習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『あの空をおぼえている』

2008-04-29 21:55:10 | 映画
 どうしようもないことが起きてしまって、もう戻ることはできない。取り返しのつかないことをしてしまった後悔の中、現実を受け入れることなんて出来ないまま、それでも生きて行かなくてはならない。そんな中、父は心を閉ざしてしまう。  娘(絵里奈)の死という現実を受け入れられない。自分よりも大切なものがある。そのためなら命なんか惜しくないと思っている。しかし、彼女はもうこの世にはいない。帰ってくることはない . . . 本文を読む
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田口ランディ『キュア 』

2008-04-29 21:46:42 | その他
 後半、宗教と医療という問題に足を踏み入れてしまう。そこまでは極上のエンタテインメントだったのに。しかし、それが駄目だ、なんて言うのではない。一体どうなるのか、とドキドキハラハラさせてくれた前半から、微妙にコースアウトしていくところが実は面白いと思ったのだ。単純なエンタメではない。かといって深刻な純文学なんかでは毛頭ない。いかがわしさすら漂わすのだ。そこが、いい。  まるで哲学書かなんかを読んで . . . 本文を読む
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唐組『夕坂童子』

2008-04-28 23:46:06 | 演劇
 驚きを禁じえない。1幕が終わった時点で、かなり早いな、と思い時計を見てしまった。40分しか経っていない。実質15分の休憩を挟んで後半(2,3幕)が始まる。そこでもかなり早いと思ったが、終演後時間を確認して、やはり驚いている。まだ8時35分だ!40分X2.実質80分の芝居である。紅テントが昔3幕3時間から2幕2時間に変わったときも驚いたが(あれからも、かなりの時が経つ)今回の異様な短さはなんなのだ . . . 本文を読む
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劇団 自由区(エリアフリーダム)『半神』

2008-04-28 22:39:00 | 演劇
 とてもコンパクトによく纏めてある。20年前の作品だし、野田秀樹はテンポが命だから、チンタラチンタラやられたなら、見るも無残なものになりかねないのだが、この集団は、無理することなく、この作品世界を自分たちのテリトリーで手堅く仕上げた、って感じだ。  正直言って高校演劇のがんばっているクラブが、HPFで上演したレベルの作品(ここで僕は金蘭会による『半神』とは比較していない。ああいうのは別格なのだ。 . . . 本文を読む
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『ダンスの時間19』

2008-04-28 22:02:30 | 演劇
 正直言って今回はいつも以上にぶっ飛んでました。あまりにオーソドックスなものから常識を超えたようなものまでバラエティーに富んだラインナップを見せてくれるのだが、これには呆れてしまう。これってダンスなのか?なんて感心するくらいに。  まぁ、いつもボーダレスだし、既成の範疇には収まりきらないものを自由に提示してくれることがこの企画の命なのだが、それにしても今回の5団体は、その構成も、少しずつ壊れてい . . . 本文を読む
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目黒条『カルトの島』

2008-04-24 21:37:02 | その他
 ある特殊な設定を作りその世界のルールのなかで、物語が綴られていく。8話からなる短編連作ではあるが、全てが驚くべきその世界観のもとで展開されていく。  特定の宗教団体に帰属しなければ世界から排除されるというルール。しかも、女はエリート団体に入らないことには子供を産むことも出来ない。というか、極端な育児制限下で、子供を持つという行為が特別なものとなる。そんな世界で、生きている人々のそれぞれのドラマ . . . 本文を読む
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関口尚『シグナル』

2008-04-23 23:37:22 | その他
 「残念だけど、人と人とは分かり合えないもんなんだよ。おれはそう思う」「だけどね、ルカ。この人とだけはわかり合いたいって思ったら、必死に心の手を伸ばすんだよ。」  この言葉が身に沁みる。とても単純だからこそ真実を誠実に伝えている。ルカに対して恵介が言ったこの言葉はとても大切なことだ。  この小説はありえないような男の行動が、周りをいかに苦しめていたかということを描く後半部分で全体のバランスを崩 . . . 本文を読む
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『うた魂♪』

2008-04-23 23:07:56 | 映画
 よくあるスポ根ものでは考えられない設定がこの映画には施されてある。北海道大会常勝の合唱部が、道大会で今年も優勝するまでのお話である。そんなんあたりまえすぎて映画にならんやろ、と思う。普通なら、相手にもされてない弱小クラブが力を合わせて強豪校を倒し、全国大会への切符を手に入れる、というのがこの手の映画の黄金のパターンとなるのに、これは強豪校が持てる力を発揮して優勝するのである。この手はかってなかっ . . . 本文を読む
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『砂時計』

