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映画・演劇のレビュー

大石大『校庭の迷える大人たち』

2023-07-31 12:11:25 | その他
このタイトルに心惹かれて読み始めたのだが、まるでつまらない。5つの短編連作。小、中学校を舞台にしたファンタジータッチの作品。『学校の怪談』レベルの作品で、これでは子ども向けの安易な作品と受け止められても仕方ない。だいたい児童文学ならもっとレベルが高いし。秘密の部屋、人からエネルギーを吸い取る木、除霊師とか、妖精。ないわあ。僕も勝手に、学校を舞台にして、かつて子どもだった大人が再び学校という迷路に迷 . . . 本文を読む
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劇団第一主義『友達』

2023-07-31 12:05:34 | 演劇
いつもこのインパクト大なチラシに驚かされてきた。毛筆で書かれた文字だけ。一度見てみたいと思いつつも今まで見ることがなかったのだが、今回初めて見ることができてよかった。我が道を行く、というスタイルを貫く沢渡さんの姿勢がどこから生じるのかはこれだけではわからないけど、あまり類を見ない芝居だと思う。 だいたい安部公房の戯曲を取り上げるなんてのが凄い。これはもう古典だけど、このアバンギャルドな世界を今と . . . 本文を読む
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小野寺史宜『ひと』

2023-07-31 05:59:00 | その他
最近めきめき力をつけてきた小野寺さんの初期作品。2019本屋大賞2位に輝いた作品が文庫化された(発売は21年6月だけど)からさっそく読み始めた。相変わらず読みやすいから、往復の電車の中で半分以上読めた。 内容はとても暗いのに、なんだか元気を貰える。不思議な小説である。事故で父を亡くし、数年後にいきなり母も亡くし天涯孤独になつた20歳の青年が主人公。お金がないから大学も辞めて、今は仕事もなく、少な . . . 本文を読む
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僕のマリ『いかれた慕情』

2023-07-31 05:44:00 | その他
これは百万年書房(凄い社名だ!)から出ているエッセイシリーズ『暮らし』の3冊目。毎回いろんな人に依頼しているみたいで、今回は僕のマリ。彼女の私家版小冊子をベースにした書き下ろし。エッセイだけど、まるで短編小説の趣きがある。ここには彼女の人生観が詰まっている。だいたい彼女の小説自体がエッセイに近い。自分の体験をそのまま形にしているみたいだし。『書きたい生活』を読んだ時、これって彼女そのまんまじゃん、 . . . 本文を読む
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咲くやこの花高校『少女瓶詰』

2023-07-30 20:20:00 | 演劇
これは大胆で凄いタイトルだ。高校生がこんなタイトルの芝居を作るなんて、ないわぁと思った。しかも女の子が書いたようだ。これは絶対見たいと強く思った。タイトルから明らかに夢野久作に影響された作品だと思う。ということはHPFでアングラ芝居をするのか、出来るのか、それとも、これは夢野久作ではなくただの甘いファンタジーか、想像がつかない。 やはり夢野久作の影響下の作品であるようだ。人魚、島、火事。旧弊な村 . . . 本文を読む
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『クロース』

2023-07-29 08:25:00 | 映画
ルーカス・ドン監督が前作『Girl ガール』に続いて放った作品。LGBTを扱うけど、些細な行き違いが生む悲劇としてもとらえられる。 13歳のレオとレミは大の仲よし。いつもふたりで戯れあっていた。だけど、中学になって、クラスメートからふたりはホモではないかと疑われてから関係はぎくしゃくしてくる。レオはレミを避けるようになり、レミは怒りをぶつける。 ふたりのそれからが周囲との関係性を通して描かれる . . . 本文を読む
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大阪成蹊女子高校『バックルベリーにさよならを』

2023-07-28 20:19:00 | 演劇
懐かしい成井豊の脚本だ。昔はHPFでも大人気で何度も何度も取り上げられていた。キャラメルボックスは高校生御用達の劇団だったけど、今はあまり聞かない。   久しぶりに見た成井芝居(これ自体は30年ほど前の作品なのだが)は相変わらずのハートウォーミングで、それを成蹊のみんなはとても丁寧に演じた。   小学5年を終えたばかりの少年が主人公だ。彼は母とふたりで暮らしている。母は . . . 本文を読む
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小池真理子『日暮れのあと』

