習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

空晴『いつもの朝ごはん』

2011-02-27 08:26:05 | 演劇
 もう第7回公演になるのだ。旗揚げをここウイングフィールドで行い、その後もここをベースにして、この小空間にこだわり、芝居作りを続ける岡部尚子さんが主宰する空晴の新作だ。毎回、変わることのない家族の小さなお話。ワンシチュエーションで、ちょっとした騒動が描かれていく。かなりの動員が可能な劇団だが、わざと狭い空間で芝居を続ける。そこでしか描けない芝居があるからだ。だから、結果的にしかたなくロングラン興業 . . . 本文を読む
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『彼とわたしの漂流日記』

2011-02-27 08:12:28 | 映画
 この日本版タイトルは、彼女目線になっているけど、この映画はどちらかというと彼目線の映画である。彼の方から始まるし、その中で、彼をみつめる彼女という関係が描かれる。  漢江の無人島(というか、単なる中州なのだが。だからここは大都会の真ん中である)で漂流するというこのバカバカしい設定が秀逸だ。そこで、ありえないようなドタバタが演じられる。主人公、キム役のチョン・ジェヨンは、至ってシリアスにこの男を . . . 本文を読む
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『ヤンヤン 陽陽』

2011-02-24 23:39:37 | 映画
 一昨年の台北映画祭で話題になり、その年の東京国際映画祭でも上映された青春映画。ようやく見ることが出来た。前半、高校生活を描く部分がいい。ヤンヤンが抱える鬱屈した想いが静かな描写で綴られていく。彼女は台湾人とフランス人のハーフで、その美貌ゆえみんなから距離を置かれている。あの子は特別だから、と。そんな彼女の、母親の再婚からスタートするお話自体はよくある青春映画のパターン通りの展開だ。だが、それをさ . . . 本文を読む
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『男たちの挽歌』

2011-02-24 23:16:48 | 映画
 ジョン・ウーがわざわざ自らプロデュースを買って出る。そこまでして何がしたかったのだろうか。しかも、この話を韓国で作るという意味もまるで感じられない。『ゴースト』を日本を舞台にしてリメイクするのと同じくらいに訳のわからない企画だ。しかも、偶然だろうが、どちらもソン・スンホンが絡んでいる。  チョウ・ユンファの演じた役をソン・スンホンが演じる。香港ノワールの原点が25年の歳月を経て今よみがえる。で . . . 本文を読む
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レトルト内閣『さらばアイドル、君の放つ光線ゆえに』

2011-02-23 23:01:22 | 演劇
 久しぶりにレトルト内閣の芝居を見た。とてもおもしろかったし、感心もした。こんなふうに成長していたんだ、と納得した。それってなんだかうれしい。しばらく見ない間に、思いもかけない進化を遂げている。凄いと思う。  ほんの少しメジャーになり、たくさんのお客さんから支持を受けるようになって、ダメになっていく劇団はたくさんある。それは自分たちの作り方を観客のニーズに合わせていくうちに、自分たち本来の方向性 . . . 本文を読む
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『ヒーローショー』

2011-02-23 22:48:40 | 映画
 井筒和幸監督の最新作だ。今回は、また、彼のお得意であるガキを主人公にした話だ。要するに現代版『ガキ帝国』なのである。だが、ここにはあの映画のようなロマンはない。さらには『岸和田少年愚連隊』にあったノスタルジーもない。この殺伐とした世界はなんだろう。痛ましいというよりも、目を覆いたくなるような暴力が、ただ不快になるように描かれていく。  人を殺しても平気なチンピラ以下の青年たち。彼らの無軌道とい . . . 本文を読む
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『蛇のひと』と6本のDVD

2011-02-23 22:36:15 | 映画
 先週はTUTAYAがワン・ウイーク100円セールをしていたので、7本DVDをレンタルしてきた。そのおかげで週末はとても大変だった。いずれも見逃していた期待の映画ばかりで、気合いを入れて見たのだが、なかなか期待に沿ってはくれない。時間をやりくりしてまとめて見たから疲れた。こんなことなら、1,2本だけにしておけばよかった。欲張ったところで、何もいいことはない。  7本の中では一番よかった井筒和幸監 . . . 本文を読む
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期間限定Saccharin『そのどこかに男たちはいたという』