2008-04-21 22:31:42 | 映画
 こんなにも重い女の話をひたすら見せられたなら、さすがに疲れる。ちょっと人事ながら、彼がかわいそうに見えてくる。なのに、彼はそんな僕の心配をよそにして、彼女を愛し続けるのである。ご苦労なことだ。  この映画は、なんだかとても強い意志のもと、この2人の男女の純愛をひたすら真直ぐ追いかけていく。久々の純愛映画である。『世界の中心で愛を叫ぶ』以上にど真ん中直球勝負の映画だ。ありえないし、つきあいきれな . . . 本文を読む
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『スパイダーウイックの謎』

2008-04-21 21:58:04 | 映画
 こういうファンタジーはもう食傷気味だ。どんな凄いビジュアルを見せられても、もう何も思わない。ハリウッドの大作映画は、そろそろ方向転換しなくては、世界中からそっぽを向かれることにもなり兼ねない。『スパイダーマン』を頂点としたヒーローもの。『ハリーポッター』や『ナルニア国』といったファンタジーしかり、もう何をしても誰も驚いてくれません。  そんな中、この映画もまた、見る前からうんざりさせられる内容 . . . 本文を読む
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西加奈子『こうふく、みどりの』

2008-04-21 21:42:09 | その他
 西加奈子さんの新作は緑と赤の2冊連作。これって村上春樹の『ノルウエーの森』と同じデザインだ。1991年の大阪と2039年の東京。2つの別々の時間と場所。別の人物の物語。これってどう考えたって全く別物のはずなのに、彼女の中ではきちんとリンクしているらしい。次の赤を読めばそのへんも見えてくるのだろうが、今はまずこの緑について書いてみる。  緑という14歳の女の子が主人公。彼女の日常生活のスケッチが . . . 本文を読む
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『王妃の紋章』

2008-04-20 22:11:54 | 映画
 チャン・イーモウはどうしてこんな映画を作ってしまったのだろうか。『HERO 英雄』『LOVERS』に続く武侠映画シリーズ第3弾という位置付けが出来ないわけではない。でも、ちょっとこれは毛色は違うようだが。  壮大な宮廷スペクタクルを目指したのだろうとも思う。しかし、話があまりにつまらなさ過ぎる。そのつまらなさは、要するに王家の内紛をただそれだけで自己完結するように作ってしまったことによる。陰謀 . . . 本文を読む
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whereabouts『すてたものじゃない夢たちへ』

2008-04-20 21:26:57 | 演劇
   この勘違い振りには閉口した。元々こういうタイプのエンタメ志向の芝居は苦手だが、それでもきちんと見せることが出来ていたなら退屈はしない。しかし、残念だがそんな芝居は数えるくらいしかない。せめてキャラメルボックスなら見れないことはない。新感線くらいしてくれるのならOKである。まぁ、なかなかそこまでいけないのが現状だから、基本的にはこの手のものは避けることのしている。ただ、今回は春演参加作品だから . . . 本文を読む
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劇鱗『仏契』

2008-04-20 20:30:52 | 演劇
 こういうエンタメ芝居はほんとは苦手なのだが、今週はこれだけでなくもう1本見ている。劇鱗は旗揚げからずっとコンスタンスに見ている。彼らの試行錯誤の歴史を結構知っているから、なんとなく次はどうするのか、と気になる。  前回の『国防クライシス』はアイデアの面白さを活かしきれず自爆していたが、今回はフライヤーのデザインも含めてあの作品のリターンマッチみたいなので、町本卓也さんがどう出るのか、それが楽し . . . 本文を読む
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『リサイクル 死界』

2008-04-19 23:11:42 | 映画
 あるDVDを見ていてそこに納められたこの映画の予告編を見て、その衝撃のビジュアルに魅了された。これはぜひ今すぐ見なくてはと思い、すぐにレンタルしてきた。タイのパン兄弟(オキサイド&ダニー・パン)による新作。東京では昨年6月に公開されたらしい。香港とタイの合作。  もうひとつの世界をSFXを駆使して描く映画なんて、もう掃いて棄てるほどあるが、そんな中でもこの映画に惹かれたのは、その廃墟のビジュア . . . 本文を読む
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