2023-07-28 08:03:00 | その他
静かな日々を描く短編集。7つの作品は何があるわけではなく、ただ何もないのがこんなにも心に響く。もちろん実は何もないわけはないけど、何もないように暮らしていきたい、と願う。平穏な日々を過ごしていくことだけがささやかな願いだ。だが、そうはいかない。死が身近に迫ってくる。抗うことは出来ない。だけど、受け入れたくはない。   大好きだった叔母の死。妹と姪の死。ひとりになる不安。だけど、生きて . . . 本文を読む
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『恋恋豆花』

2023-07-27 12:33:32 | 映画
これは今関あきよし監督の2019年作品。(公開は2020年)コロナ禍直撃の中、公開された。撮影はもちろんコロナ直前。台湾を18歳の女の子(モトーラ世理奈)が、何故か新しく父が再婚する女性(だから義母)と二人きりで旅する話。しかも1週間。映画は完全に観光旅日記で、こんなのを映画と呼ぶのもなんだかなぁ、という感じ。映像旅エッセイ。旅グルメ番組を見ている気分。 台湾は大好きだし、おいしいものがたくさん . . . 本文を読む
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川上未映子『愛の夢とか』

2023-07-27 09:36:19 | その他
先日見た映画『アイスクリーム・フィーバー』の原案となった『アイスクリーム熱』が収められた短編集。2013年に刊行された。映画はまるでこの作品の映画化だとは言えない。『アイスクリーム熱』は『アイスクリーム・フィーバー』のほんの一部を取り上げただけ。タイトルになっている『愛の夢とか』のさりげなさがいい。これが本作品集のベースになっている。     アイスクリームを作る、隣人のピアノ、夫の . . . 本文を読む
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中西智佐乃『狭間の者たちへ』

2023-07-27 09:20:00 | その他
これは凄い。(最近毎回なんか凄いのを読んでいるけど)40男の憂鬱をこんなにもリアルに捉えている。しかも作者は女性である。昔、風俗で知り合った女性を好きになり、今も忘れられない。結婚して生まれたばかりの子どももいる。保険会社の営業所、中間管理職。今の楽しみは電車の中で会う女子高生。彼女を見るだけで幸せだと思う。近づくといい匂いがして、さらに幸せだ。変なことをしたいわけじゃない。ただ近くで見ているだけ . . . 本文を読む
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東海大付属大阪仰星高校『オーレ! Ryoma』

2023-07-26 21:00:00 | 演劇
阪本龍夫先生の渾身のオリジナル戯曲に仰星の部員たちが全力で取り組んだ力作。幕が開くと舞台中央、そこには巨大な日の丸。度肝を抜かれるビジュアル。嵐の中、ふたりの男たちが海からやってくる。龍馬たちだ。たったふたりの高校の演劇部が弱小文化部と共闘して文化祭に参加する。だが、校長はルールをかざして彼らの部を廃部しようとする。さらには文化祭自体も中止する。ハッピーエンドの甘い芝居にはならない。これが描くのは . . . 本文を読む
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金蘭会高校『山姥』

2023-07-25 22:09:00 | 演劇
今春、山本篤先生が退職され、新しい金蘭エンゲキのスタートとなる作品。今回取り上げたのは何度か今までも取り組んでいる『山姥』だ。いつも通りのパンフには当たり前だけど、いつもの山本先生の長文のご挨拶の文章がない。あれがないだけで、金蘭を見た気がしない。さすがにあり得ないのはわかっていたけど少しガッカリする。だが、山本先生がいない金蘭は変わることなくいつもの金蘭エンゲキだった。豪華絢爛で余裕がある舞台を . . . 本文を読む
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恩田陸『夜果つるところ』

2023-07-25 08:48:28 | その他
先日ようやく読み終えた大作『鈍色幻視行』のスピンオフ。本編とほぼ同時で刊行された。あの2本の呪われた映画の原作となる小説、飯合梓が描いた伝説の小説、という形式で書かれた作品。10年以上前に書かれていたが、今回本編完結に合わせて刊行となったようだ。この作品が何故あんなにもたくさんの人たちの心を引いたのか、どんな魅力がこの小説にはあるのか、興味津々で読み始めたのだけど、残念ながらまるで乗れなかった。単 . . . 本文を読む
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HPF2023 開幕

2023-07-24 21:34:00 | 演劇
今年もHPFの夏がやって来た。今年は4会場で12校が公演を行う。僕は依頼された作品込みで5本を見る予定。   1本目の大谷高校には驚かされた。これはもう高校演劇のレベルではない。プロはだしの完成度だ。もちろんみんながこれを目指す必要はない。こんなのもありだ、ということでいい。   あれを高校生らしくないとか言う人がいるかもしれない。だが、そんなつまらない意見に耳を貸す必 . . . 本文を読む
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