2011-02-23 22:31:28 | 演劇
  これは『その鉄塔に女たちはいるという』と同時に上演されたアナザーストーリー。それにしても驚いた。前述のこの芝居に対するブログで、Saccharinの前回公演のタイトルを『質屋』と書いてしまっていたらしい。確認したらその通りだった。あれは『楽屋』ですよ。笑ってしまいました。ゴメンナサイ。こういう失敗ばかりしている。本気で間違っていることも多いけど、無意識に間違っていることもよくある。恥ずかしいで . . . 本文を読む
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期間限定Saccharin『その鉄塔に女たちはいるという』

2011-02-22 00:16:19 | 演劇
 MONOの土田英生さんが書いた傑作戯曲を、男5人のところを、強引に女5人へと置き換えて上演したリニューアルヴァージョン。前回の『質屋』(ほんとうは『楽屋』です。間違いました。なかたさんから教えてもらいました。訂正します!)と同じように土橋淳志さんは彼女たちの自然体を大切にして演出する。基本的には役者であるまえに作家であり演出家でもある彼女たちが「演じる」ということは、作家の余芸のようなものになっ . . . 本文を読む
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藤野千夜『ネバーランド』

2011-02-21 23:16:07 | その他
 30歳の女性と3歳年下の彼。優柔不断な彼に業を煮やしてしまうのに、彼から離れられない。しかも彼には、自分以外にも同棲している彼女がいる。なのに、毎日のようにやってきて、食事を摂り、部屋でごろごろしている。だいたい週に何日も泊まっていくのだ。最低な男だと思う。  「じゃ、いいかげん、その女とは別れてよ」というと、のらりくらりかわされて、挙句、その女のところにまた帰っていく。「それって騙されている . . . 本文を読む
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『僕と妻との1778の物語』

2011-02-20 11:19:10 | 映画
 難病ものの映画なんて見たくもない、と思うのだが、この映画はちょっと見てもいいかも、と思わされた。それは、これが死と向き合うこと以上に、生きていることの奇跡をちゃんと描こうとしているように思えたからだ。  そんな事前の予想はちゃんとあたって、これはなんとも素敵な映画に仕上がっていたのがうれしい。ただのお涙頂戴ではない。生の輝きに満ちあふれた映画である。でも、死という事実からも、目を背けることなく . . . 本文を読む
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『ACACIA』

2011-02-20 10:32:50 | 映画
 どうしてこんなにも詰めの甘い映画ばかりを作り続けるのだろうか。僕にはその理由がわからない。才能がないから、と切り捨てても構わないだろう。ミュージシャンとしても、作家としても成功したはずの彼が、こと映画だけは上手く行かない。作家の余技で済ますにはちょっとしつこすぎる。もういいかげん諦めたらいいのに、と思う。でも、何度となく挑戦する。諦めの悪い人だ。  辻仁成の新作である。確か今はフランスで暮らし . . . 本文を読む
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『あしたのジョー』

2011-02-16 20:39:59 | 映画
 『あしたのジョー』の完全実写映画化である。正月のヤマトに続いて、これだけリスキーな企画に挑む心意気は高く評価されていいだろう。しかも、安易なCG映画ではなく、主人公2人にきちんとボクシングをさせてその本物のファイトシーンをクライマックスに持ってくる。力石演じる伊勢谷友介の痩せ方は半端ではない。彼の鬼気迫る演技なくしてはこの企画は成立しなかっただろう。ボクサーになりきるだけでなく、極限まで自分を追 . . . 本文を読む
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『ジーンワルツ』

2011-02-15 22:14:16 | 映画
 ラストの展開を見ながら、これと同じような映画をどっかで見たことがあるよ、と思ったのに、なかなか思い出せなくてイライラした。そのため映画に集中できない。困った。気になって仕方なかったのだ。だが、ようやくそれを思い出したとき、心からがっかりした。  映画は観月ありさ主演のコメディー『Baby! Baby! Baby!』である。あのコメディータッチのドタバタ映画と話が全く同じなのである。この映画のク . . . 本文を読む
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演劇ユニット彗星『ボレロ』

2011-02-15 22:13:16 | 演劇
 こんなタイプの芝居を見るのは久しぶりのことだ。ドラマのメリハリはないし、へんに観念的なのに、描いていることは至って単純で、なんだか見ていてちょっと恥ずかしくなる。途中、テンポも悪くて、何度も居眠りしそうになって困ったし。正直言うとダメな芝居だ。  でも、見終えた後、そんなにイヤではなかった。それは、作り手たちが一生懸命自分たちの世界を表現しようと努力しているからだ。少なくとも、それは伝わってく . . . 本文を読む
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