-25 21:20:27 | 映画
 2010年とその25年前、1985年。この2つの時間を繋いで見せる青春映画。というか、主人公たちはもう40代なんだけど。でも、青春。もちろん25年前は青春真っ盛り。これは先日見た『横道世之介』とよく似たパターンなのだが、これもまた、あの映画と同じようにとてもよく出来ている。  高校生7人組のお話。あの頃と今をつなぎ、彼女たちがもう一度、絆を取り戻していく姿が描かれていく。平凡な主婦になり、毎日 . . . 本文を読む
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『脳男』

2013-02-24 21:05:37 | 映画
 まず、このタイトルからして、大胆にも程がある。商業的にはあかん、やろ、と思う。でも、ここまで突き抜けると、それはそれで興味を引くかもしれない。これは映画会社としてはかなりの冒険である。映画のタイトルとして、普通ありえないだろう。しかも、主人公を演じるのはジャニーズのアイドルである。彼が出るとアイドル映画のレッテルを貼られる。だが、まるでそんなこと、気にしない。というか、製作側は、生田斗真でなくて . . . 本文を読む
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朝井リョウ『何者』

2013-02-24 21:05:18 | その他
 こちらは現代が舞台で、大学の3年から4年にかけての1年間のお話。現役である朝井リョウが、自分の体験をもとにして書いたのだろう。のほほんとして大学生活を送っていた大学生活を終わらせて、就活を始める学生たちを描く群像劇だ。『横道世之介』の直後に読んだので、なんだか気分としてはあの映画の続編のような気分にさせられた。  まだ、自分が何者でもなく、何者にもなれない不安を抱えて生きてきた頃。主人公を中心 . . . 本文を読む
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『横道世之介』

2013-02-21 22:14:11 | 映画
 吉田修一の青春小説の傑作を、前田司郎の脚本、沖田修一監督(なんとこの2人は中学、高校の同級生だったらしい)で贈る。原作は、とても幸せな気分にさせられる小説で、発売当初は、これを吉田修一が書いたなんて信じられないと思った。でも、彼は、今ではエンタメもなんでもこいの作家になって、もう驚かない。この小説が彼のターニングポイントになったのだろう。  それにしても、この(一見)なんでもない(ように見える . . . 本文を読む
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梅棒『スタンス』

2013-02-21 22:13:00 | 演劇
 梅棒初の単独公演である『スタンス』の大阪版。これは昨年の東京公演を基本そのまま大阪で上演するという豪華版(ということらしい)。だから、僕が見た最終日は、ぬいぐるみハンターとこの梅棒の2本立なのだが、それってとんでもなく贅沢で豪華な番組なのである。先に見た2本立であるニコルソンズ&廻天百眼もそうだったが、今回のLINX’は凄すぎる。  昨年このLINX’で見た本作品のショートヴァージョンも面白か . . . 本文を読む
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ぬいぐるみハンター『ポテサラ パニック ピクニック パ-ティー』

2013-02-21 22:09:38 | 演劇
 これが大阪初進出になる(らしい)ぬいぐるみハンターをもちろん初めて見る。これは昨年東京では『くじらのおなか』のタイトルで上演された彼らの最新作。石田1967さんのセレクトによる今回の東京発LINX’は、先にも書いたように1時間超えの中編2本立。今までの20分から30分という上演時間では不可能だった各劇団の本格公演がこの尺なら可能となる。ショーケースという従来のスタンスは継承しながら、単なる予告編 . . . 本文を読む
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『ゼロ・ダーク・サーティ』

2013-02-21 22:04:34 | 映画
 キャスリン・ビグローはデビューの頃から大好きで、彼女のアクション映画は女性監督であることを忘れさせるほどにエンタメとしても優れている。『ブルースチール』も大好きだが、『ハートブルー』。あれだけの爽快な娯楽巨編を作り上げるその手腕に感動した。だが、あれから20年。彼女がとうとうここまで凄い映画を作ることになるなんて、思いもしなかった。前作『ハートロッカー』でアカデミー賞を受賞し、それまでの実績を生 . . . 本文を読む
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